安田峰俊 著
中国は漢族だけの国ではなく、56の民族で構成される多民族国家だ。さらに漢族の内部にも、客家人、広東人、福州人、潮州人と、文化や言語を異にするさまざまな集団が存在する。 彼らは現代中国の政治・軍事・経済・社会・ポップカルチャーの多様な面で顔を出し、日本社会にも大きな影響を与えている。他方、漢族の同化圧力のもと、彼らの一部は苛烈な迫害に晒されてもいる。「中華民族の偉大なる復興」を旗印とする習近平政権は、彼らをどこに導くのか? 民族は、中国の行動原理を読み解く最大の鍵であり、無数の不都合な真実をはらむ暗部でもある。現代日本の中国報道を牽引する大宅壮一ノンフィクション賞受賞作家が、中国の無数の「民族」たちの喜怒哀楽を描き、帝国化する大国の実相をえぐりだす。
林海音 著/大原聖蘭 訳
1920年代北京。台湾から引っ越してきたばかりの少女・英子は、北京の伝統的な街並み・胡同(フートン)の中を駆け回る。近所に住む友だち、空き地で会う若いお兄さん、家に転がりこんできた魅力的なお姉さん、田舎からやってきた乳母、そして最愛の父……出会いと別れの中で、否応なしに大人になってゆく姿を描いた中国語文学の傑作。
イーユン・リー 著/篠森ゆりこ 訳
表題作ほか11の短編を収録。喪失、孤独、秘密、愛情…深みのあるテーマを扱い、率直ゆえの辛辣さのなかにユーモアを感じる。
リン・マー 著/藤井光 訳
中国出身の米国作家による第一短篇集。暴力と存在の孤独という主題が前作『断絶』より前景化され、観察と物語の凄みが際立つ八篇収録。
パク・ミンギュ 著/斎藤真理子 訳
世界に「あちゃー」された男子中学生「釘」と「モアイ」は卓球に熱中し、人類存亡を賭けた試合に臨む。『カステラ』の韓国の鬼才が猛打する長篇。
鄭執 著/関根謙 訳
鄭執は作家・脚本家・映像作家として活躍する中国の若きクリエイター。80後世代の旗手。初邦訳となる本書には、中国東北部の中核都市である故郷・瀋陽の街から、あるいは鬱々と・あるいは劇的に・あるいは飄々と逃奔する青年を主人公とする、三つの物語を収録。
松浦優 著
LGBTに関する議論から取りこぼされてきたものがある。それが「アセクシュアル」「アロマンティック」などのセクシュアリティだ。アセクシュアルとは「他者に性的に惹かれない」という指向で、アロマンティックとは「他者に恋愛的に惹かれない」指向をいう。私たちは「誰しも他者を恋愛的な意味で『好き』になったり、性的な関係を持ちたいと思ったりするはずだ」という前提で日々を過ごしがちだが、そういった思い込みは彼らの存在を否定することになる。本書ではアセクシュアルやアロマンティックの人々の経験や置かれている状況、歴史、そして関連する用語や概念を詳細に解説する。
奥泉光、原武史 著
明治・大正・昭和・平成・令和……今こそ問う、この国にとって天皇とは、皇室とは何なのか? しばしば天皇制を扱ってきた小説家と、天皇研究の第一人者が、対話を通じてその本質に迫る。
柴崎友香 著
コロナウィルス感染拡大のなか、小説家のヤマネは、『実践講座・身近な場所を表現する/地図と映像を手がかりに』という講座を担当することになる。PCを通して語られるそれぞれの記憶、忘れられない風景、そこから生まれる言葉……。PC越しに誰かの記憶が、別の新たな記憶を呼び覚まし、積み重なってゆく。人と人とのあらたなつながりを描く長篇小説。読売新聞連載、待望の単行本化。
國分功一郎 著
「楽しい」って何なのだろう? 『暇と退屈の倫理学』にはじまる哲学的な問いは、『目的への抵抗』を経て、本書へと至る。カントの哲学をヒントに、「嗜好=享受」の概念を検証。やがて明らかになる、人間の行為を「目的と手段」に従属させようとする現代社会の病理。「嗜好=享受」を奪うことは、人間に病としての依存症への道を開く。