今日の配本(22/03/15)

今日の不安
さまざまな概念と臨床

ヴァシリス・カプサンベリス 著/阿部又一郎、大島一成 監訳

うまく眠れない、喉が詰まったような感じがする、胃が締め付けられる気がする、息切れする、呼吸が苦しい。不安になるとこうしたさまざまな症状を経験する。著者によれば、不安は「精神生活における交差路であるとともに見張りの役割を担う」。つまり不安は、こころの不快や不調、ときに苦痛を伴う感情の最初の表れであると同時に、それらが解決されていない状態にあると教えてくれているのだ。本書は、フロイトをはじめピエール・ジャネ、ウィニコット、メラニー・クライン、ラカンなどの業績を参照しながら、臨床における不安の症候学、不安のモデル、生物学、精神分析、認知行動科学、いろいろな治療法といった今日の不安の諸相を概説する。臨床経験豊かな著者が、正常から病理まで遍在する不安を震央に位置づけて考察した、病める社会と人間たちに向けたフランス精神分析的思考の処方箋。

今日の配本(22/03/11)

ケンジントン公園

ロドリゴ・フレサン 著/内田兆史 訳

児童文学の歴史に燦然と輝く永遠の古典『ピーター・パン』。その生みの親J・M・バリーに着想を与え、ピーター・パンのモデルとなったルウェリン=デイヴィス家の五人兄弟のひとりで、のちに出版社社主となったピーターの自殺で物語は幕を開ける。続いて、バリーの幼少期のエピソードに重ね合わせるようにして語り手自身の物語が始まる。章が進むうち、この謎の語り手が、今や知らぬ者はいない子供たちのヒーロー、時を駆ける永遠の少年ジム・ヤングの冒険を描く大人気シリーズの作者ピーター・フックであることが次第に明らかになる。

どうも地味に注文が伸びているような気がするのです

ウクライナ情勢を受け、書店でもこの状況を理解し、読み解くためにさまざまな書籍を取り揃え、並べているようです。とはいえ、多くの日本人が「ウクライナってどこ?」という感じですから、ウクライナやベラルーシなどに関連する書籍は少ないです。あっても刊行から時間がたち、既に版元品切れのものも多いようです。

そんな中、あたしの勤務先の『ニューエクスプレスプラス ウクライナ語』の注文が地味に伸びています。その国を理解するにはまずは言葉ですから、本書に飛び付く人がいても何ら不思議ではありません。本社が役に立つのであれば、大いに活用して欲しいと思います。

ただ、『ニューエクスプレスプラス ウクライナ語』に隠れてしまっていますが、あたしの勤務先では『つばさ君のウクライナ語』というのも出しています。本書は

ロシア語との違いに触れながら、ウクライナ語のしくみを学んでいくはじめての参考書。『ニューエクスプレスプラス ロシア語』のスキットそのままに、本書では主人公つばさ君がウクライナ語を学習していきます。全20課、各課スキットにロシア語訳および日本語訳付き。巻末にはウクライナ語─日本語、ロシア語─ウクライナ語の2種類の単語リストを用意。2課おきの練習問題でもロシア語との比較ができます。音声無料ダウンロード。

という内容ですから、ウクライナとロシアの違いを知るにも最適な一冊ではないでしょうか?

また『比較で読みとく スラヴ語のしくみ』という一冊もありまして(残念ながら現在品切れ)、こちらが扱う言葉は

ロシア語、ベラルーシ語、ウクライナ語、ルシン語、ポーランド語、カシュブ語、ソルブ語、チェコ語、スロヴァキア語、スロヴェニア語、クロアチア語、ボスニア語、セルビア語、ツルナゴーラ語、マケドニア語、ブルガリア語……

というように、いま世界中の注目が集まっている地域が見事に含まれています。言葉が異なれば、考え方も習慣も細かいところで違いがあるのでしょうね。

2022年2月のご案内

2022年2月に送信した注文書をご案内いたします。

  

まずは読売文学賞を受賞した『J・M・クッツェーと真実』です。書評も四大紙すべてに掲載されました。次にロングセラーとなっている『福祉国家』です。こちらも医療ではなく政治・経済ジャンルで置いている書店で動きがよいようです。そして毎月の「今月のおすすめ本」です。

  

春は語学のシーズンですので、例年どおり「語学書一覧」もご案内しました。そして語学書のトップセラー『フラ語入門、わかりやすいにもホドがある!』をNHKの講座テキストに広告を載せますので、それに合わせての案内です。そして、いわゆるマイナーな言語、文学を学ぶ人たち必読、否、外国語や外国文学に興味を持っている方であれば誰もが読むべき『「その他の外国文学」の翻訳者』が刊行早々に重版となりました。

  

出会いと別れのシーズンに寄せて、《エクス・リブリス》のミニフェアの案内もしてみました。手軽なボリュームで海外文学のフェアなどいかがでしょう。そしてこちらも刊行から絶好調の『ノブレス・オブリージュ』の重版に合わせたご案内です。そして最後に、イタリアの作家タブッキの没後10年を前に須賀敦子訳のタブッキ作品のご案内です。

今日の配本(22/02/25)

李先生の中国語ライブ授業
1入門クラス

李軼倫 著

先生と生徒の会話で進む、すいすい読める入門書。発音も文法も、よくある質問に答えながら、わかりづらいところを丁寧に解説します。

アラビア語文法ハンドブック[増補新版]

