こんなところに出版不況の現実を感じる?

前のダイアリーに書きましたが、昨夕は梓会の出版文化賞授賞式でした。時季的に新年会を兼ねた懇親会も行なわれますが、大勢の関係者が参加していました。

で、そんな会場を見ていると、失礼ながら、頭髪の薄い方がかなり多いのに驚きました。「こんなに多かったのか!」とちょっと驚きです。

前から見るとそうでもないのに、椅子に座っている状態を見ると、頭頂部が薄い方、ほとんどの髪のない方、かなり大勢いました。大勢どころか過半と言っても差し支えないほどでした。

出版不況で神経をすり減らし、そんな気苦労が髪の状態に表われているのでしょうか?

ちなみにあたしはふさふさです。多くて太くて硬い、極めて厄介な頭髪です。行きつけの美容院の方曰く、いまから薄くなり始めても、死ぬころにようやく人並みの髪の量になるかどうか、なんだそうです。

もう限界と言われ続けて既に幾年月、こんどこそ本当に限界なのでしょうか?

今朝の朝日新聞に載っていた記事。

この数年、いや、十数年、出版業界を巡る暗い話は飽きるほど出ましたが、多くは出版社や書店のレポートのような記事ばかり、この記事のように流通の現場、それも取次会社ではなく輸送を担っている会社の状況というのは、意外と知られてこなかったのではないか、と思います。

もちろん、出版に限らず、ネット販売隆盛の昨今、そのしわ寄せが運送業者に集中し、ヤマトの値上げとか、この業界に関してもいろいろとニュースは絶えません。出版の場合は、記事にもあるように、コンビニがネックになってしまっているのですね。

ただ、お弁当とか惣菜とか、コンビニ独自の配送網ってあると思うので、そこに雑誌や書籍を載せることはできないのでしょうか? ハードルが高そうですが、そうでもしないと、コンビニで書籍や雑誌を扱うのは不可能になりそうな気がします。

でも、セブンイレブンなどが好例でしたが、コンビニも街の本屋さんとして気を吐いていたと思うので、街の本屋が減っていく中、コンビニでの書籍取り扱いは継続して欲しいところです。

そもそもに本の出版流通って、雑誌の配送を中心に発達し、そこに書籍も一緒に運ぶようになったそうですね。でも、海外などでは、雑誌は本屋では扱わないところも多いようで、日本独自の進化、ガラパゴス化なのでしょうか?

どう思いますか?

こちらも朝日新聞の「声」欄。前日の図書館と文庫本の投書に対する反響を特集しています。

あたしは、何度もこのダイアリーに書いているように、文庫や新書は買って欲しい、図書館では扱わないで欲しいという考えです。また単行本についても複数冊購入は禁止、発売から3か月は購入しない(購入しても閲覧に供さない)、発売から一年間は館外貸し出しを禁止する、といった措置を執るべきではないかと思っています。

公的な施設である図書館ですから、買ってはいけないとは言えませんが、映画が劇場公開から地上波放送になるまでの過程と同じように、段階的な貸し出し方の工夫は可能ではないかと思っています。

個人としては賛成ですが……

改めて今朝の朝日新聞に載りました。

例の文春文庫と図書館の件です。

正直なところ、この十年くらいでしょうか、電車の中で、図書館で借りた文庫や新書を読む人が増えたなあと感じます。それまでも単行本は、図書館のラベルが貼ってある本を読んでいる人がしばしば見かけたものですが、文庫や新書はほとんど見かけることはありませんでした。それが、この十年くらいは文庫や新書でも図書館のラベルが貼ってある本を読んでいる人が確実に増えたと感じます。

しかし、それ以上に、電車内で本を読む人が減ったと思います。かつては、ジャンプなどの発売日には電車の中で読んでいる人がたくさんいて、そんな光景から「今日はジャンプの発売日か」とか、「○○が発売だから今日は○曜日か」と思ったりしたものです。そんな光景も今は昔。

さて、この文藝春秋社長の提起。

あたし個人としては、やや値段の高い単行本は仕方ないとしても、文庫や新書くらいは買いましょう、買ってよ、と思います。もちろん本に接する機会が増え、その結果「やはり欲しくなったから、手元に置いておきたくなったから買おう」と思う人が増える、という理屈もわかります。逆に、文庫・新書を図書館で扱わなくなったら、買う人が増えるよりも、読みも買いもしない人が増えるだけという理屈も理解できます。どちらも例外的な人もいるでしょうが、昨今の不景気では、借りてでも本に接してくれる人が増えるのはよいことだと思いますが、肝心の図書館の利用率や貸出率がこの十年くらいでどれくらい上がっているのか……

一つの方法として、文庫や新書は館外貸し出し禁止にするというのはアリだと思います。館内でパラッと見てもらって、気に入ったら買ってもらう、ということです。そういう意味で、図書館と書店を併設するツタヤのやり方は巧いのかも知れません。

