他者理解とは?

昨日の朝日新聞読書欄で『「その他の外国文学」の翻訳者』を取り上げていただきました。

お陰様で、同書は刊行前からSNSで話題になり、刊行後も非常に好調な売行きです。

知らない言語を知るというのは、その言葉や、その言葉を使う人たちに対する興味、関心、愛着があるということだと思います。外国語を学ぶということは異文化理解、他者理解の第一歩だと思います。

もちろん、その言語を自分では習得できなかったとしても、翻訳者によって邦訳された文学作品を読むことで理解が進むところはありますので、これはこれで大事なことだと思っています。

そんな考え方の延長にあるのだと思いますが、『ニューエクスプレスプラス ウクライナ語』も売れています。ロシアのウクライナ侵攻によって、ウクライナという国への関心が高まっているのでしょう。それはそのまま侵略側であるロシアに対する関心にも繋がっているようで、『ニューエクスプレスプラス ロシア語』も売れているのです。

というように、戦火を被っていない日本では素朴に両国に対する関心もあって語学書が売れているわけで、他者理解の第一歩なのだと考えられます。ただロシアとウクライナの現状を見ていますと、言葉を知ったからといって理解が進むのか、という疑問も湧いてきます。

親戚や家族が両国に別れて暮らしていた人も多かったように、そして侵略以前は両国の人々が素朴に感じていたように、ロシアとウクライナは兄弟のような国であり、お互いの言葉もほぼ理解できる間柄だったと思います。言葉を理解するのが相手を理解することの第一歩なのだとしたら、どうしてロシアとウクライナは戦争をしているのでしょう?

理解が進むと、こんどは近親憎悪が生まれるのでしょうか? あるいはあまりにも近くなると共通点ではなく相違点に目が向くようになるからでしょうか? 似ているからこそ、同じだと思い込みやすく、ちょっとした違いが許せなくなるのでしょうか?

今日の配本(22/04/28)

運命論者ジャックとその主人[新装版]

ドニ・ディドロ 著/王寺賢太、田口卓臣 訳

脱線に次ぐ脱線。主人は聞けるか、ジャックの恋の話――旅する二人と出会う人びと、首を突っ込む語り手らによる快活、怒涛の会話活劇。

地獄の門

モーリス・ルヴェル 著/中川潤 編訳

人生の残酷や悲哀、運命の皮肉を短い枚数で鮮やかに描き、ポーやヴィリエ・ド・リラダンの後継者と称されたルヴェルの残酷コントは、20世紀初めのフランスで絶大な人気を博し、本邦に紹介されて江戸川乱歩や夢野久作らも魅了した。第一短篇集『地獄の門』収録作を中心に、新発見の単行本未収録作を加えた全36篇を新訳で刊行。

後期ローマ帝国史Ⅰ
帝国の勝利

マイケル・クリコフスキ 著/阪本浩 訳

本書は、ハドリアヌスからユリアヌスまで、2~4世紀を年代順に、人事と権力闘争、外敵との戦いを扱った政治史である。共和政期、帝政前期の政治史については、日本語で読める文献も多く、皇帝の伝記もある程度揃っている。しかし「危機」の時代と呼ばれる3世紀については、ギボン『ローマ帝国衰亡史』を除けばきわめて少ない。本書はそれを補う、碑文学・古銭学を駆使し最新の研究成果を反映した通史であることに加え、著者はこの時代を「衰退」の時代、「滅亡」へと向かう過程ではなく、多くの失敗もあったが数々の改革を試み、内外の危機に見事に対応した勝利の時代として描いている。

今日の配本(22/04/27)

みんなの疑問に答える
つぶやきのフランス語文法

田中善英 著

初級から中級のフランス語学習者の「なぜ」「どうして」という悩みに向き合い、日本語との発想の違いにも触れながら、フランス語の文法事項をハシビロコウ先生がやさしく解説していきます。愉快な単語や楽しい例文満載の、とびきりわかりやすい学習ハンドブック。学習者が間違えやすい項目を著者みずからが解説する動画や、学習上の疑問を匿名で尋ねることができる「質問箱」も用意。本書に対応した練習問題集『1日5題文法ドリル つぶやきのフランス語』と合わせてお使いください。

今日の配本(22/04/25)

