新書をよく読んでいます

かつては日曜の新聞紙面に掲載されていた書評欄、読書欄いつのころからか土曜日に掲載されるようになりましたね。朝日新聞の読書欄が土曜日掲載になったのは何年前でしたでしょうか。

それはさておき、先週に引き続き、今週の読書欄にもあたしの勤務先の刊行物が掲載されました。『日本の反戦非戦の系譜』です。いろいろと考えさせる本ですね。

アジア諸国や自国民にあのような悲劇をもたらした戦争を起こした日本こそは世界の反戦非戦をリードする国にならないといけないと思うのですが、むしろ平和憲法を改めて、もう一度武力を持つべきだという意見が、このところ強くなっているような気がします。憂うべき異だと思いますが、そういう国際情勢なのでしょうね。

ところで同じ今朝の朝日新聞に、こんな記事も出ていました。今年の岸田國士戯曲賞の受賞作が決まったという記事です。今年はお二人が受賞となったようです。

紙面にはルビは付いていませんし、演劇界の方であれば常識なのでしょうが念のため、「岸田國士」は「きしだくにお」と読みます。よく「きしだこくど」と間違えている方もいらっしゃいますので申し添えておきます。

再び読書欄に戻りますと、最初のページの「売れてる本」に掲載されている『新・古代史』はあちこちの本屋で積まれていて、売行きも好調なようです。あたしも日本の古代史、興味があるので読んでみようと思って買ってみました。

そして今日の読書欄には他にも中公新書の『ユダヤ人の歴史』と『近代日本の対中国感情』が載っているのですが、どちらも既に読み終わっております。非常に面白かったです。さすがは中公新書という一冊、否、二冊でした。

そして古代史に興味があるので、『新・古代史』と共に『ヤマト建国の真相』も買っておきました。あたしが生きているうちに、邪馬台国論争に決着は付くのでしょうか。

ミモザの下で

今日は国際女性デーだそうです。なので、朝日新聞もちょっと紙面がいつもと違いました。一面のタイトル下には次のように書いてあります。

3月8日は、女性の地位向上を目指して国連が定めた「国際女性デー」です。誰もが尊重され、多様性のある社会が実現することを願って、朝日新聞は私たちの足元に溶け込むジェンダーに目を凝らすThinkGenderの記事を特集します。題字はこの日のシンボル、ミモザの花をあしらった特別デザインです。

というわけで、あちらこちらに黄色花があしらわれているのですね。

それにしても、このタイトル、題字の部分を見てすぐに「あっ、ミモザだ」とわかる人はどれくらいいるのでしょう。あたしなどはタンポポか何かしら、くらいに思っていたので、お恥ずかしい限りです。

ところで、ミモザと聞くと沢田聖子の楽曲「ミモザの下で」を思い出します。切なく淡い恋を歌った曲で、中学や高校の頃によく聞いていたものです。

あたしにとってミモザと言えばこの曲しかありません。ただ、その当時もミモザってどんな花なのか知りませんでした。いまならすぐにスマホやパソコンで検索できますし、そうすれば花の画像もすぐに現われることでしょう。しかし、あたしが中高生の頃はそんな便利な機器はまだ一般には普及していませんでしたから、図書館で植物図鑑を調べるしか方法はありませんでした。あたしもそこまで熱心ではなかったので、結局調べずじまいでしたが……(汗)

さて朝日新聞はミモザの花にあやかって黄色をあちこちに配していますが、本日の読書欄に掲載された『陽だまりの昭和』もカラー写真で紹介されていればよかったのにと思います。なぜなら同書のカバーが黄色だからです。

別にミモザを意識したわけではありませんが、図らずも黄色のカバーが本日の朝日新聞とマッチしてしまったわけです。掲載写真はモノクロなので、実際にはどんな色のカバーなのか、是非とも本屋さんで実物を見ていただきたいところです。

それにしても、国際女性デーだというのに、朝日新聞の紙面ではトランプ米大統領による多様性否定の記事が踊っています。「逆差別だという」意見もそこだけを切り取れば納得する面もありますが、まだまだ女性の立場は弱いのが現実です。本当の意味で「女性優遇は差別だ」と言えるような世の中になるのは何年後のことでしょう。

なかなかの占有率?

