今年も始まった

今年も東京国際ブックフェアが始まりました。会場はお台場にある国際展示場、いわゆる東京ビッグサイトです。

世間ではお台場は話題のスポットなのでしょうが、あたしはお台場って、このビッグサイトにしか行ったことがありません。それもこのブックフェアのためだけ年に一度訪れるだけです。フジテレビも、大江戸温泉物語も、ビーナスフォートも、とにかくお台場にあるスポットにはすべて行ったことがありません。別に行きたいと思わないのでそれは構わないのですが、正直に言えば、ビッグサイトだって遠いので行きたくありません(汗)。

個人的には北京でも国際ブックフェアってやっているので、東京と北京、交互に開催してもよいのではないでしょうか? そうでないと欧米の出版社には負担が多いのではないでしょうか?あるいはそうなども加わって、東アジア国際ブックフェアとして、東京、北京、ソウルが毎年交替に開催するというのはどうでしょう?

まあ、こんな共催のフェアが実現するとしたら、機会があればソウルや北京のフェアにも行きたいとは思いますが、日本の出版社は合同で日本ブースに出展するくらいしか体力(=資金力)がないでしょうね。

さて、あたしは明日は昼間ちょっと会場へ行きます。金曜日は終日ブースの当番です。

元は取れているの?

今日の朝日新聞にこんな記事が載っていました。

大手のコミック誌がネットで無料の作品公開をしているそうです。記事ではそこまで細かいことは書いていませんが、想像するに若手の、まだ売れていないマンガ家の作品を公開しているのではないでしょうか? マンガ家の方としてはタダでもよいから作品を発表する場があれば、それをチャンスに紙媒体の連載を勝ち取れる、と期待しているのではないでしょうか?

実際には、このサイトで人気が出て単行本の発行にこぎ着けた作品がいくつもあると言いますから、連載を勝ち取るどころか単行本発行まで一気に行ってしまっているわけですね。こういう無料サイトの作家さんにギャラ、つまり原稿料は支払われているのか、記事ではわかりませんが、恐らくコミック誌のギャラの何分の一にもならない額なのではないでしょうか? だって、そうしないと維持できないでしょうから。

もちろん、出版社側も記事中にあるように、漫画に親しむ読者の新規開拓、単行本化によって収入を得る、新しい作家の発掘といったいくつかのメリットもあるでしょうけど、同じ出版社の人間として果たしてどれだけ採算ベースに乗るのか、かなり疑問を感じます。

たとえば、あたしの勤務先では月刊誌の「ふらんす」というのを発行しています。もちろん毎号特集や連載記事があります。たとえば、この紙媒体の本誌とは別に若手のフランス語教員、フランスに関わる仕事に従事している方に連載をお願いするとして、それによって読者はどれだけ新たに開拓できるのでしょうか? そして「ふらんす」本誌にどの程度よい影響が表われるのでしょうか? ネットで人気になった連載を単行本化したとして、果たして売れるのか? ホントして出版する以上、ある程度の部数がはけないと黒字にはなりません。

こう考えると、昨今はネット発の書籍も増えていますよね。あたしの勤務先でもこんな本がウェブ連載発で大ヒットしました。

 

こういった流れは、これまでの雑誌連載の単行本化と同じことなのだと思いますが、だからこそ同じ問題も抱えているのではないでしょうか? つまり、連載だからこそ面白く読めて人気になるけれど、単行本としてまで読みたいか、ということです。他社の本で恐縮なんですが、かつて連作を一冊にまとめた本を読んだことがあります。たぶん雑誌連載中は雑誌の数ある記事の中のオアシス的な読み物として人気を博したのではないかと思います。でも、いざ単行本になったものを読むと面白くないのです。エッセイのようなものでしたからかもしれませんが、雑誌の時のように他の記事がないので、面白さが浮き上がってこないのが原因ではないかと思います。

雑誌の連載が何でもかんでも単行本になるわけでもないように、ウェブ連載もすべてが単行本になるわけではないということです。となると、やはりウェブ連載を依頼する時から、これは将来単行本化できるか否か、吟味する目を持たないとならないわけですね。また一つ仕事が増えそうです(汗)。

 

二次元ではなく三次元!

