生まれる前のことなので……

JFKと聞いて、アメリカ大統領ケネディを思い出せる人って、今の日本人だとどれくらいいるのでしょうか。一定年齢以上であれば社会常識なのかも知れませんが、若者だと知らない人も多いのではないでしょうか。

それとも、現在の中学や高校の社会科教科書には、ケネディの政治と彼が暗殺されたことが載っているのでしょうか。だとしたら、むしろ大人よりも正確に、詳しく知っているのかもしれません。時代としては、そろそろ教科書に載ってもよい年代だと思いますが、どうなのでしょうか。

そんなケネディの暗殺から、今日でちょうど60年なのだそうです。あたしはもちろん生まれていませんが、映像はテレビで何度も見ています。聞くところによると、日本のテレビの初めての衛星中継で飛び込んできたのがケネディのパレードだったそうで、そのパレードでケネディは暗殺されたはずです。あまりにも衝撃的な衛星中継になってしまいましたね。

され、ケネディの評伝や暗殺について書かれた本は日本でも数え切れないほど出ていると思います。翻訳もあれば、日本人が調べて書いたものもあると思いますが、そんな中、あたしの勤務先も『JFK(上)』『JFK(下)』という巨冊を刊行しています。ところが本書はそのサブタイトルに「1917-1956」とあるように、ケネディの晩年は扱っていません。ケネディ評伝の前半の翻訳本なのです。いずれ暗殺までを描いた後半もあたしの勤務先から刊行されるのだろうと思います。乞うご期待。

「おさらぎ」ではなく「だいぶつ」です

ガイブン、海外文学は苦手という人、意外と多いですよね。あたしも決して読む方ではなかったですし、得意と言えるわけではなかったのですが、仕事柄、とにかくいろいろと、手当たり次第に読むようになって、それなりに慣れてきましたし、面白く感じるようになってきました。

自社から出ているガイブンもある程度読んでいて、どれもそれぞれよさがありますので、書店営業の時にはできるだけそれをアピールするようにしています。それでも読み慣れていない人には取っ付きづらいかなあという作品もあれば、ガイブンと構えることなく読める作品もあります。誰が読んでも面白い作品もあれば、読者を選びそうな作品もあります。

そんな中、まもなく配本になる《エクス・リブリス》の新刊が『大仏ホテルの幽霊』です。著者はカン・ファギル、韓国の作品です。読み始めたのですが、もう半分ほど読み終えましたが、ぐいぐい引き込まれます。いまのところ韓国の文化や歴史を知らないと理解できないようなところはなく、どんどん読み進めることができる作品です。これはヒットしそうです、。

ところでタイトルにもある大仏ホテル、仁川にかつて存在したという設定なので面白半分で検索してみたら、実際にあったホテルなんですね。「日本人が建てた韓国初の西欧式ホテル、なぜ市民団体が復元反対」というネットの記事を見つけました。この小説の中でも大仏ホテルは日本人が建てたことになっていましたが、そのあたりのストーリーはほぼ史実なのですね。その後、中華楼というレストランになったことも小説に書かれています。

韓国近代史とともに歩んだホテル」というネットの記事にも、同じように大仏ホテルの来歴が書かれています。前者には当時の大仏ホテルの写真が掲載されているので、本作を読まれる方は眺めてみるのもよいのではないでしょうか。もちろん『大仏ホテルの幽霊』を読みながら、自分なりの大仏ホテルをイメージするのも、小説の楽しみ方ですから無理強いするつもりはありません。

また、とうの昔に大仏ホテルは取り壊されていますが、仁川には大仏ホテル展示館という施設がオープンしているようです。ハングルが読めないのですが、こちらがウェブサイトのようです。

いま第二次大戦が注目?

