台湾で鉄道に乗ろう!

今朝の朝日新聞の読書欄、最後のページに『台湾鉄道』が紹介されていました。紹介してくれたのは、長島有里枝さんです。コメントの最後の

鉄道好きの息子と久々、一緒に本を読めたのも、楽しかった。

という一文が素敵です。

台湾と聞くと、人によって思い浮かぶものはさまざまでしょうが、台北から南に延びる台湾新幹線を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。鉄道好きの方であれば、長島さんも書いているように鉄道で台湾を一周したい、したという方もいると思います。確かに海外へ行って、現地の列車に乗るのは旅情を掻き立ててくれるものです。

あたしの勤務先から出ている『神秘列車』も台湾の甘耀明さんの短篇集で、カバー装画のとおり列車が登場する作品もあります。この短篇集、あたしはとても好きです。非常に美しい作品ばかりで、読後感も充実感にあふれたものです。

新幹線のような高速鉄道もよいですが、煙を吐き出す蒸気機関車も風情があってよいものです。ただ、あたしはいまだに蒸気機関車が牽引する列車には乗ったことがありません。日本にも各地に観光列車としてSLを走らせているところはありますが、なぜか縁がなくてのったことがないんです。たぶん乗らずに一生を終えるのだと思います。

THE 100 BEST BOOKS OF THE 21ST CENTURY

既に日本でも話題にしている方が大勢いますが、ニューヨークタイムズのサイトに「THE 100 BEST BOOKS OF THE 21ST CENTURY」が掲載されています。サイトには

As voted on by 503 novelists, nonfiction writers, poets, critics and other book lovers — with a little help from the staff of The New York Times Book Review.

と書いてあります。503名の方による投票で選ばれた100冊です。このリストの100冊の中に、あたしの勤務先から邦訳が出ている書籍が何点か含まれていますので、ご紹介します。

Tree of Smoke / 煙の樹
The Collected Stories of Lydia Davis
10:04 / 10:04
The Looming Tower / 倒壊する巨塔
H Is for Hawk / オはオオタカのオ
The Savage Detectives / 野生の探偵たち
Austerlitz / アウステルリッツ
2666 / 2666
The Known World / 地図になかった世界

以上の9点、100冊のうちの9冊ですからほぼ一割です。わが編集部もなかなかの目利きが揃っているといことでしょうか。

この中の「The Collected Stories of Lydia Davis」は、正確にはこの本の邦訳を出しているわけではありませんが、リディア・デイヴィスの邦訳はあたしの勤務先から何冊も出ていますのでカウントしました。ちなみに同書については『サミュエル・ジョンソンが怒っている』の訳者あとがきで訳者の岸本佐知子さんが

また一一年には、四つの短編集を一冊にまとめた The Collected Stories of Lydia Davis を発表した。三十年ぶん、およそ二百本の短編を収めた七百ページを超えるこの大部の本は話題になり、多くの若い読者が彼女を”発見”するきっかけになった。

と書いています。このリスト100冊のほとんどは邦訳が出ていると思われますが、何冊かは邦訳が出ていないものもあるようです。しかし、これだけ評価されている書籍ですから、たぶん日本の出版社が既に版権を取得して邦訳出版に取りかかっているのではないでしょうか。

ガイブンを読む醍醐味かしら?

知っている人、面識のある方がメディアに登場すると不思議な気分です。本日はこちら。

朝日新聞の別刷beに、韓国文学の翻訳で著名な斎藤真理子さんが登場しています。写真には斎藤さんが手掛けた数々の韓国文学が並んでいます。

あたしもこれらのうち何冊かは読んでいます。斎藤さんの訳文は読みやすく、グイグイ引き込まれます。翻訳だけなく、作品を選ぶ才能にも優れているのでしょう。斎藤さんの翻訳作品はハズレがありませんから。

