東アジア文学はこれを読め!

MARUZEN&ジュンク堂書店渋谷店での「『豊﨑由美アワー 第40回 読んでいいとも!ガイブンの輪 アジア編』」に行ってきました。感想は改めて記すとして、とりあえず今宵は、アジア文学翻訳界の旗手4名の超絶推薦図書を挙げておきたいと思います。

まずは韓国。

  

『カステラ』『アンダー、サンダー、テンダー』『どきどき僕の人生』の3点。

次にチベット文学。

  

『ハバ犬を育てる話』『ティメー・クンデンを探して』『雪を待つ』の3点。

次に中国文学は3点と言いますか、3名。

まずは閻連科。

  

『人民に奉仕する』『丁庄の夢 中国エイズ村奇談』『愉楽』の3点。

次は余華。

 
 

『活きる』『兄弟』『ほんとうの中国の話をしよう』『死者たちの七日間』の4点。

その他に『空山』『今夜の食事をお作りします』の2作品。

 

最後に台湾文学。

  

『台湾海峡一九四九』と『歩道橋の魔術師』、それにこの二作品を繋ぐ位置にある『流』の3点です。

紹介が最後になってしまいましたが、今宵のゲストは吉川凪さん(韓国・朝鮮文学)、 三浦順子さん(チベット文学)、飯塚容さん(中国文学)、天野健太郎さん(台湾文学)の四名の方でした。

見よ、この棚差しの迫力を!

ブックファースト新宿店で、「第二次世界大戦と日本」フェアが開催中です。B1のAゾーンで大きく展開中です。

えっ、今年は戦後70年だから、こんなフェアは見飽きた? 確かにそうかもしれませんね。こういうフェア、どこの書店もやってますし、やってましたし、これからやるところもあるのでしょう。今年の場合、新刊だけを並べていても、ちょっとしたフェアになってしまいそうな勢いですから。

でも上の写真をよく見てください。ちょっと様子が異なると思いませんか? うーん、わからないでしょうか?

実は、この手のフェアって、アイテムを絞って、絞ったアイテムを面陳とか平積みにして見せる、というのが普通のフェアのやり方です。フェアの王道と言ってもよいでしょう。でも、このブックファーストのフェアはそうではないんです。写真をよーく見ていただくと気づくと思いますが、ほとんどの本が一冊しか並んでいないのです。そして面陳している本がほとんどなく、ほぼすべてが「差し」です。

全体を見てもそれがわかると思いますし、手間の下の方も、いわゆる平積みをほとんどしていません。つまり、アイテムを絞るのではなく、できる限り多くのアイテムを集めたフェアなのです。面陳や平積みがドーンとあると、なんかボリューミーで威圧感があるように思いがちですが、このようにほぼ棚差しだけで勝負しているフェアも、こうして実際に見せられると非常に迫力を感じます。すごいです。なんか、本の地力をむしろ一冊一冊だからこそ強く感じと言ってもよいでしょう。

狂ってる? そうかもね!

紀伊國屋書店新宿本店でこんなフェアが始まっています。

わかりますか? あたしも見てきました!

2階、文芸書コーナーでやってます。

もちろん、あたしの勤務先の刊行物も選書されています。

『2666』です。さあ、狂いましょう?

それぞれの海外文学入門フェア

苦手という人が多い海外文学。ファンタジーや推理・ミステリーはコンスタントに売れるのに、いわゆる純文学と言いますか、いわゆる海外文学はなかなか手が伸びないのが実情のようです。そんな状況を少しでも改善しようと、この夏提案している海外文学のフェアですが、今回は二店ほどご紹介します。

上の写真は紀伊國屋書店新宿本店です。二階の海外文学コーナの平台で展開中ですが、既にガタついていて数冊売れているようです。こちらのお店の場合、今回のような<入門>的な海外文学ではなく、本格的なものが日常的に売れているわけですが、夏休みになると、そういうコアなお客様だけでなく、たまたま来たから覗いてみた、という海外文学初心者の方も増えるでしょう。こういう手に取りやすい作品を目立つところに置いてみるのは、新しい読者開拓になるのではないかと思います。

続いては、あえてBOXではなく、棚で展開しているフェアです。新百合ヶ丘エルミロードにある有隣堂です。こちらは紀伊國屋書店とは異なり、日常的に売れるのは日本人の作家の作品のようです。だからこそ、時にこういう風に海外文学のフェアを織り交ぜで、お客様に新しい提案をしていくことが必要なのだと思います。ただ、そういう時に、いきなり分厚くて読みごたえのある海外文学では手も伸びないでしょうから、こういう作品でまずはウォーミングアップをしていただくのも一つの方法だと思います。

さて、両店の海外文学フェア、この夏、一人でも二人でも海外文学のファンを増やすのに貢献できれば嬉しい限りです。

那美さん、再び

もう一つ、朝日新聞夕刊から。こんどは広告です。

漱石の草枕をベースにした舞台のようです。となると、これでしょ?