いま、「パラッと見てもらって」と書きましたが、単行本でも1時間や2時間もあれば読み終わってしまいそうなものもあれば、文庫や新書でも文字がぎっしり詰まっていて、読むのにも理解するのにも時間のかかるものがありますので、実は、単純に形状だけで分けてよいものか、とも思います。

記事ではキングコングの西野がコメントしていますが、彼のような知名度があり、それなりにアピールできるし、マスコミも取り上げてくれる人と、ほとんど知られていない作家(たぶん、大部分の作家はそうでしょう)を同じ土俵で論じるのはどうかとも思います。そもそも本屋でたくさん売れていれば、図書館での貸し出しが多くても、出版者は痛くも痒くもない、気にならなかったのでしょうが……

成果あり?

今日は大阪で商談会。

ポツネンと一人、否、独り、自社のブースで書店の方を待つ一日でした。

こういう場で、あたしは頭の中で音楽が流れているタイプなのですが、今日の午前中はずーっとスコーピオンズの「Still Loving You」が流れていました。

昼前になってさだまさしの「無縁坂」に変わりました。書店との縁を結ぶ場なのに無縁坂が流れていてよいのでしょうか?

 

そして昼過ぎには乃木坂46の「制服のマネキン」が流れ出し、その後、ツェッペリンの「天国への階段」、さらに「移民の歌」まで。

夕方と言いますか、終わりが見えてくる頃には音楽も止みましたが、いったい何曲流れたのでしょう?

人文会ニュースも是非!

朝日新聞の別刷beに若松英輔さんが登場していました。

あたし自身は面識はありませんが、もちろんお名前は存じております。そして以前、『人文会ニュース』に原稿を書いていただいたことがあります。ちょうど刊行が始まった『井筒俊彦全集』(慶應義塾大学出版会)についての文章です。PDFファイルを公開していますので、よろしければご覧ください。

本屋事情。by松井玲奈

もとSKE48の松井玲奈のブログより。

ここ数日本を求めて本屋さんを何件か回っているんだけど、東京の街の本屋さんは大人向けの本がどっさり。
児童文学の中のいくつかが欲しい私にとっては、その蔵書ラインナップに少し、ほんの少しだけ不満を感じています。
子供の頃にずっと行っていた地元の本屋さん。それはまあ大型書店なんですけど、そこの児童文学の充実具合と言ったら、子供の私が離れたくないほどでした。
懐かしいブルーや暖かい橙色の背表紙。それが東京ではほとんど見かけないです。
きっと超大型書店に行けばたくさんあるんだと思うけれど、普通の本屋さんでは物足りないのですよ。
むむむ。悩ましい。

5件ほどまわって、私のお目当ての本は1冊しか手に入らなかった。残念。

あたし、松井玲奈って割と好きなんですよ。あの華奢な感じがタイプなんだと思います……

さてさて、このブログ、東京の書店の方はどう思うのでしょう? 「だったら、うちへおいでよ!」と名乗りを上げそうな書店さんがいくつもあると思いますが、そもそも松井玲奈がどんな本を求めているのか? 児童文学って、いわゆるYAなんでしょうか? 絵本などの子供向けのものではないのですよね?

ずーっと考えているのですが、とは言っても、そればかりを考えているわけではありませんが、あたしの宿題的な問題意識なんですが、中学生、高校生にもっと本を読んでもらうにはどうしたらよいか、ということ。端的に言ってしまえば、書店にもっとYAコーナーを充実してもらうにはどうしたらよいかということ、です。

絵本などのコーナーは、それこそ福音館やポプラ社、岩波書店や講談社など、その一角だけ絨毯が敷いてあったりして、書店でも独特の立ち位置を占めています。が、そういった本を卒業した中高生向けの本って、どこを探せばよいのでしょう?

中高生向けってはっきりわかるのは学参だけですよね? あとは少し前に流行っていたケータイ小説でしょうか? ラノベも読者層は中高生が中心になるのでしょうか? もっと大人な気もしますが。

本が好きな子は、フツーに文芸書売り場、海外文学コーナーなどへ行って読みたい本を探せるし探していると思うのですが、そうではない子に「このあたりの本がオススメですよ」とコーナーを作っている本屋って、どのくらいあるのでしょうか?

いえ、松井玲奈が探しているのがYAと決まったわけではないのですが、あたしなりに忖度しただけの話ですが。

電子化の度合いが測れるか?