その別刷をめくるとインタビューも載っています。その中にあたしの勤務先から出ている『別れを告げない』の名前も登場します。

済州島事件を背景とした作品です。詳しいことは知らなくとも、光州事件という名称を知っている日本人は多いと思います。しかし、済州島事件となると、その名称すら知らない日本人がほとんどだと思います。かく言う、あたしがその一人でした。

でも歴史を描いているだけでなく、それを踏まえて今を生きる人たちが描かれている、今を生きる人たちがしっかりと歴史と向き合っている、そんな作品が韓国文学には多いように感じられます。もちろん『カステラ』のように、そういう堅苦しいこと抜きで楽しく読める作品も多いですが、その国の歴史や文化、人々の暮らしや思いを知ることができるのが海外文学を読む醍醐味ですね。

続編が出ていたのですね

朝日新聞に時々「GLOBE」という別刷りが挟まれていることがあります。今日の朝日新聞にそれが挟まっていました。

GLOBE全体の特集はひとまずおくとして、あたしが密かに楽しみにしている記事に世界のベストセラーのランキングがありまして、今朝は「英国のベストセラー」でした。紹介しているのは、あたしの勤務先でいくつもの翻訳を刊行している園部哲さんです。

その英国のランキングの第三位に『Long Island』という作品がリンクインしています。記事に載っている画像も同書のものですね。

コルム・トビーン『ブルックリン』の続編。25年後のアイリーシュに訪れた危機。

という簡単な紹介文が付いています。この『ブルックリン』は、あたしの勤務先から刊行した小説です。現在は品切れになっているのですが、映画化もされた作品で、チャンスがあれば復刊したいなあと個人的に思っている作品の一つです。

『ブルックリン』はウェブサイトにも「1950年代前半、アイルランドの田舎から大都会ブルックリンへ移民した少女の感動と成長の物語」とあるように、都会へ出て来た少女の成長物語です。春先に「新生活フェア」などを企画した書店員さんから、是非とも本書を復刊してほしいとリクエストされたこともある一冊です。確かに、新しい生活をスタートする春に読みたくなる本です。

ちなみに、この続編、日本では翻訳出版の話は進んでいるのでしょうか。新潮クレストブックスあたりで出版されそうな気はしますが、どうなのでしょう。あたしの勤務先、編集部は既に動いているのかしら?

465夜

松岡正剛さんが亡くなりました。あたしの勤務先では、特に著者などは刊行していませんので、縁はやや薄いでしょう。ただ、松岡さんの「千夜千冊」の第465夜で『ライ麦畑でつかまえて』を紹介いただいたのが、個人的には非常に印象に残っています。

その第465屋の冒頭で松岡さんは次のように書かれています。

一九六〇年代のアメリカで若者たちのお手軽なバイブルになりかかっていた文芸作品が三つある。精神科病院を舞台に患者たちの擬装と反抗を描いたケン・キージーの『カッコーの巣の上で』(冨山房)、戦争状態という管理と倫理の悪夢を描いたジョーゼフ・ヘラーの『キャッチ=22』(早川書房)、そして、J・D・サリンジャーの『ライ麦畑でつかまえて』である。

あたしは、その当時のアメリカの状況を知らないので、この松岡さんの指摘がどれくらい打倒するのかわかりません。でもそういうものなのだろうと、この記事を読んだ当時は思っていました。そして、そのバイブル三作品、あたしも一丁前に架蔵しております。

振替休日に便乗商法

パリ五輪もようやく終了しました。この後は少しインターバルをおいてパラリンピックですね。アスリートの方々の活躍には拍手を送りますが、オリンピックという函はもうオワコンなのではないかと思っています。

それはともかく、あたしが興味を惹かれたのは女子やり投げの北口榛花選手が英語とチェコ語が話せるという話題です。チェコに単身武者修行に行っていたわけですから、チェコ語ができるようになるのは理解できますが、それでもすごいことだと思います。

