若干の訂正

昨日のダイアリーで、Uブックスの『悲しき酒場の唄』がちくま文庫から復活すると書きましたが、この書き方ですと正確ではないので、改めてここで訂正したいと思います。ここではちくま文庫『マッカラーズ短篇集』の編訳者解説を引用いたします。

本書はカーソン・マッカラーズ『悲しき酒場の唄』(西田実訳、白水Uブックス)を元にした短編集である。西田訳には表題作と「騎手」、「家庭の事情」、「木、石、雲」の三つの短編が収録されていたが、文庫化に際して、底本の作品集に掲載された残り三つの短編「天才少女」、「マダム・ジレンスキーとフィンランド国王」、「渡り者」と、底本には未収録の初期の短編「そういうことなら」を、編訳者であるハーンが訳出した。

とありますように、Uブックスの『悲しき酒場の唄』がまるまる復活したわけではないのです、表題作『悲しき酒場の唄』は復活なのですが、それ以外の収録作品は、ちくま文庫の短編集には収録されないのです。

やはり、期待されていた方をがっかりさせてはいけませんので、あえて補足、訂正、修正いたしました。逆にUブックス版を架蔵されていた方にとっては、底本から未訳出の作品も読めるようになったので、これはこれで嬉しいことではないでしょうか。

 

重版や復刊ではないですが、生き返りました!

かつてUブックスに『悲しき酒場の唄』という一冊がありました。著者はカーソン・マッカラーズです。現在は品切れで、在庫が切れてずいぶん長い時間がたっていますので、店頭でも見かけることはまずない一冊です。

ただ探している方は意外と多いようで、時々「在庫は残っていませんか?」という問い合わせの電話を受けることがありました。さすがに、ここ数年はもう版元在庫も残っていないと理解されたのか、そういう問い合わせもめっきり少なくなり、いや、ほとんどなくなりましたけど。

そんなマッカラーズの『悲しき酒場の唄』を含む短篇集が筑摩書房から刊行されました。『マッカラーズ短篇集』です。ちくま文庫なので、手に取りやすいのではないでしょうか。こういう復活は嬉しいですね。

この『マッカラーズ短篇集』に収録されている『悲しき酒場馬の唄』は、Uブックス版に多少の修正を加えて再録したものです。Uブックスの同書を探していらした方は、このちくま文庫を買い求めていただいければと思います。

重なりがち?

あたしの勤務先の『インド外交の流儀』がお陰様で好調です。ウクライナ侵攻をめぐるロシアと西側の角逐において、インドの立ち位置が注目されていることもその一因だと思います。

そして同書の訳者、笠井亮平さんの著書『第三の大国 インドの思考』が文春新書から発売されました。新書なので、手軽に手に取ってもらえそうですね。副題は「激突する「一帯一路」と「インド太平洋」」なので、昨今の国際情勢におけるインドの立場がメインの書籍のようですね。

そんな思いを抱きながら新書のコーナーを眺めていたら、こんな本が目に留まりました。中公新書ラクレの『インドの正体』です。こちらのサブタイトルは「「未来の大国」の虚と実」です。まだまだインドってどんな国なのかつかみづらい、と思っている方への一冊なのでしょうか。

いずれにせよ、新書の新刊でインドに関する本が二冊も出ているなんて、インドに対する注目度の高まりが感じられます。ただ、新書というのは時勢とは無関係の学術的なものも数多く出ていますが、どちらかと言えば、いま世間で関心を持たれているものがスピーディーに刊行されるイメージです。

ということなのでしょうか、『ポストイクメンの男性育児』と『「イクメン」を疑え!』という二冊が並んでいるのも目に留まりました。キーワードは「イクメン」ですね。

「イクメン」という言葉は、既に定着していると思いますので、単にイクメンの本であるならば「いまさら」感が出てしまったと思います。ただ、この両書はそこから一歩進めて、「疑え」とか「ポストイクメン」といった、次のステップへ進んでいるような著作のようです。あたしのように、結婚すら無理そうな人間には育児など夢のまた夢ではありますが、ちょっと気になります。

