わが家の「中国の歴史」たち

岩浪書店から新書の新シリーズ「中国の歴史」が刊行されました。

まずは第一巻『中華の成立』が発売になりましたので早速入手しました。最新の研究成果を取り入れた、新しい中国通史になるのでしょう。期待大です。

全五巻予定で、今後は『江南の発展』『草原の制覇』『陸海の交錯』『「中国」の形成』と続くようです。今回の第一巻で唐代までを描き、それ以降を四巻で詳述するわけですね。中国史というと、どうしても戦国秦漢や三国志、世界帝国・唐王朝といったイメージが先行しがちですので、むしろそれ以降に重きを置いた中国通史はとても楽しみです。

ところで、こういった中国史、もちろん学術書もありますが、一般向けの書籍もこれまで多数刊行されています。わが家の書架を探してみましたら、こんなのが出て来ました。

まずは、同じ岩波新書の『中国の歴史』(全三巻、貝塚茂樹著)です。昨今の中国史専攻の学生さんですと貝塚茂樹の名をどれくらいご存じなのでしょうか? 学界では有名な四兄弟ですが……

続きましては、岩波文庫です。

那珂通世『支那通史』(全三巻)です。「支那」なんていう、今だったら出版社が自主規制しそうなタイトルですが、著者の時代にはこれが当たり前、中国のことをごくごく普通に「支那」と読んでいた時代の著作です。

わが家に架蔵しているのは古書肆で手に入れたものではなく、帯を見ればおわかりのように、復刊されたときに買い求めたものです。岩波文庫や岩波新書は時々こうしてかつての名著を復刊してくれることがあるのでありがたいです。

続いては、再び新書に戻って講談社現代新書です。

同新書で「新書東洋史」というシリーズが刊行されていました。ラインナップを見ればおわかりのように、メインは中国史で全10巻の半分を占めています。

ただ、中国史だけでなくインドや東アジアなどアジア全体を扱った通史としてかなり先駆的なシリーズであったと思います。岩波新書が中国史を新たにスタートしたわけですから、現代新書もアジア史の新しいものを出してくれませんかね?

そして文庫に戻って中公文庫です。

「中国文明の歴史」というタイトルが他との違いを出そうという表われなのでしょう。全12巻です。もともとは新人物往来社から刊行されていたものを改題して中公文庫化したものです。

続いては講談社の函入り上製本「中国の歴史」です。

これは全巻セットで神保町の古書肆で手に入れました。どこかの図書室の廃棄本だったようで、奥付のところに蔵書印が捺されていました。ただし状態はよく、月報もついたもので、この状態から予想するに当該図書室では誰一人借りた人がいなかったのではないかと思われます。

上掲の「中国の歴史」にもそれなりに図版は入っていますが、判型を大きくし、カラーでさまざまな図版(写真や図表)をメインで編集しているのが、こちらの「図説中国の歴史」です。同じく講談社からの刊行です。

出版のくわしい状況などは知りませんが、この講談社の二つのシリーズは同時に企画されたのでしょうかね? 前者が文字を中心とした教科書、後者がその資料図版集という風に見えてしまいます。たぶん、講談社としてもそんな位置づけだったのではないかと思いますが、どうなのでしょう。ちなみに、こちらも同じく神保町の古書肆で購入しました。

以上が日本国内で観光された「中国の歴史」ですが、以下に本場・中国で出されたものをご紹介。

まずは「二十五史」です。あたしが学生時代は「二十四史」と言われていましたが、そこへようやく「清史稿」が刊行され、それを加えて「二十五史」という呼称が浸透し始めました。このシリーズもいち早く「二十五史」を名乗っています。

底本は確か「武英殿本」だったはずです。四庫全書で有名な、北京故宮の中にある武英殿です。ですので、このシリーズの本文は、武英殿本をそのままリプリントしたもの、いわゆる影印本になります。

最後にご紹介するのは中国史を学ぶ者が必ずお世話になる中華書局の二十四史、いわゆる「評点本二十四史」あるいは「点校本二十四史」です。

こちらは現在の活字で組んであり、固有名詞には傍線、作品名には破線が付いていて、句読点も施された、学生にも非常に読みやすいものになっています。一応わが家の書架には『史記』から『清史稿』までの二十四史ならぬ二十五史が揃っています。いくつかは人名作品などもありますが、こういう書籍たち、あたしが死んだらどうしたらよいのでしょうね?