本日の朝日新聞読書欄には、予告どおり、あたしの勤務先の書籍が掲載されていました。ありがたいことです。

そんなわけで楽しみに、ちょっとわくわくで紙面を開いたのですが、ちょっと驚いてしまいました。

ご覧のように、みすず書房、春秋社と並んで、人文会仲間である両社の書籍も載っていたからです。なおかつ、あたしの勤務先の書籍が載っている位置のシンメには吉川弘文館という、これまた人文会仲間の書籍が掲載されています。この掲載率、紙面の占有率、なかなかのものではないでしょうか?

さて、あたしの勤務先の書籍はこちら、『メアリ・シェリー』です。お陰様で、既によく売れている商品ですが、これで更に売り上げが伸びるのではないかと期待しております。

ところで、メアリ・シェリーってご存じですか。朝日新聞の読書欄を読んでいる方であれば知っている人も多いとは思いますが、一般の方ではどのくらいの認知率になるのでしょう。たぶん街でインタビューをしたら、『フランケンシュタイン』はほぼ100パーセントの人が知っていると思います、読んだことがあるかは別として。でも、その作者名を言える人がどのくらいいるか、あたしはかなり低いのではないかと思っています。

実はあたしも、知りませんでした。いえ、女性が原作者だということは知っていたのですが、その時に名前まで覚えるほどには関心を持っていませんでした。情けないことです。たぶん多くの人にとって「フランケンシュタイン」って小説ではなく、映画が思い浮かぶのではないでしょうか。海外ではどうなのでしょうね。

あと、フランケンシュタインというと、あの怪物を思い出す人も多いと思いますが、フランケンシュタインというのはあの怪物を作り出した博士の名前ですよね。そんな思い違いもフランケンシュタインのあるあるだと思います。

いろいろと獲得しました?

本日の朝日新聞。読書欄にあたしの勤務先の刊行物は紹介されていませんでしたが、触れたくなる点がありましたので……

まずは読書欄に載っている週間ベストテン。今回は紀伊國屋書店新宿本店のランキングでした。

並居る強豪を抑え、なんと乃木坂46五期生、五百城茉央のファースト写真集が堂々の第一位です。確か、紀伊國屋書店限定カバーが発売されていたのではないでしょうか。たぶん、それが売上アップの要因の一つだと思います。

そして読書欄を過ぎて社会面へ。読売文学賞が発表されていました。ネットニュースなどでも話題になっているのは円城塔さんの受賞ですが、他にも注目ポイントがあります。

「研究・翻訳賞」に、なんとノーベル文学賞を受賞したハン・ガンさんの『別れを告げない』が受賞しました。これは翻訳の斉藤真理子さんが本作品で受賞された、ということですね。

また「評論・伝記賞」には、あたしの勤務先でもたいへんお世話になっている阿部賢一さんが受賞されています。そう言えば、円城塔さんも、あたしの勤務先の刊行物のトークイベントでゲストに来ていただいたことがあります。そんなことも思い出しました。

祝、受賞!

本日は、大佛次郎賞の発表です。今朝配達された朝日新聞に、ご覧のように載っています。

受賞したのは、あたしの勤務先から刊行されている『「喜劇」の誕生』です。見事に大佛次郎賞を射止めました。

ところで大佛賞って、この業界の人であれば「おさらぎしょう」と読めると思いますが、そうでないとどれくらいの方が正しく読めるのでしょう。たぶん、街でアンケートを取ったらかなりの確率で「だいぶつしょう」と読まれてしまうのではないでしょうか。

いや、「大仏」ではなく「大佛」と書いてあるので、「佛」の字が読めない人も多いかも知れませんね。致し方ないことでしょう。

とはいえ、あたしもマウントを取るような書きぶりですが、肝心の大佛次郎がどんな人なのか、ほとんど知りません。読んだことはないですが、『鞍馬天狗』の著者だったよなあ、くらいの印象です。あとは、子供のころに『天皇の世紀』という作品で名前を知ったくらいです。子供だったので「大佛」が読めなかったのか、「大仏」と書いてあったので面白い名前だなあと感じたのか、とにかく「天皇の世紀」という作品名は割と記憶に残っています。

で、今回の受賞は『「喜劇」の誕生 評伝・曾我廼家五郎』です。副題からもわかるように曾我廼家五郎の生涯を軸に松竹新喜劇、日本近代の演劇史を俯瞰した一冊です。ぜひ店頭で手に取ってみてください。

お久しぶりの?