二白三日で、YA出版会の研修旅行でした。行程については初日のダイアリーで触れていますので割愛しますが、今日の最終日に訪問した、宮脇書店ヨークタウン野田店さんで、文庫のフェアのディスプレイがとんでもないことになっていたので、思わず写真を撮らせてもらいました。

まずはこちら。集英社文庫のフェアです。なぜか真ん真ん中に木が生えています。今年のイメージキャラクターであるAKB48を完全に喰ってしまっているディスプレイです。すごすぎます。

この木ですが、裏側へ回ると、中までしっかり作り込んでいるのです。まるでシルバニア・ファミリーのお家のようです。部屋の中にはしっかりと本棚が置かれ、本がぎっしりと並んでいます。集英社文庫のためにここまでやるか、というのが正直な感想で、ちょっと羨ましく感じます。

しかし、集英社だけではなく、角川文庫のフェアもこんなことになっています。

わかりますでしょうか? フェア台の真ん中に船です。大漁旗に飾られた船がドーンと鎮座しています。どうして角川文庫は大漁旗なのか、そんな野暮な質問をしてはいけません。

とにかく、宮脇書店さん、店内を見回すとこの他にも至るところに立体オブジェが並んでいます。薄っぺらい紙のポップでは飽き足らない、とてもそんなものでは本を売ろうという意気込みが表現しきれないと言わんばかりです。

ただ、押しつけがましい熱さは感じません。非常にほとよい居心地で、こういった造形物が置かれているのです。なんか不思議です。

店長さん曰く、こういった文庫フェアの飾り付けは文庫担当の傾がされているのだとか。だいたい年の初めごろから構成を練り始めているので、後からAKBが現われても修正のしようがないんだそうです。

うん、うん、それでいいのよ。

長丁場

本日は午後からYA出版会の例会。その後、6時半から場所を新宿三丁目に移して、都内近郊の書店員さんをお招きしての勉強会、懇親会でした。ようやく帰宅しましたが、もうじき日付が変わりそうです。降りしきる雨の中、わざわざいらしていただいた書店員さんにはいくら感謝しても足りないくらいです。

それにしても、YA本を店頭でどうやって売っていくか。

難しいです。

最後は現場の担当者のやる気に還元してしまうのは簡単ですが、そうではなく、もっと工夫の余地はないものか、あるいは現場の人がやりたくなるようなきっかけを作る、提案することはできないか、そんな風に感じます。

とりあえず、フェアにしろ棚にしろ、注文をもらって置いてもらうのは、実は案外簡単なのかもしれません。一回くらいなら親しい書店員さんも協力してくれる可能性はあります。でも、それでは単に置きました、並べましたというだけで、その次の、そしてもっとも肝心な売れました、というところには繋がりません。

いや、売れましたの前に、書店員さんがよし売ろうという気になってくれる「売ります」の段階が抜けているのではないかと感じます。これまで書店でいろんなフェアをやってきて、やはり結果の出るフェアというのは、話の初めから書店員さんの乗りも違いますし、たぶん荷物が入荷した時の書店員さんの昂揚感も異なるのだと思います。だからこそ、フェアが始まった頃に訪問すると、いの一番に「始めたよ」「やってるよ」「もう売れたよ」といった言葉が返ってくるのだと思います。

そんなワクワクを書店員さんに与えることができているのか、感じてもらえているのか,YA出版会が問われているのはそこのところなのではないか、という思いを抱いた勉強会でした。

人文書とは?

本日は午後から人文会の研修会でした。今回の研修会はジュンク堂書店さんの人文書担当の方々との合同研修会、勉強会でした。人文書って何よ、というオーソドックスで初歩的なものから、いかにして人文書の棚を作るかなど話題は多岐にわたりました。

人文会ではこれまでにも書店さんとの研修会、勉強会を開いてきましたが、あたしが参加したことがあるのはくまざわ書店さん、紀伊國屋書店、そして今日のジュンク堂書店さんです。

基本的には人文書というのは専門書であり、学問的な裏付けというか、学問大系があって、それを書店の棚でどのように再現するか、ということになるのだと思います。もちろん大系の再現をする必要があるのか、という視点はありえますし、書店の棚は学問するところではなく、あくまでお客さんに本を売るところなのだという立脚点はあると思います。

それでも、棚を見に来る人、本を探しに来る人は、やはり人文科学の大系に沿って学んできた人が大多数でしょうから、学問の大系にある程度準拠する、それを踏まえるのは当然だとも思います。そういう意味では、わかりやすい言葉でいえばサブカルのような、従来の学問の枠組みから外れるような(←すでにサブカルは学問の大系の中にポジションを占めていると思いますが、あくまで例として……)ものを書店の棚でどう表現するのかが難しいところなんだなあと感じました。