今年の夏にチャーチルの『第二次世界大戦』がみすず書房から刊行されました。邦訳は他社から出ていましたが、それは抄訳なので、今回は完訳ということが最大の特長です。毎年夏に一冊ずつ、2028年の夏に完結予定の壮大な企画です。

チャーチルの本書が完訳されるのは素晴らしいことだと思いますが、それを知ってか知らずか、中央公論新社からまもなく『第二次世界大戦』の上下巻が出版されます。こちらの著者はリデルハート、イギリスの戦略家・軍事史家だそうです。陸軍出身の人なのですね。たたき上げの軍人が第二次大戦をどう描くのか、気になるところではあります。

ちなみに、上巻は1939年から1943年、下巻が1943年から1945年を扱っているようです。どちらも500頁超えの大著です。

そして第二次大戦の本で忘れてはならないのが、あたしの勤務先から出ている『第二次世界大戦』です。こちらはアントニー・ビーヴァーで、同書は上中下の三巻本です。こちらも1939年から1945年を扱っていますから、これが第二次大戦の期間なのでしょう。日本人は泥沼の日中戦争があるので、なんとなく1939年からと言われてもピンと来ない気もします。

それにしても、このタイミングで第二次大戦に関する大著の出版が重なるのは、何かあるのでしょうか? いずれにせよ書店では一緒に並べてもらえるとうれしいです。

併売候補がたくさん?

このところ書店を回っていますと、勤務先の刊行物と関連がありそうな新刊が並んでいるのが目に付きます。それも一点ではなく、何点かあるのです。そんな併売候補を、ご紹介したいと思います。

まずはジョージ・グッドウィン著『もっと知りたいクリスマス サンタ、ツリー、キャロル、世界の祝い方まで』(原書房)です。この隣には、若林ひとみ著『クリスマスの文化史』と並べて欲しいものです。

次は、スコット・レイノルズ・ネルソン著『穀物の世界史 小麦をめぐる大国の興亡』(日経BP)で、この隣に並べてほしいのはマージョリー シェファー著『胡椒 暴虐の世界史』です。

三つめは、ダリア・ガラテリア著『ヴェルサイユの宮廷生活 マリー・アントワネットも困惑した159の儀礼と作法』(原書房)で、こちらの併売候補はウィリアム・リッチー・ニュートン著『ヴェルサイユ宮殿に暮らす 優雅で悲惨な宮廷生活』です。

そして最後は、貝塚茂樹著『𠮷田満 身捨つる程の祖国はありや』(ミネルヴァ書房)で、こちらと並べるのは渡辺浩平著『吉田満 戦艦大和学徒兵の五十六年』になります。

図らずも、すべて人文書の歴史のコーナーに置かれる書籍ばかりですね。

犬の日です!

去年も書いたような気がしますが、今日、11月1日は、ワンワンワンで犬の日なのだそうです。2月22日の猫の日に比べて、あまりにも影が薄いということも、やはり去年のこのダイアリーで書いたように思います。その気持ちは今年も変わっていませんので、今年も書いてみました。

あたしの勤務先で犬の本と言ったらこの二冊、ヴァージニア・ウルフの『フラッシュ』と閻連科の『年月日』です。話の内容は対照的な2作品です。いずれも比較的短い作品なので、気になった方から手に取っていただけるとうれしいです。

そして、今日は灯台の日でもあるそうです。猫に比べて影が薄いと上で書きましたが、それでも犬に関する作品はコミックや小説、エッセイなど、それなりの数が出版されています。動物ものとしてはやはり犬と猫は断トツに多いのではないかと思います。

それに比べると灯台に関する本は写真集など何冊かあると思いますが、小説は極端に少なくなるものです。それでも、あたしの勤務先からはジャネット・ウィンターソンの『灯台守の話』を刊行しています。こちらも読み応えのある一冊です。

と言いつつ、今日11月1日は、業界としてはやはり「本の日」で盛り上げなければいけないのでしょう。111という数字の並びが、本棚に並んでいる本をイメージなのだそうですが、だったら11月11日の方がいいんじゃない、というのは言いっこなしです。

移動の列車内で仕事をしました!

