2006年11月14日

項羽と劉邦の時代

項羽と劉邦の時代―秦漢帝国興亡史』読了。

項羽と劉邦、およびその前後の時代を、『史記』や『漢書』の記述だけを頼りとするのではなく、出土資料なども斟酌しつつ、改めて概観した一書。

『史記』と『漢書』の記述の矛盾点だけでなく、『史記』の中の矛盾など、これまで薄ぼんやりと疑問に感じていたことなどを、出土資料やそこから見えてくる当時の社会状況をもとに推論し、納得のいく(辻褄の合う)結論を導き出してくれるので、目から鱗の落ちる思いで読了しました。

ただ、一般読者向けの本であるため、出土資料などの扱いに、やや簡略すぎる感もあり、いちおうは中国史を専門とした身にはやや物足りない部分もありました。

その一方、講談社選書メチエという容れ物から察するに、専門家以外の人を読者として想定しているのでしょうけど、やはり中国史に興味を持っている人でないと若干難しい部分もあるかと思います。

しかし、全体的には、各章はコンパクトにまとまっており、図版なども十分に入っていますので、理解しやすく、読みやすい本です。


〔管理人による補足〕

投稿者 rockfield : 22:00 | コメント (0)

2005年05月25日

漢語からみえる世界と世間

中川正之『漢語からみえる世界と世間』読了。

著者・中川先生は、あたしが担当した『白水社中国語辞典』でたいへんお世話になった方なので、こういった読書感想は書きにくいのですが……。

全般的に言って、言語学に興味のある方には十分面白く、肩肘張らずに読める本です。並製という造りからもわかるように、決して専門家向けではなく、一般の<コトバ>マニアにも十分楽しめるものと言えます。

ただ、やはり一般の方の場合、中国語を知ってないとついて行きにくい部分もあります。説明しなければいけない部分をかなり省略したのではないかと思われますので、「なんで、そうなるの?」といった疑問が中国語不安内の人にはわき起こるかもしれません。よく言われるように言葉は生き物なので、また中川先生自身が本書中で書かれているように、もっと実例を採取したり、検証したりしないといけない部分も多々あるでしょうが、そういう部分を抜きにして、日本語ってこんなに中国語の影響を受けたのに、こんなに違うんだ、と素直に感じられればよいのかもしれません。

また「世界と世間」というタイトルで、これが「新書」であれば、それこそ誰が読んでも面白おかしいエッセイになるのでしょうが、そこは岩波書店、読者ターゲットはもう少し上級をねらっているという感じがします。

刊行前に、中川先生とお話しした時に、ちょうど反日デモなども起こっていた時期でしたので、言葉を通じてどのように世界・世間をとらえているかという日中比較の視点から、現在の状況に触れるのも面白いかもしれないが、状況があまりにも過激に動いているのでそこまで踏み込まなかったというような話を伺いましたが、本書を読んで現在の日中問題を考えるのは、偉そうな言い方かもしれませんが、読者の仕事ではないかと思いました。

〔管理人による補足〕

投稿者 rockfield : 10:51 | コメント (0)