2006年12月15日

孫子兵法発掘物語

孫子兵法発掘物語』読了。

学術書というよりは手軽な読み物です。孫子の兵法やその発掘にまつわる学術的な蘊蓄は、巻末の浅野氏の解説を読んでいただければよいでしょう。

さて、本文。内容は面白いです。世紀の発見であるにもかかわらず、相当にぞんざいな扱われ方をした竹簡たち。その後も中国社会独特と呼ぶべきか、共産社会独特と呼ぶべきか、はたまた文革時代の悲劇と呼ぶべきかわかりませんが、とにかく保管なども私利と権力欲に振り回されて悲惨です。

それでも学者たちの良心によって、かろうじて最悪の状況は免れ、今に至るというわけです。もちろん、今もいろいろしがらみが残っているようですが……。

そういったドキュメントとして読めばおもしろい物語です。もちろん実話です。

ただ、訳者の方はかなり中国語が堪能な方だと思うのですが、翻訳の文章はあまり読みやすいとは言えません。

いや、これは訳者の力量のせいではないでしょう。原文がよくないのだと思います。

私も中国語で書かれたものを読む機会はありますが、本書もまさしく「いかにも中国人の文章」という表現が頻繁に登場します。なんでこういう修飾語の使い方するかなあ、と思ってしまうところがしょっちゅう登場します。原著者の文章そのものが、読み応えのある文章になっていないんだと思います。

もちろん訳者がそれを直訳するのではなく、意訳することによって読みやすくすることは可能かもしれませんが、私が感じる限り、訳者はかなり忠実に翻訳(直訳)している感じがしました。

〔管理人による補足〕

投稿者 rockfield : 08:15

2006年09月26日

北京ドール

北京ドール』読了。

中国では発禁になったそうで……。こういう作品って、感想に困ってしまいますね。

確かに、中国の若者のライフスタイルもずいぶん変わったな、ということはわかります。もちろん北京や上海など一部の都会でのことですけど。

むしろ、これを現代の東京に舞台を移したとしても、十分に<不良>のレッテルを貼られるような生き方です。これで通用してしまうまでに中国も変わった(資本主義化した? 腐敗した?)ってことなんでしょう。

さて、作品としてみた場合、何か大きなドラマがあるわけではありません。かといって、淡々と時が流れて、そこにしみじみとした空気が漂うという類のストーリーでもありません。

はっきり言ってしまうと、まとまりがなくて、どっちへ持っていこうとしている小説なのか、全然掴めません。これが今時の若者(!)と開き直られたら、返す言葉もありませんが、これで小説として成立しているのかなあ、という気もします。

この手の小説、ありきたりかもしれませんが、こういった不良まがいの言動を通じて主人公が大人になっていくというのが一つのパターンであると思いますが、そういったものは何もありません。私的には、この主人公には何ら人間的魅力すら覚えません(涙)。

いや、それは私が年をくったからなのかもしれませんが、基本的に真面目であった私には、たとえこの作品を高校時代に読んだとしても、何ら共感するところはなかったのではないかと思います。

〔管理人による補足〕

投稿者 rockfield : 21:07 | コメント (0)

2006年09月13日

人民に奉仕する

人民に奉仕する』読了。

現在の改革開放路線を取る前の中国の、とある軍隊での話です。この本のオビなどを読めばだいたいわかってしまうので書いてしまいますが、あらすじは上司の家の(事実上)雑用係として配属された農民上がりの兵士が、その上司が北京へ行って留守の間に夫人と不倫の関係になってしまうというストーリーです。

ただ、そういう関係になってしまうまでの主人公の心の動きが描ききれていませんし、誘ってくる夫人の心理描写もさっぱりです。(上司とは年が離れていて、この上司が既に男性機能を喪失しているため、欲求不満であったということが、後になって明かされますが……)

それに、性愛描写も淡々としていて、過激な描写にあふれている日本人には、「この程度で発禁?」という気がしてしまいます。

そして終末。結局この関係は、夫人の妊娠と軍の解散によって終わりを告げることになるのですが、主人公が休暇という名目で自宅へ戻ってから虚脱状態になってしまっているところの描写も、なんか中途半端。

あまりにも休暇が長すぎると周囲の人に言われ(それと様子がおかしいから)、軍に戻ってみると軍の解散という急転回になっており、主人公は夫人の口利きによって既に軍を離れても暮らしていけるよう段取りされていたというあんばいです。

