陸続と台湾?

あたしの勤務先の海外文学シリーズ〈エクス・リブリス〉が続けて台湾文学を刊行します。『歩道橋の魔術師』と『神秘列車』です。

 

別に「台湾文学が来てる!」とか「台湾文学が熱い!」といった確かな自信があるわけではありません。でも、面白い作品が日本で紹介されるようになった、とは言えると思います。アジアの文学というと「苦難の歴史を乗り越えて」的なちょっと暗いイメージがこれまでは強かったかも知れません。でも、最近はそういう暗さを離れた作品が増えているようです。

そんななか、河出書房新社からこんな本が出ました。

セデック・バレ』です。これは「苦難の歴史」系の作品ですが、こういう作品も、否、こういう時代・歴史も知らないといけない、知っていてもらいたい、そう思わせます。こういう作品や時代があってこその「いま」なわけですから。

ウリポ

水声社の新刊『ぼくは思い出す』が店頭で目に入ります。

なんか、どっかで見たことあるタイトルです。

あたしの勤務先の『ぼくは覚えている』ですね。いや、思い出すもなにも、『思い出す』のオビには「ジョー・ブレイナード『ぼくは覚えている』に想を得て」とありますから、似ているもなにもドンピシャなんですよね。

とういうことは、ジョルジュ・ペレックもウリポのメンバーということですよね。ウリポと聞いて反応できるの人は、かなりの海外文学通なのでしょうか? かくいうあたしも『覚えている』が刊行されたころ、海外文学に詳しい書店員さんに教えてもらった程度なんですけど……

国が異なるので、この両書を並べている書店は少ないかも知れませんし、そもそもオビの惹句に書店員さんが気づいてくれているのかもわかりません。でも、ウリポのメンバーなんだし、タイトルもこれだけ似ているわけですから、隣に並べてみてもいいのではないかと、そう思うのです。

ライバルはどれ?

週明けに見本出し予定の新刊『マルクス()』です。

本格的なマルクスの評伝は他社も含め久々なのですが、それでも見落とすことのできない書籍もあります。まずはこちら、ジャック・アタリの『世界精神マルクス』です。

これもかなり厚い本で、言うまでもなくマルクスの評伝です。藤原書店の惹句にも

“グローバリゼーション”とその問題性を予見していたのは、マルクスだけだった。そして今こそ、マルクスを冷静に、真剣に、有効に語ることが可能になった。その比類なき精神は、どのように生まれ、今も持続しているのか。マルクスの実像を描きえた、唯一の伝記。

とあります。あたしは読んでいませんが、それでもまずはアタリの著作という印象を受けてしまうのですが、どうでしょう? ほぼ一年間に刊行された本で、書店でもしっかり並んでいた印象があります。まずはこれが最大のライバルになるかな、と思いますが……

いや、もっと手ごろ、手軽なものが刊行されました。『高校生からのマルクス漫画講座』です。こちらも翻訳物です。

 

さすがに「高校生」とタイトルに入っていますから読者層がまるで異なると思いますが、しかし、この手の<高校生でもわかる>的な入門書ってバカにしてはいけないものが多かったりします。

個人的には、ライバルではあるものの、一緒になって書店店頭が盛り上がれば、それが一番だと思います。ですから、マルクスだけでなく、アダム・スミスやケインズなど経済思想の大物の伝記や作品、入門書も併せて並べてみるのもありではないかと、そう思います。もちろん『21世紀の資本』も忘れずに!

最高学府でもフェア、スタート!

駒場の東京大学生協で、あたしの勤務先のフェアが始まりました。

大学生協というと学生が利用するものだと思いきや、書籍の場合、意外と先生の利用が多いのですよね。学生はお金を持っていない? そんなこともないのですが、やはり先生方の方が書籍に対する関心は軒並み高いようで、大学生協でのフェアの場合、先生方がどれだけ来訪されるかによって売り上げの多寡が決まります。

さあ、今年の東京大学はどうでしょう?

