食べたら出すのは自然の摂理

あたしの勤務先のウェブサイトで、12月の新刊ラインナップが公開されました。そこで目に付いた新刊『アジア・トイレ紀行』。

トイレが社会を映し出す! トイレから文化を理解する! トイレをめぐるカルャー・ショックを綴るユニークなエッセイ。図版多数。

アジア各国のトイレ事情、そこから垣間見える国情、なかなかに興味深い一冊となりそうです。ところで、本書とセットになりそうな一冊が現在書店店頭に並んでいます。それが晶文社の『世界自炊紀行』です。

タイトルがよく似ていますが、別に姉妹編ではありません。ただ、姉妹編と思って併売していただけたら嬉しいです。

人間、誰しも食べなければ生きていけません。そして食べたら排泄するのは当たり前です。そんな取り入れと掃き出し、それぞれを扱っているのが『世界自炊紀行』と『アジア・トイレ紀行』です。是非セットでよろしくお願いします。

2025年10月のご案内

2025年10月に送信した注文書をご案内いたします。

   

10月のご案内も、まずは今月のおすすめ本です。続いて刊行即重版が決まったアトウッドの『ダンシング・ガールズ』、さらにしばらく品切れだった残雪の『黄泥街』の重版が決まったので、そのご案内です。また書評後に注文が急伸した『生きることでなぜ、たましいの傷が癒されるのか』の重版をご案内しました。

   

続いて、11月に東京でデフリンピックが開催されるので、手話に関する書籍のご案内です。中旬にはいつもどおり、今月のおすすめ本「語学書」を案内しました。次に温又柔さんの新刊『真ん中の子どもたち』に合わせ既刊二点のご案内です。そして、これも書評で注文が伸びた『第七問』の重版決定のご案内です。

   

月の後半は、まず初の女性総理誕生を受けて関連書籍のご案内をしました。またNHK「100分de名著」がフランケンシュタインなので『メアリ・シェリー』を案内しました。次に配本時から品切れ状態でした文庫クセジュ『オスマン帝国』の重版が決まったのでご案内しました。またフジテレビ系のドラマで重要なアイテムとして登場しているシェイクスピア『夏の夜の夢』の案内をしました。

10月の最後は、ロングセラーになっている『ポピュリズムの仕掛人』が5刷になりましたので、そのご案内でした。

今日の配本(25/10/31)

まいにちふれるタイ語手帳2026

福冨渉 監修/白水社編集部 編

2026年はタイ語で手帳をつけませんか。月や曜日はもちろんタイ語で記載。タイの祝日や太陰暦に加えて、折々のタイを感じられるエッセイやひとことを掲載。まいにちタイを感じることのできる手帳です。巻末には単語リストや日記に使える表現集付き。初心者でもタイ語で書く習慣が身につけられます。予定管理にもタイ語学習にも最適なこの手帳を相棒に、楽しく気軽にタイ語にふれてみてください。

今日の配本(25/10/30)

ヘーゲル読解入門(上)
『精神現象学』を読む

コジェーヴ 著/上妻精、今野雅方 訳

バタイユ、ラカン、カイヨワ、ブルトンらが参加し、現代フランス思想に多大な影響を与えた記念碑的講義録がついに復刊。

ヘーゲル読解入門(下)
『精神現象学』を読む

コジェーヴ 著/上妻精、今野雅方 訳

バタイユ、ラカン、カイヨワ、ブルトンらが参加し、現代フランス思想に多大な影響を与えた記念碑的講義録がついに復刊。

今日の配本(25/10/28)

ファシストは未来を支配するためにいかに過去を改竄するのか

ジェイソン・スタンリー 著/森本奈理 訳

極右独裁主義が謀る人種・移民・集団殺戮など不都合な歴史の抹消、洗脳、反教育、反民主主義を糾弾。哲学者・政治運動家による入門書。

南洋人民共和国備忘録

黄錦樹 著/王徳威、福家道信、黄英哲、及川茜 編

個人の記憶の奥深くに隠されたマレーシア華人の集団の記憶とトラウマを圧倒的な想像力で描く、マラヤ共産党をめぐる24篇。

今日の配本(25/10/27)

