【概要】
(1995年12月現在)
名称:春秋繁露研究会
代表:新田幸治教授
活動日:隔週月曜日
会員:14名

【目的】
『春秋繁露』を中国思想研究のための重要な資料と位置づけ、その購読及び訳注作成を行い、思想内容を検討することによって中国思想・文化心理構造に対する理解を深める。

【活動内容】
本会の活動は大きく二つに分けられる。

1.輪読・訳注:
編毎に演習担当者を決め、発表者は担当部分の訳注の原稿を作成し、会の中で他の会員に問題点を示しつつ発表する。会員は示された事項について検討を加える。

その場で解決がつかない場合は保留とし、必要に応じて会員全員が調査する。演習は主に大学院生・修士修了程度の者が担当するが、難解な編については本学講師中村聡氏にもお願いしている。また院生には最初は演習を課さず聴講して基礎知識を習得してもらっている。

なお底本は北京図書館から影印出版されている宋刊本を用い、蘇輿の『春秋繁露義證』・台湾の頼炎元氏の『春秋繁露今註今訳』を座右に置いている。

2.版本収集及び校勘記作成:
周知の通り、『春秋繁露』は清の盧文*(ろ・ぶんしょう)によって大きく校訂され、明刊本・四庫全書本と比べて著しい差異がある。当会では、明刊本を中心に、各地に所蔵されている版本を調査して複写をとり、製本して研究室に備えてある。
昨年度は、井上円了研究助成金の一部を用いて中下教授が北京に出張し、北京大学教授費剛氏にも御助力をいただいて葉コ輝旧蔵書を含む貴重な明刊本数点をマイクロフィルムに収めた。なお海外調査は本年度も実施している。集めた諸本は最終的には校勘記としてまとめる計画である。

【現状と展望】
本会は元々中下正治教授の大学院演習科目からは始まった。同教授の下に学生が集まって自然発生的に会としての活動が始まったのであるが、現代表の新田教授のご尽力により、井上円了研究助成金を毎年交付される、いわば学科に認知された形の研究会に成長した。また、今年度着任された阿部兼也教授の参加によって、さらに多方面からの検討が可能となった。

現在の正規の会員は上に示したとおりであるが、本学の現役の大学院生は二年生二名だけである。二人とも、自分の専門分野でないにも関わらず熱心に聴講しているが、やはり本学に在籍する若手研究者が積極的に参加してもらいたいというのが希望である。それでこそ東洋大学の研究会としての意義があると思うからである。

今後の活動も基本的には輪読・訳出と校勘記作成の二本柱である。校勘記作業には特に多くの方々のご協力が不可欠である。当会に対するご理解、ご協力を伏してお願いしたい。

(以上は「東洋大学中国学会報」第2号に掲載したものです)


この会は中下正治教授の大学院演習科目から始まり、年々新たな学生の参加により、研究会としての形を整えてきました。現在では月に2回のペースで会員が集まり活動を続けています。また、現代表の新田幸治教授のご尽力により、井上円了研究助成金の交付を受けるまでになりました。

会の目的は、『春秋繁露』を中国思想研究のための重要な資料と位置づけ、その講読及び訳注作成を行ない、その思想内容を検討することによって中国思想・文化心理構造に対する理解を深めることにあります。ここでは会の活動内容と今後の展望について紹介したいと思います。

実際の活動内容としては、輪読・訳注と版本収集・校勘記作成の大きく二つに分けられます。輪読・訳注に関しては、篇ごとに担当者を決め、その担当者が訳注のレジュメを作成し、発表します。それを全員で検討し、訳注としての形を整えていきます。勿論、解釈の難しい箇所等も所々ありますが、先学の諸説を参考にし、阿部兼也教授の助言も得て、最も妥当と思われる結論を導き出しています。

訳注として完成したものは、毎年刊行される『東洋大学中国哲学文学科紀要』『東洋大学大学院紀要』に順次発表しています。現時点でのその量は、『春秋繁露』全体の三分の一にも及びます。なお、底本には書目文献出版社から影印出版されている宋刊本を用い、参考文献としては主に蘇輿の『春秋繁露義証』や台湾の頼炎元氏の『春秋繁露今註今訳』などを使用しています。

版本収集に関しては、明刊本を中心に、各地に所蔵されている版本を調査して複写をとり、製本していつでも閲覧できるように研究室に備えています。今では現存する版本の九割方を収集するに至りました。またこれら集められた諸本は、校勘記としてまとめる準備も進めています。

今後の活動も輪読・訳注と版本収集・校勘記作成を中心としていくつもりですが、新たな試みとして学外との交流を検討しています。『春秋繁露』をテーマにした研究会は他校にもあり、これまでも版本や研究活動に関する問い合わせを多数受けました。今までは本会の研究成果に対する問い合わせが来たときに、いつでも対応できるように準備しているだけでしたが、今後は本会の方からより積極的に情報を発信したいと考えています。

また現在、会員数は十数名を数えますが、本学の現役の大学院生・大学生の参加が多くありません。『春秋繁露』といういわゆる古典を主題としているため、古典を専門としない学生には、少々縁遠い存在だとされているのかもしれません。しかし、現会員の中にも古典以外を専門とする者が多く参加していて、様々な角度から意見を交わしています。専門分野にこだわることなく、広い視野で中国文化をとらえることが、今後の研究活動に必ず有益であると考えているからです。私自身も専門分野は少々異なるのですが、先輩から誘われてこの研究会に参加するようになって、訓読の作法や文献の扱い方等、為になることが数多くありました。本学に在籍する学生諸君にも、是非、一度聴講に来られることをお勧めします。

(以上は「東洋大学中国学会報」第5号に掲載したものです)


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