鉄のカーテン

営業回りの途次、こんな本を見かけました。

鉄のカーテンをこじあけろ NATO拡大に奔走した米・ポーランドのスパイたち』です。

なんとなく見覚え、聞き覚えのあるタイトルだなあと思ったのですが、それはこちらです。

あたしの勤務先から刊行されている『鉄のカーテン(上) 東欧の壊滅1944-56』『鉄のカーテン(下) 東欧の壊滅1944-56』でした。同じ「鉄のカーテン」でも、内容はかなり異なるようです。

『鉄のカーテンをこじあけろ』は、内容紹介によりますと

1988年、ポーランドのスパイは米国との連携を模索し始め、期せずして同じころCIAもポーランド諜報部のドアをたたいた。機密解除文書、政治家、スパイへのインタビューを元にありえない同盟締結、NATO拡大の過程を詳細に描き出す。

といったもの。東側が総崩れとなり、ベルリンの壁も崩壊するころを扱ったもののようです。それに対して『鉄のカーテン(上・下)』は

第二次世界大戦の終結から、スターリンの死、ハンガリー革命に至るまでの時代に、ソ連がいかに東欧諸国(主に東独、ポーランド、ハンガリー)を勢力下に収め、支配していったのか、そして各国がいかに受容し、忌避し、抵抗していったのか、その実態をテーマ毎に論じた力作だ。

となっていますので、鉄のカーテンが作られたころの話になっています。読み比べるというよりは米独してみるのがよい作品なのではないでしょうか?

似て非なるもの

書店店頭でこんな本を見かけました。

珈琲と煙草』という本です。文芸書売り場で見かけたので、海外小説なんですかね。この本を眺めていたら、「あれっ、前にも似たようなタイトルの本があったよなあ」と思いました。

それがこれ、『幼女と煙草』です。

思い出してみると、「と煙草」が共通するだけなんですね。これだけですと、似てるとも言えますし、似てないとも言えます。あたしが、煙草が大嫌いなので、煙草という文字を目にすると必要以上に心にインプットされてしまうせいかもしれません。

そうそう、似ていると言えば、こんな本も気になりました。

偽情報戦争』という本です。こちらは似たタイトルの本を思い出したわけではありません。思い出したのはこちらです。

あたしの勤務先から刊行された『ウエルベック発言集』です。

どうでしょう、似ていませんか、装丁が。

どちらも、装丁は本を横に向けないと読めないような文字の並びです。また白地に黒の文字一色というシンプル(?)なところもよく似ています。

ただし、この両書はジャンルが異なるので、並んで置かれることはないので迷うこともなければ、間違えることもないと思います。

しかし、改めて並べてみると、そんなに似てなくもないか、という気がしてきました。

新書でフランス語!

《フラ語》シリーズが爆発的な売行きの清岡智比古さんの新刊『フランス語をはじめたい!』が刊行されました。SB新書ですので、語学書売り場に置いていない書店も多いのではないでしょうか。

このように新書の形態を取った語学書というのは、フランス語以外にも数多く出版されていまして、フランス語だけを取り上げてみても講談社現代新書の『フランス語のすすめ』が1964年、同じく現代新書の『はじめてのフランス語』が1992年、そしてちくま新書の『フランス語はじめの一歩』が2002年と、定期的に刊行され続けているようです。

最近ですと、2018年に幻冬舎新書から『世界一簡単なフランス語の本』が出ていますので、今回は5年ぶりでしょうか。こういう新書の語学書は、書店の語学書担当の方に、どれくらい情報が行き渡っているのでしょう。どの著者も語学書で実績のある方々ばかりなので、語学書売り場にも置いてさらなる増売を図ってくれると、語学書にもよい影響が出てくれるのではないかと期待しているのですが……

併売&併読推奨?

