抜かないでください!

営業回りの途次、書店の店頭でフェアをやっていまして、その棚に置いてあった小冊子です。フェアのタイトルは「書店員の心に刺さって抜けない棘本」です。

あたしの勤務先からは『キャッチャー・イン・ザ・ライ』と『ライ麦畑でつかまえて』がエントリーしていました。まあ、「完全なる問題作」ですから、選ばれるのも当然と言えば当然ですよね。

それにしてもこのフェアのタイトル、是非とも棘は抜かないで、このまま刺さったままにしておいてもらいたいものです。もし抜いてしまったら、後輩書店員の心に差していただけるとありがたいところです(笑)。

棘で思い出したのですが、東京には「とげぬき地蔵」というところがあります。そう言われてもわからずとも、「お婆ちゃんの原宿」と言えば伝わるでしょうか。巣鴨にある高岩寺にあるお地蔵様です。毎月4の付く日に縁日が行なわれ、あちらこちらからお婆ちゃんがやって来るのです。

そのとげぬき地蔵通りに、あたしは小学校に上がる前まで住んでいました。巣鴨駅から高岩寺の前を通り、都電荒川線の庚申塚駅を過ぎ、もう少しで明治通りに出るという路地を入ったところの小さな、小さなアパートでした。お風呂もないので近所の風呂屋へ通った記憶がかすかに残っています。

フェアが始まりました!

乃木坂46五期生のミュージカル「セーラームーン」が好評のうちに千秋楽を迎えたようです。最終日は配信もありましたね。見ていませんので、年内には発売されるというブルーレイを買う予定です。

それにしても、配信があるとはいえ、東京だけの公演というのはもったいないです。もちろん乃木坂46のメンバーをはじめ、キャストの人たちのスケジュールを押さえるのは大変だと思いますが、せめて数日だけでもよいから大阪(関西圏)でも上演したらよかったのに、そう思います。

さて、閑話休題。

くまざわ書店のグランデュオ蒲田店で《エクス・リブリス》のフェアが始まりました。エスカレーターで上がってきてすぐ、入り口を入った脇のデアコーナーです。

ここはいつも面白くて興味深いフェアをやっているので、ついつい足を止めてしまう場所です。コーナーの部分でL字型にフェアが開催中なのですが、その隣を見ると、そこにもあたしの勤務先の本が並んでいました。

なんだろうと思って、掲げられている看板を見ると、《ラテンアメリカ文学の世界》とあります。そして小さい文字で《『百年の孤独』文庫化記念》と書いてあります。

いやー、なんてすてきなフェアでしょう。ラテン文学フェアとエクス・リブリスのフェアが同時開催なんて、ちょっと嬉しくなってしまいます。お店独自のフェアのようです。

いよいよ来月下旬には『百年の孤独』の文庫が発売になりますから、このようなフェア、あちこちの書店で開催されるのではないでしょうか?

いよいよGWという感じ?

世間では今日からゴールデンウィークに突入なわけですね。どこもたくさんの人出で賑わったことでしょう。そんなあたしも午後から横浜のみなとみらいへ行って来ました。

午後からと言っても、多摩地区のわが家からですと二時間近くはかかりますから、ちょっとした小旅行のような気分です。

そして、どうしてみなとみらいへ行ったかと言いますと、FM横浜のトークイベントのためです。「みなとみらいKINGDOM SPRING 2024」というイベントが開かれていまして、そこに『はなと学ぶ パンダに会いに行くための中国語』の著者はなさんが出演されるからです。

ちょうどワニブックスから著書を刊行された近藤さや香さん共々、イベント後にサイン会も行なわれたのです。お二人の著書は会場の上の下位にある丸善で販売されていたのですが、サイン会用の整理券配布もイベント前には満員御礼となってしまい、サイン会にも長い列が出来ていました。

サイン会の列に並んでいる人を見ますと、やはり日常的にFM横浜のお二人の番組を聴いているとおぼしき方々が多数並んでいるようでした。あたしはもっと近藤さん、はなさんの熱狂的なファンが集まるのかなと思いきや、もっと和やかな雰囲気の方が列を作っていたのが印象的でした。

ちなみに、整理券の関係もあり、サイン本を手にできなかった方への朗報です。イベント後でお疲れのところ、お二人には丸善の店頭販売用にサイン本も少しだけ作っていただけました

そんなGWの初日でしたが、帰路、例によって中央線が人身事故でダイヤが大幅に乱れておりました。

フェア、やってます!