二人の別れのシーンも、名残を惜しんでもったいつけているようでありながら、描写が甘い感じがします。十数年たち、主人公が夫人を訪ねていき、逢わずに守衛に言づてだけして立ち去り、その数日後夫人も家を出たまま行方不明になってしまうという結末です。これは暗に二人で駆け落ちでもしたかのような余韻を残していますが、それはよいとして妻を寝取られた上司、また主人公の奥さんなどがちょこっとは登場しているのですが、全くきちんと描かれていない、極論すれば、ほとんど二人芝居のような作品です。

〔管理人による補足〕

投稿者 rockfield : 20:17 | コメント (0)

2006年08月22日

雲上的少女

雲上的少女』読了。

何でも中国では、バレンタインデーにこの本をプレゼントするのが大流行したとか。わかる気もします。高校生の甘酸っぱい恋愛模様(恋愛とも言えないレベル?)を描いた青春小説です。

読了しての感想は「中国も変わったなあ」です。感想というか第一印象と言うべきかもしれません。もちろん、そこそこ恵まれた環境の、北京の若者の話であって、これがすべて中国の今どきの高校生のこと、とは断定できません。むしろ、中国の地方(田舎?農村?)の同じ歳の若者からすれば「いったいどこの国の話なの?」と言えるくらい別世界のことでしょう。

ただ、そうは言ってもこういう世界が、現在の中国の一方にあることは事実なわけで、いずれは地方にも、時間が多少かかったとしても広がっていくのだろうと思います。

主人公は学校帰りに、時には学校をサボって、町をぶらぶら歩き、ハーゲンダッツのアイスクリームを食べ、映画館でハリウッド映画や日本映画を見、ウォークマンで西洋の音楽を聴き、イタリアレストランで夕食を食べるという、まったくあたしたち日本人と変わらないライフスタイルです。時々出てくる地名とかを除けば、この小説の舞台が中国であるなんて思えないほどのストーリーです。

半ばくらいまでは、主人公はバカで直情的で本当に困りものの女の子です。だからリアルであり、作品を生き生きとしたモノにしているわけですけど、後半はなんか人物造形や主人公の生活描写などに精彩がかける気がするのは気のせいでしょうか?

〔管理人による補足〕

投稿者 rockfield : 08:04 | コメント (0)

2006年08月04日

女帝-わが名は則天武后

女帝-わが名は則天武后』読了。

著者は中国人ですけど、フランス在住で、この本もフランス語で書かれたみたいですね。けっこう本屋の店頭でも積まれているので、目にした方も多いと思いますが……。

さて、内容は則天武后の一代記です。物語は則天武后の一人称で進行していきますので、彼女が何を思い何を考えていたのかがわかる(?)という趣向なんですが、あくまでフィクションですからねえ。

則天武后というと、中国史上唯一の女帝であり、また自身が帝位に上った後の若い取り巻きとのスキャンダラスな醜聞が思い浮かびますが、この本ではあまり政治家・則天武后という面は強調されていません。

確かに、当時の女性としては相当利発で、夫・高宗を助けている場面は描かれますが、そこらの男性政治家よりもよっぽど有能であった辣腕政治家という描かれた方はしていません。

またもう一方のスキャンダラスな一面も特に強く打ち出されているわけではありません。つまるところ、実際の則天武后ってのはこんな感じだったんだよ、というのを見せられているような……。

天下の唐王朝を乗っ取って、当時の女性としては異例とも思える長寿を全うし、なおかつ自身が皇帝になり、その人の能力を見て有能な人材を抜擢した則天武后の波瀾万丈な人生が、あまり変化のない淡々とした人生に描かれているような感じがします。

たぶん、中国史を専門としていない多くの人には、悪女と思われていた則天武后のイメージがかなり変わる作品だと思います。

〔管理人による補足〕

投稿者 rockfield : 22:21 | コメント (0)

2006年06月18日

マオ

マオ―誰も知らなかった毛沢東(上)』『マオ―誰も知らなかった毛沢東(下)』読了。

この手の本にしては文字が大きかったので、それは一般には読みやすいと言えるのでしょうが、あたし的にはむしろ読みづらさを感じました。

さて、「誰も知らなかった」と言われれば、確かに細かな事実の一つ一つは知らなかったことだらけで、衝撃だらけの本でした。

ただ、中国史を学んでいる身にとって、ここに書かれているような毛沢東の実像というのは、それほど驚くようなことか(?)と言われれば、なんか予想の範囲内、という気がしてしまうのは、根っからのひねくれ者だからでしょうか?

