今日から公開?

映画というのは、たいてい金曜日から公開になりますね。本日19日金曜日から公開になったのは実写版の「ゴールデンカムイ」です。

コミックもアニメも大ヒットした作品なので実写版はどうなるでしょう。コミック原作が好きだった方の中には実写を嫌う人もいるかと思います。その一方、コミックやアニメは読まないし見ないけど、出ている役者さんが好きだから実写映画は見てみるか、という方もいるかと思います。

そしてコミックが売れに売れていたころから、それにつられて売上を伸ばしていたのが、あたしの勤務先が刊行している『ニューエクスプレスプラス アイヌ語』です。著者の中川先生が「ゴールデンカムイ」のアイヌ語とアイヌ文化の監修をされているので、コミックの参考文献にも本書が載っています。

その影響たるや絶大なもので、売上がそれ以前の2倍から3倍に跳ね上がりました。やはり作品を見て読んでアイヌ語に興味を持った方も多かったのでしょう。本書にはCDも付いていますし、CDプレーヤーを持っていない方には音声アプリでのダウンロードにも対応していますので、アイヌ語を耳で味わうことも可能です。

そしてもう一点、こちらは2021年に刊行したものですが、『第七師団と戦争の時代』です。タイトルだけ見ると、「これがなにか?」と思われる方も多いでしょう。しかし「ゴールデンカムイ」に馴染んでいる方であれば「第七師団」という単語に反応せざるを得ないようです。

今回の映画のサイトにも「杉元&アシㇼパVS.第七師団VS.土方歳三」と大きく書かれています。三つ巴の闘いの一角を「第七師団」が占めているのです。そして「第七師団」を扱った手軽な書籍がないこともあり、「ゴールデンカムイ」ファンの間で本書が読まれているようなのです。

そういうわけで本書も、もちろん日本史の棚に置かれている本ではありますが、「ゴールデンカムイ」を推している書店では、コミックと一緒に並べているところも多かったと聞いています。もちろん上掲の『アイヌ語』もです。

今回の実写版映画公開に合わせて、コーナーを作っている書店がありましたら、改めてこの二点の展開をよろしくお願いいたします。

「似て非なる」なのかしら?

岩波新書で『ケアの倫理』という本が来年1月に刊行されるそうです。なんとなく見覚えがあるタイトルだなあどころか、全く同じタイトルの本『ケアの倫理』が、あたしの勤務先からも出ています。それも岩波新書とほぼ同じ判型の文庫クセジュで(汗)。

ちなみに岩波新書の副題は「フェミニズムの政治思想」で、内容紹介には次のように書かれています。

身体性に結び付けられた「女らしさ」ゆえにケアを担わされてきた女性たちは、自身の経験を語る言葉を奪われ、言葉を発したとしても傾聴に値しないお喋りとして扱われてきた。男性の論理で構築された社会のなかで、女性たちが自らの言葉で、自らの経験から編み出したフェミニズムの政治思想、ケアの倫理を第一人者が詳説する。

そして、文庫クセジュの方の副題は「ネオリベラリズムへの反論」で、内容紹介は如下、

「ケア」とは、脆弱と依存にある他者に配慮することである。人間は依存しあって生きるため、競争社会の中で「ケアの行動」は大切になる。配慮をめぐって社会的な絆の問題を提起する。現代のネオリベラリズムの社会とは、自律した個人が競争しあう社会である。しかしそれだけで、社会は成り立つのだろうか。人間は、実は傷つきやすく、ひとりでは生きていくことができないため人との関係、他人への依存を必要としているのだ。「ケア」とは、人の傷つきやすさに関わることであるが、その活動はこれまで私的なこととされ隠されてきた。自律した個人が競争できるのは「ケア」する人が存在するからであり、「世話をすること」の概念を見つめ直す。その倫理は社会関係の中枢に位置づけられるものであり、配慮しあう世界をめざす。本書はアメリカで始まった議論をフランスの哲学的背景からいっそう深めた解説書となっている。

同じタイトルなのに全く異なる内容の本なのか、それとも非常に近しい内容の本なのか、門外漢にはよくわかりません。ただ文庫クセジュの目次を眺めますと、「「ケア」の主題/女性たちの声」「「ケア」は母性ではない」といったように岩波新書と関わるような文言が見て取れます。

いずれにせよ、ケアという言葉から連想されるような福祉や介護などの実用的な内容ではなく、もっと人文寄りの内容の本のようです。同じ新書判なので、是非とも一緒に並べて置いていただきたいものです。

年の瀬の贈り物?

