上流階級も大変だ?

ネットニュースで知ったのですが、本日2月6日は英国のエリザベス女王即位の日だそうです。今日で即位70年になるそうです。

そんな今日という日にお薦めの一冊は『やんごとなき読者』です。もちろんフィクションではありますが、主人公はそのエリザベス女王ご本人です。

ある日、愛犬を追って城の裏庭にやってきた女王陛下は、移動図書館の車と、本を借りにきていた厨房の下働きの少年に出くわす。あくまでも礼儀上、一冊借りたことが、人生を変える、本の世界への入り口となった。以来、すっかり読書の面白さにはまってしまい、カンニングする学生のように公務中に本を読みふけるわ、誰彼かまわず「最近どんな本を読んでいますか」と聞いてはお薦め本を押しつけるわで、側近も閣僚も大慌て。読書によって想像力が豊かになった女王は、他人の気持ちや立場を思いやるようになるものの、周囲には理解されず、逆に読書に対してさまざまな妨害工作をされてしまう……。

公式サイトにある内容紹介は上記のとおり。本を読むことに目覚めたエリザベス女王が周囲を引きずり込んだドタバタ劇であり、とても笑える内容です。その一方で、本を読むことの楽しさを教えてくれる一冊でもあります。

さて、エリザベス女王は英国における究極の上流ですが、英国の上流階級に興味をお持ちの方には、現在売行き絶好調のこちら、『ノブレス・オブリージュ イギリスの上流階級』がお薦めです。

ドラマ「ダウントン・アビー」やジェイン・オースティンの小説が好きな方であれば、こちらも大いに楽しめるはずです。是非手に取ってみてください。

ここまでやるのか? ここまでやるのね!

昨日のダイアリーで書店のディスプレイについて書きました。

和菓子のアン』のカバーに載っているような和菓子を再現したオブジェが飾られていました。書店の方の手作りだそうです。作品に対するヒシヒシとした愛情を感じました。

こういう書店のディスプレイは、出版社の営業としては非常に興味深いもので、最近では新宿の紀伊國屋書店で開催された《白水Uブックス》フェアの展開も印象深かったです。

そんな中でも、あたしの記憶に一番残っているのが写真の展開風景です。

先年閉店してしまった宮脇書店ヨークタウン野田店のものです。あたしが東北地方を担当していたころには年に一度か二度訪れていました。

ただ、この写真を撮ったのはYA出版会で福島地区へ研修旅行へ行ったときに撮影したものだったと思いますから、十年近く前の話です。

乃木坂46ではなく、まだまだAKB48が人気絶頂で、夏の文庫キャンペーンもAKB48が担当していた時代です。

この大きな樹が真ん中にドーンと聳え、そこにツリーハウスが作られています。樹を作るだけなら他のお店でもやっていそうですが、このツリーハウスの中が凝っています。「これはシルヴァニアファミリー?」と思ってしまいそうなクオリティーでした。

これもやはりお店のスタッフの方が手作りしているそうで、毎年のように作っていると聞きました。なんでも年が明けると、今年の夏はどんなディスプレイにしようか考え始めるのだそうです。

こんなディスプレイを作っていたスタッフの方、お店が閉店した後も他の書店で作っているのでしょうか? このツリー以外にも店内はいろいろなディスプレイであふれているお店でした。

生誕140年

今日は、ヴァージニア・ウルフの生誕140年なのだそうです。

というわけで、白水Uブックスの『フラッシュ 或る伝記』をご紹介。

犬目線の、とても可愛らしい小説です。

登場する犬はコッカースパニエルだったと記憶しています。日本では犬種としての人気はどのくらいなのでしょうね?

あたしの季節感っておかしいでしょうか?

あたしの勤務先のPR誌『白水社の本棚』のリニューアル第4号が出来上がりました。お近くの本屋さんに置いてあるかも知れませんが、なければ公式サイトからご請求ください。

さて、その第4号が右の写真の一番右になります。写真は刊行順に左から並べています。2021年4月に発行されたものが第1号になります。

表紙には第1号とか、NO.1とは表示されておらず「2021春」とだけあります。同じように、2021年7月発行のは「2021夏」、2021年10月発行のは「2021秋」、そして今号は「2022冬」とあります。

あたし、この表記が気になるのです。

確かに、季節感としてはこの春夏秋冬は合っているのですが、あたしの感覚では(あくまであたしの超個人的な感覚では)今号は「2022春」なんですよ。やはり一年というのは春夏秋冬ですから、1月は新春なので「春」と表記してもらいたいのです。

ただ、年度で括るのであれば、現状の表記がしっくりくるのでしょう。でも、あたしにはそれがしっくりこないのです。あたしってどうも旧暦で生きている感じなのでしょうか。

みなさんは、どう思われますか?

