紀伊國屋書店新宿本店をはじめ、全国の書店で海外文学シリーズ《エクス・リブリス》のフェアが始まっています。どこの書店でも、というわけではありませんが、もし見かけたら是非ご覧ください。
そして秋のこの時季、新潮クレスト・ブック素のフェアを開催している書店も多いです。《エクス・リブリス》と同時開催している書店も時々見かけます。海外文学好きにはたまらない競演ではないでしょうか。
そんな両シリーズのフェアにはフェア用の小冊子が置かれています。早々となくなってしまっているかも知れませんが、TakeFreeなので、こちらも是非手に取っていただきたいものです。
前にも書いたかもしれませんが、あたしはクレスト・ブックスの冊子に載っている「ただいま翻訳中!」のページが好きです。「ああ、もうじきこれが刊行されるんだ」とワクワクしながら待つ時間がとても尊いものです。
そして《エクス・リブリス》の冊子は、同シリーズが100冊突破(100タイトル目は12月刊行です)を記念した冊子です。翻訳家の小山内園子さん、藤井光さんに文章を寄せていただいています。さらに書店員さんからも三名、丸善博多店の徳永圭子さん、TSUTAYAウィングタウン岡崎店の中嶋あかねさん、ジュンク堂書店池袋本店の小海裕美さんに《エクス・リブリス》について書いていただいております。こちらも是非手に取っていただければ幸いです。
と書きながら、《エクス・リブリス》ではなく、白水Uブックスの新刊をご紹介します。それがこちら、『眠りの航路』です。著者は『歩道橋の魔術師』で知られる台湾の作家、呉明益です。『眠りの航路』は2021年に《エクス・リブリス》の一冊として刊行され、今回はUブックスになります。
書店に並ぶのは来週末くらいになると思いますので、いましばらくお待ちください。そして、《エクス・リブリス》の時にも内容紹介に書いてありましたが、今回も表4に書いてありますが、
三郎が暮らした海軍工廠の宿舎には、勤労動員された平岡君(三島由紀夫)もいて兄のように慕われていたが、やがて彼らは玉音放送を聴くことになるのだった--。
というように、本書には若き日の三島由紀夫が登場しているのです。これがどこまで事実なのかはわかりません。ただ呉明益の父親が神奈川の高座海軍工廠で働かされていたことは事実ですし、同じ時期に作家になる前の三島由紀夫がいたこともやはり事実ですので、二人がここで出会っていたというのも、あながち作家の創作とも思えません。
そんなところに注目して読んでみるのも面白い作品です。確かに台湾人にとって日本占領時代は苦しい歴史だったと思いますが、そんな台湾人の生き様や思いの一端が垣間見える作品となっています。