ノーベル賞各賞の授賞式です。新聞やテレビでは被団協をメインで扱っているのは致し方ないことですが、あたしの働く業界ではやはり文学賞がメインです。

そういうタイミングですので、ずいぶんと久しぶりに朝日新聞のサンヤツ広告を、今朝の朝刊に出しました。一面下の一番右端です。著者の中には、この位置に自著の広告が載るのを楽しみにしている人がいるとか、いないとか、そんな噂を聞いたことがあります。

というわけで、朝日新聞を購読している方、あるいは職場や図書館などで朝日新聞を閲覧できる方、是非とも本日の朝日新聞一面下をご覧ください。

そして、同じことを考えているお仲間の出版社がお隣に広告を出していました。晶文社さんのハン・ガン作品『ギリシャ語の時間』の広告です。ハン・ガンの邦訳を出しているところとなると、あとはクオンさん、河出書房新社さんくらいですかね。授賞式を受け、年末年始の読書にハン・ガン作品は如何でしょうか?

ぬの力

本日は体育の日ならぬ、スポーツの日でお休みです。ハッピーマンデーが施行されてから三連休が増えましたが、今年特に三連休が多いと思うのは気のせいでしょうか。

そんな祝日の朝刊、朝日新聞の「折々のことば」に岸本佐知子さんが登場していました。筑摩書房から刊行されている『ひみつのしつもん』から引用されていました。岸本さんが「ぬの力」について書かれています。

感覚としては新潮新書の『怪獣の名はなぜガギグゲゴなのか』に近いものを感じますが、確かに「ぬ」は独特な空気をまとっているような気がしますね。でも「ぬり絵」「ぬいぐるみ」なんていう、ほのぼのした言葉もあるので、岸本さん的に考えるのであれば、この「ぬ」は「ヌテラ」「ぬめり」とは別系統の「ぬ」なのかもしれません。

ちなみに、同欄で引用された『ひみつのしつもん』はこちらです。この装丁、皆さんにはお月様に見えますか、それとも目玉焼きに見えますか。

ところで二枚目の写真は2019年に刊行された単行本の方ですが、同書はほぼ一年前の2023年11月に文庫化されています。それが三枚目の写真です。装丁は単行本と変わっていないですね。

帯にも書かれているとおり、単行本から増補されているということで、文庫版も架蔵しております。やはりお月様なのか、目玉焼きなのか、気分によってどちらにも見えてきます。正解はなんなのでしょう。

話は戻って、同書の「ぬの力」の項ですが、そこにはこんなイラストが載っています。

だいいち「ぬ」という形からして何となく怪しい。見れば見るほど、エイリアンが息を殺して体を丸め、「め」に擬態している姿に思えてくる。

という本文をイラストで表わしたものでしょう。そう言えば、何の本で読んだのか忘れましたが、ひらがなを知らない外国人に「ぬ」の字を見せると「猫が体を丸めている姿」に見えるとのことです。

エイリアンか猫か、もっと外国の人にアンケートを取ってみたくなります。ただ、その場合「ぬ」で取るべきなのか、「ヌ」で取るべきなのか、どちらでしょう?

予想どおりだったのでしょうか?

昨晩のノーベル文学賞の発表。韓国のハン・ガンさんが受賞しました。邦訳が多数ある作家の受賞だったので、不景気と言われて久しい出版界にとっては明るいニュースの着弾です。

ノーベル文学賞は作品に対して与えられるのではなく、作家本人に対する賞ですので、どの作品が受賞作というわけではありません。あたしの勤務先も二点ほど刊行しているので、今朝は電話が鳴りっぱなし、ファクスもジャンジャン届くし、注文メールも何通も受信しました。こんなこと、何年ぶりでしょう。まさに嵐でした。

ちなみに、邦訳が多数出ていると書きましたが、架蔵しているのはご覧の作品です。6点ですね。所持していないのは数点だと思います。

そして、あたしがなど言うのはおこがましいですが、やはりハン・ガンは面白いですし、いろいろと考えさせられる物語です。韓国の歴史を知らなくても十分楽しめますが、読むともっと知りたくなります。韓国って近くて遠い国だと感じます。

