Nancy Sensual World

このたび、「染井吉野ナンシーの官能世界」は引っ越しました。新しい世界はこちらになります。今後ともご愛顧のほどよろしくお願い申し上げます。 自動では新しい世界に飛びませんので悪しからず……

新着ニュース

まもなく自著も刊行予定

今日も朝日新聞です。

元フィギュアスケート選手の町田樹選手が本を紹介している記事です。

この町田選手、近々あたしの勤務先から書籍を刊行いたします。それが『アーティスティックスポーツ研究序説 フィギュアスケートを基軸とした創造と享受の文化論』です。

フィギュアスケート選手時代の写真ではありません。タイトルからもわかるとおり立派な研究書です。アーティスティックスポーツというと、少し前から名称が変わったシンクロナイズドスイミングが有名など思いますが、こういった、誰にでもわかりやすい数値で順位や勝ち負けが判定されるのではなく、芸術性や表現力などを競う競技はなかなか奥深いものがありますね。

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最近のRockfield's Diary

グロいのと軽いのが……

日本翻訳大賞を受賞した『エウロペアナ』を読んだとき、次の部分で衝撃を受けました。

グダンスクでは一人のドイツ兵が発狂したという。戦前に付き合っていた女性がユダヤ人であることを知らなかったばかりか、その彼女はアウシュヴィッツの強制収容所へ連行されていたのだ。友人たちは彼をからかおうとして、こう言った。グダンスク解剖学研究所の所長から聞いた話だけど、お前がこの一週間のあいだ体を洗っている石鹸はお前の彼女の死体から作られたものなんだよ、と。その後、兵士はドイツ国内の精神病院に収容された。(P.33)

からかったとありますが、実際にこういう事例はあったのではないでしょうか? この描写の直前にも収容所に送られたユダヤ人がどうなったかについて、かなりグロテスクな描写があります。

しかし、本書での筆者の筆致は実に淡々としています。上掲のような描写も、だからどうなのだ、という感情がほとばしり出るのではなく、ただあったことをそのまま書き連ねているだけのように感じます。

感情を失ってしまったのか、あるいは戦後の平和な時代を生きている自分たちが、ありきたりの感情で描写したとしても所詮あの悲惨さを表現しきれるものではないと諦めているのか。

いや、ここまで来ると悲惨という言葉も何か違うような気がします。むしろ絶望に近いかも知れません。それでもそんな時代をくぐり抜け、いま自分たちは生きている、どうやってあの絶望から立ち直ったのか、本当に立ち直っているのか、そんな問いかけを受けているような気もしました。

そして、こういう目を背けたくなるような描写と隣り合わせで、実にユーモラスな記述が挟み込まれているのが本書の特徴です。この揺れ幅の大きさ、それがそのまま二十世紀という時代の振幅の大きさに当てはまるのではないでしょうか?

日本翻訳大賞受賞

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