真ん中の子どもたち

温又柔 著

著者の初期の代表作、待望のUブックス化! 言語に溶け込む歴史とアイデンティティが複雑に絡む境遇を生きる若者たちが、悩みながら自分自身のルーツを大切に見つめ直し、「私たちの言葉」として枝葉を未来へ広げていく。光が溢れる上海でのひと夏を鮮やかに描く青春小説。単行本未収録の「母のくに」を併録。解説:川村湊。

アトウッドの恐れ

この十数年、あたしが学生時代に学んだ世界情勢やそれに関わる知識がどんどん更新されているように感じます。そもそも中国共産党の一党支配はとうの昔に終焉を迎えているはずではなかったのか、もっと平和な、それこそ自衛隊も最小限に縮小し、災害救助隊のような組織に換骨奪胎されているはずだと無邪気に未来を予想していました。

ソ連(←この単語も死語か?)の共産党支配が崩壊し、東西の対立はなくなったはずなのに、ソ連時代よりもさらに強権的な現在のロシア、そしてますます権力の集中が進む中国。それに倣うかのような発展途上国の開発独裁的な国々。そういう流れのトドメがアメリカのトランプ大統領の再登場なのではないかと感じます。

そんな情勢が影響しているのでしょう。これまでであればなんとなく気にはなっても、そこまで関心を抱かなかったものに再び関心が集まっているようです。書籍で言えば「民主主義」とか「権威主義」とか、本来であれば改めて新刊を出すまでもないようなテーマやタイトルが目に付きます。「アナキズム」などもここ数年のトレンドの一つではないでしょうか。

この中公新書『福音派』も、そんな流れの中の一冊ではないでしょうか。「福音派」という言葉は知っている人、聞いたことがある人も多かったかと思いますが、わざわざ新書を出すほどのものでもなかったかもしれません。それがトランプ政権の登場でにわかに脚光を浴びて刊行され、あれよあれよと言う間にベストセラーになっています。

そんな『福音派』の中にこんな箇所を見つけました。見出しは「アトウッドの恐れ」です、もちろん作家マーガレット・アトウッドのことです。どうして「福音派」を語る本の中にアトウッドが出て来るのか。

『福音派』が取り上げているのは、もちろん彼女の代表作と言ってよい『侍女の物語』です。そこに描かれている世界が福音派や原理主義的な立場が強くなった世界を暗示していると解釈できるからなのでしょう。そして数十ページ読み進めていくと

本章の冒頭で見た『侍女の物語』でのアトウッドの恐れも、ラッシュドゥーニーに代表されるような過激な主張を念頭においていたのかもしれない。

と書かれています。

アトウッドの凄さは、最近復刊された『ダンシング・ガールズ』でも読み取ることができます。『侍女の物語』よりも前に刊行された本書は、30年近くも前の作品だとは思えないほど今を描いています。今を先取りしていると言った方がよいかも知れません。

この作品から、作家はさらに当時のアメリカの情勢を観察して『侍女の物語』を生み出したのではないかと思えます。そして『ダンシング・ガールズ』は短篇集なので、どこからでも読み始められます。『侍女の物語』ともども、是非よろしくお願いいたします。

話はころっと変わりますが、アトウッドは1939年生まれで今年86歳(誕生日は11月18日)で、来月邦訳が刊行予定のミルハウザーは1943年生まれの82歳。どちらもお元気で、まだまだたくさんの作品を残して欲しいものです。ちなみに来月刊行のミルハウザーの邦訳は『高校のカフカ、一九五九』という作品です。

今日の配本(25/10/24)

移民/難民の法哲学
ナショナリズムに向き合う

横濱竜也 著

ここにきて移民/難民に関する議論が本格化しつつある。今夏の参院選では移民規制が大きな争点となった。
ところが、日本での従来の議論はグローバル化や経済的要請にもとづくもので、どうしても皮相なものになりがちだ。政治的・社会的な背景が考慮されないままに話が進んでしまっているのである。これでは、「ポピュリズムの仕掛人」によって足元をすくわれる危険もある。こうした懸念を払拭すべく、移民論の哲学的・社会科学的な基礎を構築するのが本書である。