没後20年です

本日、1月10日はグラフィックデザイナー、田中一光さんの没後20年になります。

あたしの勤務先では何点か著作を刊行しているのですが、現在はすべて品切れになっています。たぶん、最後まで在庫があったのは『デザインと行く』と『田中一光自伝 われらデザインの時代』ではないでしょうか? この二点は、あたしにも少し前まで在庫があったという記憶があります。

これを機に特に回顧展があるという話は聞いていませんが、何かあってもよさそうですね。

あるいは2030年の生誕100年に大きな回顧展が行なわれるのでしょうか? そういう情報は何も入ってきていませんが、さて、どうなのでしょう?

田中一光さんの著作は品切れですが、この当時のデザイナー群像については『四人四色 イラストレーター4人への30の質問』を読んでいただければと思います。こちらはまだ在庫ありますので、よろしければどうぞ!

モスクワからイスタンブールへ

少し前に中公新書の『物語 イスタンブールの歴史 「世界帝都」の1600年』を読みました。

行って見たいなあと思う都市の一つですし、その歴史を考えると興味津々なので手に取った一冊です。個人的には地図がそれなりに入っているのですが、もう少し親切なものであればよかったのにという憾みが残ったのと、イスタンブールだけでなく、黒海なども含めたもう少し広域の地図も載っていれば内容が頭には行って来やすかったのではないかと思いました。

それはともかく、同書の230頁にこんな記述がありました。

またロシア人たちは与えられるばかりではなく、イスタンブールのナイトライフを一変させたことでも知られる。彼らは、それまではどちらかというと観劇、飲酒(そして売春)が分散的に行われていたイスタンブールの夜に、それらの愉しみがひとところに集う新たな施設としてのナイトクラブを持ち込んだのである。一九一一年開業のイスタンブール最古のバーとされるガーデンバーことガーデン・プティ・シャンを受け継いだ同名ナイトクラブ(一九一四年開業)を皮切りに、黒いロシア人と称えられたフレデリック・ブルース・トーマス--ロシア国籍を持つブラック・アメリカンだった--の開いたマクスィム(一九二一年開業)など、ガラタの下町からタクスィム近辺の至るところに、ロシア美人たちがショーガール、接客係を務めるナイトクラブが続々と開店する。ヘミングウェイが驚嘆したカラキョイの酒場街の狂乱も、大戦を背景として誕生したのである。

ここに出てくる「黒いロシア人」フレデリックですが、ロシアから来たのに「ブラック・アメリカン?」と不思議に思われた方も多いのではないでしょうか? こんな時代にアメリカからロシアへ、しかも黒人が移り住んでいたなんて、と驚かれたのではないでしょうか?

彼に関して興味を持たれた方、もっと詳しく知りたいと思った方には、是非とも『かくしてモスクワの夜はつくられ、ジャズはトルコにもたらされた 二つの帝国を渡り歩いた黒人興行師フレデリックの生涯』の一読をお薦めいたします。

公式サイトには

厳酷な黒人差別社会に見切りをつけたミシシッピ生まれのフレデリックは、海を越えて旧大陸へ渡り、帝政時代のモスクワでアメリカン・ドリームを摑むのだが……ロシア文学の碩学による、まるで物語(フィクション)のような歴史ノンフィクション。アメリカ南部の社会、爛熟する帝政末期のモスクワの夜、そして、第一次世界大戦とロシア革命の勃発――激動の時代を背景に描かれる、不屈な男の、凄まじくも痛快で爽快な魂の遍歴。

とあります。黒人差別を嫌ってアメリカからロシアに移り、第一次世界大戦とロシア革命の勃発でロシアからイスタンブール(オスマン帝国)へ渡ったなんて、彼の人生は波瀾万丈以外の何ものでもないでしょう。

