全訳ではないのですね? そりゃそうか!

ちくま学芸文庫から『資治通鑑』が出ます。いや、もう出ているのかしら?

で、『資治通鑑』の邦訳というのは、たぶん手軽なものでは、かつて平凡社の『中国古典文学大系』全60巻の第14巻に入っていたものくらいしかなかったと思いますが、函入りの全集の一冊ですから、さすがに手軽とは言えませんね。ですので、こうして文庫のような形で読めるようになるのは嬉しいことです。

が、オリジナルの『資治通鑑』はそれなりの大著です。ご覧のように中華書局版『資治通鑑』を架蔵していますが、全部で20冊になります。筑摩の学芸文庫と言えば、『三国志』をはじめ、これまでもしっかり全訳の中国古典を出していますので、今回も日本語版で10冊くらいになるのかなと思ったところ、なんと一冊こっきりです。その辺はちくま学芸文庫版も心得ていて、ウェブサイトの紹介には

全二九四巻にもおよぶ膨大な歴史書『資治通鑑』のなかから、侯景の乱、安禄山の乱など名シーンを精選。破滅と欲望の交錯するドラマを流麗な訳文で。

と書いてあります。ちょっと残念な気もしますが、コンパクトに一冊でエッセンスを読めるようにした方が今の時代には合っているのかも知れませんね。

ちなみに、左の写真のように、わが家には『通鑑紀事本末』や王夫之『讀通鑑論』なども架蔵しておりました。我ながら、学生時代によく集めたものだと思います。残念ながら『国譯資治通鑑』は架蔵していませんが、上述の『中国古典文学大系』は全60巻を所持しています。

なお『資治通鑑』は「しじつがん」と読むのは改めて断わらなくともよいでしょうか? 「しじ」の方はまだわかりますが、なんで「つうかん」ではなく「つがん」なんでしょうね? そう言えば、中国古典には『通典』という書籍もありますが、これも「つうてん」ではなく「つてん」と読みますね。

友好とは単純なことではありませんね

東京国立博物館で開催中の「顔真卿展」に関して、台湾新聞にこんな記事が載っていました。

左側は、開幕セレモニーの様子を伝えるもので、台湾故宮博物院から貸し出された宝物のことにも触れつつ、極めて友好ムード漂う記事になっています。

その一方で右側の記事は、大陸、台湾双方から国宝の貸し出しに対して疑義が呈されていると伝えています。このあたり、文物の海外、館外貸し出しについてはそれぞれの博物館や政府で法令が作られていて、それに則っているのだと思います。しかし、そこに政治的な思惑、外向的な駆け引きも絡むことが多々あるのも予想されます。

逆の立場で考えてみた場合、東京国立博物館が所蔵している伝世の名宝があったとします。それこそ常設展はおろか特別展で陳列されることもほぼないような逸品が海外の博物館に貸し出されたとしたらどう思うでしょうか?

外国人に見せる前に自分のところの国民に見せろ、と思うのは当然のことだと思います。日本人としては「よくぞ請来してくれた」と喜びたいところですが、一筋縄ではいかない問題なのでしょうね。

しかし、そんなことよりも、せっかくそんな紆余曲折がありながらも日本に来ているのですから、顔真卿展、早いとこ見に行かないとなりませんね!

2019年2月7日 | カテゴリー : 罔殆庵博客 | 投稿者 : 染井吉野 ナンシー

ちょっとしたテキスト代わりになりそう?

中国奇想小説集 古今異界万華鏡』読了。

中国の志怪小説や伝奇小説を翻訳・翻案して紹介するアンソロジーはいくつかありましたが、本書もその中の一つです。

ただ、中国のその手の小説の流れ、幅広さを体系的に紹介しようとしているところに本書の特色があり、本書を読み通せば、編訳者の意図したところは十二分に伝わるのではないでしょうか?

特に作品の後に付された解説は、長すぎず短すぎず、たぶん作品だけを楽しく読めばよいようなアンソロジーであれば不要と言えるかもしれませんが、あたしからすればむしろここが真骨頂、中国文学専門ではない人がそれでもちょっとした知識は得たいなあと思った時に重宝すると思います。

また装丁もきれいなのですが、各作品の扉もデザインがきれいです。編訳者や担当編集者のこだわりでしょうが、視覚的にも愉しめました。

2019年1月6日 | カテゴリー : 罔殆庵博客 | 投稿者 : 染井吉野 ナンシー

ちょうどよいタイミングで!

今朝の朝日新聞で、ちょっとした中国特集の記事がありました。

習近平政権の経済政策を現時点でまとめたような内容ですが、一番左の記事に出てくる「雄安新区」について、ちょうど読んでいた『さいはての中国』に出ていたので驚いてしまいました。なんというタイミングでしょう。

中国としては習近平肝いりで何としても成功させたいプロジェクトのようですが、過去の例を見ますと中国北方では経済特区は成功しないようなので、先行きが興味深いものです。

2018年12月18日 | カテゴリー : 罔殆庵博客 | 投稿者 : 染井吉野 ナンシー

坐忘を思い出す

先日の、高橋源一郎さんと辻信一さんのトークイベント。

その中で「unlearn」という言葉が出て来ました。

ちょっとネットを検索してみると、「unlearn」という考え方、実践がそれなりに浸透しているようです。だるからこそ、トークの中でお二人が言及されたと思うのです。

で、その「unlearn」って何かということになると、一言では説明しにくい感じなのですが、トークを聞いていて思ったのは、中国古典に出てくる「坐忘」と同じなのではないか、同じとは言わないまでもかなり近いものではないか、という気がしました。『荘子』に出てくる、孔子と顔回とのエピソードです。

「unlearn」と「坐忘」を絡めて論じているものは寡聞にして知りませんが、非常に通じるものがあると感じるのはあたしだけでしょうか?

