比べてみました

同じタイトルの本というのが、時々あるものですが、最近こんな書籍を発見しました。

 

中央公論新社の新刊『クルスクの戦い 1943 第二次世界大戦最大の会戦』です。そしてもう一冊が、あたしの勤務先の『クルスクの戦い1943  独ソ「史上最大の戦車戦」の実相』です。

副題こそ異なりますが、正題は共に「クルスクの戦い1943」です。著訳者は前者がローマン・テッペル著、大木毅訳で、後者はデニス・ショウォルター著、松本幸重訳です。四六判で400ペイジを超える分量はどちらも同じです。

公式サイトによる内容紹介は、前者が

独ソ戦の研究の最前線。第二次世界大戦の帰趨を決した戦いの一つ、クルスクの戦いをドイツ、ロシア両国の資料から精緻に分析し、著しく歪曲されてきたそのイメージを刷新する。

で、後者は

「ツィタデレ作戦」の背景、準備、戦闘の経過、圧巻のプロホロフカの戦車遭遇戦、作戦の挫折を、米国の長老軍事史家が新資料を駆使して精緻に描写。地図・口絵・索引収録。

です。同じ素材に関する書籍ですから煮てしまうのは仕方ないですが、書店店頭や読者が迷ったり、間違えた発注が起きないか、そこがちょっと心配です。

本を読んでいる人が多い気がしました

電車の中で『鬼滅の刃』を読んでいる人はいないなあ、と思いながらの書店回り。

先週末の鬼滅騒動も一段落、次の入荷いつになるのかという凪の状態が続いているようです。

そんな書店回りの電車内で、ショートヘアの女子高生が、乗ってくるやおもむろにカバンから取り出して読み始めたのが、岩波文庫の『失楽園』でした。上巻なのか下巻なのかまでは判別できませんでしたが、クールビューティーな雰囲気を漂わせた美少女(?)が岩波文庫を手にしているのはとても格好よかったです。

そんなあたしは『見えない人間』を読んでいましたが、あたしの隣に座っていた女性も、手にしているのはスマホではなく文庫本。何気なく社内を見渡してみると、今日の車中は本を読んでいる人が多いなあという印象。なんだか嬉しくなってきました。

動かない営業?

まもなく配本予定の新刊は『冷たい戦争から熱い平和へ』の下巻です。上巻は既に店頭に並んでいると思いますが、上下巻の装丁はこんな感じです。

上巻は、オバマとプーチンが握手していますが、下巻はプーチンは変わらずですが、アメリカ側はトランプに変わっています。こう見ると、プーチンは長いこと権力の座にあるなあと感じます。しかしまあ、本書が出る頃にはトランプも大統領の座から降りようとしているわけですから、不思議なものです。

ところで、本日のいでたちはこんな感じでした。

本日のブラウスは「動かない鳥・ハシビロコウ」です。「動かない鳥」なのに、あたしはあっちの書店からこっちの書店へと動き回る営業です。なんという矛盾、自己撞着! 果たしてこれでよかったのでしょうか?

ちなみに、ネクタイはチェスの駒です。特にハシビロコウとは関係ありません。探せば、ハシビロコウのネクタイも売っているのでしょうか?

フェアは三社でやるのがトレンド?

書店回りの途次、ある書店でこんなフェアをやっているのを見かけました。

亜紀書房、朝日出版社、草思社による三社合同フェア「歩む道を灯す本 強い光 やわらかい光」です。この書店、意図したのか否か、詳細はわかりませんが、みすず書房、東京大学出版会、白水社によるフェア「レビュー合戦」もやっていました。いみじくも、三社フェアの共演(競演?)となっていました。

やはり一社のフェアよりも、読者から見ても楽しくなりますよね。この数年、一社のフェアはなかなか開催してくれる書店が減っているので、各社手を取り合って、合同フェアを企画しているわけですね。

さて、本日の朝日新聞夕刊、著名人の訃報(惜別欄)に、あたしの勤務先でもお世話になっている(なっていた)高儀進さんが載っていました。この夏でしたね、お亡くなりになったのは。