生誕弐百年

今日は、シュリーマンの生誕200年です。1822年の1月6日生まれだそうです。日本では江戸時代の末期ですね。

それに合わせて、しばらく品切れになっていた『シュリーマン トロイア発掘者の生涯』を新装版として復刊いたしました。もう店頭に並び始めていると思いますので、気になる方は是非どうぞ。

ところで、シュリーマンってトロイ遺跡と共に名前だけは昔から知っていましたが、実はどんな生涯を送った人なのかよく知りません。子供のころにトロイの木馬の話を聞いて興味を持ち、それを大人になるまで抱き続け、遂に偉大な発見を成し遂げた、そんなおぼろげな記憶ですが、合っているのでしょうか。

あの時代の考古学や発掘、探検といったものは帝国主義の国策と深く結びついているというイメージがあるのですが、シュリーマンの場合はどうなのでしょう?

12月のご案内

12月に送信した注文書をご案内いたします。

   

まずは刊行早々に重版が決まった『ヒュパティア 後期ローマ帝国の女性知識人』です。日本ではほぼ無名の人物だったと思いますが、だからこそ待っている読者も多かったのでしょうか。次は毎月恒例、「今月のおすすめ本」です。続いてはロングセラーになっている『第七師団と戦争の時代 帝国日本の北の記憶』です。近代史好きだけでなく「ゴールデンカムイ」ファンにも支持されているようです。そして、先の衆院選挙を受けて売り上げが伸びていた『それでも選挙に行く理由』で、とうとう重版になりました。

   

続いては語学書です。刊行からあっという間に重版になった『とってもナチュラル ふだんのひとことフランス語』です。かわいらしい造本も人気の一因のようです。そしてもう一つ語学書、『よく使うイタリア語の慣用句1100』です。こちらも刊行当初からよく売れています。次は『中世の写本ができるまで』です。刊行から少し時間がたっていますが、相変わらず売れています。こちらもロングセラーですね。続いては『ナチ・ドイツの終焉 1944-45』です。こちらも比較的高額なのですが、刊行直後からよく売れていて、あっという間の重版です。

 

最後は今月二回目の案内となる『ヒュパティア 後期ローマ帝国の女性知識人』と『とってもナチュラル ふだんのひとことフランス語』です。どちらも重版があっという間になくなってしまう勢いで、追っかけでの重版が決まった商品です。

いろいろとタイアップできそう?

現在発売中の雑誌『AERA1/3-10号』の特集は「価値観を変える48人」で、その中に町田樹さんの名前があります。

町田樹さんと言えば『アーティスティックスポーツ研究序説 フィギュアスケートを基軸とした創造と享受の文化論』です。記事をまだ読んでいないのですが、恐らく競技者から研究社へと転身を遂げた生き方が書かれているのではないでしょうか?

ちょうどフィギュアスケートの北京オリンピック代表も決まり、いよいよ冬季五輪本番ムードですから、町田さんへの注目も今後盛り上がってくるのではないでしょうか? 非常に楽しみです。

そして、昨日から高槻の阪急百貨店で「海洋堂EXPO」が始まりました。

海洋堂と言えばフィギュアでしょうが、あたしの勤務先ではこんな本も出しています、『海洋堂創世記』です。その名のとおり、海洋堂創業時のエピソード満載の一冊です。海洋堂ファンならずとも興味深く読めるでしょう。この機会に是非お手に取ってみてください。

話はガラッと変わってスイーツの話です。と言っても、いまはやりのお店に行ったとか、食べてみたという話ではありません。

営業回りの途次、コンビニで見つけた森永のチョコレート「DARS」です。別にDARSを買おうと思って入ったわけではなく、ただ単純に「甘いものが食べたいなあ~、チョコでも買うか」という気持ちで入ったのですが、そこでホットケーキ味のDARSが売っていたので、思わず買ってしまいました。

いままでDARSは、何度も買って食べたことがありますが、このフレーバーは初めて見ました。いまだけ限定なのでしょうか? ネットを検索するとコンビニ限定で、この秋から売り出されたみたいです。人気が上がればレギュラーになるのでしょうか?