この出版不況に……

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現代新書のお隣に!

講談社現代新書の新刊で『ナチスの財宝』が刊行されました。

ナチスの戦争犯罪は多岐にわたるのでしょうが、ヨーロッパ各地から略奪したさまざまな美術品がその後どうなったのか、なかなか興味あるテーマです。もちろん、本書以前にもこのテーマを扱った本は何冊か出ていまして、本書巻末の参考文献リストにはあたしの勤務先の書籍も三点取り上げていただいております。

  

ヨーロッパの略奪 ナチス・ドイツ占領下における美術品の運命』『ナチ略奪美術品を救え 特殊部隊「モニュメンツ・メン」の戦争』『ユダヤ人財産はだれのものか ホロコーストからパレスチナ問題へ』の三点です。現代新書は当然のことながら書店の「文庫・新書」コーナーに並ぶのでしょうけれど、大型店などでは「人文(世界史)」の棚にも並べているところがあると思います。あたしの勤務先刊行の上掲三点はすべて単行本ですので、「文庫・新書」コーナーで並べるのは難しいと思いますので、「世界史」のコーナーで現代新書『ナチスの財宝』を並べるときには、これらも一緒に、そのすぐ隣に並べていただけると、出版社の営業としては非常に嬉しいです。

どうぞよろしくお願い申し上げます。

もちろん『第二次世界大戦1939-45(上)』もお忘れなきよう……(汗)

やはり日本人はオオカミが好き?

こんな本が刊行されたようです。

雄山閣の『日本人とオオカミ』です。2004年にも同名の書籍が出ていますので、新装復刊なのでしょうか?

それはさておき、サブタイトルが「世界でも特異なその関係と歴史」とあるように、書店でも「動物」の棚ではなく、「日本史」や「民俗学」といった人文の棚に置かれているようです。やはり日本人とオオカミの関係は特殊なのでしょうかね? なにしろ名前からして「大いなる神」ですから。少なくともヨーロッパのような悪いイメージはほとんどなかったと思われます。

さて、実はあたしの勤務先もいろいろオオカミ本を刊行しているのですが、全体としては生態系の中でのオオカミの存在という、いわゆる「オオカミ復活」論的な著作が多いのですが、そんな中に混じってこんな一冊があります。

オオカミ 迫害から復権へ』です。この本はヨーロッパにおけるオオカミ受容史と言ったらよいのでしょうか、オオカミが度のようなイメージを持たれてきたのかについて考察した本です。海外の著作の翻訳のため、この本では日本人とオオカミについてはほとんど触れられていません。あたしも読んだときに、「これに日本人に関する部分が加わったらもっと面白くなって、もっと売れるようになるんじゃないか」と思ったものです。

で、雄山閣の本です。この両者を併せて読めば、非常に面白い東西文化比較になるのではないでしょうか?

妄想、空想、創造

近々刊行予定の『アメリカ大陸のナチ文学』は〈ボラーニョ・コレクション〉の最新刊で、ファン待望の一冊だと思います。タイトルから「いったいどんな本なの?」という興味が生まれると思いますが、決して評論ではありません。

簡単に言ってしまうと、アメリカ大陸(主にラテン)で、戦時中にナチとつながりがあった文学者30名ほどの略歴や人となり、作品解説などをまとめた文学者事典、あるいは文学者列伝です。とはいっても、そんな文学者が実際に存在したわけではなく、すべてボラーニョの創作、彼が頭の中で作りだした文学者であり、作品であり、そして彼らの活動なのです。

えーっ、30名もの架空の人をでっち上げたわけ?