北口選手がどんな教材を使って学習したのかわかりませんが、あたしの勤務先の人気商品である『ニューエクスプレスプラス チェコ語』を推しておきます。彼女に影響されてチェコ語をちょっとやってみたいと思った方もいるはず。まずはこの一冊から始めてみてはいかがでしょう。

そしてオリンピックからガラッと変わって、今朝の朝日新聞です。一面の「折々のことば」に師岡カリーマ・エルサムニーさんの言葉が引かれています。

カリーマさんは、あたしの勤務先からいくつか著訳書を刊行していますが、今回の記事に引きつけるのであれば、現在品切れですが、『イスラームから考える』がよいのかなあ、と思います。

在庫のあるものでカリーマさんの本を何か読みたいというのであれば、『変わるエジプト、変わらないエジプト』があります。

天声人語だけでは終わらなかった

一部の界隈では、今朝の朝日新聞一面「天声人語」が大いに話題になっていました。それもそのはず、朝っぱらから岸本佐知子さんの名前が登場しているのですから。

筑摩書房から出ている『ねにもつタイプ』から、オリンピックに関する、岸本さんの文章が引用されています。同書の「裏五輪」です。

わが家に架蔵しているのは単行本ですが、現在はちくま文庫で刊行されていますので、この「裏五輪」以外の文章も抱腹絶倒間違いなしなので、是非お手に取っていただきたいです。

ところで、その岸本佐知子さんの最新刊は、あたしの勤務先から刊行されている『わからない』です。なんと1万部を突破して、まだ売れ続けています。

そんな本日は、店頭で『ねにもつタイプ』が売れているかなあ、などと思いながら営業回りをしていましたら、こんなチラシを発見しました。《文芸担当による2023年上半期ベスト10》です。

別に売上というのではなく、ご自身が気に入った10冊ということなのでしょう。その中に『わからない』がエントリーしておりました。「笑いを堪えるのが困難」「何度だって読み返したい」という嬉しいコメントをいただきました。これは、紀伊國屋書店小田急町田店の話です。

電車の中、バスの中で思わず噴き出したいという方(そんな人いるのかしら?)には、この『わからない』をお薦めします。ただ、カバンに入れて持ち歩くのに単行本はちょっとしんどいなあ、というのであれば、新書サイズの『気になる部分』などは如何でしょう? こちらも抱腹絶倒間違いなしです。

ちなみに、あたしが思うに、岸本佐知子さんはいずれ『別冊太陽』か『文藝別冊』で特集を組まれる方だと信じています。

 

時空と空想の広がりを

今朝の朝日新聞読書欄です。本来ですと、最近発売された各社の書籍が紹介されているはずですが、今日は夏休みに入るタイミングということもあるのでしょうか、「夏に読みたい」書籍の紹介となっています。

書評委員が3冊ずつ選んでお勧めしてくれているわけですが、必ずしも秦簡とは限らないようです。そして今回の読書欄のタイトルは「時空と空想の広がりを」とのことです。あたしが不勉強なのでしょう、このタイトルにピンと来なかったのです。申し訳ありません。

さて書評委員19名が3点ずつですから、57点の書籍が紹介されているわけですが、あたしの勤務先の刊行物も2点、取り上げていただいていました。

まずは上下本の大冊『JFK』です。言わずと知れたアメリカ大統領ケネディの評伝です。とはいえ、原書も未刊でして、この上下冊でもケネディが大統領になるところまでしか扱われていません。後編の発行はいつになるのでしょうか。

そしてもう一点が『挽歌集』です。先年亡くなった建築家・磯崎新さんが多くの著名人のために書いた追悼文を集めたものです。

「夏に読みたい」とありますが、取り上げられている書籍を見てみると、決して小中学生を対象にした特集ではないですね。もちろん、小中学生は読んではいけないというわけではありませんが、むしろ大人が夏に読むべき読書案内といったところでしょう。それでも、大人にも相当歯応えのあるラインナップだと思います。