また人文書の棚に来るお客さんは、書店員以上にその分野に詳しい人もいれば、ちょっと興味を持ったからという人まで、かなり幅広く存在し、前者には見捨てられない程度の棚を最低限作らなければならないでしょうし、後者をいかに取り込めるかも商売としては大事なことなんだろうなあと、話を聞いていて感じました。個人的には、一部を除いて、哲学思想の古典、原典が文庫でしか読めない状況、ちょっとした学問の入門的なものなら読みやすい新書という形で出ている出版の現状を踏まえ、そういった文庫・新書を人文書を、どうやって人文書の棚と融合するか、書店現場の実際の作業としてはそんなところに興味を感じました。

そんな研修会でしたが、第三部として行なわれた北村紗衣さんのシェイクスピアの刊本と女性の読書、蔵書に関する講演(←こういうまとめ方をすると講演内容をミスリードしてしまうかもしれませんが……)が非常に面白かったです。あたし自身はシェイクスピアはほとんど読んだことがありませんので学問的なことはわかりませんが、その作品(本来は上演台本だったのでは?)が刊本として人々に広まる過程は、三国志や水滸伝の講談種本が小説としてまとめられていく中国の元明の頃の状況と、あるいは女性の作品受容史としては、源氏物語が平安の宮廷女房たちの人気を博していたという状況などと、通じるとは言えませんが、あたし的には親和性を感じるものとして、とてもおもしろく拝聴しました。なにより、久しぶりに学術発表的なものに触れたことのワクワク感がなんとも言えなかったです。

 

いまだからこそ(?)のフェア

自分の勤務先の出版物とは直接関係のないフェアばかり思いついてしまうもので、いまだったらこんなふぇあはどうだろうか、と思っているのが、「オリンピック開催候補地フェア」です。

東京は江戸ものも含め選書は楽でしょうから、マドリードとイスタンブールの本を集め、三都市の歴史や文化などを俯瞰するようなフェアです。人文書コーナーにあるような、しっかりとした歴史・文化ものも加えますが、まずはビジュアルに、そしてお手頃に…

   

といったあたり。イスタンブールは結構本が集まるのですが、マドリード(マドリッド)がほとんどないですね。スペインに範囲を広げて集めるしかないかもしれません。

話しかけてくる棚

とある書店の海外文学コーナーでこんな風に本が並んでいました。

  

不勉強でどれも読んだことがありませんでした。

が、これらの本のそばには

 

といった藤井光さんの翻訳作品が並んでいます。藤井さんと言えば、先日もトークイベントでご自身でおっしゃっていましたが、いわゆるアメリカっぽくないアメリカ作家と言いますか、アメリカという国や土地に拘っていない作家さんの作品を精力的に翻訳されているという印象があります。ですから、このフェアというか小特集も、藤井さんの作品を核として、アメリカ文学の現状やトレンドを感じてもらおうという文芸担当の方の気持ちの表われなのでしょう。

こういう棚を見ていると、やはり楽しくなりますね。

こういうのって職業病なのでしょうか?

駆け足でグランフロント

先週の金土の二日間で、つまりは一泊二日で大阪へ出張に行って来ました。土曜日にジュンク堂書店大阪本店でトーク・イベントがあったのが最大の理由ですが、その機会に、リニューアルした京都大学生協ブックセンター・ルネ、遂にオープンしたグランフロント大阪紀伊國屋書店を見てくるのも目的の一つでした。

さて、そのグランフロントですが、既にネットでは行って来た人の感想がいろいろ書かれています。この業界の人の報告・感想もあるようですね。いかにも業界人的な視点での報告はそういう方にお任せするとして、あたしはお上りさん的な、単なる野次馬的な見地から書いてみます。

だって、書店がどうかなんて、まだまだオープンして一ヶ月やそこらではわかりませんよ。結局は店員さんがどこまで頑張るかにかかっているわけで、それはやはり数ヶ月から一年は温かく見守らないとならないと思います。さらには、いろいろ腐すようなことを書く人、言う人がいますが、あたしとしては出来るだけよいところを見つけたいと思っているので、とりあえずは書店員の方、明るく楽しく仕事をされていたのが印象的でした、と書いておきます。

で、再びグランフロントですが、まだまだ人が多いです。訪問したのが金曜、土曜と言うこともあるからでしょうか、とにかく人が多いです。もう一ヶ月か二ヶ月もすれば落ち着くとは思いますが、現状では人の多さに着かれてしまいます。「そんなに人が来ているのか?」と言われそうですが、「はい、その通りです」と答えるしかないです。だって、思いのほかJR大阪駅から近いのですから。