既に昨年のうちにスタートしていますが、南大沢の東京都立大学生協で、あたしの勤務先のフェアを開催中です。この時季は試験などもあり、学生が学校に来る機会が減ってしまいますが、その一方で先生方が公費で書籍を買える年度末になるので、売り上げも期待したいところです。

そして都立大生協に続いて、年明けからは中央大学生協でもフェアが始まりました。写真は、開催中のフェアの模様です。これだけの規模のフェアは久しぶりですね。

分厚くて、値段もそこそこ張ってしまう書籍から、比較的お手軽な語学書まで、ほぼすべてのラインナップが並んでいます。先生、学生、そして職員の皆さまに是非立ち寄っていただければと思います。

ところで、この中央大学生協のフェアを見に行ったら驚きました。なんと、お隣では岩波書店のフェアが開催中だったからです。畏れ多くも天下の岩波書店さんと同時開催とは、気恥ずかしいものです。

売り上げでは岩波書店には勝てないと思いますが、逆に岩波書店のフェアを目当てで来店した方が、うちのフェアにも目を向けてくれると嬉しい限りです。フェアの終了はどちらも同じなので、少しでも食らいついていければなあ、と思っています。

それにしても各大学、コロナが明けてキャンパスに学生が戻ってきて、かつての賑わいが復活していますね。だからこそ、こういうフェアも実施できるわけで、フェアの開催は他の大学にも広がっていくだろうと思います。

街の書店の心意気!

東京の郊外、「多摩の渋谷」とも呼ばれる町田を中心に展開している書店・久美堂。小田急線の町田駅前にある本店の一階でこんなフェアをやっていました。

はい、岩波文庫フェアです。在庫のあるものほぼ全点が並んでいるようです。さすがに、あたしが探しているのは数年前から版元品切れになっているようなので並んではいませんでしたが、このフェアは壮観でした。

都心の大型店へ行けば、岩波文庫がほぼ全点並んでいる書店もいくつかあると思います。でも、そういう大型店ではなく、都心でもない郊外の街の書店でこれだけの岩波文庫が並ぶのは滅多にないことだと思います。

このフェア、一階のレジ前でバーンとやっているのですが、店長曰く、昨年の春から、この場所を使ってこういうフェアを連続して行なっているそうです。講談社学術文庫やブルーバックス、ちくま文芸文庫、平凡社ライブラリーなど、なかなか攻めたフェアを二か月ずつやって来て、売上が絶好調なのだそうです。非常に手応えを感じているとのことで、いろいろな版元から「次はうちでやらせてください」との声がかかっているそうです。

フェア台にはこんなメッセージパネルが飾ってありました。「久美堂でのフェアに寄せて」とありますから、岩波書店側が用意したものでしょう。出版社と書店が一緒になって盛り上げようという意欲が見て取れます。

写真をご覧いただければわかるように、スタート時にはビッシリと並んでいたはずの棚のあちこちに隙間ができています。それだけ売れているということなのです。町田という立地は、確かに新宿や横浜に気軽に出られる場所ではあります。町田や周辺には大型書店がないので専門書を買いたい人は都心へ行ってしまう傾向があるそうです。

ただ、都心にも横浜にも滅多に出かけないという地域の方も非常に多いようで、だからこそ時々こういうフェアを開くと多くの人が楽しみにやって来るのでしょう。二か月ごとですから、たまに本屋を覗くくらいの人であれば、来るたびに「何か面白いフェア、やってる」と思ってもらえると思いますし、現にお客様から「次は何やるの?」と聞かれることもあるそうです。

何か出来そう?