新妻仁一 著

文字と発音から、格変化、動詞の派生形、数詞、例外的な表記など、現代アラビア語の理解に必要な基礎的な文法から、さらに上のレベルを目指す中級者も活用できるアラビア語学習の基本図書。アラビア語に本格的に取り組むためには欠かせない一冊です。つねに参照しながら、魅力的なアラビア語の世界をともに歩んでいきませんか。この増補版では、アラビア語の文法用語や索引を新たに加えるとともに、最新の知見をもとにしたコラムも多数掲載。

チェルノブイリ
「平和の原子力」の闇

アダム・ヒギンボタム 著/松島芳彦 訳

チェルノブイリは「平和の原子力」の象徴として、ソ連で最も安全で進んだ原発と言われていた。しかし、1986年4月の原子炉爆発事故によって、歴史に汚名を残す末路をたどった。事故からすでに36年が経過しようとし、その間にアレクシエービッチ『チェルノブイリの祈り 未来の物語』をはじめ、数多の著作や研究が世に問われてきたが、ソ連やロシア連邦の根深い秘密主義のために、今でも全容が解明されたわけではない。最新刊の本書は、構造的な欠陥をはらんだ原発が誕生した経緯から、北半球を覆った未曾有の放射能汚染、多くの人々の心身に残した傷にいたるまで、気鋭のジャーナリストが綿密な取材と調査を通して、想像を絶する災厄の全体像に迫った、渾身のノンフィクション作品だ。

ヴェルサイユ宮殿に暮らす[新装版]
優雅で悲惨な宮廷生活

ウィリアム・リッチー・ニュートン 著/北浦春香 訳

フランス貴族社会の象徴、ヴェルサイユ宮殿。18世紀、ここには王を頂点に千人以上がひしめきあって暮らしていた。豪華絢爛な外観、贅沢な食事、着飾った女性たち、舞踏会や音楽会……。華やかな宮廷生活が思い浮かぶが、本書のテーマはこうした表の顔ではなく、より人間くさい日々の営みのほうにある。著者は残された書簡や官僚機構の報告書などを精力的に読み込み、宮殿での暮らしの実態をひもといてゆく。

読み比べてみたくなる(?)この二冊!

本日の朝日新聞読書欄でも紹介されていた、河出書房新社の『JK、インドで常識ぶっ壊される』は、書評の有無にかかわらず少し前から気になっていた一冊です。同社のサイトによりますと

日本でキラキラのJKライフをエンジョイするはずだった。だけど、突然一家でインドに移ることに。制服での映え写真。放課後はタピオカ片手にガールズトーク。そんなアオハルを夢見ていたけど……。「ごはんはカレーしかなくて、汚くて、治安が悪い」そんなイメージしかないまま始めたインドでの生活はおどろきの連続。

という、いわば体当たり体験記な一冊だと思われます。どうしてこの本が気になっていたかと言いますと、あたしの勤務先から近々刊行される『日本でわたしも考えた インド人ジャーナリストが体感した禅とトイレと温泉と』と真逆だなあと思ったからです。

こちらの著者は女子高生ではありません。ジャーナリストですから知識も経験もある大人です。それでも日本に来て、それなりのカルチャーショックは受けたみたいです。サイトには

著者はインドを代表する英字紙『ヒンドゥー』の元北京支局長で、EU代表部に勤める夫と二人の息子とともに初めて来日。四年近くに及んだ滞日生活でインドでは考えられないような日常に目を瞠り、自身の知的好奇心をフルに発揮して多くの日本人や在住外国人と意見を交わした。生活習慣の違いから日本語習得の難しさ、俳句や金継ぎなどの伝統文化、政治・社会問題まで多岐にわたるテーマについての興味深い考察が本書には詰まっている。

とあります。高校生とジャーナリストという違いはあれど同じ女性ですから、同じような気づきがあったのかもしれません。ちなみに、前者の紹介文には「ごはんはカレーしかなくて」という一説がありますが、後者の紹介文にも「「中村屋のボース」とカレーの伝播」という言葉が出て来ます。日印はカレーで結ばれているのかも知れません。

そう言えば、『13億人のトイレ 下から見た経済大国インド』なんて一冊が角川新書から出ていましたね。

お互いに参考文献?

いくつか紹介記事も出て、お陰様で『破綻の戦略 私のアフガニスタン現代史』が好調です。日本からは地理的にも、気持ちの上でも遠いアフガニスタンについて少しでも知りたいという方が潜在的には多いのではないかと思われます。

本書は、大学卒業後、ダリー語修得のためカーブル大学に留学して以降、一貫してアフガニスタンに関わり続けてきた元大使によるメモワール的なドキュメントである。現地にどっぷり浸かり、体験し、長年にわたって蓄積した知見をもとに書き下ろした。

上掲のような内容の本書は、取材する記者ではなく大使として現地で奮闘した著者の体験に基づくノンフィクションです。ライターとはまた異なる視点からの知見が披瀝されているはずです。

そして本書と併読するとよさそうな新刊が出ます。3月刊行の岩波新書『タリバン台頭 混迷のアフガニスタン現代史』です。

「テロとの戦い」において「敵」だったはずのタリバンが、再びアフガニスタンで政権を掌握した。なぜタリバンは民衆たちに支持されたのか。恐怖政治で知られたタリバンは変わったのか、変わっていないのか。アフガニスタンが生きた混迷の時代には、私たちが生きる現代世界が抱えた矛盾が集約されていた。

こちらの内容は上掲のとおりです。