佐野典代 著
中国唐代から皇帝の茶として珍重され、現在も生産量が極めて少ない天下の名茶“岩茶”に出会って著者の人生は変わった。日本で岩茶サロンを展開し、熱心な愛好者やファンを増やし続けている、そんな中国茶エキスパートが、中国古代から現代に至る思想家、詩人・文士、皇帝や政治家などの「人」「思想」に及ぼした茶の力、それをもたらした茶酔の境地などを体験を駆使して綴る。知られざる茶と中国思想の密な関わりを探った芳醇なものがたり。
彭丹 著
万世一系の国・日本と革命の国・中国。天皇と皇帝から見る日中比較文化論。中国歴代の皇帝たちが強く願いながらも成し遂げられなかった「万世一系」の思想が、中国の文化を数多く取り入れた日本において、現代にいたるまで一二六代、絶えることなく続くのはなぜか。中国で最高権力の象徴とされる「龍」ではなく、「菊」が象徴とされていく過程から読み解く。

新中国論
台湾・香港と習近平体制
野嶋剛 著
世界屈指の超大国、中国。その中国の様子がおかしい。何かが狂い始めている。世界各国が中国の異変に気付き始めたのは数年前。その変化の大きな原因を探っていくと、「台湾・香港問題」にぶち当たる。1997年、英国から返還された香港は「一国二制度」のもとで統治が試みられたのにも関わらず、風前の灯火である。もはや香港において自由や民主は死語に近い。そしていま、中国の手が台湾に及び、台湾の人びとはもがき、苦しんでいる。なぜ「大きな中国」は「小さな台湾・香港」をそこまで必要とするのか? その問いに対する答えに辿り着くためには、「中国」を真正面から捉えただけでは真の姿は浮かび上がってこない。また、「台湾」もしくは「香港」から「中国」を見ても十分とは言えない。そこで、「台湾・香港」の2つの地から「中国」という国をつぶさに考えてみることを提言し、実践したのが本書である。

未来への大分岐
資本主義の終わりか、人間の終焉か?
マルクス・ガブリエル、マイケル・ハート、ポール・メイソン 著/斎藤幸平 編
利潤率低下=資本主義の終焉という危機は、資本の抵抗によって人々の貧困化と民主主義の機能不全を引き起こしたが、そこに制御困難なAI(人工知能)の発達と深刻な気候変動が重なった。我々が何を選択するかで、人類の未来が決定的な違いを迎える「大分岐」の時代――。「サイバー独裁」や「デジタル封建制」はやって来るのか? 世界最高峰の知性たちが日本の若き経済思想家とともに、新たな展望を描き出す。
庵功雄 著
人口減少を背景に、移民受け入れの議論が盛んになっている。受け入れるとしたときに解決しなければならないのがことばの問題。地域社会で共通言語になりうるのは英語でも普通の日本語でもなく〈やさしい日本語〉だけ。移民とその子どもにとどまらず、障害をもつ人、日本語を母語とする人にとって〈やさしい日本語〉がもつ意義とは。
阿刀田高、有栖川有栖、いしいしんじ、石田衣良、市川拓司、今江祥智、内海隆一郎、恩田陸、篠田節子、柴崎友香、朱川湊人、大道珠貴、梨木香歩、二階堂黎人、本多孝好、三崎亜記、山崎洋子、山本一力 著
森を飛びかう絵本をつかまえる狩人、ほしい本をすぐにそろえてくれる不思議な本屋、祖父がゆっくり本を読む理由、書店のバックヤードに隠された秘密……。青春、恋愛、時代小説から、ミステリにファンタジーまで、「本」と「本屋」をテーマに豪華執筆陣18名が集結! 本の世界の奥深さが短いお話の中にたっぷり詰まっています。1話5分でわくわくできてどこから読んでも面白い、本にまつわるショートショート・アンソロジー。
深緑野分 著
1945年7月、ナチス・ドイツの敗戦で米ソ英仏の4カ国統治下におかれたベルリン。ドイツ人少女アウグステの恩人にあたる男が米国製の歯磨き粉に含まれた毒による不審死を遂げる。米国の兵員食堂で働くアウグステは疑いの目を向けられつつ、なぜか陽気な泥棒を道連れに彼の甥に訃報を伝えに旅出つ―。圧倒的密度で書かれた歴史ミステリの傑作、待望の文庫化。
梅原郁 著
モンゴル軍の入寇に対し敢然と挙兵した文天祥。宋王朝に忠義を捧げ、刑場に果てた生涯を、宋代史研究の泰斗が厚い実証とともに活写する。解説、小島毅。
菊地章太 著
儒教と道教、そして仏教。この三つの異なる宗教は、長い歴史のなかで渾然と併存してきた。そのような不思議な思想空間は、なぜ、いかにして成り立っているのか。死生観、自然認識、民間信仰などの視点から、衝突・妥協・調和を繰り返すダイナミズムをとらえる意欲作。矛盾しながら共存する東アジア的宗教の本質を、シンクレティズム=習合というキー概念から鋭く分析し、軽妙な筆致でやさしく語る。
莫理斯 著/舩山むつみ 訳
19世紀の偉大なる名探偵シャーロック・ホームズがもし、ビクトリア朝時代の英国人ではなく、清末の時代に生きた中国人だったとしたら……。そして、彼が奇妙な事件を次々に解決したのが大英帝国の首都ロンドンではなく、東の果ての植民地香港だったら……。ホームズとワトソンを彼らとまったく同じ時代に生きた中国人、福邇(フー・アル)と華笙(ホア・ション)とし、物語の舞台を香港にした極上のパスティーシュ作品。正典ホームズ・シリーズからの換骨奪胎ぶりが絶妙だ。1880年代の香港の様子が生き生きと描かれ、ミステリーであると同時に、歴史小説としても読み応え十分。