2019年11月23日 | カテゴリー : 罔殆庵博客 | 投稿者 : 染井吉野 ナンシー

やはり架蔵していました!

東方書店の新刊案内でこんな本を見つけました。

侯景の乱始末記』です。

あれ、この本、どこかで見たことあるぞ? と思い、わが家の書架を探してみましたら、中公新書を並べてある一角にありました。

ずいぶん古い中公新書です。たぶん新刊ではなく古本屋で買ったものです。

この写真でおわかりいただけるでしょうか? 昔の中公新書はビニールがかかっていたのです。それも、ツルツルというよりは少しザラザラしたタイプのビニールカバーです。この手のタイプの中公新書、わが家の書架にも何冊か架蔵されています。すべて古本屋で買ったものです。

話は最初に戻って、こんどの『侯景の乱始末記』は志学社という版元から刊行されるようです。注文書を見ますと、やはり中公新書版の復刊であることが書かれています。

今後もこの手の復刊が続くのでしょか? だとしたらとても嬉しいことですが。

2019年11月22日 | カテゴリー : 罔殆庵博客 | 投稿者 : 染井吉野 ナンシー

インバウンドは大阪に学べ?

こんな章題のついた本を読んでいました。

このフレーズを見て、日中共に最近の若い人はピンと来ないのかも知れませんが、一定年齢以上の人、あるいは中国の現代史に関心をお持ちの方であれば「農業は大寨に学べ」という共産主義華やかなりしころのスローガンを思い出すのではないでしょうか? 恐らく著者もそれを意識して章のタイトルとして採用したと思うのですが、果たしてどれだけ通じているのか……

で、インバウンド、つまり日本にやってくる中国人をもっと取り込みたいと考えるのであれば、そのヒントは大阪にあるということです。しかし、大阪の人がどれくらいこの本を読んでいるのでしょうか?

で、何の本かと言いますと、『中国「草食セレブ」はなぜ日本が好きか』です。

上に揚げた第5章だけを読むと大阪にどれだけ商機が転がっているかというヒントにあふれていますが、それ以外の章は、80年代以降生まれの中国人が、それ以前の中国人とどれほど異なるかということが書かれています。特に、95年以降に生まれた人は、特に違うようで、むしろ日本人などに近い考え方を持っているようです。

となると、付き合い方とか商売の仕方なども変えていかないとならないですよね。しかし、広い中国、いくらインターネットの発達で地域差が少なくなったとはいえ、やはり本書に描かれているのは都会とか、それなりの都市に住む若者のことなんだろうと思います。

2019年10月1日 | カテゴリー : 罔殆庵博客 | 投稿者 : 染井吉野 ナンシー

撮り放題とはいえ

華の金曜日という言葉ももう死語でしょうか?

それはともかく、昨夕、書店回りの後、やって来たのがこちら、トーハク、東京国立博物館です。

相変わらず観光客が多い本館前ですが、皆さん熱心に写真を撮っていますね。でも、トーハクって確かに本館も堂々として立派な建物だと思いますが、シンボルはその前に立つユリノキではないでしょうか? せっかくならば、ユリノキと本館を一緒に写真に収めた方がよいのではないかと思うのですが……

閑話休題。

なんで東京国立は靴館に来たかと言いますと、こちら、現在開催中の三国志展を見るためです。

もっと混んでいるかなと予想していましたけど、それほどの混雑ではありませんでした。もちろんガラガラというほどではなかく、会場内にはそれなりの人は来ていました。

そして、こちら。

同展のポスタービジュアルにも使われていた関羽像です。

えっ、写真撮ってもよいのかって?

