呉明益と高座海軍工廠

台湾の人気作家・呉明益の作品を何作か読んだことがありますが、第二次大戦の影が色濃いのが特徴的だと思います。もちろん作家自身が実際に戦闘に参加したような年齢ではないので、親の体験、親から聞いたことを作品に昇華しているわけですが……

そんな呉明益作品を読んで知ったのが、高座海軍工廠です。高座とは神奈川県にある地名で、あたしも薄ぼんやりと、そこに軍需工場があるのは知っていましたが、それ以上のことは何も知らず、『眠りの航路』でより詳しく知った次第です。もちろん小説ですから脚色はあるでしょうし、あくまで呉明益の取材に基づく描写ですから、細部においては事実と異なるところもあるでしょう。でも雰囲気はよく伝わってきました。

そして、今朝の朝日新聞にこんな記事が載っていました。記事の石川さんは、当時の「宿舎の舎監の息子」とありますから、呉明益の父親と面識があるのかもしれません。ハッキリとした記憶はないかも知れませんが、恐らくたぶん実際に顔を合わせたことはあるのでしょう。そんなことを考えるととても不思議な気がします。

なお『眠りの航路』は小説ですが、もっと気軽に読めるエッセイとしては『我的日本』所収の「金魚に命を乞う戦争」があります。こちらには『眠りの航路』執筆に至る取材のことなどが描かれています。

「まち」or「ちょう」

今朝の朝日新聞にこんな記事が載っていました。東京のいろいろな土地を紹介する記事で、今日登場していたのは「神田小川町」でした。

神田小川町と言えば、あたしの勤務先の所在地です。さすがに記事中に勤務先のことは出て来ませんが、やはり親しみが湧きますね。

ところで「神田小川町」ですが、「かんだおがわまち」と読みます。都内には「神田○○町」という地名がたくさんありますが、そのほぼすべてが「かんだ○○ちょう」と読むのですが、「神田小川町」は「かんだおがわまち」と読みます。

かつて、何かの本だったか記事だったかで「神田○○町」の「町」を「まち」と読むのは「神田小川町」とあと一つあると読んだのですが、そのもう一つが思い出せません。たぶんネットを検索すればすぐに出て来ると思うので、興味がある方は是非検索してみてください。

ケプラーとガリレイ、そしてピタゴラス

今朝の朝日新聞に雑誌『ニュートン』とのコラボ記事が載っていました。あたしは子供のころから本や歴史が好きな文系人間だったので、『ニュートン』はもちろん知ってはいましたけど、ページを開くことはほとんどありませんでした。

ですからそっち方面には非常に疎いのですが、本日の記事は非常に興味深く読みました。なぜなら取り上げられているのがケプラーとガリレイだったからです。上にも書いたように、根っからの文系人間ですので、ケプラーもガリレイも名前くらいを知っていても、どんな業績を上げた人なのか正確なところはよくわかっていません。まあ、ガリレイなら地動説だったっけ、くらいの知識はありますが。

それなのにどうして興味を持ったかと言いますと、あたしの勤務先からその名も『ケプラーとガリレイ』という本を出しているからです。同書は

科学史上に輝く巨星の対照的な生涯と大発見、時代背景を活写した評伝。二人を結んだ「絆」として、交わした書簡が重要な役割を果たす。独の科学ジャーナリストによる「最良の科学書」

という内容のもので、朝日新聞の記事を読んだ方なら興味を持たないはずがない一冊ではないでしょうか。ケプラーとガレイが同時代ということは知っていても、どれくらい親交があったのか詳しくない方も多いはず。本書はそんな方にお薦めです。

そして今回の朝日新聞の記事にはもう一人、外せない名前が載っていました。それがピタゴラスです。記事中には「天球の音楽」という言葉も出て来ていますが、なんとあたしの勤務先では『ピュタゴラスの音楽』という本も出していたのです(現在、品切れ)。この本は

「ピュタゴラスの定理」で知られる紀元前6世紀のギリシアの賢人。その数奇に満ちた生涯を辿り、人類の思考を導いてきた自然の原理と現在に至るまでの思想の継承史を明らかにする

という内容の本ですが、「思想の継承史」の中にはケプラーも入っているのです。品切れなので古本屋をあたっていただくしかないですが、本書も朝日新聞の記事に興味を持たれた方には食指が動く本ではないでしょうか。

この三社の並びに気づかれた方は!

