棚作りという概念が崩壊する?

業界では少し前から話題になっていましたが、ようやく開店ということでニュースなどでも大きく取り上げられていた無人書店。東京メトロの溜池山王駅の構内にオープンするそうです。

この業界に詳しくない人には「何のこと?」という話になりますが、この書店は大手取次の日販が始めたもので、もう一つの大手取次・トーハンが始めた無人書店は、夜間だけ無人になるということで、少し前に世田谷にオープンしています。二大取次が揃って無人書店をスタートさせたわけです。

世田谷の方は、昼間は書店員のいる山下書店ですから、それなりに本を選びもすれば、並べ方、読者の好みを考えて仕入もしていることでしょう。夜間の時間帯になって売れる本の傾向がどう変わるのか、いろいろ実験的なところもあるかと思います。

それに対して今回の溜池山王の書店は最初から最後まで書店員レスですので、どういう品揃えになったのでしょう。まずは日販のデータで売れ筋上位銘柄を並べているのでしょうね。売れた本のデータは取れるでしょうけど、どんな本を手に取っていたか、書店員に聞けないからデータを取りようもありませんが、どんな本を探しに来たのか、そういったデータを集めるのは至難でしょう。

そうなると無個性な書店にしかならないのではないか、そんな気もします。書店の醍醐味と言えば棚作りだと思います。書店員の拘りもあれば、お客さんからの声も反映されるでしょうし、われわれ出版社の営業との話の中から生まれるものもあるでしょう。無人書店ではそういうものが一切捨象されてしまうわけですよね。半年や一年経ったころ、唐書の棚とどれくらい変わっているのか、そしてそれがどのくらい利用者の支持を得ているのか、興味深いところです。

リアル書店であればお客さんのことを「読者」と呼んでもおかしくないですが、こういう無人書店だと「利用者」としか呼べない気がします。

今日の配本(23/09/27)

脱植民地化
帝国・暴力・国民国家の世界史

デイン・ケネディ 著/長田紀之 訳

脱植民地化は、18世紀末のアメリカ独立革命とハイチ独立に始まり新世界を席捲した第一波から、20世紀末のソ連解体によって引き起こされた第四波にいたるまで、複数回にわたって起きてきた。 本書は、第二次世界大戦後のアジア・アフリカ全域で生じた第三波を、こうした長期の歴史に位置づける。

今日の配本(23/09/25)

アミナ

賀淑芳 著/及川茜 訳

1970年マレーシア生まれの中国語で創作する女性作家による初の短篇小説集。同時代のマレーシアを舞台に、女性の視点から語られる11篇。性暴力をはじめ様々な暴力の影が忍び寄るのを常に感じながら成長する少女の姿や、現在の社会の中で生きるよりどころを見出そうとする女性の心理が繊細に、ときに幻想的に描き出される。

パスカル科学論集
計算機と物理学

ブレーズ・パスカル 著/永瀬春男、赤木昭三 訳

フランス17世紀の思想家ブレーズ・パスカルによる、人間と信仰をめぐる思索の書『パンセ』は、忘れがたい名句やイメージに溢れ、時代を超え世界中で読み継がれている。著者はその39年の短い人生で、数学者、物理学者としても数えきれないほどの偉大な業績を残した(パスカルの三角形、パスカルの定理、圧力の単位ヘクトパスカルなどにもその名が刻まれている)。彼が発明した計算機の原理は、はるか現代のコンピュータをも予見するものであった。
本書は、そんな天才パスカルの科学的業績のうち、計算機および物理学に関する著述のすべてを収録するとともに、これと深く関係するパスカル以外の人物の手になる作品も加えて紹介する。

独検対策2級問題集[三訂版]

岡本順治、岡本時子 著

出題された過去問を詳しく解説。各章末に練習問題を用意。「覚えておきたい動詞+前置詞155」など付録も充実。音声無料ダウンロード。

今週も!

このところ毎週のように新聞各紙の読書欄で勤務先の刊行物を紹介いただいています。本当にありがたいことです。そして今週の朝日新聞はこちら、新刊の『リスボン大地震』です。

不勉強で、この企画が出るまで、ヨーロッパでこんなに大きな地震があったということを知りませんでした。いや、ヨーロッパでも地震が起きていることは知っていましたし、火山活動も活発であったことも知っています。ただ、個別の事例などはほとんど知ることがないまま来てしまいました。

このリスボン大地震、日本で東日本大震災の前後で価値観などがガラリと変わったと言われるように、ヨーロッパの歴史において分水嶺となった大災害だったようです。いみじくも今年は関東大震災からちょうど100年にあたり、書店でも特集コーナーを作っているところが散見されました。日本人には馴染みの薄いリスボン大地震ですが、とてもタイムリーな出版になったのではないでしょうか?

さて、本日の朝日新聞には将棋に関する記事もありました。ここで写真入りで登場していた阿久津主税さん、どこかで見覚えあるなあと思ったのですが、あたしの勤務先の刊行物でした。

それが『将棋のチカラ』で、その著者が阿久津主税さんなのです。10年以上も前に刊行した書籍ですが、当時は現在の藤井聡太ブームなど想像することすらできない時代でした。それでも将棋ファンの裾野は広がっていて、それなりのブームと呼べるような空気はありました。

将棋は、あたしなど駒の動かし方を辛うじて知っている程度で、誰かと勝負(対局?)など滅相もありませんが、いまのブームはどれくらい続くのでしょうかね?

今日の配本(23/09/21)

極める! スペイン語の語彙・表現ドリル

菅原昭江 著

しっかり学べる問題集として大好評の「極める!」シリーズに新刊が登場! 語彙を増やすには様々な方法がありますが、効率的に語彙と表現力を伸ばすなら練習問題を解くのがお勧めです。語の意味を理解していないと解けない問題や、ちょっと歯ごたえのある問題も解くことで、より記憶に残りやすくなるのです。本書では語彙や表現を35のジャンル別に分類。問題を解く過程で、関連語も併せて覚えられる作りです。語彙の丸暗記に限界を感じている方にこそ試していただきたい一冊です。

版元品切れのようです

昨日の朝日新聞です。

「折々のことば」で取り上げられているのは明石海人です。明石海人って、ご存じでしょうか? 「あかし・かいじん」と読みます。たぶん読めない人も多いだろうと思ったのでしょう、朝日新聞も「かいじん」とルビを振ってありますね。

あたしは辛うじて知っていたのですが、それは何故かと言いますと、あたしの勤務先で『幾世の底より』という、明石海人の評伝を刊行しているからです。情けない話、この企画が出るまで、あたしも明石海人という人のことはまるっきり知りませんでした。

明石海人はハンセン病患者ですが、出身は沼津なんですね。沼津と言えば、あたしの妹家族が住んでいるところなので、なんとなく親近感を覚えます。ちなみに妹のところの姪っ子たちは学校で明石海人についてはなにも習っていないようです。聞いても知りませんでした。生家とか記念碑とか、沼津にはあるのでしょうか?

そして明石海人の作品は岩波文庫から『明石海人歌集』という本が出ているのですが、こちらは現在品切れになっているようです。岩波文庫は時々復刊をするので、この本も復刊されないかなあと密かに期待しているのですが、いまのところそのような気配はありません。

売れ残っている一冊が書店店頭に置いてないかと、営業回りの途次に探してみますが、目にしたことはありませんから、市場から消えてずいぶんと時間がたっているのでしょう。それとも岩波書店に問い合わせれば、倉庫に一冊くらいは残っているのでしょうか?