『『草枕』の那美と辛亥革命』です。那美さんに興味を持った方なら、絶対面白く読めるはず! お芝居を観てから読むもよし、お芝居を観る前に読んでおくもよし、です。

無言館、見に行けない方のために!

今日の朝日新聞夕刊の記事です。

無言館の展覧会です。富山県立近代美術館で開催中のようです。

ところで無言館ってご存じでしょうか? あるいは信濃デッサン館と言った方が知っている人は多いでしょうか? 文字通り、信濃にある美術館で、そこに併設されている戦没学生慰霊美術館が無言館です。

富山で行なわれている展覧会、北陸新幹線も開通したことですし、この夏休みに見に行ってみるのも一興でしょう。あるいは、東京からなら北陸新幹線を上田で途中下車して、無言館そのものを訪ねてみるのもよいかと思います。

が、やはり時間がなくて行けない、という方のためにこちらの本をオススメいたします。

 

『「無言館」への旅―戦没画学生巡礼記』と『無言館の坂を下って-信濃デッサン館再開日記』です。館長でもある窪島誠一郎さんの著作で、この二冊を読めば無言館についてよくわかると思います。

ちなみに窪島さんは信濃デッサン館で来館者から「絵をどのように見たらよいのか?」という質問をしばしばされるそうで、そんな疑問に答えた『絵をみるヒント(増補新版)』という本も書いていらっしゃいます。

 

また窪島さんは水上勉さんの息子さんでもあり、『父 水上勉』という本も書かれています。

祝祭と広場について

青山ブックセンター本店で行なわれた、磯崎新さんと安藤礼二さんのトークイベントに行って来ました。連続四回公演の最終回。今回は沖縄の離島や福岡の宗像神社などの祭祀などの話を枕に、折口信夫や井筒俊彦、西田幾多郎といった名前が飛び出し、非常に面白い対談でした。

今回の連続トークイベント、磯崎さんは皇居前広場を取り上げ、祝祭空間としての広場について語られましたが、トークイベントを重ね、最終回で再び祝祭と広場について話が戻るという構成。なかなかよく考えられています。

 

お二人が語っているように、伊勢神宮などが代表的ですが、日本は永遠に残るような建物を作るというよりも、作り替えたり、作り直したりする傾向があります。あるいは、その一回の祭祀のためだけに施設を作り、祭祀が終わったらすぐに壊してしまうというところもあります。それは伝統や文化の継承でもあり、気持ち・精神の継承でもあるのでしょう。

 

さて、作ったらすぐに壊す、だから祭祀の場には何も残っていない。あえて何も残さずに、何もない空間としておく。それが日本の伝統だったのかも知れませんが、昨今の日本はどこもかしこも建築ラッシュ、あらゆる隙間を建物で埋め尽くそうとしているように感じられると磯崎さんが語っていたような……

ところで会場で安藤さんの『この女を見よ 本庄幽蘭と隠された近代日本』という新刊を購入しました(サインももらいました)。不勉強で本庄幽蘭という女性を初めて知りました。新宿中村屋とも関係がある方とは!

チベットのこと

映画「ルンタ」の公開に合わせて、いくつかの書店で「今、チベットを知るために」と題するフェアが開催されています。下の写真が、そんなフェア開催中の書店で配布されているチラシ(もう無くなっていたらゴメンナサイ!)です。二つ折りで、中を開くと、この映画で描かれるチベットについて更に知るための書籍がリストアップされています。

あたしにとってチベットは、行ってみたい地の一つです。中国国内も行ったことのない土地ばかりで、そもそも行ったことがある場所を数えた方が簡単な程度なのですが、「中国国内で番行ってみたいところはどこですか?」と尋ねられたら、あたしは間髪を入れず「ラサ」と答えます。言うまでもなく、チベット自治区の首府です。