土曜日と言えば、新聞の読書欄が気になるというのはこの業界の恒例です。日曜日に載る新聞もありますが……。そして先々週の『陽だまりの昭和』、先週の『日本の反戦非戦の系譜』に続き、今週はこちらの書籍が掲載されています。

それが『厨房から見たロシア』です。著者はヴィトルト・シャブウォフスキ。あたしの勤務先からこれまでに『踊る熊たち』『独裁者の料理人』を刊行しています。どちらも話題となり、好評をもって受け入れられた二冊です。

そして本日の評を読むと、これもまた面白そうな一冊ですね。自社の本なのに読んでいないのが、営業としては申し訳ないのですが、改めて面白そうな本だと認識した次第です。ちなみに本書もそうなのですが、『独裁者の料理人』もレシピが掲載されていますので、日本でどれだけ食材や調味料が揃うのかわかりませんが、ご興味がある方は挑戦するのもよいのではないでしょうか?

ところで二枚目の画像は、本日の読書欄を引きで撮った写真です。写っている書籍をご覧になって気づかれた方はいらっしゃるでしょうか。

とはいえ、何に気づけばよいのか、気づく点はいろいろとありますよね。申し訳ありません。実はここに写っている出版社に注目してほしいのです。

東京大学出版会、みすず書房との三社で、四年に一度「レビュー合戦」というフェアをやっていますが、その三社が勢揃いしているのです。「レビュー合戦」は三社の社員がそれぞれ他社の書籍をお互いに批評し合うというフェアで、オリンピックイヤーに書店で開催しているものですが、いみじくも朝日新聞紙上でレビュー合戦っぽいものが再現されてしまったわけです。

鼻ではなく目が……

今朝の朝日新聞の文化欄で、先頃完結したコミックのことが載っていました。中世のヨーロッパを舞台にしたコミックですが、最近はこういう史実にかなり忠実なコミックも多いように感じます。

史実に忠実なだけでなく、よくもまあこんなニッチな時代や人物を選んだなあと思ってしまうような作品も多いようです。そして、今回紹介されているコミックの主人公はアンナ・コムネナです。

となると、記事中でも触れられていますが、あたしの勤務先から『歴史学の慰め アンナ・コムネナの生涯と作品』が重要な参考文献でしょう。たぶん、アンナ・コムネナを扱った本は日本ではこれしかないのではないでしょうか。

ですから、このコミックを読んでいる人であれば、本書のことも既に知っているのかも知れません。たださすがに、書店の店頭でコミック売り場に『歴史学の慰め』を並べているようなところはないでしょう。でもこの記事を見たら並べてみるのも面白いのではないでしょうか。

ところでいよいよ花粉症のシーズン到来です。あたしは花粉症ではあるのですが、比較的症状が軽い方で、専用の眼鏡を装着することもなければ、マスクをすることもなく外出しています。点鼻薬をシュッシュッとスプレーすれば鼻づまりも解消するので、あまりこの季節を苦にしていませんでした。

しかし、この土曜日から目がちょっと痒くて、ゴロゴロする感じがし始めました。掻いてしまうとよくないのですが、目の周りがちょっと赤くなり、なおかつカサカサになってしまいました。これはちょっとツラいなあと思い、近所のドラッグストアで買ってきたのが写真の塗り薬です。保湿になるので、カサカサはだいぶ収まりました。痒みはまだありますが、症状はだいぶよくなりました。

新書をよく読んでいます

かつては日曜の新聞紙面に掲載されていた書評欄、読書欄いつのころからか土曜日に掲載されるようになりましたね。朝日新聞の読書欄が土曜日掲載になったのは何年前でしたでしょうか。