JR大阪駅の北側、これまでは人が行かない方向でしたが、伊勢丹ルクアヨドバシカメラができ、少しは人の流れができてきた、その北側の真正面にグランフロントは建っているわけです。二階部分がデッキで繋がっていますが、伊勢丹のビルと一体化していると言ってもよいくらいの近さです。東京でたとえるならば、東京駅と丸善丸の内本店が入っているオアゾが繋がっているような感じと言えば、イメージしてもらえるでしょうか? オアゾは斜め前ですが、グランフロントは本当に正面です。

で、人の流れはどうなるでしょうか? 気になりますが、オープンしたての今はさておき、結局、阪急を使う人が日常的にグランフロントへ行くとは思えませんし、JRを使う人が阪急の方へ来るとも思えません。つまり書店としては食い合いは少ないのではないかと思っています。

当初、紀伊国屋の梅田本店と至近距離に紀伊国屋ができるので共食いも危惧されていましたが、書店の性格がまるで異なりますし、お客さんの利用の仕方もまるで違うと思いますので、恐らく食い合いになるほどの影響は見られないと思います。むしろ丸善&ジュンク堂梅田店の方が影響を受けるかもしれませんが、やはり在庫量が異なりますし、じっくり落ち着いて本を探しに行くのであればMJ梅田店を選択するのではないでしょうか? あたしにはそう感じられました。

書店を無視して、単純に人の流れで言いますと、以前は阪急梅田駅から二階で繋がっているデッキでJR大阪駅へ向かうと、ルクアの手前で一階へ降りる人が多く、それ以外の人はルクアへ向かい、ルクアの北側、ヨドバシカメラの向かいのデッキをそのまま(JR大阪方面へ)進む人は非常に少なかったです。ところがグランフロントができたため、このルクア北側のデッキを通る人が格段に増えました。影響を受けているのはルクアかもしれません。ルクアに入る人が減っているように感じました。事実、金曜の夕方だというのに、ルクアの客は以前より少ないと感じました。

これがグランフロントのオープン時期だけの動きなのか、今後もこれが定着していくのか、少し観察してみないとなりませんね。

 

哲学書は難しい?

午後からジュンク堂書店吉祥寺店で「よんとも」でした。

佐々木中さんは、これまで読んだことありませんでしたが、とにかく話は面白かったですし、とても興味深かったです。特に、哲学書は難しくて小説は簡単という世間の思い込みに対し、そんなことはないとおっしゃる佐々木さんの意見、あたしもずーっとそう感じていたので至極納得です。哲学書にも読みやすく、そこからミステリーよりもはるかにワクワク、ドキドキさせてくれる作品もたくさんありますから、小説とか哲学書とか、そんなジャンルにとらわれずいろいろ読んでくれる火とが増えることを期待します。

それと、目からウロコ的な感じだったのは、豊崎社長と共に、もっと翻訳詩を読んでほしいという意見。それはそのまま出版社に対して、もっと翻訳詩を出版して欲しいという申し立てでもあるのでしょう。読む人がいるから出すのか、出版されるから読む人が増えるのか、悩ましい問題ですが……

中味で勝負と言うけれど

おかげさまで先日刊行した『韓国語発音クリニック』が絶好調です。既に重版に入りました。

竹島問題で、若干売れ行きに陰りの見える韓国語ではありますが、それでもまだまだ数ある語学の中では人気は高い方でしょう。これだけ学習書がたくさん出ているわけですが、どうしてもハングルという文字に注目する本が風吸うあるのに対し、発音をメインに据えた学習書はこれまで多くなかったようです。

もちろん中味がよいのは言うまでもありませんが、やはり類書が少ない、ライバルがほとんどいないというのは売り上げに結びつくものだと実感しております。

が、ここへ来て強力なライバル出現です。

ナツメ社の『韓国語の文字と発音』です。つい最近出ました。弊社と同じくCD付ではありますが、値段がずいぶんと安いです。文字の部分は要らないという人もいるかもしれませんが、文字と発音が学べてこの値段なら損はしないでしょう。もちろん、うちの商品が一色刷なのに対し、こちらは二色刷。

うーん、こうして客観的な条件だけを並べると完全に負けています。

でも、単純に値段だけで売り上げが決まらないのが学習参考書の面白いところです。最後は中味勝負になります。これまでも、他社の類書に比べ高い商品が数多くありましたが、定評を得たものはたとえ他社のより多少高くとも売り上げで負けることはありません。むしろ高いことが信頼の傍証になっている時もあります。

さあ、今回の勝負、強力なライバル出現となるのか、はたまた軽く一蹴できるのか……

いや、あたしたち営業部員の力量も問われているのですよね(汗)。