いよいよ今年も終わりが見えてきました。あたしの勤務先も年内の見本出しはすべて終わり、来週の部数確認が済めば、あたしの仕事は年内無事終了という感じです(汗)。書店や読者からすれば配本日こそ肝心なのかも知れませんが、それは製本所と取次の仕事になるので、あたしがどうこうすることもないので……

そんな年の瀬の新刊、なんとノーベル文学賞を受賞した作家の邦訳が二点も刊行になります。どちらも日本初紹介の二人です。

まず先、22日に配本となるのが今年受賞したヨン・フォッセの『だれか、来る』です。戯曲ですが、ぜひ手に取っていただきたい一冊です。

そして明けて翌週25日に配本されるのが一昨年受賞したアブドゥルラザク・グルナの『楽園』です。こちらは《グルナ・コレクション》として続刊があります。訳者による解説では3作品の名前が挙がっていますので、こちらの翻訳の刊行も楽しみにお待ちいただけると幸いです。

海外文学好きの方には、この二冊、お歳暮のようなものと思っていただけるでしょうか? とにかく店頭に並ぶまで、もうしばらくお待ちください。

ハーフポケット

日常の営業活動では注文書が必需品です。その注文書を持ち歩くのには、A4判のルーズリーフを使っています。30穴のクリアリーフを取り付けて、そこに注文書を収納するのです。

ところで、あたしが学生時代はA4判よりもひとまわり小さいB5判のルーズリーフを使っていましたが、クリアリーフもポケットが半分くらいのものがもっとあったように思います。クリアリーフだけでなく、厚紙というのでしょうか、封筒のような用紙のハーフポケットもありました。

この半分のポケットって、注文書の出し入れにはとても使いやすくて重宝するのですが、文具店で探してもほとんど見当たりません。現在はで販売されていないのでしょうか。

この手のポケットは使っているうちに、端っこが切れてきて、注文書がストンと落ちてしまうので、定期的に新しいのと取り替えないとなりませんが、ハーフポケットのものが見つからないので、ほぼほぼクリアリーフになってしまい、個人的には非常に使いづらい思いをしております。

どうしてなくなってしまったのでしょう。というよりも、あたしが学生のころに比べて、文具店のルーズリーフのコーナーってずいぶんと縮小されていませんか。そんな気がします。

クールビズよりウォームビズ?

めっきり寒くなってきました。秋が本当に短くなってしまいましたね。

それはそうと、寒くなってくるとコート・外套の出番ですが、営業職にとってはコートは実は邪魔なアイテムの一つです。行く先々でわざわざ脱がなければならないのが面倒で仕方ないのです。

ですから寒くても、できるだけコートは着ず、ジャケットの中にベストやセーター、カーディガンを着込むことで寒さをしのぐようにしています。それでなくとも重い書類が入ったカバンを持って歩く営業なので、コートまで持つような営業回りはしたくありません。

というわけで、夏のクールビズが定着し、上着なし、ネクタイなしでも問題とならなくなったように、冬のコート着用したままの営業も目くじらを立てないようにして欲しいものです。もちろん、ふだん回っていて懇意にしている書店の方は、たぶんそんなことには頓着しないと思います。むしろ、コートを着たまま営業しているのを見かけた同業者がうるさいことを言ってくるのではないかと危惧しております。

ちょっと時代が違っていた!