本日の朝日新聞紙面に、今年の展覧会などの情報がまとめて載っていました。基本的には朝日新聞主催のものですよね。「行きたいなあ」と思うものや「初めて聞く名前だ」というもの、、いろいろ並んでいましたが、あたしの目を惹いたのはこの展覧会です。

国立西洋美術館で6月から8月にかけて行なわれる「内藤コレクション 写本-いとも優雅なる中世の小宇宙」です。

中世の写本と言えば、昨年末にあたしの勤務先から『中世の写本の隠れた作り手たち』という新刊を刊行したばかりですし、これまでも『中世の写本ができるまで』『写本の文化誌』といったヒット作を刊行しております。写本の美しさに負うところが多いですが、このジャンルは確実のファンがいるんですよね。この展覧会も人気の展覧会になるのではないでしょうか。

あたしの勤務先の書籍も、美術館のミュージアムショップに並べてもらえれば、そこそこ売れるのではないかなあ、と今から取らぬ狸の皮算用をしております。あとは、この三点で書店フェアを企画しますかね。

湘南にて

本日は、ジュンク堂書店藤沢店の棚で開催中のみにフェアをご紹介します。

まずは文芸書コーナー。

「ガイブン入門」というフェアです。海外文学を苦手という方に、まずは海外文学ってこういうものですよ、という入門書的な書籍を集めてみました。もちろん最初から海外文学に挑んでみるのもよいかと思います。でも過去にそうやって挫折してしまった方には、これらの本をまずは手に取っていただくのも方法かと思います。

続いてご紹介するのは語学書コーナー。

フランス語、ドイツ語の「対訳シリーズ」を集めたフェアです。このフェアの謳い文句は写真の看板にも書いてありますが、「原文に接して初めて発見できることがある!!」です。

語学に堪能な方であれば、いきなり原書に向かうでしょうが、そこまでの語学力が身についてない方、原書なんてとても無理だけど少しは味わってみたいという方、対訳ですからこれならすんなり入っていけるのではないでしょうか。

もちろんこれらの対訳シリーズは作品のすべてを収録しているわけではありません。とはいえ、その作品のキモとなる部分は抑えていますので、これを通読すれば作品の大まかなところはつかめることでしょう。

緊急事態です!

関西ツアーから帰京しました。今回のツアーは火曜から金曜までの四日間、やはり短いなあと感じます。回る書店もかなり端折ってしまいました。

それはともかく、ホテルの部屋にいる時間には、注文書の整理やメールのチェックなど、持ち込んだノートPCから勤務先のPCにリモート接続して作業をしていました。ホテルのWi-Fiが遅くて、多少のストレスを感じましたが、それよりも勤務先に置いてあるPCの状態がひどいので操作が不安定になることがありました。

少し前に、勤務先のPCのHDDが容量不足であると書きました。その後、数GB単位で容量が突然復活したりしたのですが、それも束の間、また容量不足が深刻化しています。それが窮まったのが①枚目の写真です。Cドライブ、とうとう残量0バイトになってしまいました。

これではちょっとしたワード文書すら起動できません。エクセル文書だって同じです。ワードとエクセルが使えなかったら仕事どころではありません。ここまで来ると作業状態を保存することも困難になってきます。とにかくPCをリモートで再起動させ、少しでも容量が復活するのを期待するしかありません。

そんな騙し騙しの作業は精神衛生上もよくないですね。やはり勤務先のPCを買い直すしかなさそうです。しかし、まだ一年も経っていないので勤務先が新しいのを買ってくれるとは思えません。ここは自腹を切るしかないのでしょうか。

ホテルでの作業はそんな感じで綱渡りでしたが、書店ではこんなフェアが開催中でした。はい、カルヴィーノ生誕100周年フェアです。あたしの勤務先の書籍以外に岩波文庫まで揃っています。いま日本で手に入るカルヴィーノの邦訳がすべて揃っているのではないかと思われます。ありがたいことです。MARUZEN&ジュンク堂書店梅田店です。

書き出しは大事ですよね!