はい、今回の展覧会、フラッシュを焚かなければ展示品の撮影はOKでした。もちろん、一部撮影不可のものもあるようですが、だいたいのものはOKでした。

なので、あたしもミーハー気分で撮ってみました。

が、関羽って美髯公と呼ばれる人物ですが、この髭、ちょっと貧弱ではないでしょうか? どうしても横山光輝のマンガ「三国志」に出てくる関羽のイメージが強いのか、もっとすごい髭をイメージしがちです(汗)。

参観者の中には、ほぼすべての展示品を撮っている方もいましたが、写真に撮る暇があればもっと展示品を肉眼でしっかり見るべきではないかと、あたしなどは思いますが余計なお世話ですね。でも、見ていると、展示品を見ることよりも写真を撮ることがメインであるかのような人もいたような……

そして、曹操の墓が様子が復元されていたコーナーに置いてあったこちら、展示品番号130の白磁。

ミステリーだそうです。しかし、美しい作品でした。

曹操の墓から出土したそうですが、さらなる調査が待たれます。後から誰かが埋めたなんてことないですよね。

そして、個人的に嬉しかったのはこちらの「熹平石経」です。

学生時代に名称だけは何度も見ていましたが、その現物です。

収蔵している博物館はいくつかありますが、こうして意識して見たのは恥ずかしながら初めてでした。

なので、石だけを拡大して撮影するのではなく、「熹平石経」という説明パネルも収まるように撮ってみました。この写真でわかりますでしょうか?

2019年7月13日 | カテゴリー : 罔殆庵博客 | 投稿者 : 染井吉野 ナンシー

名著だらけ(?)の岩波文庫

書店店頭で配布されていました。今年の岩波文庫フェアの小冊子です。

「名著・名作再発見!」とあります。

こうやって堂々と言い切れるのは、さすが、岩波文庫、という感じです。確かに、名著が綺羅星のごとく並んでいる、そんなイメージが岩波文庫にはあります。

あたしの専門とする中国学についても、いまでこそ品切れになってしまっているものがたくさんありますが、「えっ、こんなものまで岩波文庫で出ていたの?」と驚かされるようなものが、かつては数多くラインナップされていました。

そんな岩波文庫の名著の列に間違いなく並ぶであろう古典の一つが完結しました。『文選』です。

全6巻がこのほど完結したのですが、これは『文選』の「詩」の全訳です。文選と言えば「賦」も大きな柱ですから、訳者の方々には引き続きよろしくお願いします、とエールを送りたいところです。

欲を言わせていただくなら、『文心雕龍』なんかも岩波文庫で出して欲しいですね!

2019年6月20日 | カテゴリー : 罔殆庵博客 | 投稿者 : 染井吉野 ナンシー

ところで最近の若手作家は?

閻連科について書いたので思い出したのですが、最近の中国の若手作家の状況というのはどうなっているのでしょうか?

このところ中国作家の邦訳も刊行はされていますが、閻連科にせよ、残雪にせよ、もう中堅以上の存在です。少し前に出た李昂だってそれなりのお歳ですし、張愛玲に至っては戦前生まれの作家です。

若手の作家にはどういう人がいるのでしょうね? と考えると、郝景芳(ハオ・ジンファン)などは80年代生まれ、いわゆる八〇后の作家ですが、こういうSF作家が伸びてきているのでしょうか?

韓寒や郭敬明なども八〇后の作家だったと思いますが、最近も書きつづけているのでしょうか? 少なくとも日本では翻訳がまるで刊行されませんよね。大陸ではヒットを飛ばしているのでしょうか?

この手の作家が出て来た頃、ネット上などでも日本の作家の真似、亜流だと言われたり、日本のケータイ小説をパクっているなどと酷評されていたりもしましたが、そんなこともあって最近は下火になってしまったのでしょうか?

ちょっとそんなところの事情、知りたくなりました。

2019年6月9日 | カテゴリー : 罔殆庵博客 | 投稿者 : 染井吉野 ナンシー

この振り幅!