少し前に営業回りの書店店頭でこんな本を見かけました。

古代ギリシアの日常生活 生活文化から食生活、医療、仕事、軍事治安まで』です。この手の書籍では定評のある原書房の刊行物です。

あたしが気になったのはそのタイトルで、「あれっ、同じタイトルの本があたしの勤務先からも出ていなかったかしら?」とおもったのです。サブタイトルや原著者が異なっても、もちろん出版社も異なっていますが、同じタイトルの本があるのは書店現場でいたずらに混乱を招くだけですので、ちょっとだけタイトルを変えるというのはよくあることですが、この場合は全く同じではないだろうかと思ったのです。

でも調べてみたら違いました。あたしの勤務先から刊行されていたのは『古代ローマの日常生活』というタイトルで、なおかつ文庫クセジュという新書判の一冊でした。

古代ギリシアと古代ローマ、確かに「ギリシア・ローマ」と一括りにされることが多いので、勘違いしたりするのも致し方ないところでしょう。まあ、専門家やこの時代がお好きな方からすれば、「全然違うよ! ごっちゃにするな!」と叱られそうですが、世間一般のイメージとしては似たような印象を持っている人が多いのではないでしょうか。

ところが、この確認をしていたときに発見しました。

原書房からは『古代ローマの日常生活 24の仕事と生活でたどる1日』という書籍が刊行されているではないですか! しかも『古代ローマの日常生活2 社会のしくみから食生活、娯楽、信仰まで、生きていくための100のポイント』まで刊行されているのです。むしろこちらの方が、あたしの勤務先の文庫クセジュと間違えられそうです。

とはいえ、あたしの記憶にある限り、電話やファクスでこの両社を取り違えて注文してきたことは今まで一度もありません。間違えたので返品したいという依頼も受けた覚えがありません。案外こちらが思うよりも、読者の方、書店の方、いずれもしっかりと調べ確認した上で注文してくれているのだなあと思います。もちろん、本当に好きな人であれば、両方買ってしまうという方も多いのだと思いますが。

生まれる前のことなので……

JFKと聞いて、アメリカ大統領ケネディを思い出せる人って、今の日本人だとどれくらいいるのでしょうか。一定年齢以上であれば社会常識なのかも知れませんが、若者だと知らない人も多いのではないでしょうか。

それとも、現在の中学や高校の社会科教科書には、ケネディの政治と彼が暗殺されたことが載っているのでしょうか。だとしたら、むしろ大人よりも正確に、詳しく知っているのかもしれません。時代としては、そろそろ教科書に載ってもよい年代だと思いますが、どうなのでしょうか。

そんなケネディの暗殺から、今日でちょうど60年なのだそうです。あたしはもちろん生まれていませんが、映像はテレビで何度も見ています。聞くところによると、日本のテレビの初めての衛星中継で飛び込んできたのがケネディのパレードだったそうで、そのパレードでケネディは暗殺されたはずです。あまりにも衝撃的な衛星中継になってしまいましたね。

され、ケネディの評伝や暗殺について書かれた本は日本でも数え切れないほど出ていると思います。翻訳もあれば、日本人が調べて書いたものもあると思いますが、そんな中、あたしの勤務先も『JFK(上)』『JFK(下)』という巨冊を刊行しています。ところが本書はそのサブタイトルに「1917-1956」とあるように、ケネディの晩年は扱っていません。ケネディ評伝の前半の翻訳本なのです。いずれ暗殺までを描いた後半もあたしの勤務先から刊行されるのだろうと思います。乞うご期待。

「おさらぎ」ではなく「だいぶつ」です

ガイブン、海外文学は苦手という人、意外と多いですよね。あたしも決して読む方ではなかったですし、得意と言えるわけではなかったのですが、仕事柄、とにかくいろいろと、手当たり次第に読むようになって、それなりに慣れてきましたし、面白く感じるようになってきました。

自社から出ているガイブンもある程度読んでいて、どれもそれぞれよさがありますので、書店営業の時にはできるだけそれをアピールするようにしています。それでも読み慣れていない人には取っ付きづらいかなあという作品もあれば、ガイブンと構えることなく読める作品もあります。誰が読んでも面白い作品もあれば、読者を選びそうな作品もあります。

