465夜

松岡正剛さんが亡くなりました。あたしの勤務先では、特に著者などは刊行していませんので、縁はやや薄いでしょう。ただ、松岡さんの「千夜千冊」の第465夜で『ライ麦畑でつかまえて』を紹介いただいたのが、個人的には非常に印象に残っています。

その第465屋の冒頭で松岡さんは次のように書かれています。

一九六〇年代のアメリカで若者たちのお手軽なバイブルになりかかっていた文芸作品が三つある。精神科病院を舞台に患者たちの擬装と反抗を描いたケン・キージーの『カッコーの巣の上で』(冨山房)、戦争状態という管理と倫理の悪夢を描いたジョーゼフ・ヘラーの『キャッチ=22』(早川書房)、そして、J・D・サリンジャーの『ライ麦畑でつかまえて』である。

あたしは、その当時のアメリカの状況を知らないので、この松岡さんの指摘がどれくらい打倒するのかわかりません。でもそういうものなのだろうと、この記事を読んだ当時は思っていました。そして、そのバイブル三作品、あたしも一丁前に架蔵しております。

新刊が刊行されました、但し他社から!

河出書房新社から『中国の反体制活動家たち』が発売されました。この手の中国モノはついつい手が伸びてしまいます。公式サイトには

中国の公式記録から消された飢饉、民族差別、大虐殺、疫病などの過去100年にわたるさまざまな事件を史実として明るみにし、静かに抵抗してきた文化人たちの地下活動の全貌を初めて紹介。

と書いてあります。必ずしも現代中国の、習近平体制になってからの抑圧、弾圧を取り上げているのではなく、建国以来の歴史を振り返ったノンフィクションのようです。これはこれで楽しみな一冊です。

そして著者はイアン・ジョンソン。どこかで聞いたことある名前だなあと思った方は記憶力がいいですね。そうです、あたしの勤務先から刊行した『信仰の現代中国』の著者で、ピュリツァー賞も受賞しているジャーナリストです。こちらは

弾圧から緩和、引き締め、そして包摂へ―毛沢東以来、共産党支配下における政治と宗教の関係は常にある種の緊張状態にある。本書は、この緊張状態の根源にあるものを掘り起こし、信仰と伝統行事のあり方を通して中国社会のもう一つの姿を描いたノンフィクションである。

という内容の一冊で、著者が中国に滞在していたごく最近の中国が舞台となっています。ここまで中国民衆の中に入り込んで取材するのも、現在の中国では非常に難しくなっているようですね。こんな体制が続くようであれば、外国人による良質な中国ノンフィクションが生まれなくなるのではないでしょうか。もちろん、習近平と中国共産党にとってはそれが狙いなのでしょうが。

いずれは語学書として?

昨日、このダイアリーで取り上げた「猫語」ですが、これはあくまで小説の話です。でも猫に限らず、仲間うちで音声によってコミュニケーションを取っている動物というのはたくさんいるそうです。

いま「音声によって」と書きましたが、これが「言葉によって」と言えるほどの知能を持った動物はいるのでしょうか。あるいは人間の科学が解明できていないだけなのでしょうか。

もし科学によって解明できたとして、それを語学書に仕立てることができるのであれば、《ニューエクスプレスプラス》シリーズに加えてみたいなあ、という密かな願望があります。既に「猫語」や「犬語」を謳った書籍は発売されていますが、言語学的、語学的なものではありませんから、ひとまず論外として、語学的なアプローチが可能な動物ってどれくらいいるのでしょう。カラスも鳴き方によってそれぞれ異なる意味を伝達していると言われていますし、イルカも超音波みたいなもので意思疎通を図っているとかいないとか。

あたしが死ぬまでには、そんな《エクスプレス》が発売されているでしょうか?

結局どうしたらよいのでしょう?