先週の水曜日から金曜日の二泊三日で北陸へ行って来たことは、既に散々書きました。

まだまだいろいろ書くべきことはあると思うのですが、その中で一点、自分がバリバリ仕事をするサラリーマンみたいだなあと思った瞬間をちょっと振り返ってみたいと思います。

それは木曜日のことです。

この日は富山を発って、朝一番で高岡にある書店の本部へ向かいました。そこで小一時間くらい商談をし、その後10時過ぎに書店を訪問し、10時半過ぎに新高岡から北陸新幹線で金沢へ向かうという午前中のスケジュールでした。そして、この日は新刊の部数確認の日でもあったのです。

数年前であれば取次各社へ電話をかけて配本数を確認するところですが、現在はすべてネット上で行ないます。ですからパソコンさえあれば出張先からでも部数確認が可能なのです。ただネット上に配本数が提示されるのは9時半過ぎです。その時間帯はちょうど商談中で、パソコンを開いて部数確認などできません。

結局、新高岡駅に着いて新幹線が来るまでの10分程度、ホームのベンチに腰掛けて部数確認をしました。さらに新幹線に乗り込んで金沢へ着くまでのこれまた10分程度の時間で、会社のパソコンにリモートで接続し、配本伝票を出力するということまでやってのけました。

よく電車の中でパソコンを膝の上に広げて操作している人を見かけます。そこまでしないとならないほど忙しいのかなあ、なんて他人事のように見ていましたが、この時ばかりはあたしもバリバリと働くビジネスマンになったかのような気分になりました。

ちなみに、帰京時の東海道新幹線は、3列シートの真ん中に仕切りがある「S WorkPシート」の車両でした。もちろん、仕事などせず、皆で打ち上げのビールで乾杯していました。

極右の台頭?

今日は祝日なので、そして生憎の雨なので自宅でのんびり過ごしています。そして昼時にテレビ朝日系の情報番組を見ていたところ、池上彰氏が「極右勢力が急速に支持を拡大しているドイツの状況」を解説していました。

やはりメルケル前首相の移民政策に対する不満が国民の中に一定数は存在するようです。景気のよいときであれば他人を思いやる余裕も持てるのでしょうが、不景気になると自分の生活で精一杯、それなのに働かないで支援だけ受けている移民たちはなんなんだ、と考えてしますのでしょう。そんなドイツ国民と移民との距離感や空気感を知るには、小説ではありますが『行く、行った、行ってしまった』が最適だと思います。報道では知り得ない、もっと庶民レベルの声が聞こえると思います。

ところで、「池上解説」ではドイツだけでなく、欧州各国で極右に分類される政党が躍進しているということも紹介されていました。

極右と一括りに言っても国によってその主張や政策には違いあるようですが、そんな欧州の政党政治について知りたい方には、文庫クセジュの一冊、『ポピュリズムに揺れる欧州政党政治』の一読をお薦めします。

ポピュリズムがイコール極右というわけではありませんが、著者はフランスの右派政党・国民戦線(FN)研究の第一人者なので、やはり極右政党に関する考察が主となるでしょう。こういった極右やポピュリズムだけでなく、現在の世界は権威主義も勢いを増しているように感じます。戦火がやまず、戦争という言葉がこの十数年で一気に身近になりましたね。

ノーベル賞とともに

今年もノーベル賞が発表されました。

あたしに限らず、出版界としては文学賞に注目が集まりがちですが、ここ数年は物理学賞や生理学賞など、理系分野で日本人の受賞が続き、世間的にはそちらが盛り上がっているように感じます。またそれに関連する書籍もあったりして、「ノーベル賞=文学賞」的な印象が薄れた感があります。

そんな中、今年のノーベル賞ではその理系ジャンルでは日本人の受賞はならず、やや盛り上がりかけたまま推移して、平和賞はイランの人権活動家に贈られることが発表されました。これでは書店でフェア展開ができないと思っている業界人も多いかも知れませんが、イランの女性と言えば、この本を忘れるわけにはいきません、『テヘランでロリータを読む』です。

あたしの勤務先から刊行されていた単行本は現在品切れですが、河出文庫版が入手可能です。タイトルだけですと「なんのこっちゃ?」と思う方も多いと思いますが、抑圧されたイランで、西側の文化の象徴的な作品である『ロリータ』を読むことがどれほど危険な行為なのか、本書を読めばよくわかると思います。

単行本は品切れと書きましたが、同著者によるノンフィクション『語れなかった物語 ある家族のイラン現代史』はまだ在庫がありますので、是非『テヘロリ』と併読していただければ幸いです。

