好き? 嫌い?

先日、WOWOWで放送されていた「渇き。」を録画しておいたので視ました。

 

一時期、テレビCMも頻繁に流れていて、「衝撃の問題作」的な煽りもあったので、映画館に見に行こうとまでは思いませんでしたが、こういう機会に視聴したというわけです。CMなどの予告では、元刑事・役所広司の娘がある日突然失踪し、娘を探す父親が娘の本当の姿、驚愕の真実を知る、という感じでしたが……

さて、そういった予告から予想されるのは、娘には両親も知らない裏の顔があって犯罪に手を染めているのかな、ということです。ただ、学校一の美少女といった設定だったはずですから、何か事件に巻き込まれて、あくまで被害者側なのかな、という可能性も捨てきれません。

そういった先入観というか予想を持って見始めたのですが、かなり早い段階で「この娘はヤバイ」ということがわかります。わかってしまいます。カワイイ顔をして人を破滅に追い込む悪魔、そんな加奈子・小松菜奈の正体は割れます。ただ、それ以上にヤバイのが父親の役所広司の方で、「これじゃあ娘もおかしくなるよね、納得」という人物で同情も何もあったものではありません。もちろん娘を失った哀しい父親といった感情移入は微塵もできません。

中学時代に自殺した加奈子のボーイフレンドとの淡くてピュアな純情恋物語が底辺にあるのかな、という期待も、結局彼も彼女の毒牙にかかって身を滅ぼしただけだったようで、涼しい顔をして男を滅ぼしていく魔性の女という加奈子の素性が知れてきます。

が、あそこまで人が死ぬことになるような大きな犯罪が背後で起こっていたのか、そこが疑問です。少女買春や覚醒剤といったものが登場していますが、それにしては中高生相手に大の大人があそこまでムキになるのは滑稽で、加奈子の魔性ぶりを描こうとして、かえって卑小な人物に成り下がってしまっているような気がします。

そして過去のシーンでは加奈子は登場しますが、役所広司が暴れまくる現在のシーンでは加奈子は登場しません。「ゴドー」とか「桐島」のように、本人は登場させないパターンでしょうが、これがいまひとつ加奈子ってどんな人なのかを描き切れていない気もします。

まあ、ここまで暴力的なシーン、狂気しか感じられない役所広司、ヤクザと裏ではつるんでいる警察という、ハチャメチャのオンパレードではこの映画の好き嫌いもかなり分かれるのではないでしょうか? だから、たぶん評価もかなり差があるのではないかと思われます。

さて、あたしはこういう映画、好きか嫌いかと問われたら?

この手の暴力ばかりの映画、嫌いということはありません。暴力ばかりだからといって嫌うことはないのですが、ただ、もう少し暴力や狂気に理由が欲しいところです。いや、狂気に理由なんかあるわけないのかも知れませんが、あそこまで理不尽だとついていけなくなるのも事実です。また、あんな父親では誰も娘捜しに協力してあげようなんて気にはなれないと思います。

が、何よりも、主演の小松菜奈が、あたしに言わせると「そこまでの美少女か?」という点が一番引っかかりました。こればっかりはどういう美しさを魔性と呼ぶのかの個人差になるので、いかんともしようがないですね。