本日の朝日新聞、オピニオン欄に書店に関する記事がありました。

「書店のこれから」とあります。昔ながらの街の書店、大手チェーン店、そして独立系書店。あと十年もしたら日本の書店はどんな風になっているのでしょう。図書館との連繋についても書かれていますが、出版社や取次については触れられていませんね。

書店がこれからも続くか否かというのは、出版社が続くかどうかと密接にかかわる問題だと思うので、書店だけを考えていてもダメなのだろうと思います。

朝日の記事を読んでみても即効性のある解決策は書かれていません。各自が考えないとならない問題ということなのでしょう。回答の一つとして、本だけを扱うのではなくカフェなどを併設する、こだわりの選書でアピールするなどがあるようですが、つまりはこのままではやはり書店はなくなる運命なのでしょう。

さて年に三回発行している、人文会の『人文会ニュース』が今月末に発行されます。記事の一つが独立系書店についてです。これまでの独立系書店についての流れを振り返ったものになっています。

この『人文会ニュース』は主な書店の他、図書館にも送っています。ご興味のある方はお近くの図書館へどうぞ。あるいは人文会のウェブサイトでもバックナンバーをPDFで公開していますので、そちらもご利用ください

振替休日に便乗商法

パリ五輪もようやく終了しました。この後は少しインターバルをおいてパラリンピックですね。アスリートの方々の活躍には拍手を送りますが、オリンピックという函はもうオワコンなのではないかと思っています。

それはともかく、あたしが興味を惹かれたのは女子やり投げの北口榛花選手が英語とチェコ語が話せるという話題です。チェコに単身武者修行に行っていたわけですから、チェコ語ができるようになるのは理解できますが、それでもすごいことだと思います。

北口選手がどんな教材を使って学習したのかわかりませんが、あたしの勤務先の人気商品である『ニューエクスプレスプラス チェコ語』を推しておきます。彼女に影響されてチェコ語をちょっとやってみたいと思った方もいるはず。まずはこの一冊から始めてみてはいかがでしょう。

そしてオリンピックからガラッと変わって、今朝の朝日新聞です。一面の「折々のことば」に師岡カリーマ・エルサムニーさんの言葉が引かれています。

カリーマさんは、あたしの勤務先からいくつか著訳書を刊行していますが、今回の記事に引きつけるのであれば、現在品切れですが、『イスラームから考える』がよいのかなあ、と思います。

在庫のあるものでカリーマさんの本を何か読みたいというのであれば、『変わるエジプト、変わらないエジプト』があります。

今日の配本(24/08/09)

ジョヴァンニの部屋

ジェームズ・ボールドウィン 著/大橋吉之輔 訳

生誕100年記念復刊。同性愛をテーマに内なる自己との出会いの衝撃を描いた、米国で再注目される黒人作家の代表作。金原瑞人解説。

オランダ語の基礎[新版]
文法と練習

クレインス桂子、クレインス・フレデリック、河崎靖 著

初級オランダ語文法を詳しい解説とともに学べる、中級も見据えた1冊。豊富な練習問題・自然なテキストで確実に基礎を身につけます。

ニーチェをドイツ語で読む[新装版]

細見和之 著

対訳を多数掲載した画期的なニーチェ入門書。「超人」などのキーワードを、和訳だけではわかりづらいニュアンスまで丁寧に解説。

今日の配本(24/08/08)

イラストと楽しむフランスの慣用句

トリコロル・パリ 著/ドミニク・ル・バグス イラスト

「キリンのたてがみをとかす」「自分の帽子を食べる」「お腹にちょうちょがいる」ってどんな意味? ドミニク・ル・バグスさんが描くクマのおじさんを案内役に、フランスの日常会話でよく耳にするユニークな言いまわしの数々をご紹介。フランス語を学ぶ人に役立つのはもちろん、そうでない人にも、ユーモアのセンスを忘れずにちょっとひねりを加えた言いまわしで乗り切ろう!というフランスのエスプリを楽しめる一冊になっています。『おしゃべりがはずむ フランスの魔法のフレーズ』の改訂版。