2018年11月29日 | カテゴリー : 罔殆庵博客 | 投稿者 : 染井吉野 ナンシー

知らないことが多すぎる

この記事の閲覧にはパスワードが必要です。閲覧希望の方は「ナンシーへの伝言」からどうぞ。
ただしお会いしたことのない方、存じ上げない方は、お断わりいたしますのでご了承ください。



2018年10月7日 | カテゴリー : 罔殆庵博客 | 投稿者 : 染井吉野 ナンシー

あたしの場合は韓非子だった

昨日試写会を見に行った『ライ麦畑で出会ったら』ですが、つまりは悶々とした学生時代に『ライ麦畑でつかまえて』を読んで大感激した主人公の話なわけです。恐らく、アメリカだけでも同じような青春時代を送った少年少女は数え切れないほどいるのでしょう。そして翻訳された各国でも。

別に『ライ麦』でなくとも、青春時代に出会って、人生観が変わったと言ったら言いすぎかも知れませんが、その当時の心境としてはそれくらいの衝撃を受けた本というのは、多くの人にあるのではないでしょうか?

あたしの場合、それは中国古典の『韓非子』でした。

あたしも、どちらかと言えば嫌われ者といった存在で、親しい友達もいなくて、孤独な学生時代でした。時代が異なるので昨今のような陰湿なイジメこそ受けていませんが、それなりにツラい時もありました。

そんなときに出会ったのが『韓非子』です。他人を信じてはいけない、他人は絶対に裏切るから裏切られないように注意しないといけないといった徹底的なリアリストぶりに震えました。感動なんていう言葉で言い表わせないほどの衝撃でした。

それ以来、『韓非子』はあたしのバイブルです。『韓非子』に出会ったのが高校の頃で、その影響で大学は中国哲学を専攻したくらいですから。

2018年9月26日 | カテゴリー : 罔殆庵博客 | 投稿者 : 染井吉野 ナンシー

上に政策あれば下に対策あり、下に対策あれば……

朝日新聞の社説にウイグル問題が……

このところウイグルの状況はあまりニュースで取り上げられることが少なかったので気にしていませんでしたが、相変わらず中国政府による弾圧、圧力は続いているようですね。社説の中にあるように、そもそも自由に取材をさせないというのでは検証のしようもなく、だからいくら中国政府が言い張ってもそこに説得力や裏付けを見出すことができません。

今日の朝日新聞には、これ以外にも香港まで延伸された高速鉄道の駅などで中国の法律が適用されることになり、一国二制度が骨抜きにされるという懸念を伝える記事もありました。

ただ単純に中国大陸へ旅行や仕事で出かける人の大多数にとっては、もともと当局に怪しまれるところはないのですから法律の法律だろうと香港の法律だろうと関係なのでしょう。だから、所要時間が短くなる今回の開通は両手を挙げて大歓迎なのだと思います。そんな風にジワジワと庶民を取り込んでいく中国政府のやり方は汚いとも思います。

民主派が抵抗しても、そんなことは織り込み済みで次の手を打ってくるのが最近の中国当局です。

更には、ローマ法王が中国にすり寄っているのではないか、といった記事もありました。これにはバチカン内外でかなりの反発や批判が起こっているようですが、記事を読む限り法王自身は関係修復に向けて一直線のようです。

これも中国大陸にいる信者を人質に取られているようなもので、結局は中国政府のやり方が巧いと言えるのだと思います。

この数年、否、十数年、中国政府は国際社会に対し非常に傲岸不遜になってきていると感じます。これまでの国際ルールを無視し、自分たちの好きなように振る舞って、最後は巨大市場と人口圧力にものを言わせて言うことを聞かせる、という戦略に見えます。欧米先進国も中国の巨大市場から閉め出されては大変と中国政府の顔色をうかがい機嫌を損ねないような対応に終始していると感じます。アメリカもまずは自国の利益、商売のことしか眼中にないトランプが大統領ですから推して知るべしです。

かつて中国が日本の国交を回復するにあたって、時の首脳であった毛沢東と周恩来は、悪いのは戦争を起こした日本の一部政治家や軍人であって、塗炭の苦しみをなめた日本国民は中国人と同じ被害者なのだというロジックで国民を納得させました。そのお陰なのか、「日本人は好きだけど日本政府は嫌い」という中国人は多いようです。

現在は日本でも、中国人は好きだけど中国政府は嫌い、という日本人が増えているのではないでしょうか? これだけ旅行者が増えている昨今、庶民レベルではお互いの国を訪問して親切にされたり楽しく嬉しい体験をした人も多いでしょう。が、こういったニュースになると途端に嫌悪を催させるようなことばかり……

2018年9月24日 | カテゴリー : 罔殆庵博客 | 投稿者 : 染井吉野 ナンシー

あっという間の栄枯盛衰?

今朝の朝日新聞です。

中国のシェア自転車については、少し前に『中国新興企業の正体』でその隆盛ぶりを読んだばかりでした。

同書には、シェア自転車以外にもいくつかの中国発の新ビジネスモデルが紹介されていて、いずれも近い将来日本に上陸し、2本のマーケットを席巻するのではないかという勢いで描かれていました。

しかし、今日の朝日新聞を見ると必ずしもうまく行っているわけではないのですね。それも、いかにも中国らしいつまずき方だと思います。恐らく、同書で紹介された他のビジネスでも似たような事態は起こりうるでしょうし、実際に既に起こっているのではないでしょうか?

2018年9月18日 | カテゴリー : 罔殆庵博客 | 投稿者 : 染井吉野 ナンシー