記事中にも載っている『スクープ』『ポリー氏の人生』は、あたしも読んでいます。記事の中にあった

昨今の古典新訳ブームとは距離を置き、「定評ある訳があるものを訳し直すより、新しい作品を世に紹介するほうが意味がある」という翻訳哲学で、そういう仕事は断った。

という部分は、非常に高儀さんらしいなあと感じました。お元気であれば、まだまだ次々に未邦訳の作品を世に出していたことでしょう。

運がよかったのか、浅はかな行動だったのか?

新型コロナウイルス、一気に増えてしまって、政府はどう対応するつもりなのでしょう? 今のところは、国民に丸投げ、各自で気をつけてくださいとしか言われていない気がします。

政府はともかく、10月から再開した書店営業回りも、このまま継続していてよいのでしょうか? いや、それよりも毎日のように出社していてよいのでしょうか? また春から夏にかけてのように在宅勤務を増やさないとならないのではないか、という気もしています。

そして、今にして思うのは、今月初めに一泊ではありましたが、大阪と京都へ出張に行かれたのは奇跡的なタイミングだったなあ、ということです。確かに、第三波の兆しが見えていたと、今となっては言えるかもしれませんが、あの時点では、現在のような危機感はありませんでした。訪問した書店の方も「久しぶり」「よく来てくれました」という感じでした。これが一週間遅かったら、とても出張に行くような空気ではなくなっていたでしょうね。

考えてみますと、あたしは1月末にも関西へ五日間、いつものような出張に出ていました。これも新型ウイルスというニュースは流れていましたが、「大阪はともかく、京都で中国人のそばには寄らないようにしなさい」と、半ば冗談が言えるような空気感でした。あたしが出張から帰京してじきでしたね、一気に自粛ムードが広がったのは。

つまり、あたしは春先と今回と、二度もコロナの間隙を縫って出張に行くことができたのです。これをタイミングがよい、運がよいと考えるべきなのか、そうではなくあまりにも軽率な行動だったと反省するべきなのか、自分でもよくわかりません。

ドイツとは何の関係もないのですが……

こんな三冊を並べてみました。

  

黒い時計の旅』『赤死病』『黄泥街』です。「この三冊がどうしたって?」と言われそうですね。

黒い時計の旅、死病、泥街の三者に共通するのはタイトルに色が入っているところです。そして、この「黒・赤・黄」の三色ってドイツ国旗の色と同じです(正確には「黄」ではなく「金」だそうですが……汗)。なんかそんな括りで販促できないかなあと、ふと思った次第。

やはり書店を回っていると得るものがあります

今月から、少し書店回りを再開しようというのが、あたしの勤務先の方針でした。

実はここへ来てコロナの新規感染者がじわりじわりと増えつつあるという現実はあるものの、今月初旬の段階ではやや落ち着きが見られ、寒くなって本格的な第二波が訪れる前のこの時季が書店回りのチャンスだと判断したわけです。

そこで、あたしはコロナ以前にかなり近い状態まで書店回りを再開してみました。あらかじめアポを取って訪問したり、訪問してからまずはお店の方に断わってからであったり、やり方はさまざまでしたが、ほぼすべての書店から、出版社の営業について拒否されることはなかったです。ありがたや、ありがたや。

で、回ってみて気づいたことは、語学書は基本的なものが抜けたままになっている書店が散見されるということです。人文書や文芸書は書評なども出たりして、いま並べるべき本がわかりやすいかも知れません。こちらもそれに絞って電話なりファクスなりで営業をしやすいものです。

しかし、語学書はそうはいきません。もちろん売れている新刊があればそれをプッシュしますが、それ以上に棚から売れる定番書のメンテが大事なジャンルです。その棚のメンテナンスはお店により、棚の大きなにより、どれくらい並べるべきかが異なります。実際に棚を見ないとこちらもお薦めできません。

