1月 2014のアーカイブ
町田は斜め?
パンダだからこそ
『パンダが来た道』読了。
本書の副題は「人と歩んだ150年」です。しかし、本書を読むと「人と歩んだ」のか、それとも「否応なく歩かされた」のか、はたまた「人につきまとわれた」のか、いろいろ考えさせられます。
パンダなどを知らないヨーロッパ人が初めてパンダを見たら、その動きといい、毛皮の色といい、一瞬で虜になってしまうのも理解できます。そしてそれは捕獲してヨーロッパへ持ち帰ろうとする気持ちもわかります。あの頃のヨーロッパ人はアフリカでもアジアでも現地のことのなどお構いなし、自分たちのやっていることはすべて正義だと言わんばかりの行動でしたから。
しかし、じきに生態調査、保護、繁殖といった動きが生まれ、世界の野生動物保護のシンボルにまで上り詰めます。現実問題として、現段階でパンダは保護しないと絶滅が危惧されるような動物なのか、いったい野生のパンダは何頭生息しているのか、まるっきりわかっていないようです。それでも野生動物保護という国際的な運動においてパンダが果たした役割というのはあまりにも大きいものです。ロゴマークとしても白と黒の模様はモノクロ印刷でも問題なしという現金なところから、実物のパンダを見れば(特に赤ちゃんパンダなど)、ほとんどの人を魅了する愛くるしさなどはシンボルとするにふさわしい動物でしょう。
本書は、このように世界中で愛され、大事にされるパンダが、それでもまだ解明されていない問題が多いことを教えてくれます。パンダほど世界中の関心を集め、資金も集め、多くの学者が研究している動物ですらこの有様です。パンダのようにメジャーでない動物、愛くるしくはない動物の研究の現状を想像すると暗澹たる気持ちになります。
本書を読んでいて、パンダよりももっと過酷な状況に置かれ、実際に絶滅が危惧されているにもかかわらず、ほとんど世間の関心も資金も集めていない動物を大賞に活動している人々の怨嗟の声が聞こえるような気がしました。「パンダは恵まれているよなぁ」という恨みに満ちたつぶやきです。
そういう声を聞きつつも、全体の底上げを図るためにもパンダのような人気を博すシンボル的動物の役割というのは大木のではないか、パンダにもっともっと引っ張ってもらわなければ、という気持ちも起こさせます。
「パンダが来た道」は「多くの動物が、いま歩んでいる道」でもあるのでしょう。そして、そんな道など見当たらないたくさんの動物たちもいるのでしょう。
19世紀のフランス
岩波新書の、新刊ではないのですが、つい最近、ふと購入して読み終わった『フランス史10講』がとても面白かったです。
内容としては、西洋史専攻、フランス文学やフランス哲学専攻の学生であれば当然知っていてしかるべき、という内容なのでしょうが、あたしのようにフランスについてはまるで門外漢の人間にはかなり歯応えのある内容でした。中国学専攻のあたしが、何を間違えたか西洋史の授業に紛れ込んでしまったかのような体験でした。
全体は、フランク王国から現代フランスまで、いわゆるフランスという国が現在の形になる源流から説き起こしているわけですが、ゲルマン民族の移動とか、フランス大革命、ナポレオン時代、パリ・コミューンなど、一応は世界史で聞いたような単語はそこらじゅうに散見します。が、改めてフランス史という流れの中で読んでいくと、一筋縄ではいかない内容を含んでいて、一回読んだだけでは理解できないところが多々ありました。著者は東大の先生ですから、東大だとこういうレベルで授業をしているのかな、という気もしました。
で、読んでいてわからないながらも興味を持ちつつ進めていくと、19世紀というのが、なかなかフランス史の中で面白い時代のように感じられてきました。フランス大革命を過ぎ、ナポレオン帝政、更にそれが終わって共和政とか王政とか、またまたまナポレオン三世が出てきたり、そんなことをしている間に第一次世界大戦の時代へ突入していく、大雑把につかんだのはこんな感じです。
ただ、全体的には哲学の分野ではあまりパッとしない時代だったようなんです。同書を読んだ限りでは、これだけ政治が転変すれば、それに併せて哲学思想も百家争鳴になりそうですが、あまりパッとしなかった時代のようです。でも、3月に文庫クセジュで『19世紀フランス哲学』というのが出る予定なので、どんな時代なのか教えてくれるのではないでしょうか? あと、刊行間もない弊社の新刊『革命と反動の図像学』などは大いに啓発してくれるのではないでしょうか? それに、このところまたブームが来ている感のあるトクヴィルも19世紀でしたよね?
