秋の夜長に哲学書など……

新書判で刊行している哲学思想の古典シリーズ《思想の地平線》も14冊刊行されました。来月末には15冊目が刊行になります。お陰様で、多くの読者の方に支持いただいているようです。ここで改めてラインナップをご紹介します。

『偶像の黄昏/アンチクリスト』

キリスト教世界を痛烈に皮肉りながら「権力への意思」を説く、ニーチェ哲学の総括とも言える最晩年の重要作品。

『悲劇の誕生』

ギリシア悲劇に理性と本能、秩序と陶酔の究極の結合を見出し、理性を重んじた近代的な道徳を批判する、ニーチェ哲学の原点。

『幸福論』

抽象思考を重ねるのでなく、日常的な場面の中から幸福への合理的な道筋を見つけだす。「幸福とは何か」を追究した名著。

『孤独と人生』

生を苦ととらえ、苦からの解脱を説くショーペンハウアー。東洋思想に通底するそのペシミズムより湧出した、幸福論。

『ヘーゲル読解入門(上・下)』

時代の転換期にあらわれ、フランス思想の転換点としての役割を果たした哲学者、コジェーヴによる記念碑的講義の記録。

『ロシア共産主義の歴史と意味』

マルクス主義者から宗教哲学者へ転じた稀代の思想家によって語られる、正教精神から社会主義革命へと至るロシア民族の歴史的必然性。

『存在と苦悩』

ショーペンハウアー入門。生と苦悩と救済をめぐる、珠玉の警句の書。

『孤独な散歩者の夢想』

生きていくことの喜びと哀しみ。『マルゼルブ租税法院院長への四通の手紙』も収録。

『方法叙説』

「私は考えている、だから私は有る」――すべての近代思想はここから始まった。

『ドストエフスキーの世界観』

自由、悪、革命、大審問官──魂の近親者ベルジャーエフがドストエフスキーから論じるロシア精神と人類に課された普遍的問題のすべて。

『社会契約論』

「最初の社会」から論じて、社会契約による正しい統治のあり方を喝破した民主主義の聖典。

『人生について』

トルストイをして「生命、知恵、教訓、慰安」にみちた「最上の書物のひとつ」と言わしめた哲学教授アミエルの日記、そのエッセンス。

そして来月、11月の下旬にはキルケゴールの『死にいたる病/現代の批判』が刊行予定です。今後も陸続と古典的名著が刊行されますので、是非ご期待ください。

平岡君とは、若き日の三島由紀夫のことです

紀伊國屋書店新宿本店をはじめ、全国の書店で海外文学シリーズ《エクス・リブリス》のフェアが始まっています。どこの書店でも、というわけではありませんが、もし見かけたら是非ご覧ください。

そして秋のこの時季、新潮クレスト・ブック素のフェアを開催している書店も多いです。《エクス・リブリス》と同時開催している書店も時々見かけます。海外文学好きにはたまらない競演ではないでしょうか。

そんな両シリーズのフェアにはフェア用の小冊子が置かれています。早々となくなってしまっているかも知れませんが、TakeFreeなので、こちらも是非手に取っていただきたいものです。

前にも書いたかもしれませんが、あたしはクレスト・ブックスの冊子に載っている「ただいま翻訳中!」のページが好きです。「ああ、もうじきこれが刊行されるんだ」とワクワクしながら待つ時間がとても尊いものです。

そして《エクス・リブリス》の冊子は、同シリーズが100冊突破(100タイトル目は12月刊行です)を記念した冊子です。翻訳家の小山内園子さん、藤井光さんに文章を寄せていただいています。さらに書店員さんからも三名、丸善博多店の徳永圭子さん、TSUTAYAウィングタウン岡崎店の中嶋あかねさん、ジュンク堂書店池袋本店の小海裕美さんに《エクス・リブリス》について書いていただいております。こちらも是非手に取っていただければ幸いです。

と書きながら、《エクス・リブリス》ではなく、白水Uブックスの新刊をご紹介します。それがこちら、『眠りの航路』です。著者は『歩道橋の魔術師』で知られる台湾の作家、呉明益です。『眠りの航路』は2021年に《エクス・リブリス》の一冊として刊行され、今回はUブックスになります。

書店に並ぶのは来週末くらいになると思いますので、いましばらくお待ちください。そして、《エクス・リブリス》の時にも内容紹介に書いてありましたが、今回も表4に書いてありますが、