はい、その通りです。ボラーニョ作品と言えば、これでもかというくらい人物を登場させる大パノラマが一つの特徴ですが、本書もその例に漏れず、それだけの文学者をボラーニョが作りだしたのです。巻末には、主な人物の索引的なリスト、彼らの活動の舞台となった主要な文芸誌(もちろん、それも架空)、そして文学者たちの作品リストが数ページにわたって掲載されています。ここまで来ると、もうご立派としか言いようがありませんね。

しかし、こういった作品、過去にもなかったわけではありません。近いところで探すなら、あたしの勤務先の刊行物にもこんなのがございます。

 

まずは『ユニヴァーサル野球協会』です。これも諸説です。野球小説と言えば当たらずといえども遠からず。ただし、実際に行なわれている野球ではありません。主人公の頭の中で毎晩繰り広げられる想像上の野球リーグの話です。日本にも野球盤といったおもちゃがありますが、ああいう盤ではなくサイコロを使って行なうものではありますが、どんな球種を投げるかだけではなく、各選手の特徴、その日の体調なども考慮し、なおかつ球団経営陣まで登場してしまうほどの規模です。なにせ数チームが存在し、リーグ戦を戦っているわけですから、すごいものです。いや、スゴいのは主人公の拘りというか集中力です。

そしてもう一点、『みんなの空想地図』、これもタイトルどおり、実際にはない架空の都市の都市地図です。子供の落書き程度の地図を想像したとしたら大間違いです。本書を手に取ってぜひその地図をご覧ください、これが架空なのかと思わせるほどの出来栄えです。著者曰く、街の規模から人口を決め、その人口規模であればどのくらいの商業施設が必要か、小学校や中学校はどのくらいあればよいのか、すべてきちんと計画して地図を作り上げているのです。

どうでしょう? これだけの妄想、いや空想。ここまで来ると、立派な創作です。偏執狂などと言ってはいけません。ここまでこだわり抜く、その精神力に脱帽です。

いつの間にカバー画像が……

来月刊行の『アメリカ大陸のナチ文学』はボラーニョ・コレクションの最新刊。面白いこと間違いなし、書店の方からも「もうじきですね」と期待の言葉をたくさんいただいております。

で、自分の勤務先のことながら、いつの間にか、そのカバー画像が「新刊情報」のページで公開されていました。円城塔さんの解説なんですね。

この本、タイトルだけ見ると「へえー、アメリカにも対独協力的な作家がいたんだ!」と思ってしまうか知れませんが、そうではありません。すべて架空の話、全部ボラーニョが創作したものです。

って、もうそれを聞いただけで面白いだろうと確信できます。

だって、ボラーニョですから。

サキなのか? ゴーリーなのか?

サキの『クローヴィス物語』の注文が好調です。第2刷が出来たばかりなのですが、それがほぼ完売。いま第3刷に入っています。

刊行前、「サキだからそれなりには売れるだろう」という予想は社内でもしていましたが、ここまでの動きになるとは、個人的には予想外でした。では、なんでこんなに売れているのでしょう? やはりサキ自身の根強い人気でしょうか?

確かに風濤社から「サキ・コレクション」の第一巻『レジナルド』が刊行になりました。

その他、これまでもサキの作品は文庫でたくさん紹介されていますよね。

  

いまどれが品切れでどれが在庫ありなのか調べていませんが、これら以外にも「英米文学選」的なものにもサキは取り上げられていることが多いと思います。

が、うちの『クローヴィス物語』が売れているのは果たしてそれだけなのか、という気もします。何故かと言えば、『クローヴィス物語』にはエドワード・ゴーリーの挿し絵が収録されているのです。

エドワード・ゴーリーと言えば、少し前に「MOE 2015年03月号」がゴーリーの特集をしていました。

サキだけじゃなく、ゴーリーもブームなのでしょうか?

いや、ブームもなにも、ゴーリーはずっと人気ですよね? 別にいま突然にどうというわけではないでしょう。つまり、サキとゴーリーというどちらも根強い人気を持った二人のタッグが『クローヴィス物語』の売り上げを押し上げているのだと思います。

さて、いまのところは「海外文学」のコーナーに置かれている『クローヴィス物語』ですが、ゴーリーの主戦場である絵本とか児童文学のコーナーに置いてもらっても売れるでしょうか? ちょっと毒のあるサキ作品ですから子供に勧めるのはちょっと躊躇われますが……(汗)