せっかくゴリオ爺さんを読むなら対訳で、音声を聴きながら!

朝日新聞の読書欄で桜庭一樹さんがバルザックの『ゴリオ爺さん』を紹介していますね。

 

書影として挙がっているのは光文社の古典新訳文庫ですが、これ以外ですと集英社のポケットマスターピースの『バルザック/a>』か新潮文庫『ゴリオ爺さん』ですかね? 岩波文庫版は現在品切れでしょうか?

 

もちろん、この記事を読んで翻訳に挑戦するのは王道ですし正しい選択ですが、「いきなり全部読むのはちょっと……」という人も多いのではないでしょうか? そんな方にお薦めなのがこちら、『対訳 フランス語で読む「ゴリオ爺さん」』です。

本書は全訳ではありません。

『ゴリオ爺さん』を原文の抜粋で読んでいきます。バルザックの作品は難解で手強いイメージがありますが、一文ごとに深い意味が込められており、そうしたニュアンスを読み解いていくことこそ、フランス語学習者の特権です。見開きで、原文、注、訳文、「読解のポイント」が読みやすくレイアウトされており、ミカエル・フェリエ氏のすばらしい朗読で、音声でもお楽しみいただけます。主人公ラスティニャックと共に、19世紀パリの人々の息づかいを感じてください。

とウェブページの内容説明にあるように、『ゴリオ爺さん』のエッセンス、つまりは「いいとこ取り」です。まずはこんなのから如何でしょうか? 付属のCDで原文の音声も聴けるわけですから、なおさらお得ではないでしょうか?

さらに、バルザックの作品に興味を持たれた方には『バルザックと19世紀パリの食卓』というのもあります。

バルザックが活躍した19世紀前半は、パリが美食の中心となっていった時代。大食漢で知られるバルザックの小説の食の場面を通して、当時の社会・風俗をよみとく。

対訳本の編著者による一冊です。

キーワードは「巻き込み力」?

昨日は午後から、日比谷図書館で〈書物復権の会〉のイベントでした。毎年夏前に共同で人文を中心とした専門書の復刊を行ない、秋の東京国際ブックフェアで新企画説明会などを行なってきましたが、今年はそのブックフェアが中止となったので、今回のように場所を借りてシンポジウムを行なったという次第。

ちなみに、会に参加しているのは次の10社です。

岩波書店、紀伊國屋書店、勁草書房、青土社、東京大学出版会、白水社、法政大学出版局、みすず書房、未來社、吉川弘文館

特に専用のウェブサイトはというのはなく、各社がそれぞれ自社のウェブサイト内に特設コーナーを作って宣伝している感じです。とりあえず、今回のシンポジウムのリンクは東京大学出版会のサイトを貼っておきました。

昨日のシンポジウムのテーマは「知と人をつなぐ架け橋 変化する図書館と<出版>」で、千代田区立千代田図書館の河合郁子さん、武庫川女子大学附属図書館の川崎安子さんの基調講演、その後、みすず書房の持ち谷さんを加えてのパネルディスカッションという流れでした。

テーマの通りと言ってはなんですが、両図書館とも時代のニーズを捉え、さまざまな取り組みをやっているのがとても印象的でした。取り組み自体は、目から鱗というほど斬新なものではありません。が、それを確実に前へ進め成果を上げていくということは、それほど簡単なことではないと思われます。それを粘り強く続けてこられたお二人、そして両図書館はすごいと感じました。

千代田図書館は、その立地条件や過去の資産を活かした企画を精力的に行なっているようです。話の中心にもなった内務省委託本は研究者ならずとも非常に興味深いコレクションです。これらの研究者を巻き込んで、研究会を立ち上げ、成果を公開し、という一見極めてオーソドックスな取り組みですが、ここまで仕上げてくるのは相当な努力とエネルギーを注がないとできるものではないでしょう。

もう一つの、古書販売目録は、いかにも千代田図書館だなというコレクションです。古書販売目録なんてどういう利用価値があるの、という意見もあるかもしれませんが、過去の販売目録にはその後行方がわからなくなった(誰が落札したのか不明など)貴重な古美術品が含まれていることがあります。今となっては、目録に載っている写真だけが唯一の公開されている画像というものも少なくありません。こちらもやはり多くの研究者を巻き込んで成果を上げてきたようです。

その他、地元千代田区の出版社と組んだ企画展示も来館者の興味を惹いているようで、現在は「書評紙が選ぶ、今すぐ読みたいベスト16」を開催中だそうです。

武庫川女子大学は、日本一の規模を誇る女子大だそうです、知りませんでした。その図書館では大学の方針で、最近電子図書館を立ち上げたところだそうです。女子大という特性を踏まえつつも、教職員のみならず卒業生や作家も巻き込んで、コーナーを作ったり、企画を立ち上げたりして来館者、そして貸し出し数をこの数年グングン上げているそうです。

大学生は本を読まない、と言われているようですが、アプローチ次第では関心を持ってくれるようです。放っておいても本を読む子はよしとして、そうでない学生にどう本を読ませるか? やはり単行本よりは文庫本のようなのが残念ですが、それでも読まないよりは遙かにマシです。学術書は、先生が授業の時にどれくらい熱心に勧めるかが貸出率に大きく影響するようです。これは教科書の購入についても言えますね。

と、こんな話を聞き、パネルディスカッションで更に掘り下げ、更に打ち上げでもざっくばらんに話し込んだのですが、最終的に思うことはどれだけ周囲の人を巻き込めるか、ということなのではないか、そんな気がしました。