テレビでも取り上げていましたし、今朝の新聞各紙でも扱っていましたが、岩波書店の『広辞苑』が10年ぶりに改訂版刊行だそうです。

上は朝日新聞の今朝の紙面。見出しには「クラウド」や「赤塚不二夫」を出しています。基本的には、今回新収録となった新語にどんなものがあるかを見出しに出しているようで、各紙の違いを見るのも楽しいものです。

上は読売新聞。「婚活」「アプリ」「ブラック企業」を挙げています。記事の大きさも写真入りで、かなり大きな扱いです。

こちらは毎日新聞。挙がっているのは「がっつり」「ちゃらい」「自撮り」で、やや若い層が使う言葉ですね。

最後が日本経済新聞。こちらは特に見出しに言葉は挙げていませんが、写真入りです。手にしているのは束見本でしょうか?

ところで、『広辞苑』第7版、売れるのでしょうか?

いえ、別に否定的なことを書きたいのではありません。出版不況と言われるこの数十年。たとえ、他社の商品であろうと、売れる商材が出て、書店や業界が活気づくのはよいことだと思います。

なので、今回あたしが気になるのは、端的に言ってしまえば売り上げなのですが、スマホ全盛の昨今、『広辞苑』もネットで引くのが当たり前の時代、紙の『広辞苑』がどれくらい売れるのかということです。

岩波書店もかつてのような売り上げは見込んでいないと思いますが、それでも十年ぶり、辞典の中の辞典である『広辞苑』ですから、それなりの売り上げにはなると思います。かつては、事務所などには一冊は置いてある、家庭にも一冊は所蔵していると言われていたと思いますが、現在だとどの程度まで売れるのか。

あたしは、この売り上げが、スマホの普及率と言うよりも、スマホの利用率を測る目安になるのではないかな、と思っています。言葉を換えて言えば、「まだまだ紙の方がよい」と考える人の割合とでも言いましょうか。

もし岩波書店の予想を遙かに下回る売り上げに留まるようであれば、世の中のかなりの人はスマホなどで文字を読むことに抵抗を持たなくなっているんだなあ、今後は電子書籍も普及のスピードを加速させていくのだろう、と考えられます。

逆に、大ヒットすれば、「やはり、文字を読むのは紙だよ」という層の底堅さが感じられると思います。で、あたしは買おうか否か、考え中です。

今回、電子版、アプリ版はすぐには出ないんですよね? それがいくらなのかにもよりますね。昔のように、しょっちゅう引かなくたって、家にこのくらいのものは備えておくべきだ、という時代でもないでしょうし、懐具合も厳しいので……(汗)

カズオ・イシグロはガイブンなのか?

今年のノーベル文学賞を受賞したカズオ・イシグロが売れています。昨日の営業回り、ようやく重版分が入荷したようで、お店の一等地に並んでいるのを見かけました。何人もの人が手に取っていました。

  

いろいろと翻訳は出ていますが、目立つのは『日の名残り』『わたしを離さないで』『忘れられた巨人』の三作品。売れているのもこの三つに集中しているのでしょうか?

お店の方に話をうかがうと、売れているのは確かなのですが、昨日入荷した冊数がかなり少なかったとのこと。あたしが回っていたのが郊外の書店ばかりだったので、そんな結果だったのでしょうか? 都心の大型店ならば十二分な量の入荷があったのでしょうか?

ここ数年、日本であまり知られていない作家、だから翻訳もあるのかないのかわからないような作家の受賞が多かったので、今年は久々に「売れる」作家の受賞で書店も活気づいているのはわかりますし、業界人としては嬉しいことだと思います。ただ、疑問に思うことも。

カズオ・イシグロはガイブンなのか?

ということです。彼が日系人であることは間違いありません。両親の仕事の関係でイギリスへ渡り育っただけで、彼自身がハーフだとかクオーターだとかそういうことはなく、血筋で言えば紛うことなき日本人です。単に、日本が二重国籍を認めていないので、英日両方の国籍を持つことができず、仕方なくイギリス国籍を選んだ、ということらしいです。

ですから、彼を日本人作家と見做し、日本人が受賞したと喜びたくなる気持ちは十分に理解できます。しかし、それと作品とは別です。ハヤカワ文庫からでている彼の作品はすべて翻訳です。どれ一つとして日本語で書かれたものではありません。作者のことを知らなければ純然たるガイブン作品です。

内容に日本的なところが見受けられるとしても、それは彼に限ったことではなく、他の海外作家にも日本を題材に書いた作家や作品は多数ありますし、中には日本人以上に日本の本質を切り取ったような作品だってあります。なので、それを持って「日本人作家」「日本人の受賞」と言うのには、なんとも言えない違和感を感じています。

ただ、今年は理系分野で日本人のノーベル賞受賞がなかったので、メディアとしてはどうしてもここに飛びつきたくなる気持ちはわかります。それに長い出版不況にあえぐ業界としても、「日本人が受賞」と謳った方が本がよく売れることも事実でしょう。