そんな中、まもなく配本になる《エクス・リブリス》の新刊が『大仏ホテルの幽霊』です。著者はカン・ファギル、韓国の作品です。読み始めたのですが、もう半分ほど読み終えましたが、ぐいぐい引き込まれます。いまのところ韓国の文化や歴史を知らないと理解できないようなところはなく、どんどん読み進めることができる作品です。これはヒットしそうです、。

ところでタイトルにもある大仏ホテル、仁川にかつて存在したという設定なので面白半分で検索してみたら、実際にあったホテルなんですね。「日本人が建てた韓国初の西欧式ホテル、なぜ市民団体が復元反対」というネットの記事を見つけました。この小説の中でも大仏ホテルは日本人が建てたことになっていましたが、そのあたりのストーリーはほぼ史実なのですね。その後、中華楼というレストランになったことも小説に書かれています。

韓国近代史とともに歩んだホテル」というネットの記事にも、同じように大仏ホテルの来歴が書かれています。前者には当時の大仏ホテルの写真が掲載されているので、本作を読まれる方は眺めてみるのもよいのではないでしょうか。もちろん『大仏ホテルの幽霊』を読みながら、自分なりの大仏ホテルをイメージするのも、小説の楽しみ方ですから無理強いするつもりはありません。

また、とうの昔に大仏ホテルは取り壊されていますが、仁川には大仏ホテル展示館という施設がオープンしているようです。ハングルが読めないのですが、こちらがウェブサイトのようです。

いま第二次大戦が注目?

今年の夏にチャーチルの『第二次世界大戦』がみすず書房から刊行されました。邦訳は他社から出ていましたが、それは抄訳なので、今回は完訳ということが最大の特長です。毎年夏に一冊ずつ、2028年の夏に完結予定の壮大な企画です。

チャーチルの本書が完訳されるのは素晴らしいことだと思いますが、それを知ってか知らずか、中央公論新社からまもなく『第二次世界大戦』の上下巻が出版されます。こちらの著者はリデルハート、イギリスの戦略家・軍事史家だそうです。陸軍出身の人なのですね。たたき上げの軍人が第二次大戦をどう描くのか、気になるところではあります。

ちなみに、上巻は1939年から1943年、下巻が1943年から1945年を扱っているようです。どちらも500頁超えの大著です。

そして第二次大戦の本で忘れてはならないのが、あたしの勤務先から出ている『第二次世界大戦』です。こちらはアントニー・ビーヴァーで、同書は上中下の三巻本です。こちらも1939年から1945年を扱っていますから、これが第二次大戦の期間なのでしょう。日本人は泥沼の日中戦争があるので、なんとなく1939年からと言われてもピンと来ない気もします。

それにしても、このタイミングで第二次大戦に関する大著の出版が重なるのは、何かあるのでしょうか? いずれにせよ書店では一緒に並べてもらえるとうれしいです。

併売候補がたくさん?

このところ書店を回っていますと、勤務先の刊行物と関連がありそうな新刊が並んでいるのが目に付きます。それも一点ではなく、何点かあるのです。そんな併売候補を、ご紹介したいと思います。

まずはジョージ・グッドウィン著『もっと知りたいクリスマス サンタ、ツリー、キャロル、世界の祝い方まで』(原書房)です。この隣には、若林ひとみ著『クリスマスの文化史』と並べて欲しいものです。

次は、スコット・レイノルズ・ネルソン著『穀物の世界史 小麦をめぐる大国の興亡』(日経BP)で、この隣に並べてほしいのはマージョリー シェファー著『胡椒 暴虐の世界史』です。

三つめは、ダリア・ガラテリア著『ヴェルサイユの宮廷生活 マリー・アントワネットも困惑した159の儀礼と作法』(原書房)で、こちらの併売候補はウィリアム・リッチー・ニュートン著『ヴェルサイユ宮殿に暮らす 優雅で悲惨な宮廷生活』です。

そして最後は、貝塚茂樹著『𠮷田満 身捨つる程の祖国はありや』(ミネルヴァ書房)で、こちらと並べるのは渡辺浩平著『吉田満 戦艦大和学徒兵の五十六年』になります。

図らずも、すべて人文書の歴史のコーナーに置かれる書籍ばかりですね。