さあ、仕事始め?

三連休が明け、なんとなく、本日からが本格的な仕事始めという気がします。

「いまごろか?」と言われたら返す言葉もありませんが、実感としてはそんな感じです。

で、今日は横浜まで足を延ばしました。

オミクロン株、神奈川県でも増えていますが、それを反映しているのか、昨年暮れに行った時に比べると街の人出が若干減っているような気がしました。

いまのところ関東地方には蔓延防止措置とか非常事態宣言は出ていませんが、時間の問題なのでしょうか? そうなると営業回りもまた難しくなってきますね。ようやく日常が戻りつつあったのに……

没後20年です

本日、1月10日はグラフィックデザイナー、田中一光さんの没後20年になります。

あたしの勤務先では何点か著作を刊行しているのですが、現在はすべて品切れになっています。たぶん、最後まで在庫があったのは『デザインと行く』と『田中一光自伝 われらデザインの時代』ではないでしょうか? この二点は、あたしにも少し前まで在庫があったという記憶があります。

これを機に特に回顧展があるという話は聞いていませんが、何かあってもよさそうですね。

あるいは2030年の生誕100年に大きな回顧展が行なわれるのでしょうか? そういう情報は何も入ってきていませんが、さて、どうなのでしょう?

田中一光さんの著作は品切れですが、この当時のデザイナー群像については『四人四色 イラストレーター4人への30の質問』を読んでいただければと思います。こちらはまだ在庫ありますので、よろしければどうぞ!

モスクワからイスタンブールへ

少し前に中公新書の『物語 イスタンブールの歴史 「世界帝都」の1600年』を読みました。

行って見たいなあと思う都市の一つですし、その歴史を考えると興味津々なので手に取った一冊です。個人的には地図がそれなりに入っているのですが、もう少し親切なものであればよかったのにという憾みが残ったのと、イスタンブールだけでなく、黒海なども含めたもう少し広域の地図も載っていれば内容が頭には行って来やすかったのではないかと思いました。

それはともかく、同書の230頁にこんな記述がありました。

またロシア人たちは与えられるばかりではなく、イスタンブールのナイトライフを一変させたことでも知られる。彼らは、それまではどちらかというと観劇、飲酒(そして売春)が分散的に行われていたイスタンブールの夜に、それらの愉しみがひとところに集う新たな施設としてのナイトクラブを持ち込んだのである。一九一一年開業のイスタンブール最古のバーとされるガーデンバーことガーデン・プティ・シャンを受け継いだ同名ナイトクラブ(一九一四年開業)を皮切りに、黒いロシア人と称えられたフレデリック・ブルース・トーマス--ロシア国籍を持つブラック・アメリカンだった--の開いたマクスィム(一九二一年開業)など、ガラタの下町からタクスィム近辺の至るところに、ロシア美人たちがショーガール、接客係を務めるナイトクラブが続々と開店する。ヘミングウェイが驚嘆したカラキョイの酒場街の狂乱も、大戦を背景として誕生したのである。

ここに出てくる「黒いロシア人」フレデリックですが、ロシアから来たのに「ブラック・アメリカン?」と不思議に思われた方も多いのではないでしょうか? こんな時代にアメリカからロシアへ、しかも黒人が移り住んでいたなんて、と驚かれたのではないでしょうか?

彼に関して興味を持たれた方、もっと詳しく知りたいと思った方には、是非とも『かくしてモスクワの夜はつくられ、ジャズはトルコにもたらされた 二つの帝国を渡り歩いた黒人興行師フレデリックの生涯』の一読をお薦めいたします。

公式サイトには

厳酷な黒人差別社会に見切りをつけたミシシッピ生まれのフレデリックは、海を越えて旧大陸へ渡り、帝政時代のモスクワでアメリカン・ドリームを摑むのだが……ロシア文学の碩学による、まるで物語(フィクション)のような歴史ノンフィクション。アメリカ南部の社会、爛熟する帝政末期のモスクワの夜、そして、第一次世界大戦とロシア革命の勃発――激動の時代を背景に描かれる、不屈な男の、凄まじくも痛快で爽快な魂の遍歴。

とあります。黒人差別を嫌ってアメリカからロシアに移り、第一次世界大戦とロシア革命の勃発でロシアからイスタンブール(オスマン帝国)へ渡ったなんて、彼の人生は波瀾万丈以外の何ものでもないでしょう。

生誕弐百年

今日は、シュリーマンの生誕200年です。1822年の1月6日生まれだそうです。日本では江戸時代の末期ですね。

それに合わせて、しばらく品切れになっていた『シュリーマン トロイア発掘者の生涯』を新装版として復刊いたしました。もう店頭に並び始めていると思いますので、気になる方は是非どうぞ。

ところで、シュリーマンってトロイ遺跡と共に名前だけは昔から知っていましたが、実はどんな生涯を送った人なのかよく知りません。子供のころにトロイの木馬の話を聞いて興味を持ち、それを大人になるまで抱き続け、遂に偉大な発見を成し遂げた、そんなおぼろげな記憶ですが、合っているのでしょうか。

あの時代の考古学や発掘、探検といったものは帝国主義の国策と深く結びついているというイメージがあるのですが、シュリーマンの場合はどうなのでしょう?