うーん、やはり19世紀のフランス思想界、面白そうです。
ちなみに、文学・芸術分野では、19世紀は綺羅星のごとき名前がいくらでも挙がりますね。佐藤賢一さんの「小説フランス革命」の後のフランス史を概説した書物を、学界の方を集結して、あたしの勤務先から出せないものでしょうか? そう『フランス史10講』をもっとパワーアップさせたもので、資料的価値もあり、レファレンス本としても有用なものを!
人妻を落とす?
毎晩寝床で読んでいる『パンダが来た道 人と歩んだ150年』が、もうすぐ読み終わりそうなので、この次は『危険な関係
』の予定です。
でもその前に、同僚から借りた『子爵ヴァルモン』を読んでみました。
『危険な関係』をほぼ忠実に漫画化した作品で、なかなか読み応えがあって面白かったです。
そして、ヴァルモン! 確かに、見てくれが格好いいのでモテるのは当然なのでしょうが、人妻を籠絡するとは! それも相当に貞淑な人妻を、です。最初は警戒され、むしろ毛嫌いされていたはずなのに、最後は虜にさせてしまうなんて、非常に勉強になります。できることなら見倣いたいです。
肝心なのは、まず最初に、良くも悪くも強烈な印象を相手の心に残すということなのでしょうか?
テレビでも話題!
今日の配本(14/01/27)
後で買う
ネットショップを使う人、使わない人、人それぞれだと思います。業界的に言えば、アマゾンで本を買うか、リアル書店で本を買うかということになるのでしょうが、最近はヨドバシカメラもネットで書籍を扱うようになりましたね。パソコン関係の本だけでなく、アマゾンと同じようにどのジャンルの本も扱っているようです。なおかつ、ゴールドポイント会員であるとポイント還元がPC商品などと同率もあるので、お得感があります。ふだん、ヨドバシカメラで家電などを買っている人であれば、本もヨドバシで、となる可能性があります。
そのヨドバシカメラ。あたしはビックカメラとか家電量販店がいろいろある中で昔からヨドバシを使っています。特に理由はないのですが、かつてビックカメラは池袋にあり、わが家から出やすい新宿にはヨドバシくらいしかなかったからです(サクラヤは既に選択肢から外れていました)。インターネットが普及してからはお店よrもネットを使うことが多くなりました。配達もしてくれるし、クレジットカードが使え、ポイント還元もお店よりも高いというのがその理由です。商品がないと取り寄せで納品まで多少時間がかかることはあります。またお店には季節ごとの入れ替えで型落ち担った商品が安く売られていることも多々ありますが、ネットはそういうことはなく、前のモデルを安く買おうというのにはあまり向いていないかもしれません。そういうデメリットもありますが、基本は便利に使っております。
このヨドバシのネットショップですが、気になる商品をストックしておくコーナーもありますが、それとは別に買おうと思ってショッピングカートに入れた商品を「後で買う」ということにしてかーとから出し、保管しておくコーナーもあります。実はこれが便利です。
気になる商品をストックしておくのは、アマゾンでも「ほしい物リスト」という機能がありますが、これはショッピングカートとは画面を切り換えてみないとならないので、何か買い物をしていて「そう言えば、この前チェックしておいた品物があったっけ……」といって「ほしい物リスト」を見に行くのは意外と面倒です。
ところがヨドバシの「後で買う」はショッピングカートの画面で、カートに入っている商品の下に並ぶので、「そうだ、この前のこれも一緒に買おう」という感じですぐに思い出せますし、買い忘れ防止にもなります。これはひとえに同じ画面に表示されているからこその機能です。
この機能、楽天市場にはありませんね。ネットショッピングをしている人には、この機能って、結構便利ではないかなと思うのです。あえて言えば、いったん買い物カゴに入れた上で「後で買う」に移すという手間がかかりますが、これはそれ以外の便利さに比べたら十分我慢できます。あたしの場合は、一番必要性の高い物をいったん買い物カゴに入れた上で「後で買う」に移動し、それほどすぐに買いたいわけではないけどそのうち買おうと思っている商品は「お気に入り商品」に入れると使い分けています。
ネットショップって、カードが使える使えない、コンビ払いが可能か否か、など人によって欲しい機能、あると便利な機能が違うと思いますが、あたしの場合はズバリこれです。
費用対効果
