Nancy Sensual World

このたび、「染井吉野ナンシーの官能世界」は引っ越しました。新しい世界はこちらになります。今後ともご愛顧のほどよろしくお願い申し上げます。 自動では新しい世界に飛びませんので悪しからず……

新着ニュース

まもなく自著も刊行予定

今日も朝日新聞です。

元フィギュアスケート選手の町田樹選手が本を紹介している記事です。

この町田選手、近々あたしの勤務先から書籍を刊行いたします。それが『アーティスティックスポーツ研究序説 フィギュアスケートを基軸とした創造と享受の文化論』です。

フィギュアスケート選手時代の写真ではありません。タイトルからもわかるとおり立派な研究書です。アーティスティックスポーツというと、少し前から名称が変わったシンクロナイズドスイミングが有名など思いますが、こういった、誰にでもわかりやすい数値で順位や勝ち負けが判定されるのではなく、芸術性や表現力などを競う競技はなかなか奥深いものがありますね。

› 続きを読む

最近のRockfield's Diary

横山光輝『三国志』のこと

この数年、ゲームの影響なんでしょうね、戦国武将をはじめとした歴史上々の人物たちが、アニメキャラ風に描かれた書籍を見かけるようになりました。

ああいうの、どうも好きではありません。残っている肖像画がどれだけ本人に似ているのかはわかりませんが、少なくともアニメキャラ風のイラストのようなスタイルでなかったことだけは確かです。あんな目鼻立ちの日本人は戦国時代にはいなかったはずだとツッコミを入れてみたところで蟷螂の斧、詮無いことなのでしょう。

また、近代の文豪も、肖像写真が残っているにもかかわらず、どう見たって本人とは思えないようなイラストがカバーに描かれた文庫なども増えています。本当の顔がわからない歴史上の人物ならともかく、ほぼ容姿が判明している近代の人までこんな風になってしまうとは……

個人的にはとても嫌いですし、そんなカバーが掛けられているだけでその本を買う気が失せます。

が、それはあくまであたしの個人的な感想であって、書店の人に話を聞くと、やはりそういう親しみの湧くイラストがカバーになっているモノの方がよく売れるのだそうです。確かに、芥川龍之介の文庫本を買おうというときに、若い子であればカッコいいイケメンのイラストの本をチョイスするだろうことは火を見るより明らかです。

こんなんでいいのか? と嘆くのは年をとった証拠なのかな、と思いつつ、ふと思ったのです。横山光輝『三国志』が出たときはどうだったのかと?

別に『三国志』でなくても構いません。確かに横山光輝には『水滸伝』もありましたよね。そういった作品が世に発表されたとき、以前からの中国文学ファンはどう感じたのだろうかと思うのです。

今でこそ、横山作品は評価されていると思いますし、もちろんゲームキャラ、アニメキャラ的なタッチのイラストではありません。とはいえ、それは現在から見てのお話。あれらが発表された当時としてみれば、時代考証も何もかも無視した、カッコイイ登場人物の造形に多くの人は嫌悪感を示したのではないだろうか、と思うのです。

しかし、あの『水滸伝』や『三国志』のお陰で中国にハマった人、好きになった人って多いと思います。そう考えると、やはり中国古典に親しむ人を増やすという意味では正しかったのかなと思います。時代が変わればイラストの雰囲気も変わるはず。あたしの時代には横山光輝だったように、今の時代ならアニメ風、ゲーム風のキャラ、イラストが人の心に届くのでしょう。

なので、最近は書店でその手の本を眺めても以前のような嫌悪感を抱くことは少なくなりました。まだ完全に嫌悪感がなくなったわけではないところが年齢のせいなのかと思います(汗)。

で、真実は?

このコンテンツはパスワードで保護されています。閲覧するには以下にパスワードを入力してください。

「世界を変えた」人は確かに立派なのでしょうけど……

書店店頭でこんな本が並んでいるのを見かけました。

 

世界を変えた100人の女の子の物語』と『世界を変えた50人の女性科学者たち』です。タイトルもよく似ていて装丁まで似た感じ、同じ出版社から出たシリーズもののようにも見えますが、微妙に判型が異なりますし、そもそも出版社が異なります。

このような「世界を変えた」と名が付く書籍は偉人に注目したものが多いですが、本や建物、発明などモノにスポットをあてたものも数多く出版されていて、このジャンルの人気があることがうかがわれます。つまりは「失敗の本質」の逆で、成功した人の体験に学びたいということなのだと思います。

一般的なものは既に出尽くしたので「女性」にスポット当ててみたのがこの両書ということなのでしょうか。いみじくもそんな両書がほぼ同時刊行されているのは偶然なのか、必然なのか、そのあたりの事情はわかりません。前者は224ページで税込み2592円、後者は128ページで同じく1944円。前者はタイトルが「女の子」となっているように、大人だけでなく、多分に児童にも目を向けた本のようですね。

ところで、こういう「世界を変えた」人の話って、確かにためになるし、勉強になるし、自分も頑張ろうという気持ちにさせてくれる面はあると思うのですが、あたしのような天の邪鬼はどうしても説教臭さが気になって素直に受け取れないところがあります。たぶん、そういう人って多いのではないでしょうか?

そんな人たちに是非読んでもらいたいのが『バンヴァードの阿房宮 世界を変えなかった十三人』です。これも先の二書と同じように翻訳物ですが、たったの13人で446ページ、税込み価格はなんと3888円もします。こちらは、一人一人に紙幅をきちんと割いた読み物です。

この手の本は、翻訳にしろ、日本人の著作にしろ、一人数ページで簡単にその偉人が成し遂げたことが理解できるように作るのが王道だと思います。しかし本書はそうではなく、とにかく自分の信念だけを信じ、ただそれにひたすら忠実に、真面目に生きた13人の物語です。

本書が出た当時、朝日新聞の読書欄で三浦しをんさんが紹介してくださいました。

私が特に好きだったのは、前述した十九世紀のロミオ役者、ロバート・コーツと、台湾人だと自称して十八世紀のロンドンを騒がせたジョージ・サルマナザールだ。コーツ氏の珍妙な舞台衣装と熱演ぶり(および観客の戸惑いと怒号)の描写は、腹の皮をよじれさせずに読むのが困難だ。見たかったよ、こんなすごすぎる『ロミオとジュリエット』! サルマナザール氏に至っては、数奇な人生すぎてここでは説明しきれない。彼は日本人を自称したこともあるのだが、実際はアジア人では全然なかった。(2014年9月28日付朝日新聞)

この文章だけでも、本書を読んでみたくなったりしませんか? ちょっと高いしボリュームもあるので気軽に手が伸びる本ではないかも知れません。しかし、読み始めたら止まらない、とにかく面白い一冊です。そして三浦しをんさんは

本書に登場する人々は、ほとんどが失意と悲しみのうちに世を去り、死後の栄誉や称賛とも無縁だ。だが、著者の丹念な筆致は、大切な事実を浮き彫りにする。情熱を持って精一杯生きたひとのなかに、「敗れ去ったひと」など本当は一人もいないのだ、ということを。

と紹介文を結んでいます。あたしも読みましたが、読後に一抹の寂しさと共に何とも言えない爽快感、満足感も感じられるのが本書でした。