もちろん富士山よりも高い標高ですから、自然環境も厳しく、物見遊山気分で行くのは憚られるような場所だということはわかっています。それでもその大変さがあるからこそ行ってみたいと思うのです。裏を返せば、それ以外の中国各地は時間があれば行くことはそれほど大変ではないだろうという思いもあります。

チベット展やラマ教関係の展覧会があると、ついつい時間の都合をつけて見に行ってしまいますし、曼荼羅ポスターを部屋に貼っていたこともあります。北京へ行けば滞在中に必ず雍和宮には行くほどです。別にチベットの文化や歴史に詳しいわけではないですが、とにかく好きなんです。

さて、最初に述べたフェアの話です。実は、あたしの勤務先の出版物もいくつかリストに挙がっているのです。『チベット 危機に瀕する民族の歴史と争点』『チベットの民話』『チベットの潜入者たち』です。映画が中国共産党によるチベット武力制圧、そしてその後の弾圧について描いているドキュメンタリーですから、この三点の中では最初に挙げた文庫クセジュの『チベット』が一番映画の内容にマッチしている本だと思います。

  

ところで、このチラシのリストには河口慧海の『チベット旅行記』も挙がっているのですが、リストでは白水Uブックス版ではなく、講談社学術文庫版が挙がっています。この『チベット旅行記』はこれまでにもいくつかの出版社から出版されていて、現在でも何種類かが入手可能だと思います。ですが、一般的なのは講談社学術文庫の『チベット旅行記(上・下)』と白水Uブックスの『チベット旅行記(上・下)』、それに中公文庫ビブリオの『チベット旅行記 抄』ではないでしょうか?

    

で、こういう風にいろいろ出ているけど、どれも同じでしょ、だったら安いのを買えばいいのかな、なんて思われる方も多いと思います。確かに、とりあえず軽くかじってみようというのであればそれもよいと思いますが、いろいろと出ている『チベット旅行記』について、かつて高島俊男さんが書いていらっしゃいます。1991年に東方書店から出た『独断!中国関係名著案内』です。たぶんもう品切れではないかと思いますので、下にあたしの所持している同書の写真を載せておきます。もともとは東方書店のPR誌「東方」に連載されていて、それを単行本にまとめたものです。

ただし、高島さんがこの文章を書かれた当時は、手軽な各社の文庫版の『チベット旅行記』が出ていたわけではなく、高島さんはあくまで単行本についての論評です。単行本がそのままほとんど手を加えずに文庫化されたのであれば、高島さんの指摘は今も正しいわけですので、ここに紹介したいと思います。

現在出ている本は三種ある。白水社の西域探険紀行全集7『チベット旅行記』、旺文社文庫『チベット旅行記』、講談社学術文庫『チベット旅行記』である。ただし、白水社版は約四分の一、旺文社文庫は約八分の一の、それぞれ省略がある。(同書P146)

まず分量が異なるんですよね。講談社は一応は全文載っているわけです。しかし分量だけではなく、高島さんはさらに「文章はいずれも原文どおりではない」と述べ、三者の文章を引用しています。そして

白水社は文章そのものを書きかえ、旺文社はかなづかいを改め、漢字をかなに開く、講談社はそのうえカタカナをひらがなに変える。(同書P.147)

と述べ、「明治の文章が持っている明治の匂いがうれしいので、それをこうヘナヘナと書きなおされては、あさましくも味気ない感を禁じ得ない。(同書P.147)」とおっしゃっています。うーん、白水社版、分が悪いです(汗)。

    

ちなみに高島さんが書いている講談社学術文庫版はこの当時5巻本でした。あたしもそのように覚えています。が、最近はそれをまとめた(カットはしていないようです)上下本になっているのですね。

ところで、『独断!中国関係名著案内』には「日中戦争」という呼称に違和感を感じることを述べたエッセイや、一時期の中公文庫の中国関係書籍の充実ぶりを紹介した文章など、いま読んでも抜群に面白いものばかりです。

 

さて、今回はチベットの映画ですからチベットについて関心を持ってもらうのがメインになっていますが、中国学をかじったものの端くれとしては、この機会に中国だけではなくウイグルについても同じように関心を持ってもらえればと思います。

雨は天敵?