あたしの勤務先では、だいたい毎年決まった時季に出張があります。年に三回ほど東京以外の各地方の書店を回るわけです。東京のように、毎週のように、あるいは二週間に一度、一ヶ月に一度訪問している書店と比べると格段に訪問回数は少ないですが、やはり直接会って話をするのは大事な仕事ですので疎かにはできません。
首都圏の場合、かなり郊外の書店を除けば、気軽に行けるので、こういう書き方は書店に対して失礼ですが、それほど大きくない書店だろうと、売り上げがそれほど多くない書店であっても訪問することができます。そんな風に訪ねていると、面白いフェアや企画を考えている書店員さん、一所懸命うちの本を売ろうと頑張ってくれている書店員さんに出会うことができます。これが書店営業の醍醐味でもあります。
ところが出張ですと、そうはいきません。一応は何日間の出張という基準がありますから、その日数内で該当地域の書店を回らなければなりません。必然的に大型店や売り上げの高い書店を中心に回ることになります。東京ならこの程度の売り上げの書店にも時々顔を出すのに、地方だとこれだけの売り上げがあっても顔を出せない、ということもしばしば起こります。地方に支社が会ったり、地元の営業代行業者を使わない限り、これは致し方のないことだと思います。
こういう時に使われるのが「費用対効果」という言葉です。
なんで地方の書店は訪問できないのかと言われれば、それなりの出張費がかかるからです。往復の旅費、新幹線や飛行機には割引切符がありますが、それでも都内近郊を回る交通費に比べたら格段の出費です。なおかつ出張日数に応じて宿泊費がかかります。出張の日数を増やしたら増やしたで宿泊費が増えるわけで、そのぶん多くの書店を回ることができますが、その増えた経費分の売り上げを上げられるのかと言われれば、この不景気の世の中、そう簡単ではありません。
とはいえ、上にも書いたように、実際に顔を合わすと言うことの効果というものは金銭で図ることができません。会った人であれば、その後は電話やファクスでフォローすることもできるでしょう。こちらだけでなく、書店の人から見ても一度あった出版社の人とそうでない出版社の人というのは違うはずです。それがその後のフェアとか、日常的な発注にも影響してくるはずです。
この分をどう計算するか。そこが悩ましいところです。特に来年に創業100年を控えているあたしの勤務先としては、その露払い的な意味でも、今年は少し目先の経費を少々度外視しても、来年以降への好効果を期待して少し丹念に地方の書店も回った方がよいのか。いやいや、そんな余裕はない、それよりもふだん回っている書店で確実に注文を上げてくる方が大事ではないか。そんな心の中の葛藤もあります。
大都市の書店にはそれなりに顔を出しているとは言え、言ってしまえば、回っているのは大型書店ばかりで、中小書店はほとんど回れていません。売り上げの伸び代としては中小書店の方が可能性が高いということもわかっていますし、大型店は在庫もそれなりにしっかりしているので、訪問したからといって注文がもらえるというわけではありません。それでも、大きなフェアをやってもらうには大型店ということになりますし、売り上げでも店の大きさに比例して売ってもらっているので顔を出さないわけにはいきません。
また、どうしても回る効率を優先しますので、中小書店でも大型店を回る道すがらに立地していると訪問することも可能ですが、逆に言えば大型店でもあまりにも交通不便なところに立地していると回れない、回るのをパスしてしまうことも多々あるのです。それでも、あるジャンルだけに特化した出版社であれば、そのジャンル担当の人に逢えればよいわけで、そのジャンルを扱っていない書店はスルーすることも可能ですから、一日にかなり多くの書店をこなすこともできるでしょう。でも、あたしの勤務先の場合、語学、人文、文芸、芸術、料理、社会と多岐にわたっています。お店によっては更にその中が細分化されていたりして、担当者がそれぞれにいることがあります。結果、一つの書店に一時間や二時間滞在することもざらで、そうなると一日に数店しか訪問できないこともあります。そんなんで営業と言えるのか。お金をかけて出張に出ているんだから、もっと注文を取らないとダメじゃないか。ホテルの部屋でそう思うこともよくあります。
他の出版社の人と話しても、皆さん同じような悩みを抱えているようです。実際に訪問する、書店の人と顔を合わせる、話をするということの効果は、具体的な金額という目に見えるものでは表わせないけれど、どう斟酌するか。来年に向けて、今年は特に悩みが深いです。
いや、悩んでいるのではありません。どう考えたらよいのか、ひたすら思案しているだけです。悩み事ではないです。