ホラーではなく、サスペンスにすべきだった?

寒い寒い冬の一日、スターチャンネルで特集していた「エクソシスト」を録画しておいたので鑑賞。ドラマはこれから堪能するので、まずは昔も見たことがある映画版から。

 

エクソシスト1」と「エクソシスト2」は見た記憶がしっかり残っていて、ストーリーもほぼ覚えていたとおりだったのでよいとして、かつて見た記憶のない「エクソシスト3」を中心に感想を書きます。

簡単に振り返っておくと、「1」はリーガンに取り憑いた悪魔を神父が退治するというお話。最後、自分の体に悪魔を乗り移させ、自分の命もろとも悪魔を葬り去った階段落ちのシーンが有名ですね。「2」はその後日談。それでもまだリーガンには悪魔が取り憑いていて、でもそれは精神的なものとして科学的な治療を行なう医師と悪魔を徹底的に追い払おうとする神父の話。リーガンには悪魔が取り憑いたままだったのか、それとも精神を病んでいただけなのか、よくわからない出来でした。

上掲が「1」の予告編。下が「2」の予告編。アフリカの呪術師なども出て来て、ちょっと方向性が定まっていない感じも受けます。

そして、こちらが「3」の予告編。

こんどは連続猟奇殺人事件が起きます。「1」にも登場した刑事が主人公となって、15年前に起こった殺人事件との関連を調べ始めます。15年前というと、ほぼリーガンの悪魔払いのころの話です。この二つがリンクして現在の連続殺人事件へと繋がっていくのですが、前半は完全に推理ものです。果たして犯人は刑死せずに生き延びていたのか、それとも当時の犯行の詳細を知る模倣犯の仕業なのか。

そして15年前から隔離病棟に入れられている患者が登場して、事件は佳境へ向かいます。ネタバレしてしまうと、結局、この患者、15年前の殺人事件の犯人が刑死した後、その魂が「1」で転落死したカラス神父の体に乗り移って復活し、しかし完全に復活するのに15年もかかってしまい、ようやく最近意識を取り戻したということらしいです。そして再び犯罪を犯していたと。

つまり、やっぱり悪魔はいるのか、という話になってしまって、キリシタンではないあたしには却ってどっちらけなストーリーです。むしろこの患者が犯人だとしても、看護師や医者の心を操って(催眠術師的に)殺人をやらせるとか、看護婦を丸め込んで隔離病棟から脱出して殺人を犯していた、というストーリーにした方がはるかによかったのではないかと思います。もちろん、自分がかつての殺人鬼だと思い込んだり、悪魔が取り憑いていると信じ込んでいるぶんには構いませんが、本当にそれではちょっと拍子抜けしてしまいます。

この作品、上に書いたようにすれば、別に悪魔を出してこなくても十分に成り立つ作品だったと思いますが、やはり原作者が自分とは無関係に作られた「2」に納得せず、自らメガホンを取って作り上げた作品だけあって、「1」に、つまりは悪魔憑きという設定に囚われてしまっていたのでしょう。いったん「エクソシスト」を離れて作ればよかったのにと思います。

鬼平だけじゃないよね

「火附盗賊改」の正体』読了。

書名は「正体」となっていますが、別に謎解きでも何でもなく、徳川三百年を通じた火附盗賊改という役職の変遷を追ったものです。『鬼平犯科帳』しか知らない身としては興味深い話ばかりで面白かったです。

そもそも長谷川平蔵以外にも歴代の火盗改がいたことは常識としてわかりますし、江戸には南北の町奉行がいたわけで、それとの役割分担とか確執といったものもあったのではないかなといった予想はある程度は当たっていました。

全体としては、当時の文献の引用なども手際よくまとめられており、とにかく長谷川平蔵だけではない火付盗賊改について知りたいという人には格好の入門書ではないでしょうか? だからこそ、鬼平ファンには若干物足りないところもあるのではないでしょうか。

来週見に行きます!

来週の土曜は、新宿で映画を見る予定。

ブラインド・マッサージ」です。

中国の作品で、原作『ブラインド・マッサージ』の邦訳は、もちろんあたしの勤務先から刊行済み。書店店頭にも並んでいるはずです。

南京にある盲人マッサージ店を舞台にした小説なんですが、人が出会い、働き、助け合うのに障害者ということは関係ない、と感じました。ありきたりな感想ですが、昨今言われるようになった、「障害者を特別視しない」作品であるように思えます。もちろん目が見えないことから発するさまざまな事件や葛藤は描かれます。「美しい」とはどういうことはわからない、なんてシーンは典型的だと思います。

でも作者は、別に障害者の話を書こうと思っているのではないと思います。人の心がぶつかり合ったらどういう化学反応を引き起こすのか、といった普遍的なテーマを描いているだけなのだと思います。

翻訳の刊行から少したち、ようやく映画が公開になるということで、新聞紙上でかなり大きく取り上げられたようです。そしてあたしが来週見に行くのは、映画を見るだけではなく、訳者の飯塚容さんと書評家の豊崎由美さんのトークイベントが上映の後にあるからです。

なお、映画では多少端折られていますが、小説では、ちょっとレズビアンを匂わせるようなシーンもあって、そういうところも楽しめる(?)のではないでしょうか?

本日のオススメ!

東京は晴れていますが、全国的にはかなり荒れた天気のようですね。東京も、もしかすると降るかも知れない、と天気予報では言っていました。

そんな日なので、本日のオススメはこちらです。

Uブックスの『おわりの雪』です。「もういい加減、雪はたくさんだ。春が待ち遠しいよ」という気分にさせる書名ですね。凛とした空気感のある作品です。

そしてもう一作。

今日は1月14日。センター試験? いいえ、社会人なのでモーマンタイです(汗)。ここで訴えたいのは、バレンタインまで一か月ということです。

別にチョコが欲しいと言っているのではありません。欲しかったら自分で買います(←負け惜しみ?)ので、ご心配なく。えっ、誰も心配などしていないって?

まあ、それはおくとして、オススメはこちらです。

《エクス・リブリス》から『ヴァレンタインズ』です。

こちらは、タイトルどおり、12組のカップルの愛の形を描いた短篇集です。それぞれのカップル、どうしてそんな一言を言っちゃうの、どうしてそんな態度を取ってしまうの、というパターンばかりです。そのもどかしさ、モヤモヤ感、ハマること請け合い! ぜひヴァレンタイン・デーまでには読んで欲しい一冊です。