この二点はペアで売りたいですね!

少し前に中公新書の『物語チベットの歴史 天空の仏教国の1400年』を読み終えました。中国共産党の弾圧などチベットの状況は、お隣のウイグルと共に悲惨な状況になっているようですが、そんなチベットだからこそ、まずはその歴史を簡便に知りたいと思って手に取りました。

チベット人の名前に少々苦戦しましたが、非常にわかりやすい記述で、チベットのこれまでが少しは理解できたと思います。それにしても、その過半は大国に翻弄された歴史なんですね。それでも民族の誇りと伝統、そして文化を失わずに歩んできた道のりに畏敬の念を覚えます。

とはいえ、中国共産党による、真綿で首を絞めるような弾圧は徐々にチベット固有の文化を奪っていっていると感じます。多少の武力(暴力)を伴いつつも、これぞ共産党が西側に対して使う「和平演変」ではないかと思われます。

そんなチベットの歴史、同書を読んでいて実は一番興味を惹かれたのはダライ・ラマ六世です。一見すると破戒僧のような人のようですが、それでもチベットの人々からは絶大な支持を得ていたようで、チベット文化の不思議さを感じます。と、そんな風に思っていたら岩波文庫から『ダライ・ラマ六世恋愛詩集』なんて本が刊行されているではないですか。

中公新書を読んだ人の多くがこの岩波文庫も買ってしまうのではないでしょうか。逆に岩波文庫を読んだ人なら、改めてチベットの歴史をやダライ・ラマ六世とその周辺のことが知りたくなって、中公新書に手を伸ばすのではないかと思います。

今日の配本(23/05/30)

ポスト新自由主義と「国家」の再生
左派が主権を取り戻すとき

ウィリアム・ミッチェル、トマス・ファシ 著/中山智香子、鈴木正徳 訳

左派の退潮が言われて久しい。世界中が新自由主義に覆われ、格差や貧困がクローズアップされたにもかかわらず、左派への支持は広がらなかった。いや、むしろ左派への風当たりはより強くなったと言えるかもしれない。一方、右派や極右はますます支持基盤を拡大しているように見える。左派退潮の分岐点はどこにあったのか? 左派を再興することは果たして可能なのか? 「左派を再び偉大に」することを狙う本書は、この問いに正面から答える。

幸福なモスクワ

アンドレイ・プラトーノフ 著/池田嘉郎 訳

プラトーノフが一九三三年から三六年にかけて執筆した長篇『幸福なモスクワ』。この「モスクワ」とは、当時、スターリン体制下で社会主義国家の首都として変貌を遂げつつあった都市モスクワと、そこから名前をとった主人公モスクワ・チェスノワをあらわす。彼女は、革命とともに育った孤児であり、美しいパラシュート士へと成長していく。来たるべき共産主義=都市モスクワを具現化するような、大胆で華やかな女性として活躍するモスクワ・チェスノワだが、思わぬアクシデントによってその嘱望された前途は絶たれる。だが、彼女の新たな人生と物語とが始まるのはむしろそこからだ。

ポーランドの人

J.M.クッツェー 著/くぼたのぞみ 訳

ショパン弾きの老ピアニストが旅先で出会ったベアトリスに一目惚れ、駆け落ちしようと迫るが…。究極の「男と女」を描くクッツェー最新作!