文庫化されました

西加奈子さんも『』の中で引用していた『テヘランでロリータを読む』が「河出文庫」の一冊となって刊行されました。

自社の単行本が他社の文庫に生まれ変わるというのは、その作品が愛されているという証拠でもありますが、どうして自社で文庫化できなかったのかと忸怩たるものがあります。

それにしても、この河出文庫の装丁は如何でしょう? あたしは最初、どうしてマトリョーシカ人形なのだろう思ってしまいました。見えませんか?

もちろん単行本の装丁への敬意が感じられる装丁ですが、かなり印象が異なりますね。より身近な作品に感じられるのではないでしょうか?

そしてもうひと作品。

このところ新刊の刊行も相継いでいる台湾の作家、呉明益の『歩道橋の魔術師』が、同じく「河出文庫」となって刊行されました。

こちらも、あたしの勤務先のベスト&ロングセラー商品ですので、文庫になり更に売り上げを伸ばすことは間違いないでしょう。

装丁は、どちらも小説の舞台となった、かつて台北駅前にあった中華商場です。単行本では当時の写真を使っていますが、文庫の方はイラストに代わっています。このイラストは著者、呉明益さんの手になるものです。

このように他社から文庫が出るのは、なんとも言えない気分です。娘を嫁に出す父親の気持ちに近いのでしょうか? あたし結婚していませんし娘もいませんから、全く想像の域を出ませんが……

新書らしいか否かはともかく……

先日、講談社現代新書の『遊廓と日本人』について、内容や分量があたしの考える新書らしい新書だと書きました。

その発言(記述?)と矛盾するのかしないのか、あたしにもよくわかりませんが、最近読んで面白かったと言いますか、非常に勉強になった新書を一冊ご紹介します。

それは、岩波新書の『ユーゴスラヴィア現代史 新版』です。

「新版」と付くくらいですから、旧版と言いますか、元版というものがあったわけですが、不勉強にしてあたしはそちらを読んでいません。たぶん、かつてのあたしはそこまでバルカン半島に興味を持っていなかったでしょう。

「ヨーロッパの火薬庫」という呼び名は、世界史でも習うので学生のころから知っていましたが、なぜ火薬庫なのか、どういう紛争が絶えず起こってきたのか、まるで知らずに「火薬庫」の名称だけを知っていたわけです。

その後、ユーゴスラビアという国の解体、聞いたことがあるような、ないような国の名前をニュースで知るにつけ、一体全体どうなっているのか、という疑問が頭の片隅に残っていました。

たぶん、ソ連が解体してロシアをはじめとしたいくつかの国ができたことが個人的にもきっかけになっているのでしょう。当時は、勤務先の仕事でヨーロッパ各国の地図をパソコンで描くことが多く、学生時代に存在した国がなくなっていたりして、多少の混乱を感じていたことも影響していると思います。

そんなこんなで悶々としていた時に知ったのが本書です。一回読んだだけでユーゴの歴史を知ったつもりにはなりませんが、セルビアやクロアチア、コソボやマケドニアなど、名称とどのあたりにある国なのかだけは知っていたような国々の興亡が非常にわかりやすくまとめられていました。こんな本を待っていたと思いました。

岩波新書の編集部の方、次はこんな調子でチェコの現代史の新書をお願いします。