第4回 大学委1年の夏の課題
 前回はだいぶ註釈について長々述べてしまいましたので、私の大学1年次についてもう少しお話しします。
 前期中はあまり予習もしませんでした。もちろん演習で自分が指名されることがなかったからでもあります。私が本格的に上に述べたような中国古典の勉強の仕方を自分で実践したのは夏休みです。

 夏休みに1つの課題が出されました。それは適当な古典を選んで、訓読・現代語訳をつけて後期に提出するというものです。もちろん自分なりの註釈も付けなければなりませんので、引用されている書物には全部当たらなくてはなりません。私は課題に「韓非子」を選びました。もちろん全文をやるなんてことは不可能なので、その中の1篇を選びました。選んだのは「孤憤」です。訳本は幾つかありましたので、それを参考にして、たいして苦労はしませんでした。もちろん本文だけに訓読・註釈を施しても課題にはなりませんので、多少は註釈の付いているテキストを選ぼうと思いました。そこで選んだのが冨山房の「漢文大系」に収められている「韓非子翼毳」です。これなら本文には返り点もあり、そこそこ註釈もあり、かっこよかったからです。これには第2回にも書いた、私の中国思想体験記が大きく影響していると思います。

 私の選んだ版本は日本人の注釈書ですから、注で引用している書物にも日本人の著作が多く含まれていました。「物氏曰」なんていうのがしばしば目に付きました。初めは何のことかわからなかったのですが、初出のところを探したら、それが「物茂卿」だとわかりました。
 ここでようやく「物氏」が荻生徂徠だとわかりました。こんな調子で出典調べをしていきましたが、いまだに1人だけどんな人だかわからない人物がいます。たまに思い出しては調べていますが、さっぱりです。

 この夏休みの課題では基本的には大学の図書館で原典調べをしたのですが、上記のように邦人の著作の場合、うまい具合にうちの図書館で見当たらないものもありましたので、内閣文庫に行きました。お堀端で明るい静かなところで、非常に気分よく調べることができましたので、これから原典調べなどをする方で、関東在住でしたら、是非お奨めします。「漢籍分類目録」も京大人文研の目録よりは調べやすいと思います。

 なおこの時の課題は、当時は今ほどパソコンも普及していなかったので手書きでしたが、コピーも含め、すべてルーズリーフにまとめました。これだと新たに資料などが見つかったときに該当の部分に挿入しやすいですし、差し替え・並び替えが楽です。この方法は少なくともパソコンを使っていない方には是非お奨めします。

(第4回 完)
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