Nancy Sensual World

このたび、「染井吉野ナンシーの官能世界」は引っ越しました。新しい世界はこちらになります。今後ともご愛顧のほどよろしくお願い申し上げます。 自動では新しい世界に飛びませんので悪しからず……

新着ニュース

まもなく自著も刊行予定

今日も朝日新聞です。

元フィギュアスケート選手の町田樹選手が本を紹介している記事です。

この町田選手、近々あたしの勤務先から書籍を刊行いたします。それが『アーティスティックスポーツ研究序説 フィギュアスケートを基軸とした創造と享受の文化論』です。

フィギュアスケート選手時代の写真ではありません。タイトルからもわかるとおり立派な研究書です。アーティスティックスポーツというと、少し前から名称が変わったシンクロナイズドスイミングが有名など思いますが、こういった、誰にでもわかりやすい数値で順位や勝ち負けが判定されるのではなく、芸術性や表現力などを競う競技はなかなか奥深いものがありますね。

› 続きを読む

最近のRockfield's Diary

ものすごい光景

とある書店で営業中の時のこと。

馴染みの書店員さんと立ち話をしていると、ごくごくフツーの中年男性がフラッとやってきて、『マルセル・シュオッブ全集』を手に取りレジへ。

と思う間もなく、こんどはもっと若い、大学生くらいの男子3人がやってきて、そのうちの一人が「ああ、これだ、これだ」と言って、やはり『マルセル・シュオッブ全集』を手に取って買おうか買うまいか思案中。見届けませんでしたけど、あの様子ではかなりの高確率で購入したと思われます。少なくとも、その時買わなかったとしても近いうちに買ったでしょう。

この間、わずか10分から15分。

ちょっと待ってください。

本体で15000円もする海外文学が、あれよあれよという間に二冊も売れてしまうって……

ちなみに、あたしも買おうかどうか、悩んでおります。国書刊行会さんも罪作りです。ついでに言えば、「ウィリアム・トレヴァー・コレクション」の『恋と夏』も欲しいんですよね。

「恋と夏」なんて、あたしには縁がないですが、でもこのタイトルだけもキュンキュンしちゃうじゃないですか!

書店イベントあれこれ

このところ書店でのイベントが続いています。これからもまだいくつかあります。

書店イベントと言っても、書店側から持ちかけられたものもあれば、こちらから持ちかけたものもあります。あたしの勤務先の刊行物の発売記念といったわかりやすいものもあれば、たまたま著訳者が縁のある方である場合もあります。

こういったイベント、「たいへんでしょ?」と言われることもありますが、正直に言えば、それなりの準備もあって時間や手間が取られますから大変です。でも、それが少しでも売り上げに繋がるのであれば、そしてそれ以上に読者の方が喜んでくれるのであれば、やった甲斐があったというもので、大変さも軽減されます。

それでも、物理的にイベントが続くと、こんどは体力的に疲れがたまってきます。イベントが土日にあると、当然のことながら休日出勤ですから、休みが一日減ります。どこか別の日に代休を取ることになりますが、イベントが続いたり、イベント以外にも仕事が立て込んでいると、その代休を取るのもままなりません。そして休めないまま疲れがたまっていくという悪循環。

そこへ持ってきて、必ずしも自社の関連イベントではなくとも、興味深いイベントなどがあると、職業柄やはり聞きに行きたくなってしまうものです。あまりにも自社関連のイベントが続いていると、体が持たないので泣く泣く諦めることもありますが、そうでなければ時折はそういうイベントにも足を運びます。

と、なんとなく面倒臭そうなことばかり書いてしまいましたが、基本的にイベントは楽しいものです。やはり、その道の方の話は面白いですし、興味深いものが多いです。そして、いろいろ考えさせられます、とても勉強になります。興味を持ったから出かけて行ったわけですから、面白くないわけがないというものです。

そんな書店イベントですが、時には申し込もうと思ったときには「満員御礼」になっていることもあります。「嗚呼、残念至極」です。ネットで参加した人の書き込みなどを読んで様子をうかがうしかありません。そして「嗚呼、行きたかったな」とますます後悔の念を深めるのです(笑)。

しかし、こういったイベント、やはり東京に集中しがちです。著訳者の多くが東京在住なので、交通費や宿泊費が基本的に発生しないというのが、中小出版社にとっては大きいです。これが東京以外ですと、例えば大阪や名古屋でイベントをやると言っても大阪や名古屋在住の方のイベントであれば交通費や宿泊費がかからないのでよいのですが、東京から行ってもらうとなると、その交通費や場合によっては宿泊費が発生します。もちろん、われわれ出版社の人間も担当編集者かその書店担当の営業が行かざるを得ませんので、その出張費も発生します。やはり、これは中小出版社にはハードルが高いです。