ところで、ハン・ガン作品、あたしの勤務先では2作品を刊行していますが、ノーベル賞発表前、社内では中国の残雪が取ってくれたらいいなあ、取ったら即重版だ、などと話題になっていました。残雪作品も三つほど出していますので。

社内でそんなことが話題になっていたときに、ふと見た英国のオッズでハン・ガンがランクインしていたのに気づき、「残雪だけではなく、ハン・ガンも重版の準備をしておこう」と呼びかけていたのです。結果的に、あたしのこの注意喚起が功を奏し、なんかあたしが予想屋みたいな感じになってしまいました(笑)。

別にそんなつもりはありませんが、よい方に転んでくれてラッキーでした。そんなあたしは、ハン・ガンではなく、ちくま学芸文庫の新刊二点を買っておりました。

台湾で鉄道に乗ろう!

今朝の朝日新聞の読書欄、最後のページに『台湾鉄道』が紹介されていました。紹介してくれたのは、長島有里枝さんです。コメントの最後の

鉄道好きの息子と久々、一緒に本を読めたのも、楽しかった。

という一文が素敵です。

台湾と聞くと、人によって思い浮かぶものはさまざまでしょうが、台北から南に延びる台湾新幹線を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。鉄道好きの方であれば、長島さんも書いているように鉄道で台湾を一周したい、したという方もいると思います。確かに海外へ行って、現地の列車に乗るのは旅情を掻き立ててくれるものです。

あたしの勤務先から出ている『神秘列車』も台湾の甘耀明さんの短篇集で、カバー装画のとおり列車が登場する作品もあります。この短篇集、あたしはとても好きです。非常に美しい作品ばかりで、読後感も充実感にあふれたものです。

新幹線のような高速鉄道もよいですが、煙を吐き出す蒸気機関車も風情があってよいものです。ただ、あたしはいまだに蒸気機関車が牽引する列車には乗ったことがありません。日本にも各地に観光列車としてSLを走らせているところはありますが、なぜか縁がなくてのったことがないんです。たぶん乗らずに一生を終えるのだと思います。

THE 100 BEST BOOKS OF THE 21ST CENTURY

既に日本でも話題にしている方が大勢いますが、ニューヨークタイムズのサイトに「THE 100 BEST BOOKS OF THE 21ST CENTURY」が掲載されています。サイトには

As voted on by 503 novelists, nonfiction writers, poets, critics and other book lovers — with a little help from the staff of The New York Times Book Review.

と書いてあります。503名の方による投票で選ばれた100冊です。このリストの100冊の中に、あたしの勤務先から邦訳が出ている書籍が何点か含まれていますので、ご紹介します。

Tree of Smoke / 煙の樹
The Collected Stories of Lydia Davis
10:04 / 10:04
The Looming Tower / 倒壊する巨塔
H Is for Hawk / オはオオタカのオ
The Savage Detectives / 野生の探偵たち
Austerlitz / アウステルリッツ
2666 / 2666
The Known World / 地図になかった世界

以上の9点、100冊のうちの9冊ですからほぼ一割です。わが編集部もなかなかの目利きが揃っているといことでしょうか。

この中の「The Collected Stories of Lydia Davis」は、正確にはこの本の邦訳を出しているわけではありませんが、リディア・デイヴィスの邦訳はあたしの勤務先から何冊も出ていますのでカウントしました。ちなみに同書については『サミュエル・ジョンソンが怒っている』の訳者あとがきで訳者の岸本佐知子さんが

また一一年には、四つの短編集を一冊にまとめた The Collected Stories of Lydia Davis を発表した。三十年ぶん、およそ二百本の短編を収めた七百ページを超えるこの大部の本は話題になり、多くの若い読者が彼女を”発見”するきっかけになった。

と書いています。このリスト100冊のほとんどは邦訳が出ていると思われますが、何冊かは邦訳が出ていないものもあるようです。しかし、これだけ評価されている書籍ですから、たぶん日本の出版社が既に版権を取得して邦訳出版に取りかかっているのではないでしょうか。