今日の書店営業回りはやや遠いところへ。

移動時間の友(供?)、カバンにしのばせていたのは『腐敗と格差の中国史』です。ただし、3分の2くらいまで読み進んでいました。今日は移動時間が長くなるのが予想されたので、もう一冊カバンに入れていたのが『キャッシュレス国家 「中国新経済」の光と影』です。

結局、移動の途中で前者を読み終わってしまい、後者も持っていてよかった、という結果になったのですが、同じ中国を扱った新書とはいえ、この両者を続けざまに読むと、果たしてこれが同じ国について書かれた本なのかと思うくらいです。

かたや二千年以上にわたって基本的な社会構造が変わっていないと解いたかと思いきや、一方は日本をはるかに追い越した近未来的な社会に至った現在の姿。本当に中国というのは、いろいろな意味で広い国だと思います。

2019年5月14日 | カテゴリー : 罔殆庵博客 | 投稿者 : 染井吉野 ナンシー

台湾と大陸の記事が背中合わせになっていた!

今朝の朝日新聞です。

いよいよ日本にオープンする、台湾の誠品書店に関する記事が載っていました。「いよいよ」と書きましたが、オープンは秋なのでまだずいぶんと先な気もしますが……

記事を読む限り、誠品書店というのは日本でも最近流行りの提案型セレクトショップのような書店だと思うのですが、ただ日本の場合は小規模なお店が多いのに対し、誠品書店は非常に大きな、それこそジュンク堂書店のような規模でそれをやっているところが特徴なのでしょうか? いずれにせよ、日本進出が吉と出るか凶と出るか、楽しみではあります。

そんな今朝の朝日新聞ですが、上掲の台湾の書店に関する記事が載っていたページをめくると、次のページに現われたのは大陸中国の話題。

習近平体制も曲がり角、剣が峰に立っているのですかね? 危なっかしいからますます強硬な姿勢が目立つようになってくるかもしれません。嫌中派の人なら習近平体制が倒れて中国の台頭がストップするのを歓迎するのでしょうが、お隣の大国の政情が不安になることは日本にとってよいことではないと思いますので、日本政府の対応が気になるところです。

とはいえ、いまの日本政府に本当に中国のことを理解できている人材がどれほどいるのか、中国のことより日本のことの方が不安を掻き立てられてしまいます。

2019年2月27日 | カテゴリー : 罔殆庵博客 | 投稿者 : 染井吉野 ナンシー

说曹操,曹操就到。

今朝の朝日新聞一面。

三国志の英雄、魏の曹操の墓から白磁が見つかったそうです。

白磁というと青磁とともに展覧会などで展示されているのを見たことがありますが、優れた作品は本当に美しいものです。

ただ、あたしも専門家ではないので詳しいこと、正確なことはわかりませんが、印象ではもう少し後の時代、と思っていました。それが三国時代の墓ですから、記事にもあるように数百年遡ってしまったそうです。

捏造なんてことはないですよね? 日本でも土器でそういう事件がありましたから。

2019年2月20日 | カテゴリー : 罔殆庵博客 | 投稿者 : 染井吉野 ナンシー

また一人改革派が逝く

朝、新聞を開いたら飛び込んできました。

毛沢東の元秘書・李鋭氏が亡くなったそうです。書棚を漁ってみましたら『中国民主改革派の主張 中国共産党私史』が出て来ました。岩波現代文庫からはもう一冊『無風の樹』というのも出ていますが、こちらは架蔵していませんでした。

毛沢東の周囲の人の回想録や手記などはいくつか出ていますが、改革派として最後まで筋を貫いた李鋭氏の死去は習近平の個人崇拝路線の現在、どういう意味を持つのでしょう? またこのニュース、中国国内ではどの程度の扱われ方なのでしょう?

2019年2月17日 | カテゴリー : 罔殆庵博客 | 投稿者 : 染井吉野 ナンシー