スタート!ドイツ語B1

岡村りら、矢羽々崇、山本淳、渡部重美、アンゲリカ・ヴェルナー 著

ヨーロッパ言語共通参照枠準拠。B1ではA2に比べ、仕事や学校などを含めた日常生活の、広い範囲のドイツ語を理解でき、ドイツ語で発信できるようになります。技能別では以下の通り。
・読む:ブログや記事から重要な部分をしっかり把握できる。
・書く:手紙やメールなどで自分の意見を根拠づけて書ける。
・聞く:アナウンスやディスカッションの重要な点を聞き取れる。
・話す:日常的な話題でまとまった意見を述べ、質疑応答ができる。

読書欄もウクライナの影響を受けている

今朝の朝日新聞読書欄です。

トップの特集は、やはりウクライナ情勢関連です。核についての記事の中に『チェルノブイリ 「平和の原子力」の闇』が取り上げられていました。

本書は、ちょうどロシアのウクライナ侵略が始まったタイミングで刊行されたのですが、それは全くの偶然で、1986年ですから今から36年も前の原発事故を検証したノンフィクションがどれくらい日本で受け入れられるのか、正直なところ多少の不安を抱いていました。

ところが、この一か月、二か月でこそウクライナやクリミア半島の歴史、プーチンに関する書籍が奔流のように刊行されましたが、当初はこれといった関連書籍も少なく、本書が〈ウクライナ情勢を読み解く〉的な書店のフェア台で存在感を示していました。

それでもあたしなどは「今回のロシアによる侵略とチェルノブイリ事故は関係ないんだけど……」と思っていたのですが、ロシア軍によるチェルノブイリも含めた原発への攻撃が行なわれ、俄然注目の一冊となってしまったわけです。皮肉なものです。しかし、欧米というのは、数十年経っても、丹念に資料を博捜し、こうした骨太な検証本を刊行する姿勢が羨ましいです。日本人って、やはり熱しやすく冷めやすい国民性だと感じます。

さて、ここまで読書欄は全国の朝日新聞で同じ紙面だと思いますが、次の記事はどうでしょう、「多摩版」とあるので、たぶん「東京23区」の紙面にも載っていると思いますが、神奈川や埼玉、千葉の版だと載っていないのではないかと思います。

何かと言いますと、東京外国語大学がウクライナ語の講座をオンラインで開いたという記事です。日本にも多くの避難民がやって来ていますから、日本側でも少しはウクライナ語ができるようになると、来日した人も安心するのではないかと思います。

記事の中でコメントを述べている中澤英彦さんは、あたしの勤務先から出ている『ニューエクスプレスプラス ウクライナ語』の著者です。ウクライナ語の学習書は、それほど多くはないので、本書もこの数ヶ月注文が殺到しているところです。

こういう事態で本が売れるというのは、なんとも言えない気持ちになります。本が売れることは出版社の人間として嬉しいことですし、ウクライナ語に興味を持ってくれる人が増えることも、語学の出版社としては喜ばしいことではあります。しかしその一方、毎日毎日たくさんの人が亡くなっている現実を思うと心が重くなります。

ハシビロコウが学習のお手伝いを致します?

来週には配本になる新刊『みんなの疑問に答える つぶやきのフランス語文法』は、既に刊行されている『1日5題文法ドリル つぶやきのフランス語』の姉妹篇です。

そもそも毎日少しずつフランス語の問題にチャレンジしよう、という趣旨で勤務先のTwitterでスタートしたのが『1日5題文法ドリル つぶやきのフランス語』でした。1日に5問なら続けられるでしょう、というのが狙いでした。

そして問題を解いたら、どうしてそういう解答になるのか、その理屈が知りたくなるのが人情というものです。そこで次に企画されたのが、新刊『みんなの疑問に答える つぶやきのフランス語文法』です。

ですので、両書に共通する「つぶやき」とは学習の過程で学習者がブツブツと独り言をつぶやくのでもなければ、先生が生徒そっちのけでボソボソと聞こえない声でつぶやいているのでもありません。Twitterのことです。

そしてさらに両書に共通するのは表紙カバーにも登場している鳥、ハシビロコウです。本文中にもポイント、ポイントでハシビロコウのイラストが登場しますので是非お楽しみに!