それはさておき、先週に引き続き、今週の読書欄にもあたしの勤務先の刊行物が掲載されました。『日本の反戦非戦の系譜』です。いろいろと考えさせる本ですね。

アジア諸国や自国民にあのような悲劇をもたらした戦争を起こした日本こそは世界の反戦非戦をリードする国にならないといけないと思うのですが、むしろ平和憲法を改めて、もう一度武力を持つべきだという意見が、このところ強くなっているような気がします。憂うべき異だと思いますが、そういう国際情勢なのでしょうね。

ところで同じ今朝の朝日新聞に、こんな記事も出ていました。今年の岸田國士戯曲賞の受賞作が決まったという記事です。今年はお二人が受賞となったようです。

紙面にはルビは付いていませんし、演劇界の方であれば常識なのでしょうが念のため、「岸田國士」は「きしだくにお」と読みます。よく「きしだこくど」と間違えている方もいらっしゃいますので申し添えておきます。

再び読書欄に戻りますと、最初のページの「売れてる本」に掲載されている『新・古代史』はあちこちの本屋で積まれていて、売行きも好調なようです。あたしも日本の古代史、興味があるので読んでみようと思って買ってみました。

そして今日の読書欄には他にも中公新書の『ユダヤ人の歴史』と『近代日本の対中国感情』が載っているのですが、どちらも既に読み終わっております。非常に面白かったです。さすがは中公新書という一冊、否、二冊でした。

そして古代史に興味があるので、『新・古代史』と共に『ヤマト建国の真相』も買っておきました。あたしが生きているうちに、邪馬台国論争に決着は付くのでしょうか。

ミモザの下で

今日は国際女性デーだそうです。なので、朝日新聞もちょっと紙面がいつもと違いました。一面のタイトル下には次のように書いてあります。

3月8日は、女性の地位向上を目指して国連が定めた「国際女性デー」です。誰もが尊重され、多様性のある社会が実現することを願って、朝日新聞は私たちの足元に溶け込むジェンダーに目を凝らすThinkGenderの記事を特集します。題字はこの日のシンボル、ミモザの花をあしらった特別デザインです。

というわけで、あちらこちらに黄色花があしらわれているのですね。

それにしても、このタイトル、題字の部分を見てすぐに「あっ、ミモザだ」とわかる人はどれくらいいるのでしょう。あたしなどはタンポポか何かしら、くらいに思っていたので、お恥ずかしい限りです。

ところで、ミモザと聞くと沢田聖子の楽曲「ミモザの下で」を思い出します。切なく淡い恋を歌った曲で、中学や高校の頃によく聞いていたものです。

あたしにとってミモザと言えばこの曲しかありません。ただ、その当時もミモザってどんな花なのか知りませんでした。いまならすぐにスマホやパソコンで検索できますし、そうすれば花の画像もすぐに現われることでしょう。しかし、あたしが中高生の頃はそんな便利な機器はまだ一般には普及していませんでしたから、図書館で植物図鑑を調べるしか方法はありませんでした。あたしもそこまで熱心ではなかったので、結局調べずじまいでしたが……(汗)

さて朝日新聞はミモザの花にあやかって黄色をあちこちに配していますが、本日の読書欄に掲載された『陽だまりの昭和』もカラー写真で紹介されていればよかったのにと思います。なぜなら同書のカバーが黄色だからです。

別にミモザを意識したわけではありませんが、図らずも黄色のカバーが本日の朝日新聞とマッチしてしまったわけです。掲載写真はモノクロなので、実際にはどんな色のカバーなのか、是非とも本屋さんで実物を見ていただきたいところです。

それにしても、国際女性デーだというのに、朝日新聞の紙面ではトランプ米大統領による多様性否定の記事が踊っています。「逆差別だという」意見もそこだけを切り取れば納得する面もありますが、まだまだ女性の立場は弱いのが現実です。本当の意味で「女性優遇は差別だ」と言えるような世の中になるのは何年後のことでしょう。

なかなかの占有率?

本日の朝日新聞読書欄には、予告どおり、あたしの勤務先の書籍が掲載されていました。ありがたいことです。

そんなわけで楽しみに、ちょっとわくわくで紙面を開いたのですが、ちょっと驚いてしまいました。

ご覧のように、みすず書房、春秋社と並んで、人文会仲間である両社の書籍も載っていたからです。なおかつ、あたしの勤務先の書籍が載っている位置のシンメには吉川弘文館という、これまた人文会仲間の書籍が掲載されています。この掲載率、紙面の占有率、なかなかのものではないでしょうか?

