思い出の書店?

新しい書店がオープンするというニュースよりも、書店閉店の報せの方が多いような気がするこの数年。書店のない自治体がニュースで取り上げられるほど、書店の減り方は深刻なようです。ただ、他の業界と比べるとどうなのでしょうね。書店だけが特殊なわけではないと思うのですが。

新しい書店のニュースと言えば、先日大々的に報じられていた麻布台ヒルズに大垣書店が出店しました。大垣書店は京都を地盤とする書店です。その京都には中心部の四条河原町に蔦屋書店がこの秋オープンしましたね。

これらはむしろ稀な例であって、書店で景気よさげに取り上げられるのは、いわゆる独立系書店ばかりな気もします。お客としては面白いと思うものの、やはり街の本屋にもっと頑張ってもらいたいと思います。

そんな中、あたしが担当している東京の西へ延びる大手私鉄・京王線沿線で閉店のニュースが続けざまに飛び込んできました。その一つが啓文堂書店明大前店です。駅ビル内の小さめの書店ですが、明大前には他に本屋がないと思うので、近隣の人は困ってしまうのではないでしょうか。

そしてもう一つは、明大前からもう少し西へ、京王線で数駅乗ったつつじヶ丘駅前にある書原です。書原と言えば阿佐ヶ谷のお店が全国的に知られたお店でしたが、かつては多くの店舗が都内各地にありました。最後の一軒だったのですが、ここが閉店するということは書原がなくなってしまうということです。

実は、書原という書店はあたしが初めて行った書店なのです。営業に、という意味ではありません。生まれて初めて、自分で財布を持って本を買いに行った書店、という意味です。小学生の時から住んでいた杉並区の高井戸(これは京王グループですが京王線ではなく井の頭線です)駅は、高架下が商店街になっていて、そこに書原(当時は広和書店という屋号)があったのです。歩いて10分程度のところに住んでいたので、しょっちゅう書原には行っていましたし、時には本も買っていたのです。

最初の書店体験が書原というのは、今にして思うとなかなかディープだったと思いますが、それがあたしの人生にどういう影響を及ぼすことになったのか、それは今もってわかりません。しかし、そんな思い出の書店もずいぶん前に閉店していて。たぶん高井戸には新刊書店は一軒もないのではないでしょうか。本屋のない自治体も深刻な問題ですが、周辺人口比で考えた場合、東京など大都市の書店不足の方がもっと深刻なのではないかと思っています。

2023年11月のご案内

2023年11月に送信した注文書をご案内いたします。

   

まずは暮れの定番『クリスマスの文化史』を今年もご案内。そして月初め恒例の「今月のおすすめ本」、更に今年は昨年末に注文が伸びた『日本の「第九」』もこの時季ならではなのでご案内しました。そして今年のノーベル文学賞受賞、ヨン・フォッセの『だれか、来る』が緊急発売が決定したので、そちらもご案内しました。

   

11月は語学書の重版が多かったので、それだけで一度ご案内しました。また今年の業界一番(?)の話題作『中世への旅』がロングセラーになっているので、改めてご案内。ロングセラーと言えば、こちらも同じく『同調圧力』も4刷となりました。そして突然飛び込んできた山の上ホテルの閉館のニュース。そこで帯を一新した『山の上ホテル物語』もご案内しました。

  

下旬の恒例「今月のおすすめ本[語学書]」、そして新刊『脱成長がもたらす働き方の改革』に合わせて、ラトゥーシュの既刊『脱成長』の併売促進のご案内。最後は刊行即重版となった『地図で読む戦争の時代[増補新版]』のご案内でした。

クールビズよりウォームビズ?