同じくイランに活きる家族の歴史を描いた作品に『スモモの木の啓示』があります。この作品は、イラン・イスラム革命に翻弄された家族の物語で、現在のイランに続く苦悩を少女の目線で描いた作品です。ただ、その少女の正体というのが初めの方で明かされますが、ちょっと衝撃的です。

本作を読むと、かつてはここまで抑圧的でなく、平和に暮らすことができたイランがあったのだなあということがわかります。だからこそ革命後のイランの体制がより過酷なのでしょう。この状況はいつまで続くのか。ウクライナにばかり世界の目が集まっていますが、イランも、あるいはミャンマーなど、もちろん中国や北朝鮮だって、国内で弾圧が行なわれている国は、むしろ最近増えているのではないかという気がします。

次は何年後になるのでしょう?

今日は8月9日、長崎の原爆の日です。8月6日の広島と共に、平和を祈念する日です。

ただ今年は、その8月9日が水曜日です。ということは、ハクスイの日になります。単なるダジャレですが、これが社内では意外と盛り上がりまして、Twitter(いまはXと呼ぶべきでしょうか?)で《ガイブン祭り》が行なわれました。否、現在も行なわれています。

そして、この企画が読者の支持を得まして、一部ではかなりの盛り上がりになっているようです。さすがに「バズる」と呼ぶのはおこがましいですが、弱小出版社のSNS企画としてはまずまずなのではないでしょうか?

そして、勤務先の正面には写真のような、オシャレなのかダサいのか、よくわからない掲示が出現しました。なんか文化祭とかで高校の教室の窓ガラスに貼ってあるものを懐かしく思いだしてしまいました。

ちなみに、ネットで調べてみますと、次のハクスイの日は2028年になるようです。

7月4日に生まれて

その昔、「7月4日に生まれて」という映画があったなあ、と見てもいないのに思い出しながら、今日はアメリカ合衆国の独立記念日ですね。

直接的に独立記念日を扱った本は、あたしの勤務先からは出ていないので、あえて本日紹介するとするなら『トマス・ジェファソン(上)』『トマス・ジェファソン(下)』でしょうか。

それって誰? と思った方も少なくないのではないでしょうか? 初代大統領のワシントンに比べると日本における知名度は格段に劣りますから。でも、トマス・ジェファソンは独立宣言を起草し、第3代大統領を務めた偉大な人物なのです。同書の内容紹介には

哲学者でありながら政治家、あまりにも「アメリカ的」な共和主義者──ジェファソンは、歴代大統領のなかで最も知性があるとされ、傑出した政治思想をはじめ、多くの分野に才能を発揮した。1801年に大統領選に勝利して就任を果たすと、共和制を発展させ、独立自営農民を理想化し、03年の仏領ルイジアナ購入、07年の(対英)輸入禁止法などを実行する。共和主義者として自由を守る、奴隷制反対論者だった(多数の奴隷の所有もしていた)。建築や考古学などに対して造詣も深く博識で、政界引退後の19年にはヴァージニア大学を創設。26年の独立記念日に83歳で他界する。「アメリカの崇高なる根本原理」を産んだ政治家として今こそ学ぶべき人物であり、偉大な生涯であった。

とあります。これだけでも興味深い人物だということがわかるのではないでしょうか?

そしてもう一冊、『トマス・ペイン』です。同じトマスですが、こちらは別に何代目かのアメリカ大統領というわけではありません。英国の人です。では、なんでアメリカ独立記念日に関係するのかと言いますと、こちらも内容紹介をご覧ください。

トマス・ペイン(一七三七~一八〇九)は、大ベストセラー冊子『コモン・センス』『人間の権利』の著作で有名で、二大民主革命(アメリカ独立革命とフランス革命)に大いに寄与した、英国出身の革命思想家だ。ペインの思想は明確で、独立派に勇気を与え、庶民にも受け入れられた。フランス革命期には渡仏して議員として活動、恐怖政治下で投獄もされた。ペインが訴えた社会改革は、君主制や奴隷制の廃止、格差の是正、義務教育、妊婦の保護など、現代に通じるものだった。

そうです。彼の思想がアメリカ独立に大いに関係しているのです。以上、アメリカ独立記念日を直接扱ったものではありませんが、なんとなく関わりのある書籍を二点、ご紹介しました。