あたしが読んだことのある本を、何冊くらい載っていたでしょうか。

本日の朝日新聞に二件ほど……

今日の朝日新聞の紙面で、日本エッセイスト・クラブ賞が発表されていました。受賞したのは園部哲さん。あたしの勤務先でもお世話になっている方です。

ただ、あたしの勤務先ではエッセイではなく、主として翻訳です。現在上巻と中巻が刊行されて、この夏には下巻が刊行予定の『スターリングラード』が最新刊になります。

エッセイスト・クラブ賞と言えば、2016年に温又柔さんが『台湾生まれ 日本語育ち』で、2009年に平川祐弘さんが『アーサー・ウェイリー』で、2000年には鶴ヶ谷真一さんが『書を読んで羊を失う』で、それぞれ同賞を受賞していますね。

さて本日の朝日新聞にはこんな記事が載っていました。

性教育について、オランダの事例を紹介している記事です。円安ということもあり、なかなかオランダへ出かけて行くのは難しいと思いますが、興味を持たれた方にはこんな本をお薦めします。

『14歳からの生物学』です。これはオランダの教科書の翻訳なのです。

意外なことだが、日本の生物学教科書には「ヒト」がいない。高校生物の学習指導要領には、生命の根源的な活動といえる生殖や病気の予防・治療という観点がそもそもない。 このため、大腸菌やハエの突然変異といった基礎生物学的内容はしっかり押さえているが、ヒトの生殖活動や感染症に関する記述はほとんど皆無である。これに対して、オランダの中学生物教科書である本書には「ヒト」が溢れている。サルモネラ菌による食中毒からメタボリック・シンドローム、アルコール中毒まで、文字通り、ヒトが生きていくための生物学がオールカラーの図版とともに露骨なまでに展開されている。特に重要なのは、生殖に関する部分だ。月経の仕組み、射精から受精までの経過、妊娠のメカニズムや妊娠判定の様子、さらに避妊方法を綺麗な図や写真を使って紹介している。コロナ禍の下、十代の妊娠相談が相次いでいる。背景にあるのは「ヒトの生物学」の不在だ。本書には感染症から薬物依存に至るまで、十代が自分をいかに守るか、その術がシンプルに語られる。コロナ時代を生き抜く武器としての「理科」への誘い!

上掲が公式ページに載っている内容紹介です。「性」のみならず、さまざまなことが取り上げられている教科書です。教科書と思わず、読み物、教養書と見なしてページをめくっていただければ幸いです。

豊作かしら?

先週の予告どおり、今朝の朝日新聞読書欄には、勤務先の刊行物が二点も掲載されました。

まず一つめが『グローバリスト 帝国の終焉とネオリベラリズムの誕生』です。

ちょっと大部な本ですが、現代の国際情勢を考える上で無視できない論点を扱っている一冊ですので、是非手に取っていただきところです。

それにしても、グローバリズムという言葉は最近聞くようになった言葉という印象がありますが、現象として捉えた場合には、これくらい長い射程で考察することができるのですね。勉強になります。

さて、上で「大部な本」と書きましたが、取り上げられていた二点目はもっと大部な本、『文画双絶 畸人水島爾保布の生涯』です。

そもそも「水島爾保布」が読めない人がほとんどなのではないでしょうか。あたしもこの本ができるまではそうでした。しかし、カバーに使われている絵は見たことがあります。ちょっとビアズリーっぽいと言ったら、どちらのファンからも怒られそうですが、あたしの印象はそんな感じです。

評者の椹木野衣さんは「愚」をキーワードに書いてくださっていますが、大賢は愚なるが如しという人口に膾炙した言葉もありますので、愚は悪い意味ではないんですよね。中国古典では人を誉める時に「愚」という言葉を使うことがありますので、賢しらに才をひけらかすよりも上だということなのでしょう。

ところで、今回紹介された二点、両方購入すると税込で20000円を超えます。