食べた感想ですが、パッケージを開けた時は「これぞ、ホットケーキ」という匂いがして、ホットケーキ好きなら幸せな気持ちになること間違いありません。しかし、味の方は匂いほどホットケーキを感じさせてくれるものではありませんでした。少しだけホットケーキを感じるホワイトチョコ、という感じです。

さて、本の話題に戻ります。暮れも押し迫ったこの時季に中国の小説『安魂』を手に入れました。現代中国文学には疎いので、周大新という作家の名前は初めて聞きました。雑誌での邦訳は知りませんが、たぶん単行本としての邦訳は初めての作家ではないでしょうか。

神保町の岩波ホールで公開予定の映画「安魂」の原作なのですね。と言うよりも、同書の帯を見て初めて映画化される(された?)作品なのだと知りました。

岩波ホールですから、素敵な作品ですよね。予告編を見て、ちょっと感動ウルウル系の作品だろうとわかりますが、機会があれば見に行きたいです。ところで、出演者の中に北原里英の名前がありました。元AKB48ですね。グループ卒業後も着実に女優の仕事を続けているようで、時々こうして出演者のランに名前を見かけます。

なお、あまり他社の本の誤植をあげつらったりはしたくないのですが、本の帯には「北原理英」とありますが、彼女のサイト、同映画のサイトでは「北原里英」です。間違えやすいところですね。

今日の配本(21/12/28)

環境経済学
『沈黙の春』から気候変動まで

スティーヴン・スミス 著/若林茂樹 訳

「コースの定理」はじめ環境問題に効率的に迫る経済学説とは? 排出量取引や課税など政策的選択肢は? 基礎概念をわかりやすく解説。

忘却の野に春を想う

姜信子、山内明美 著

朝鮮からのコメ難民の一族に生まれ、周縁に追いやられた民の声に耳を傾けてきた姜信子と、南三陸のコメ農家に生まれ、近代以降に東北が受けた抑圧の記憶と3・11で負った深い傷を見つめ続ける歴史社会学者・山内明美による、近代を問い、命を語る往復書簡。

ヒトラーと海外メディア
独裁成立期の駐在記者たち

ダニエル・シュネーデルマン 著/吉田恒雄 訳

1933年、欧米民主国のベルリン駐在記者たちは、ナチ台頭とユダヤ人迫害をいかに報道したのか? 仏のジャーナリストによる警鐘の書。

ノブレス・オブリージュ イギリスの上流階級

新井潤美 著

複雑な称号の体系、後継ぎと他の子供それぞれの苦労など、「イギリス人にとってのアッパー・クラス」の背景事情をわかりやすく解説。

シュリーマン[新装版]
トロイア発掘者の生涯

エーミール・ルートヴィヒ 著/秋山英夫 訳

巨万の富を得てホメロス時代の遺跡発掘に成功し、前人未踏の夢をかなえた「考古学者」の全生涯をたどる! 家族からの資料提供にもとづいた決定版の伝記を、生誕200周年を記念して新装版として刊行。巻末には「年譜」および「シュリーマン以後のエーゲ先史考古学(馬場恵二)」も収録。

あれから30年

ソビエト連邦崩壊から30年。もう30年たつわけですから、いまの若い方の記憶にないのは当然ですね。あたしの世代ですと「ロシア」という響きは帝国の彭を思い出させ、やはりあの国のことは「ソ連」と呼んでしまいがちです。

ソビエト連邦という国の歴史を振り返るもよいですが、かなりたくさんの本が集まりそうなので、今回はソ連崩壊の時期に絞ってご案内しますと、まずは『ゴルバチョフ(上)』『ゴルバチョフ(下)』です。ソ連を崩壊に導いたという表現を使うとマイナスイメージになってしまいますが、やはりあたしの世代にとってゴルバチョフは冷戦を終わらせ、さまざまな改革を行なった清新な政治家というイメージが先行します。まだ存命ですので、本書は評伝ではありますが、半生記的なものです。