あれから30年

ソビエト連邦崩壊から30年。もう30年たつわけですから、いまの若い方の記憶にないのは当然ですね。あたしの世代ですと「ロシア」という響きは帝国の彭を思い出させ、やはりあの国のことは「ソ連」と呼んでしまいがちです。

ソビエト連邦という国の歴史を振り返るもよいですが、かなりたくさんの本が集まりそうなので、今回はソ連崩壊の時期に絞ってご案内しますと、まずは『ゴルバチョフ(上)』『ゴルバチョフ(下)』です。ソ連を崩壊に導いたという表現を使うとマイナスイメージになってしまいますが、やはりあたしの世代にとってゴルバチョフは冷戦を終わらせ、さまざまな改革を行なった清新な政治家というイメージが先行します。まだ存命ですので、本書は評伝ではありますが、半生記的なものです。

そしてゴルバチョフの引き起こした改革が東欧全体に影響を及ぼし、一気に「東側」が崩壊していった様を描く『東欧革命1989 ソ連帝国の崩壊』です。リアルタイムで知っていますが、まさかこんなにあれよあれよという間に共産圏が崩れていくとは思いもしませんでした。

考えてみますと、1989年という年は、年明け早々に昭和が終わり、中国で天安門事件が起こり、そして東欧の崩壊、ベルリンの壁崩壊という、たぶん近年稀に見る激動の都市であったと思います。そんな東欧の状況を活写したのが本書です。

そして西側に住むあたしたちは、これで共産圏に暮らす人たちも幸せになれると脳天気に思い込みがちですが、実際にはそうではなく、あまりの価値観の変化についていけない人たちも大勢いたようで、そんな実情を描いたのが『踊る熊たち 冷戦後の体制転換にもがく人々』です。正題だけを見ると、動物の話かなと思って、本屋で「自然-生物」のコーナーに置かれてしまいそうですが、副題を見ていただければ、どんな内容を扱った本なのか理解していただけると思います。

そう言えば、東欧のように共産社会が崩壊したわけではありませんが、事実上の資本主義に邁進してきた中国でも、「共産主義は素晴らしい、仕事をしなくたって給料がもらえるから」という皮肉めいた発言を中国人から聞いたことがあります。

東欧の崩壊が1989年に始まって、本家本元のソ連が解体になったのが、いまから30年前1991年の12月25日なわけです。ソ連からロシアに変わり、現状を見ると再び「帝国」に戻ってしまったかのような印象がありますね。

そんな25日クリスマスには『クリスマスの文化史』を繙くのは如何でしょうか? 毎年この時季になると(もう少し前からですが……)書店からの注文が伸びる季節商品的な一冊です。

ちょうどよいタイミング?

先月、今月と二か月にわたって刊行された、岩波文庫の『マンスフィールド・パーク(上)』『マンスフィールド・パーク(下)』をゲットしました。

同作品は、以前に「ちくま文庫版」で読んだことがあります。というよりも、ジェイン・オースティンはちくま文庫で全部読んでいます。

岩波文庫版『マンスフィールド・パーク』の訳者の一人、新井潤美さんの著書『ノブレス・オブリージュ イギリスの上流階級』が、あたしの勤務先から年末に刊行されます。ちょうど見本が出来てきたところです。なんというグッドタイミングでしょう。

文庫と単行本なので、書店では近くに並んでいない可能性が高いと思いますが、もし可能であれば併売していただけると嬉しいです。よろしくお願いします。

ところで「ノブレス・オブリージュ」って言葉、日本では人口に膾炙しているでしょうか? まだまだ「何、それ?」という日本人も多いのではないでしょうか? ただドラマ「ダウントン・アビー」のヒットあたりから知られるようになったのではないかと思います。

で、あたしも大方の日本人と同じように知らない言葉だったのですが、辛うじて本書の企画が上がる前に走っていました。何かの本を読んでいた時に「ノブレス・オブリージュ」という単語が出て来て、どういう意味だろうと引っかかったのを覚えています。何の本で知ったのかは思い出せないのですが……