さて、あたしの勤務先の書籍はこちら、『メアリ・シェリー』です。お陰様で、既によく売れている商品ですが、これで更に売り上げが伸びるのではないかと期待しております。

ところで、メアリ・シェリーってご存じですか。朝日新聞の読書欄を読んでいる方であれば知っている人も多いとは思いますが、一般の方ではどのくらいの認知率になるのでしょう。たぶん街でインタビューをしたら、『フランケンシュタイン』はほぼ100パーセントの人が知っていると思います、読んだことがあるかは別として。でも、その作者名を言える人がどのくらいいるか、あたしはかなり低いのではないかと思っています。

実はあたしも、知りませんでした。いえ、女性が原作者だということは知っていたのですが、その時に名前まで覚えるほどには関心を持っていませんでした。情けないことです。たぶん多くの人にとって「フランケンシュタイン」って小説ではなく、映画が思い浮かぶのではないでしょうか。海外ではどうなのでしょうね。

あと、フランケンシュタインというと、あの怪物を思い出す人も多いと思いますが、フランケンシュタインというのはあの怪物を作り出した博士の名前ですよね。そんな思い違いもフランケンシュタインのあるあるだと思います。

いろいろと獲得しました?

本日の朝日新聞。読書欄にあたしの勤務先の刊行物は紹介されていませんでしたが、触れたくなる点がありましたので……

まずは読書欄に載っている週間ベストテン。今回は紀伊國屋書店新宿本店のランキングでした。

並居る強豪を抑え、なんと乃木坂46五期生、五百城茉央のファースト写真集が堂々の第一位です。確か、紀伊國屋書店限定カバーが発売されていたのではないでしょうか。たぶん、それが売上アップの要因の一つだと思います。

そして読書欄を過ぎて社会面へ。読売文学賞が発表されていました。ネットニュースなどでも話題になっているのは円城塔さんの受賞ですが、他にも注目ポイントがあります。

「研究・翻訳賞」に、なんとノーベル文学賞を受賞したハン・ガンさんの『別れを告げない』が受賞しました。これは翻訳の斉藤真理子さんが本作品で受賞された、ということですね。

また「評論・伝記賞」には、あたしの勤務先でもたいへんお世話になっている阿部賢一さんが受賞されています。そう言えば、円城塔さんも、あたしの勤務先の刊行物のトークイベントでゲストに来ていただいたことがあります。そんなことも思い出しました。

祝、受賞!

本日は、大佛次郎賞の発表です。今朝配達された朝日新聞に、ご覧のように載っています。

受賞したのは、あたしの勤務先から刊行されている『「喜劇」の誕生』です。見事に大佛次郎賞を射止めました。

ところで大佛賞って、この業界の人であれば「おさらぎしょう」と読めると思いますが、そうでないとどれくらいの方が正しく読めるのでしょう。たぶん、街でアンケートを取ったらかなりの確率で「だいぶつしょう」と読まれてしまうのではないでしょうか。

いや、「大仏」ではなく「大佛」と書いてあるので、「佛」の字が読めない人も多いかも知れませんね。致し方ないことでしょう。

とはいえ、あたしもマウントを取るような書きぶりですが、肝心の大佛次郎がどんな人なのか、ほとんど知りません。読んだことはないですが、『鞍馬天狗』の著者だったよなあ、くらいの印象です。あとは、子供のころに『天皇の世紀』という作品で名前を知ったくらいです。子供だったので「大佛」が読めなかったのか、「大仏」と書いてあったので面白い名前だなあと感じたのか、とにかく「天皇の世紀」という作品名は割と記憶に残っています。

で、今回の受賞は『「喜劇」の誕生 評伝・曾我廼家五郎』です。副題からもわかるように曾我廼家五郎の生涯を軸に松竹新喜劇、日本近代の演劇史を俯瞰した一冊です。ぜひ店頭で手に取ってみてください。