台湾の人気作家・呉明益の作品を何作か読んだことがありますが、第二次大戦の影が色濃いのが特徴的だと思います。もちろん作家自身が実際に戦闘に参加したような年齢ではないので、親の体験、親から聞いたことを作品に昇華しているわけですが……
そんな呉明益作品を読んで知ったのが、高座海軍工廠です。高座とは神奈川県にある地名で、あたしも薄ぼんやりと、そこに軍需工場があるのは知っていましたが、それ以上のことは何も知らず、『眠りの航路』でより詳しく知った次第です。もちろん小説ですから脚色はあるでしょうし、あくまで呉明益の取材に基づく描写ですから、細部においては事実と異なるところもあるでしょう。でも雰囲気はよく伝わってきました。
そして、今朝の朝日新聞にこんな記事が載っていました。記事の石川さんは、当時の「宿舎の舎監の息子」とありますから、呉明益の父親と面識があるのかもしれません。ハッキリとした記憶はないかも知れませんが、恐らくたぶん実際に顔を合わせたことはあるのでしょう。そんなことを考えるととても不思議な気がします。
なお『眠りの航路』は小説ですが、もっと気軽に読めるエッセイとしては『我的日本』所収の「金魚に命を乞う戦争」があります。こちらには『眠りの航路』執筆に至る取材のことなどが描かれています。