そしてゴルバチョフの引き起こした改革が東欧全体に影響を及ぼし、一気に「東側」が崩壊していった様を描く『東欧革命1989 ソ連帝国の崩壊』です。リアルタイムで知っていますが、まさかこんなにあれよあれよという間に共産圏が崩れていくとは思いもしませんでした。

考えてみますと、1989年という年は、年明け早々に昭和が終わり、中国で天安門事件が起こり、そして東欧の崩壊、ベルリンの壁崩壊という、たぶん近年稀に見る激動の都市であったと思います。そんな東欧の状況を活写したのが本書です。

そして西側に住むあたしたちは、これで共産圏に暮らす人たちも幸せになれると脳天気に思い込みがちですが、実際にはそうではなく、あまりの価値観の変化についていけない人たちも大勢いたようで、そんな実情を描いたのが『踊る熊たち 冷戦後の体制転換にもがく人々』です。正題だけを見ると、動物の話かなと思って、本屋で「自然-生物」のコーナーに置かれてしまいそうですが、副題を見ていただければ、どんな内容を扱った本なのか理解していただけると思います。

そう言えば、東欧のように共産社会が崩壊したわけではありませんが、事実上の資本主義に邁進してきた中国でも、「共産主義は素晴らしい、仕事をしなくたって給料がもらえるから」という皮肉めいた発言を中国人から聞いたことがあります。

東欧の崩壊が1989年に始まって、本家本元のソ連が解体になったのが、いまから30年前1991年の12月25日なわけです。ソ連からロシアに変わり、現状を見ると再び「帝国」に戻ってしまったかのような印象がありますね。

そんな25日クリスマスには『クリスマスの文化史』を繙くのは如何でしょうか? 毎年この時季になると(もう少し前からですが……)書店からの注文が伸びる季節商品的な一冊です。

3点に3冊

朝日新聞の年末恒例「書評委員今年の3点」です。

今年は温又柔さんに『J・M・クッツェーと真実』と『断絶』、金原ひとみさんに『もう死んでいる十二人の女たちと』を取り上げていただきました。

お二人の選書だからと言うと少し偏見かも知れませんが、いずれも文芸ジャンルの作品でした。個人的には、もう少し人文社会系の本が選ばれるかな、と期待していたのですが、他の書籍に力及ばずでした。

もちろん、選んでいただいたこの三冊もよい本ですし、多くの方にお薦めしたい本ではあるのですが、それでも「いや、文芸だけじゃなくて、ほかにもいろいろな本を出しているんですけど……」という思いがあります。

あたしの勤務先のウェブサイトでも今年のベストテンを発表していますが、必ずしも文芸ジャンルばかりではありません。まあ、売れた本と書評委員の方が選ぶ本とは必ずしも一致しませんし、一致する必要もないのですが……

ただ、売れていないわけではないですが、こういうランキングでは、どうもこの数年、人文系が弱くなっているような気が個人的にはしています。

紀伊國屋書店が発表した今年の「じんぶん大賞」でも、発表された30位までにあたしの勤務先の書籍は選ばれていません。やはりちょっと悔しくはあります。ランキングに選ばれなくても売れていればいいじゃないか、という意見もあると思いますが、こういうランキングって出版社以上に著者が気にするものなのでしょうか?

今日の配本(21/12/23)

中国語検定対策4級問題集[三訂版]

伊藤祥雄 編著

基本の文法事項が出そろう4級試験。本書では、【過去問】を文法項目ごとに分けて掲載しています。まずは自力で解いてみて、間違えた箇所を確認してください。続く【解答のポイント】【文法のまとめ】では、過去問で狙われている点をくわしく解説し、覚えるべきことを整理します。一通り理解できたら、【練習問題】で実戦力を身につけましょう。試験は年3回(3・6・11月)。最新の過去問と出題のポイントを押さえ、万全の対策で臨んでください。巻末に模擬試験・単語リスト付。