問題はそこです。

過去のノーベル賞、等し並みに語ることはできませんが、受賞のニュース、そして書店からの注文殺到、という流れは同じですが、その後実際にどのくらい売れるのか、売れたのかと言いますと、実はそれほど芳しいとは言えません。もちろん、ノーベル賞がなかったらまるで売れていなかった作品が再び売れたという点では喜ばしいのですが、作りすぎて大量の在庫を抱える羽目になった、というのでは却ってマイナスです。

ノーベル文学賞の場合、作品ではなく作家に与えられるので、今回のカズオ・イシグロのように翻訳がいくつも出ているものでは、それをどのくらい増刷するか、早川書房は悩んだことでしょう。ガイブンだと、とりあえず一冊は読んでみようという読者はそれなりにいると思います。その点はさすがノーベル賞です。しかし、一冊読んだ後にもう一冊、と手が伸びるかどうか、というところが判断の難しいところです。

あたしからすると、作品が面白いか否かが肝心なのであって、日本人作家だからとかガイブンだからというのはほとんど判断材料にはなりませんが、実際の売れ行きを見ていると日本人のものと海外のものとでは、そのあたりに顕著な差ができるものです。ガイブンは一定のガイブン好きが手に取ったらパタリと止まる、というのが過去のデータから見えてきます。

いや、日本人作家のものでもさほど変わらないのではないかという意見もあるでしょうし、そこまで実証的なデータを持っているわけではないので断言はできませんが、あえて言うなら、翻訳権がない分、相対的に日本人作家の作品は安く、従って読者からすれば買いやすい、ということは言えます。

さて、カズオ・イシグロです。しばらくは売れ続けると思いますが、一か月か二か月、そうですね、正月休みに読もうという方も多いでしょうから、年末くらいまでで実売がどのくらい伸びるのか、業界的にも楽しみであります。しかし、文庫本なので、売っても売っても利益は薄いでしょうね(涙)。

ダイソンのような出版社になれるのか?

11日付けの朝日新聞経済面に載っていた記事に、こんな一節がありました。

イオンは8月下旬、自主企画商品(PB)114品目を平均1割程度値下げした。春も大規模な値下げをしたが、対象商品以外の売れ行きは伸び悩んだ。イオンリテールの岡崎双一社長は「お客に目を向ければ、今後も(値下げを)必ずしていかなければならない」とさらなる値下げを見据える。

安くしないと売れない、そういう循環が定着し、政府がいくら景気がよくなっていると言っても、国民は誰も信用していないのがわかります。

書籍の場合、そこまで値段に敏感ではないと思いますが、そのぶん業界全体がこの十年以上冷え込んだままです。それによって得られるものなどを考えると、書籍の値段は決して高いとは思いませんが、数百円はおろか数十円、数円単位でしのぎを削っているスーパーなどから見れば、薄っぺらいのに数千円もする本は、とても消費者に振り向いてもらえない商材なのかも知れません。

本の場合、安い方が売れるという傾向は確かにありますが、安くしたから売れるわけでもないですし、高いからと言って売れないわけでもありません。読者がその値段に見合うと判断してくれれば、それが適正な価格ということになります。もちろん読者の見做す適正価格というのあれば、諸経費などから割り出される出版社側の適正価格というのもあります。

「たくさん作れれば安くできる」というのはどの業界でも同じですが、たくさん作って安くしたからといって、そのぶん売り上げが伸びるとは限らないのが難しいところです。単純に価格が半分になったからといって売り上げが二倍になるかといえば、決してそんなことはなく、多少値段の差があっても、あるジャンルの書籍の売れる冊数というのは、ものすごく影響力のある紹介でもない限り、だいたい同じところに収束します。2200円の翻訳小説と2400円の翻訳小説で売り上げにそれほどの差がないのであれば、出版社としては2400円で売った方が利益が大きくなりますから、そちらを選択することになります。

繰り返しになりますが、つまりはその価格に見合う内容の本であるか否か、ということです。本が売れないのは業界全体の話ですから、となると文庫や新書のように安く大量にという路線もあるでしょうが、高価格で部数を絞り確実に利益を上げるという方法もあります。売れ残った大量の在庫を抱えるのはどの出版社も避けたいところですから、予想される読者プラスアルファ程度の初版部数に絞り込み、それでどれだけの高価格に耐えられる本なのか、ということになりますが、こう書いていると、なんとなく家電のダイソンを思い出します。

ダイソンは、中国や韓国のメーカは言うに及ばず、日本メーカーの製品よりもはるかに高価格の製品を作っています。とりあえず使えればよいという人だったら絶対に手を出さないような価格です。それでも売れています。それは価格に見合う性能だからです。

本も同じように、価格に見合う内容であれば、少しくらい高くても買ってもらえるというのは事実です。あたしの勤務先は中国や韓国のメーカーの路線を取ろうとしているのか、それともダイソンになろうとしているのか……