ただ、歴史学においては(本書は決して学術書ではありませんが…)、一見すると常識と思われているようなことも、丹念に調べ上げるといった地味な作業を欠くことはできませんし、そういう作業を経て初めて事実であると言えるわけですから、本書の功績はすばらしいと言えます。

読んでみて、毛沢東については、ああ、こういう人だよな、と驚きもせずに読めてしまう反面、むしろ意外だったのは周恩来が、あまりにも情けない人であったということです。それこそ彼一流の演技に騙されていたってことなんでしょうけど、本書を読むと周恩来があまりにも情けなく、なおかつずるい人物に思えます。

そして、周恩来に限らず、毛沢東を取り巻く人々の多くが、毛沢東の過ちに気づきながらも、何故彼の暴走を止められなかったのか、そういった疑問がわき起こってきます。本書では、類稀れな毛沢東の狡猾さには筆を割いていますが、このあたりの事情については今ひとつ納得できる説明が欠けているのではないでしょうか。

毛沢東を止められなかったのか、それとも国際情勢や国内情勢、様々な複合的な要因を斟酌すると、あえて「止めなかったのか」とも思えてきます。

〔管理人による補足〕

投稿者 rockfield : 09:09 | コメント (0)

2005年06月08日

真実

『真実―日中、二つの国の天と地』読了。

日本留学中の父と日本生まれの華僑の子である母の間に生まれた主人公=著者が、日本人の夫と結婚の約束をし、日本に渡るまでの半世紀。共産中国の成立によって希望にあふれた祖国へ帰った両親は、当初はその理想のままに過ごしていたが、文革によって日本との関係が問題視され、さまざまな試練が一家にふりかかる……というこの時期を生きた中国人の作品に共通してみられるパターンです。

ただ、いくつかこういった作品(小説・ドキュメントを含め)を読んだ経験からすると、著者の体験・半生は、決してどん底という感じはしません。確かに本人にしてみれば大変な苦労をし、いわれのないトラブルに巻き込まれ、まさに時代に翻弄されたと言えるのでしょうが、文革体験記などではもっと悲惨な経験が語られています。家族が死んだり(殺されたり)、自分自身も体が藤生になったり精神に異常を来したり。そういった体験記に比べると、著者の一課はまだ幸せな方だったのではないかと感じてしまいます。

ただ、上述の文革体験記の類が、あまりにも非人間的な歴史を強調するあまり、あまりにも現実味に乏しいものになってしまうのに対し、本書で語られる文革の悲劇は、静かに淡々と、それだけにじわじわと知らぬ間に我が身に災難が降りかかってくるので、かえってリアルに文革期の庶民の様子がわかる気がします。否、文革だけでなく、振幅の激しい新中国の歴史が現実的に体験できます。

もちろん、著者が北京・上海といった政治の揺れの影響が大きな都市に暮らしていなかったというのも、その他の文革体験記と異なる印象を与える原因なのかもしれません。

日中間の雲行きが怪しい昨今、本書に描かれるような庶民レベルでの日本人・中国人の交流がくだらない政治家の言動によって壊されないことを祈るばかりです。

〔管理人による補足〕

投稿者 rockfield : 10:58 | コメント (0)

2004年11月30日

沙門空海唐の国にて鬼と宴す

夢枕獏氏の『沙門空海……』(全4巻)を読みました。

分厚い4冊本ではありますが、改行の多い文体のため、見た目ほどの分量ではないですね。(この改行の多い文体、慣れるのにちょっと時間がかかりました。)

それに中国モノは好きなので(笑)。

感想は、まあ面白いかな、でも空海をあまりにもヒーローにしすぎじゃないの? と思ってしまいます。書道界ではそれなりに名の知れた橘逸勢も空海の前ではただの狂言回しでしかないし。

楊貴妃を巡るロマンス、というには物足りないし、もちろん沙門空海にはその手の展開は期待できません。逸勢で、もう少し膨らませることも出来たのではないか、あまりにもすべてのことが空海に集約しすぎている、と思ってしまうのは、私だけでしょうか。小説の主人公(ヒーロー)なんて、どれもこんなものなのでしょうかね。

〔管理人による補足〕

投稿者 rockfield : 11:01 | コメント (0)