東京国際ブックフェアの二日目。今日があたしのブース当番。

この数年、四日間あるTIBFは一日しか会場入りしないことが多く、それだけで全体を判断するのは厳に慎まなければならないのですが、それでも今年は初日、二日目と若干客足が悪いような気がします。

もちろん、主催者発表があったのか、あるいは誰かがカウントしていたのか、そこはわかりません。もしかしたら、入場者数は昨年より多かったのかも知れません。でも、会場にいた実感としては、「今年はお客さんが少ないなあ」と感じました。

ただ、昨日と今日は業界のみ、明日からが一般公開ということですので、明日こそドッと人が押し寄せるのではないか、いや、やはり一般の方は土曜日が多いのかな、などと期待しております。

で、この二日間の人出については、あたしだけの印象ではなく、他社の人もそんなことを言っていました。やはり天候が大きく影響しているようです。もちろん土砂降りよりはマシな天気でしたが、出かけに雨が降っていたり、朝の天気予報で今日は確実に雨に降られるなんて聞いてしまうと、ちょっと出かける気が失せる、それも理解できます。きっとそんな人が多かったのでしょうね。

しかし、では明日以降は晴れるのでしょうか? どうも週間天気予報でもあまりよくはないみたいです。これは困りました。

が、それ以上に困ったといいますか、意外と不便だったのは、会場内、クレジットカードの使える出版社ブースが少ないことです。そもそも「出版社があまり出ていない」ということはおくとして、出ている出版社のブース、ちょこちょこ欲しい本があり、会場では2割引きですから、ついつい買いたくなってしまうのですが、先立つものが……

カードが使えるとよいのですが、聞いてみると使えないところがほとんど。泣く泣く断念しました。

本日の戦利品!

染井吉野ナンシーさん(@someiyoshinonancy)が投稿した写真 –

なので、今回はこちらだけにしておきました。

書店イベントあれこれ

このところ書店でのイベントが続いています。これからもまだいくつかあります。

書店イベントと言っても、書店側から持ちかけられたものもあれば、こちらから持ちかけたものもあります。あたしの勤務先の刊行物の発売記念といったわかりやすいものもあれば、たまたま著訳者が縁のある方である場合もあります。

こういったイベント、「たいへんでしょ?」と言われることもありますが、正直に言えば、それなりの準備もあって時間や手間が取られますから大変です。でも、それが少しでも売り上げに繋がるのであれば、そしてそれ以上に読者の方が喜んでくれるのであれば、やった甲斐があったというもので、大変さも軽減されます。

それでも、物理的にイベントが続くと、こんどは体力的に疲れがたまってきます。イベントが土日にあると、当然のことながら休日出勤ですから、休みが一日減ります。どこか別の日に代休を取ることになりますが、イベントが続いたり、イベント以外にも仕事が立て込んでいると、その代休を取るのもままなりません。そして休めないまま疲れがたまっていくという悪循環。

そこへ持ってきて、必ずしも自社の関連イベントではなくとも、興味深いイベントなどがあると、職業柄やはり聞きに行きたくなってしまうものです。あまりにも自社関連のイベントが続いていると、体が持たないので泣く泣く諦めることもありますが、そうでなければ時折はそういうイベントにも足を運びます。

と、なんとなく面倒臭そうなことばかり書いてしまいましたが、基本的にイベントは楽しいものです。やはり、その道の方の話は面白いですし、興味深いものが多いです。そして、いろいろ考えさせられます、とても勉強になります。興味を持ったから出かけて行ったわけですから、面白くないわけがないというものです。

そんな書店イベントですが、時には申し込もうと思ったときには「満員御礼」になっていることもあります。「嗚呼、残念至極」です。ネットで参加した人の書き込みなどを読んで様子をうかがうしかありません。そして「嗚呼、行きたかったな」とますます後悔の念を深めるのです(笑)。

しかし、こういったイベント、やはり東京に集中しがちです。著訳者の多くが東京在住なので、交通費や宿泊費が基本的に発生しないというのが、中小出版社にとっては大きいです。これが東京以外ですと、例えば大阪や名古屋でイベントをやると言っても大阪や名古屋在住の方のイベントであれば交通費や宿泊費がかからないのでよいのですが、東京から行ってもらうとなると、その交通費や場合によっては宿泊費が発生します。もちろん、われわれ出版社の人間も担当編集者かその書店担当の営業が行かざるを得ませんので、その出張費も発生します。やはり、これは中小出版社にはハードルが高いです。

いや、そんな愚痴を書きたいのではありません。そんなことよりも、だからこそ東京以外に住んでいる本好きの方は、「東京っていいなあ」と思っているのでしょうし、「たまには東京以外でやってくれないかな」とも熱望しているのだろうと思うのです。こちらもそういう気持ちにできる限り応えたいとは思います。思ってはいるのですが……