というわけで、この一か月(正確には半月ちょっと)、売れ筋の新刊と語学書棚のメンテを中心に回っていました。しかし、棚のメンテをする以上に、お店の人と話をすること、そして実査に商品が並んでいる店頭を眺めること、それが自分にとってどれだけ大事なことだったかが再確認できました。

書店員さんが十人いれば十人の意見や感想が聞けます。自分には思いもしなかった視点・視座を提供してくれることも多々あります。この半年近く、あまり書店員さんと話をする機会がなかったので、改めて新鮮か気持ちになりました。

そして、書店回りをしないと書店にもあまり行かなくなり、どんな本が出ているかに疎くなっていたのですが、本屋に行くと実にたくさんの本が並んでいますね。こんな本が出ていたのか、と気づかされることが多かったです。

こういう感覚というか体験、将来的にはネットで置き換えることは可能なのでしょうか? 少なくとも、あたしに関して言えば、置き換えられないと思った次第です。

「違いのわかる男」ってCMが昔ありましたけど……

まもなく配本予定の新刊、『青騎士』の新装版です。

どちらが旧版で、どちらが新装版か、おわかりになりますか?

正解は左が旧版、右が新装版です。

ですので、月末に店頭に並ぶのは右側のものになります。

なぜか、いまだに公式サイトでは画像がアップされていないので、ここで紹介させていただきました。

入手まで、いましばらくお待ちください!

やはり関連書籍の出版が多いですね

去る10月3日で、東西ドイツが統一されてからちょうど30年でした。若い世代ですと、ドイツが東西に分裂していたということを知らないのかも知れませんし、時事ではなく歴史として習ったかも知れません。

あたしくらいの年になりますと、激動の89年は既に大学生でして、リアルタイムでニュースを見ていたわけなので、天安門事件やベルリンの壁崩壊、そして東西ドイツ統一も「もう三十年も経つのか」という感慨が湧き上がります。

さて、そんな年回りだからでしょう、ここへ来てドイツ関連書籍が続けざまに刊行されました。中公新書の『物語 東ドイツの歴史』と岩波新書の『ドイツ統一』です。本当であればどちらも10月3日に間に合うように、できればその前から書店店頭で展開したかったところでしょうから9月には刊行したかったのではないかと推察いたしますが、ちょっと遅れてしまいましたね。

そして、あたしの勤務先も『東欧革命1989』や『東ドイツ史1945-1990』といった関連書籍があります。ちょっと一緒に並べてみました。

写真には写っていませんが、『20世紀ドイツ史』というタイトルも刊行しています。ドイツ統一の当日は過ぎてしまいましたが、今からでもちょっと「統一ドイツ」コーナーやミニフェアを企画するのであれば、ご参考まで。

三部作、完結

今月末に配本になる『まっぷたつの子爵』は、イタロ・カルヴィーノの《我々の祖先》三部作の掉尾を飾る一冊です。

ここまで、Uブックスでは『不在の騎士』『木のぼり男爵』の二冊を出してきまして、三冊を並べると右の写真のようになります。

この三冊は三部作ということで、通常のUブックスとは少しデザインを変え、この三冊を是非揃えてくださいという感じになっております。書店店頭でも一際目立つ装丁になっているのではないでしょうか? 個人的にも気に入っています。

そして、今回の『まっぷたつの子爵』には、《我々の祖先》三部作執筆の経緯を作者みずからが解説したエッセー「一九六〇年の覚書き」を、本邦初訳で収録しています。こちらも是非お愉しみください。

ところで、海外文学の読者の中には、「あれ、『まっぷたつの子爵』って岩波文庫でも出ていなかったっけ?」と思われた方も多いはず。

はい、そのとおり、岩波文庫でも現役です。ただし、岩波文庫版とUブックス版とでは訳者が異なります。今回のUブックス版は新訳になります。どちらの訳文が好みかは読者にお任せしますが、三部作が揃うのはUブックスになりますので、三冊まとめてよろしくお願いします。