書店の店頭でこんなフェアをやっていました。

小説の書き出しで選んだフェアです。「コンテンポラリー アメリカ&カナダ文学編」とあるので、他の地域を扱ったフェアが既に行なわれたのか、それともこれからなのか、いずれにせよとても楽しみです。

「個人の好みで選んだ」とあるように、これは出版社が企画したフェアではなく、この書店の担当の方がご自身で選んで企画したフェアのようです。ちなみにあたしの勤務先からは《エクス・リブリス》の『ジーザス・サン』と『断絶』の二作品を選んでいただいております。

このフェアが開かれているのは、JR中央線、御茶の水駅前にある丸善お茶の水店です。このリーフレットには約40作品が集められていますが、本当に海外文学が好きで、読んでいるんだなあと感じられます。

作品全体を読まないと、その作品について論評できないことはいうまでもありませんが、そもそも読み通してもらうには、作品世界に引き込まなければなりません。そのためには作品の書き出しはとても大事で肝心で、最初の数行を読んで「つまらない」「読むに値しない」と判断されては元も子もありません。

書き出しで思い出しましたが、現在の日向坂46がまだけやき坂46だったころ、冠番組「ひらがな推し」で「書き出し王決定戦」という企画をやっていました。メンバーがタイトルとその作品の書き出しを創作し、MCのオードリーがどれが気になるかを判断するというものでした。これは書き出しと言うよりも先にタイトルが評価の対象になっていたので、純粋に書き出しで選んだわけではありませんでしたが……。

また乃木坂46も冠番組「乃木坂工事中」で「センス見極めバトル」という企画が行なわれました。これは、羽田圭介さんの『ワタクシハ』というタイトルからメンバー四名(五名?)が書き出しを創作し、他のメンバーがその中から羽田圭介さんの『ワタクシハ』の書き出しをどれかを当てるというゲームです。この中で騙す側のメンバーの一人として登場した二期生、鈴木絢音の書き出しが群を抜いて素晴らしく、ほとんどのメンバーが騙されていました。

何語で喋っているのか?

昨日は下北沢にある本屋B&Bで行なわれた、台湾の作家、甘耀明さんのイベントに行って来ました。対談相手は作家の温又柔さん。甘耀明さんのイベントは、コロナ前に甘耀明さんが来日されたときにも参加しましたが、それ以来になります。

対談相手の温又柔さんの指摘で、あたしも改めて感じたのですが、今回の新刊『真の人間になる』は、もちろん日本語に翻訳されているわけですし、原書は中国語で書かれているのですが、この作品世界の中では数か国語が飛び交っているのですよね。戦中だと日本語が支配言語として君臨していますし、台湾の原住民はそれぞれの民族の言葉で話しているわけですよね。そして彼らは共通語としての台湾語もマスターしなければならなかったようですし、当時の複雑な政治状況と言語事情を考えながら読むのも、本作の楽しみ方の一つなんだと思います。

そして下北沢からの帰路は井の頭線です。

渋谷発の電車だと先頭車両の一番吉祥寺寄り、運転席のすぐ後ろの吊り輪は、ご覧のようにピンクのハート型です。すべての車両にこの吊り輪があるわけではなく、レインボーからの車体の編成にのみ付いているという、ちょっとだけレアな吊り輪です。

数年前にテレビのニュースでも取り上げられていたので、ご存じの方も多いでしょう。この吊り輪をカップルで握って写真を撮る、なんていうのも当時は流行っていました。いまは誰も見向きもしないというと語弊がありますが、ふだん井の頭線を利用している人は取り立てて騒ぐこともなく、気にも留めていないようでした。