いや、そんな愚痴を書きたいのではありません。そんなことよりも、だからこそ東京以外に住んでいる本好きの方は、「東京っていいなあ」と思っているのでしょうし、「たまには東京以外でやってくれないかな」とも熱望しているのだろうと思うのです。こちらもそういう気持ちにできる限り応えたいとは思います。思ってはいるのですが……

日台作家交流

あたしごときがおこがましいですが、台湾の方のイベントだったという関連から、まずは台湾の娯楽施設での事故にお見舞い申し上げます。

さて、昨晩の下北沢B&Bに引き続き、本日午後は渋谷の丸善&ジュンク堂書店でのイベント《小説家はどう人を描くか――台湾と日本の人間模様、作家模様」》を聴きに行きました。本日の登壇者は呉明益さん、何致和さん、窪美澄さんの三名、それに『歩道橋の魔術師』の訳者・天野健太郎さん。

昨晩の柴崎友香さんとのトークでは「場所」「建物」がテーマでしたが、今日のテーマは「人」でした。以下、感想を交えつつ、自分のメモを拾ってみます。なお、聞き間違っているところがあるかも知れないので、演者の方が必ずしもここに書いたとおりに発言していたとは限りません。あらかじめご了承ください。

日本の作家の作品、特に最近の女性作家の作品に「食べる」シーンが非常に多くなっていると窪さんの話がありました。窪さんなりの解釈では登場人物の造形において、どこで、どんな風に、どんなものを食べるかというのは非常に大事なことであり、それが食事の描写が多くなっている原因の一つではないかと分析されていました。

それに対して何さんは、確かに台湾の文学作品はこれまで食事の描写を重視してこなかったが、それはあまりにもありふれた生活のひとこまであって、物語の中で大事な要素であるとは考えてこなかったからであると解釈され、台湾の作品では食べることではなく、食べている人の感情やその関係の方を重視してきたと答えていました。

話はここから膨らんで、食事と言っても日本の作品では「一人メシ」のシーンも多く、それはさまざまな生活上のストレスの表われでもあるのではないか、強がっているようでいて決して強い女性ばかりとは限らない現代日本女性の現実、そういったものの表現ではないか、といった意見も飛び出しました。

あたし個人としては、窪さんが指摘するような食事の描写というのは、やはり自宅、それもたいていは一人暮らしのアパートなどの一室で一人で食べる情景だったり、せいぜいが恋人と向かい合っての食事という場面を日本の作品では思い出します。そこでの一挙手一投足が主人公や登場人物の感情、内面を端的に表わしていたりすると思います。

それに対して台湾の作品、そんなに読んだわけではありませんが、だから大陸中国も含めてしまいますが、やはり食事というのは家族団らんの象徴、気心の知れた人たちが集ってワイワイと愉しく過ごす時間、そこには笑いはあってもストレスなど微塵も存在しない、そんなイメージです。人情の機微もへったくれもありません。とても主人公の内面を表現するようなシーンになるとは思えません。それに中国の人は自宅ではなく、外で誰かと食べるというイメージもありますから、「一人メシ」なんて文字通りに中国語訳はできたとしても、ニュアンスまで伝えられるのでしょうか、そんな風に思います。いわんや「便所飯」をや。

続いて話題は性描写です。

これは食の描写よりはわかりやすかったかなと思います。呉さんも何さんも指摘していたのは、戒厳令などもあって台湾は長らく言論統制などさまざまな規制があり、共産主義的なもの、正義と認められないもの、エロチックなものが文学以外の各種芸術分野でもかなり厳しく取り締まられていたそうです。

また上述のように食においても、食そのものではなく、それを巡る人びとの関係やつながりを描くのが主になるのと同様、性描写も性描写それ自体ではなく、性行為の前後の感情の揺れや二人の関係性などを描くのが主となる、日台の文学性の違いも原因ではないかと何さんが指摘していました。

しかし、呉さんも何さんも言うように、最近は性描写のある作品も増えているそうで、そういったタブー意識は薄まっているようです。窪さんは、日本の女性作家に性描写が多いのは、男性作家や男性編集者目線が主であったこれまでの文学作品中の性表現に対する異議申し立て、違和感があるとのこと、かつては「女性が姓を描くなんて」という空気が日本にはあったそうです。

さて、『歩道橋の魔術師』は呉さんの本邦初訳の作品。何さんの作品は残念ながらまだ邦訳は一つもありませんが、トークの中で紹介された『マンゴーツリーハウス』は是非読んでみたい作品です。

ところで、今日はこういうイベントだったのでこんなTシャツで参加しました。ユニクロです。