三郎が暮らした海軍工廠の宿舎には、勤労動員された平岡君(三島由紀夫)もいて兄のように慕われていたが、やがて彼らは玉音放送を聴くことになるのだった--。

というように、本書には若き日の三島由紀夫が登場しているのです。これがどこまで事実なのかはわかりません。ただ呉明益の父親が神奈川の高座海軍工廠で働かされていたことは事実ですし、同じ時期に作家になる前の三島由紀夫がいたこともやはり事実ですので、二人がここで出会っていたというのも、あながち作家の創作とも思えません。

そんなところに注目して読んでみるのも面白い作品です。確かに台湾人にとって日本占領時代は苦しい歴史だったと思いますが、そんな台湾人の生き様や思いの一端が垣間見える作品となっています。

今日の配本[26/10/13]

まいにちふれるフランス語手帳2027

トリコロル・パリ 監修/ふらんす編集部 編

2027年はフランス語で手帳をつけませんか。月や曜日はもちろんフランス語で記載。フランスの祝日やその日の聖人名に加えて、折々のフランスを感じられるエッセイやひとことを掲載。まいにちフランスを感じることのできる手帳です。巻末には単語リストや日記に使える表現集付き。初心者でもフランス語で書く習慣が身につけられます。予定管理にもフランス語学習にも最適なこの手帳を相棒に、楽しく気軽にフランス語にふれてみてください。

まいにちふれるドイツ語手帳2027

マライ・メントライン 監修/白水社編集部 編

2027年はドイツ語で手帳をつけませんか。月や曜日はもちろんドイツ語で記載。ドイツの祝日に加えて、折々のドイツにおける文化やイベントにちなんだ、エッセイやひとことを掲載。まいにちドイツを感じることのできる手帳です。巻末には単語リストや日記に使える表現集付き。初心者でもドイツ語で書く習慣が身につけられます。予定管理にもドイツ語学習にも最適なこの手帳を相棒に、楽しく気軽にドイツ語にふれてみてください。

まいにちふれるスペイン語手帳2027

スペイン語教室ADELANTE 監修/白水社編集部 編

2027年はスペイン語で手帳をつけませんか。月や曜日はもちろんスペイン語で記載。スペインの祝日やその日の聖人名に加えて、折々のスペインを感じられるエッセイやひとことを掲載。まいにちスペインを感じることのできる手帳です。巻末には単語リストや日記に使える表現集付き。初心者でもスペイン語で書く習慣が身につけられます。予定管理にもスペイン語学習にも最適なこの手帳を相棒に、楽しく気軽にスペイン語にふれてみてください。

まいにちふれる中国語手帳2027

李軼倫、原田夏季 監修/白水社編集部 編

2027年は中国語で手帳をつけませんか。月や曜日はもちろん中国語で記載。中国の祝日や旧暦に加えて、折々の中国を感じられるエッセイやひとことを掲載。まいにち中国を感じることのできる手帳です。巻末には単語リストや日記に使える表現集付き。初心者でも中国語で書く習慣が身につけられます。予定管理にも中国語学習にも最適なこの手帳を相棒に、楽しく気軽に中国語にふれてみてください。

まいにちふれるタイ語手帳2027

福冨渉、ピム 監修/白水社編集部 編

2027年はタイ語で手帳をつけませんか。月や曜日はもちろんタイ語で記載。タイの祝日や太陰暦に加えて、折々のタイを感じられるエッセイやひとことを掲載。まいにちタイを感じることのできる手帳です。巻末には単語リストや日記に使える表現集付き。初心者でもタイ語で書く習慣が身につけられます。予定管理にもタイ語学習にも最適なこの手帳を相棒に、楽しく気軽にタイ語にふれてみてください。

まいにちふれるフィンランド語手帳2027

西野芳美、キエロティエ 監修/白水社編集部 編

2027年はフィンランド語で手帳をつけませんか。月や曜日はもちろんフィンランド語で記載。フィンランドの祝日に加えて、折々のフィンランドを感じられるエッセイやひとことを掲載。まいにちフィンランドを感じることのできる手帳です。フィンランドに多くある「名前の日」を網羅、ベリー摘みやモルックなどフィンランド愛がぎゅっと詰まっています。巻末には単語リストや日記に使える表現集付き。初心者でもフィンランド語で書く習慣が身につけられます。予定管理にもフィンランド語学習にも最適なこの手帳を相棒に、楽しく気軽にフィンランド語にふれてみてください。

そろそろ始まっているのかしら?