新潮選書の『貴族とは何か』を購入しました。タイトルだけですと、どこの国(?)、どの時代(?)、という疑問を持つ方もいらっしゃるかと思いますが、著者名とサブタイトル「ノブレス・オブリージュの光と影」を見れば、英国を中心とした西洋世界の話だということが予想できるのではないでしょうか? 内容紹介には「古代ギリシャから現代イギリスまで、古今東西の貴族の歴史」とありますので、必ずしもイギリスに限らないようです。

ところで「ノブレス・オブリージュ」と聞けば思い出すのがこの一冊、『ノブレス・オブリージュ イギリスの上流階級』です。こちらは、あたしの勤務先の刊行物です。非常に好評で版を重ねた一冊です。

そしてこの二冊、なんとなく正題と副題を入れ替えた、双子の本みたいな感じがしませんか。ドラマ「ダウントン・アビー」や「エマ」などのヒットもあって、英国はじめとした貴族社会に関する関心がここ数年高まっていることから、こういう書籍の刊行が続いているのでしょう。

考えてみますと、庶民出身の女の子とお金持ちの貴公子との身分を超えた恋愛模様というのは、手を替え品を替えて小説やマンガ、ドラマで描かれてきたので、潜在的に貴族や高貴な身分に対する憧れというのがあるのでしょうね。だから、本が出るわけで、そしてそれなりに売れるのでしょう。

というわけで、この二冊、片方を持っている人、読んだことがある人であれば、もう一方にも興味を持つのは間違いないでしょう。刊行の順番からして、既に『ノブレス・オブリージュ』を購入した人が、こんど刊行された『貴族とは何か』に手を伸ばすことになるのではないでしょうか。

新潮選書ですと、そのレーベルでまとめた置かれているかも知れませんが、是非この二冊は一緒に並べていただきたいところです。

ちょっとだけ代わりました

昨年末から少しずつ始めていたのですが、年末年始は何かとバタバタしていますので少し遅れ気味でしたが、ようやくほぼ終わったかな、という感じがします。

何が? と聞きたくなる方もいらっしゃるかと思いますが、あたしの勤務先の営業販促地域の変更です。

あたしも少しだけ担当地域が代わりました。もうかれこれ十年以上担当している、新宿地区の担当を外れることになりました。最初はジュンク堂書店新宿店を担当していて、その後、紀伊國屋書店新宿本店とブックファースト新宿店をはじめとした新宿地区の書店を担当するようになりました。

当初はルミネにもブックファーストが二店舗ありましたし、ルミネエストには有隣堂が入っていた時期もあったと記憶しています。そんな長いこと担当していた新宿地区を外れることになったのは、やはり少し寂しいものがありますね。

ただ、その代わりと言ってはなんですが、京王線を再び担当することになりました。以前担当していたのですが、ここ数年は担当を外れていました。あたしが担当していた頃とは書店地図も様変わりしているでしょうね。

さて、もう一度!

先週の火曜日から金曜日まで京阪神ツアーでしたが、今週また京阪神ツアーへ出ます。こんどは水木金の三日間です。

この時季は、あたしの勤務先では春向けの語学書の販促が重要になりますので、大学生協などいつもより多くの書店を回ることになります。

ふだんなら、京阪神は月曜から金曜の五日間で回れるのですが、この時季だけはそれでは日数が足りず、かといって土日は生協などは休業のことが多く、一度帰京して、再び出直すことにしたわけです。

今回、折角二週に分けて七日間のツアーですから、なかなか顔を出せない書店も訪ねてみたいと思っています。

仕事納め?

あたしの勤務先は明日で仕事納めです。例年どおり、午後3時で終業となります。

ただ、明日は在宅勤務にしましたので、実質的には今日で仕事納めのような気分です。もちろん、明日は自宅で仕事するつもりですので、休みではありません。

ふだんの在宅勤務ですと、朝のうちに仕事をこなし、昼間は書店回りに出かけるのですが、さすがに明日はもう営業回りという感じではありませんので、パスします。

では、よいお年を、ですね。