めっきり寒くなってきました。秋が本当に短くなってしまいましたね。

それはそうと、寒くなってくるとコート・外套の出番ですが、営業職にとってはコートは実は邪魔なアイテムの一つです。行く先々でわざわざ脱がなければならないのが面倒で仕方ないのです。

ですから寒くても、できるだけコートは着ず、ジャケットの中にベストやセーター、カーディガンを着込むことで寒さをしのぐようにしています。それでなくとも重い書類が入ったカバンを持って歩く営業なので、コートまで持つような営業回りはしたくありません。

というわけで、夏のクールビズが定着し、上着なし、ネクタイなしでも問題とならなくなったように、冬のコート着用したままの営業も目くじらを立てないようにして欲しいものです。もちろん、ふだん回っていて懇意にしている書店の方は、たぶんそんなことには頓着しないと思います。むしろ、コートを着たまま営業しているのを見かけた同業者がうるさいことを言ってくるのではないかと危惧しております。

今日の配本(23/11/30)

ロシア 奪われた未来
ソ連崩壊後の四半世紀を生きる

マーシャ・ゲッセン 著/三浦元博、飯島一孝 訳

一九八〇年代初めから半ばに生まれ、プーチン支配の世界で成人した男女四人の多難な人生と家族の物語を紡ぐ、渾身のノンフィクション。

第三の波
二〇世紀後半の民主化

サミュエル・P・ハンティントン 著/川中豪 訳

20世紀後半にもたらされた民主主義とは何だったのか。政治学の古典であり、民主化をめぐる議論の出発点となった記念碑的著作を新訳。

ヴェトナム(下)
壮大な悲劇 1945-1975

マックス・ヘイスティングス 著/平賀秀明 訳

本書は、第一次インドシナ戦争前夜からサイゴン陥落までの30年を振り返り、開戦から終戦に至る歴史的背景と政治的思惑を事実に即して描写し、戦争の本質に迫った大作である。一つひとつの作戦や戦闘、その結果としての災禍が時間軸に沿って詳細に描かれており、時代の空気が変化していくさまが臨場感をもって伝わってくる。

今日の配本(23/11/24)

大仏ホテルの幽霊

カン・ファギル 著/小山内園子 訳

1950年代、朝鮮戦争の傷痕が残る西洋式「大仏ホテル」で幽霊に導かれるように4人の男女の人生が交錯する。韓国社会の“恨”を描くゴシックスリラー。

ちょっと時代が違っていた!

少し前に営業回りの書店店頭でこんな本を見かけました。

古代ギリシアの日常生活 生活文化から食生活、医療、仕事、軍事治安まで』です。この手の書籍では定評のある原書房の刊行物です。

あたしが気になったのはそのタイトルで、「あれっ、同じタイトルの本があたしの勤務先からも出ていなかったかしら?」とおもったのです。サブタイトルや原著者が異なっても、もちろん出版社も異なっていますが、同じタイトルの本があるのは書店現場でいたずらに混乱を招くだけですので、ちょっとだけタイトルを変えるというのはよくあることですが、この場合は全く同じではないだろうかと思ったのです。

でも調べてみたら違いました。あたしの勤務先から刊行されていたのは『古代ローマの日常生活』というタイトルで、なおかつ文庫クセジュという新書判の一冊でした。

古代ギリシアと古代ローマ、確かに「ギリシア・ローマ」と一括りにされることが多いので、勘違いしたりするのも致し方ないところでしょう。まあ、専門家やこの時代がお好きな方からすれば、「全然違うよ! ごっちゃにするな!」と叱られそうですが、世間一般のイメージとしては似たような印象を持っている人が多いのではないでしょうか。

ところが、この確認をしていたときに発見しました。

原書房からは『古代ローマの日常生活 24の仕事と生活でたどる1日』という書籍が刊行されているではないですか! しかも『古代ローマの日常生活2 社会のしくみから食生活、娯楽、信仰まで、生きていくための100のポイント』まで刊行されているのです。むしろこちらの方が、あたしの勤務先の文庫クセジュと間違えられそうです。

とはいえ、あたしの記憶にある限り、電話やファクスでこの両社を取り違えて注文してきたことは今まで一度もありません。間違えたので返品したいという依頼も受けた覚えがありません。案外こちらが思うよりも、読者の方、書店の方、いずれもしっかりと調べ確認した上で注文してくれているのだなあと思います。もちろん、本当に好きな人であれば、両方買ってしまうという方も多いのだと思いますが。