二日間の手帳の市が終わって、今日のお休みは自宅でのんびりです。まあ、今日が休みだから二日間やれたわけですが。

そんな手帳の市ですが、二日目のあたしはこのようなスーツ姿でした、ネクタイはキティちゃんですが。ちなみに一日目は、デニムのパンツにジャケットという「イケオジ」スタイル(自己申告)でした。

ただ手帳の市、女性が来場者の9割くらいという、カワイイグッズのマーケットですので、出展者も堅苦しい恰好をしている人はほぼ皆無でした。そういう意味では、あたしはとても浮いていたのではないかと、いまさらながら危惧しております。

話は変わりまして、全国の書店、何店舗くらいだったか忘れてしまいましたが、花なり多くの書店でこんなフェアが始まりました、いや、商品はこれから出荷ですから、たぶん今月下旬くらいからのスタートでしょうか。それが「翻訳者・書店員14人が選んだ! はじめての海外文学フェア2026」です。

あたしの勤務先の書籍も選んでいただけたので、ちょこっとだけ参加しております。画像は、そのフェアで配布されるパンフレットです。海外文学はちょっと苦手、どれを読んだらいいかわからない、という方はまずこのフェアで並んでいる作品から選んでみてはいかがでそう。プロが選んだ間違いのない海外文学が並んでいるはずです。

場違いだった?

二日間開催された手帳の市が終わりました。次は来年の4月だそうです。同じ日程で、比較的近い場所で手帳博という催しも行なわれていて、ハシゴした手帳好きの方も多かったようです。

そんな手帳市、初参加の新参者であるあたしの勤務先は、非常に浮いていたのではないかと思います。多くのブースが、手帳やノート、そしてそれをデコるためのグッズ(シールやスタンプなど)を扱っているブースでした。それも企業というよりは個人でやっているようなところが多いように感じられました。

お店を構えているところもあったのでしょうが、普段はネット販売が中心で、こういう機会でようやく好きな作家、制作者に逢えたという感じの来場者が多かったようです。そんな中で、文房具屋ではなく本屋に売っているような商品を扱っている、あたしの勤務先のブースは違和感しかなかったでしょう。

そしてお隣のブースは左ききの道具店というブースでした。岐阜県各務原市からの出展だったそうです。左利き用のハサミやクリアファイルなど、ちょっとした気遣いの施されたグッズが所狭しと並んでいました。それで思い出したのが『左利きの歴史』です。

このショップを利用されている方なら、当然『左利きの歴史』もご存じなのではないかと思います。手帳もよいですが、この本を何冊か持ってきて隣で並べていたら売れたかもしれませんね。

そしてオリジナルグッズでデザインされていたのがシロクマ、ホッキョクグマでした。なんでもホッキョクグマはすべての個体が左利きだという言い伝えがあるのだそうです。科学的な証拠は何もない、あくまで言い伝え、都市伝説的なものらしいですが、でもそんなことからホッキョクグマをキャラクターにしているそうです。であるならば『ホッキョクグマ』も左利きの方に売れるかもしれませんね。

新参者?

「手帳の市」をご存じでしょうか? あたしはこれまで全く知りませんでした。そんな「手帳の市」に参加してきました。

もちろん、お客としてではなく出展社としてです。外国語手帳を出している出版社として、今回このようなイベントに初めて参加したのです。

会場は浜松町駅からすぐのところです。大きなビルの5階にある大きなイベントホールです。このようなイベント、かつて行なわれていた東京国際ブックフェアや書店大商談会を思い出します。

ただ、それらの大規模イベントは出展しているのが出版社ばかりで、来場する方も目当ての本や出版社があってやってくるわけです。ところが今回のイベントは手帳をメインとしたイベントです。出展しているのは手帳やそれに関連するグッズ、雑貨、文具を製作、販売している方々ばかりです。出版社はあたしの勤務先一社だけです。

そして、いま「一社」と書きましたが、たぶん他の出展社は、もちろん会社組織になっているところもあるとは思いますが、どちらかというと個人でやっているところが多いような印象でした。並んでいるものは、こだわりのものばかりで、もしかすると一点ものも多かったのではないでしょうか。なんとも言えない空間であり、体験でした。

