2006年12月 4日

中国人の宗教・道教とは何か

中国人の宗教・道教とは何か』読了。

中国というと儒教の国という印象がありますが、民間レベルでは実は道教がかなり根を張っている国です。もちろん知識人もかなり入れ込んでいます。そんな中国の隠れた宗教・道教の手軽な入門書です。

隠れた宗教などと書いたのは、これまで日本の中国学の偏りのためであり、最近は道教についてもかなりの研究成果が上がっています。本書はそういった研究成果の土台の上に立ち、もっと身近にコンパクトに道教というものを知ってもらうための本です。

ただ、前半の道教儀礼の部分は、やはりド素人には歯ごたえがあります。全くの初心の方なら、中ほど以降の道教の歴史から読み始めた方がよいかも知れません。もちろん、その前に中国史の全般的な知識というものを持っておいた方がよいですが......。

2006年11月28日

巷談 中国近代英傑列伝

巷談 中国近代英傑列伝』読了。


中国近代史の主人公たちを十数人取り上げた評伝集。各人物の評伝は数ページのコンパクトにまとめられているので、簡単に読み進めることができます。

ただ、あたしのような中国史の専門家や中国史好きにはよく知った人たちばかりかも知れませんが、一般の方には数名を除いてなじみのない人ばかりかも知れません。

でも、中国の近代史を語るには欠かせない人ばかりですので、これくらいは是非知っておいて欲しいと思います。

さて、本書の著者は陳舜臣さんです。例によって豊かな知識に裏打ちされた、偏りのない記述を見せてくれます。ただ、本書の場合「です・ます調」と 「た・ある調」がかなり錯綜しています。これがよいリズムで現われるのであれば問題ないのですが、本書の場合、読んでいてかなり違和感が感じられます。編 集者がもう少し手を入れてもよかったのでは、と思います。

2006年10月25日

中国・アジア・日本

中国・アジア・日本―大国化する「巨龍」は脅威か』読了。

印象としては、嫌中でも媚中でもなく、極めて中立的に日中関係を眺めている論調です。

最後にまとめて、これからの日中関係をどうするか、日本はどう振る舞うべきかを述べているので、その途中では「じゃあ、日本はどうすべきなのか、我々に何ができるのか?」といった思いを抱きながら読み進めないとなりません。

正直、それが非常にもどかしくもありました。しかし、最後に、この手の本の中ではずいぶんと具体的な処方箋を示してくれているので、根気よく最後まで投げ出さずに読むべきだと思います。

取り立てて、びっくりするような新事実だとか、裏の裏の探るようなエピソードが紹介されるわけではありませんが、だからこそ、地に足の着いた議論という感じがします。

2006年10月20日

日中2000年の不理解

日中2000年の不理解―異なる文化「基層」を探る』読了。


日本人は感性の国民であり、信念を持っていて何事にもその信念を基準として行動する中国人や欧米人(キリスト教徒)、イスラム教徒とは根本的に異なる、と いう指摘はこれまで専門家なども指摘していたような気もしますが、王敏さんは非常に身近な例をあげて説明してくれるので非常にわかりやすいです。

恐らく、王敏さん自身が、まだ確固とした論拠を自分なりに構築できていない(構築途中である)ので、われわれ読者と一緒に問題提起し考えていこうという姿勢があるからだと思います。

もちろん、このような議論を極端に進めてしまうと、だから日本時は世界の中で特殊であり他国とは理解し合えないんだという偏狭な議論に行き着いてしまいますが、そのことにもきちんと筆を伸ばしています。

ただ、一点、日本人は神社や寺院に熱心にお参りしていると述べていましたが、確かに表面的には毎年元旦の初詣など、日本人がかなり信心深く思われる ような現象もありますが、あれって、あたしには一種のレジャーであって、遊園地に行く、買い物に行くといったことと同じような乗りなのではないかと思うん です。

むしろ中国の寺院や道観などの方が、よっぽど熱心に祈りを捧げている中国人を見かけるような気がするんですけど...
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