明日もありますので、引き続き頑張ります。

捕らぬ狸の皮算用

ノーベル文学賞が発表になりました。今年はカナダの詩人、アン・カーソンが受賞しました。実は昨日の昼間、あたしの予想はアン・カーソンでした。なんとなく海外のオッズを眺めていて、そう感じただけなのですが……

そして、この十年くらい毎年のように候補に挙げられているのが中国の作家、残雪(ツァン・シュエ)です。一昨年、韓国のハン・ガンが受賞したとき、二、三日前までは「今年こそ残雪だ」と期待していたのですが、ハン・ガンにさらわれてしまいました。

とはいえ、その後も毎年、残雪は候補に挙がりますし、今年は大本命、今年は残雪で決まりだ、という声が大きかったです。たぶん中国国内でも相当大きな期待をもって受賞が待たれていたのではないかと思います。

あたしも、写真のように残雪の邦訳を前にして、ノーベル賞発表の中継をPCで眺めていました。受賞できなからと言って残雪の作品の価値が下がるわけではありません。そもそも「どうしてこの人がノーベル賞を取っていないんだ」という作家は数え切れないほどいますから。

山あり、谷あり?

東戸塚という駅があります。東海道線ではなく、並行して走っている横須賀線にある駅です。東海道線はその横を涼しい顔をして通りすぎていきます。

鉄道オタクっぽく言えば、横浜を出発すると東海道線は戸塚、大船という順番になるのですが、横須賀線は横浜、保土ケ谷、東戸塚、戸塚、大船という駅の順番になります。乗り間違えると、東戸塚に停まりませんから大変なことになります。

その東戸塚ですが、駅は谷の一番深いところにあるようで、数階分上がったところに改札があります。デッキで繋がった西武百貨店はそのフロアが四階になるくらいの高低差があります。

西武百貨店があるのとは逆も階段で上がっていったところにバスロータリーがあります。これもたぶん数階分は上がっていると思います。ホームからだと10階以上は登ってきたような気分です。いや、たぶん、そのくらいの段差があるでしょう。

東戸塚って、こんなにも高低差のある街なのですね。知りませんでした。ちなみに、バスロータリーで見かけるバスはことごとく相鉄バスでした。神奈川で公共バスと言ったら「かなちゅう」だと思っていたのですが、このあたりまで来ると「かなちゅう」ではなく相鉄バスの牙城なのでしょう。新鮮な発見でした。

こういう併売は可能でしょうかしら?

櫻坂46の冠番組「そこ曲がったら、櫻坂?」の今週の放送で、森田ひかるが過去に少年に憧れていた時期があったと明かしました。「へえ、そうなのか」と思う反面、そう言えば日向坂46の正源司陽子はよく小学生男子と言われていたのを思い出しました。

森田ひかるが憧れていたのは少年であって、正源司陽子みたいに男子ではないのですよね。似て非なるものですね。ちょっと笑いがこみ上げてきました。

話は変わって、書店の店頭で文春新書『世界史はジャズで踊る』を見かけました。あたしはジャズには詳しくありませんし、ほとんど聴くこともないので、何の知識も持ち合わせていません。でも目次を見てみると、なかなか面白い視点の本だなあと感じました。

大航海時代以降、地球規模で生じた人類の大移動。それは多くの衝突とともに、新しい文化を生んだ。ニューオリンズ、ニューヨーク、リオ、ラゴス。大都市を舞台に、ジャズをはじめとするポピュラー音楽の時代が幕を開ける――。歴史と文化の旅へのいざない。

同書の公式サイトには上掲のような内容紹介が載っています。そして思い出したのが、勤務先から出ている『かくしてモスクワの夜はつくられ、ジャズはトルコにもたらされた』です。こちらもジャズがテーマの一つになっている本で、

厳酷な黒人差別社会に見切りをつけたミシシッピ生まれのフレデリックは、海を越えて旧大陸へ渡り、帝政時代のモスクワでアメリカン・ドリームを摑むのだが……ロシア文学の碩学による、まるで物語(フィクション)のような歴史ノンフィクション。アメリカ南部の社会、爛熟する帝政末期のモスクワの夜、そして、第一次世界大戦とロシア革命の勃発――激動の時代を背景に描かれる、不屈な男の、凄まじくも痛快で爽快な魂の遍歴。

という内容の本です。前者に後者の主人公フレデリックが登場しているのかはわかりませんが、ジャズをキーワードとして世界史を読み解くという点では、なんとなく共通するものを感じる二冊ではないでしょうか。