今日の配本(22/07/08)

氷上旅日記[新装版]
ミュンヘン-パリを歩いて

ヴェルナー・ヘルツォーク 著/藤川芳朗 訳

痛む足をひきずりながら、死んだような小さな村をいくつも通り過ぎ、空き家に泊まり、田舎道を彷徨する。あるときは、自分がまだ人間の姿をしているのを確かめようとガソリンスタンドのトイレに駆け込む。やがて寒さに凍えるカラスを兄弟のような感情を抱くようになり、リンゴの実がすべて落ちるまで木を揺さぶった直後の静寂に、孤独と疲労が頂点に達する。研ぎ澄まされた感覚で、魂を震わすような自然に身を投じるヘルツォークならではの眼差し。極寒のなかをひたすら歩く真摯な姿と、狂おしいまでの思いが読者の心を打つだろう。

朝日の読書欄から三点ほど……

一日遅れになりますが、昨日の朝日新聞読書欄で、最近あたしが読んだ本が二点も紹介されていましたので……

まずは中公新書の『新疆ウイグル自治区』です。ウイグルを巡る記事、ウクライナの影に隠れて最近は少ないようですが、華なりひどい状況のようです。ジェノサイドという言葉でまとめてしまってよいのか、という著者の指摘は重要でしょう。

本書はタイトルどおり、中国の新疆ウイグル自治区を扱ったものではありますが、中国国内ではモンゴル族やチベット族に対する弾圧も厳しいものがあります。さらには同じ漢民族でも共産党に逆らえば弾圧されるということは香港の現状を見ていれば簡単に理解できることでしょう。習近平政権はいったいどこへ向かうのでしょうか?

ただ、中国問題は、それでも日本でも海外でも報道されやすい、比較的多く捧持されていると思いますが、ミャンマー情勢はこのところ全く報道されませんね。国内の弾圧は国際情勢に大きな影響を及ぼさない限り、それほど省みられないのは悲しいことです。

話は変わってもう一点はちくま新書の『ルネサンス 情報革命の時代』です。新しい視点でルネサンス時代を捉えた、とても読みやすい一冊でした。

ちなみに著者の桑木野幸司さんは、あたしの勤務先から『ルネサンス庭園の精神史』という一冊を刊行されています。これはサントリー学芸賞を受賞した作品です。

そして最後に、これは未読なのですが、あたしの勤務先の新刊が一冊、紹介されていました。『レーモン・クノー 〈与太郎〉的叡智』です。

レーモン・クノーと言えば、『地下鉄のザジ』など、日本でも数多くの作品が翻訳されているフランスの人気作家です。クノーの作品を「与太者」という視点から取られた評論です。クノー作品のファンであれば必読ですし、まだクノーを読んだことがない方にも、クノー作品の魅力を教えてくれる格好の一冊になっています。

2022年6月のご案内

2022年6月に送信した注文書をご案内いたします。

  

まずは英国のエリザベス女王のドキュメンタリー映画も公開、即位70年の記念行事も英国では目白押しと言うことで『やんごとなき読者』のご案内です。また6月28日はルソーの生誕310年にあたるので、『社会契約論』をはじめとしたルソー作品のご案内です。そして毎月恒例「今月のおすすめ本」です。

  

続きまして、ロゼッタストーンの解読200年を記念して『ヒエログリフを書いてみよう 読んでみよう』のご案内です。さらに相変わらず注文が伸びているウクライナ語の2点をご案内。そしてコミック『ゴールデンカムイ』の完結を前に『ニューエクスプレスプラス アイヌ語』『第七師団と戦争の時代』のご案内です。

  

続いては、今年も開催される世界最大の自転車レースの必読文献『ツール・ド・フランス100話』のご案内。また日本の夏は戦争の季節と言うことで『第二次世界大戦1939-45』(全三巻)、『ヒトラー』(上・下)のご案内です。そして出足好調の新刊『MMT講義ノート』のご案内です。

 

そして参議院選挙が公示されましたので、『それでも選挙に行く理由』のご案内。最後に特に語学書担当者向けに『ニューエクスプレスプラス アイヌ語』をもう一度ご案内です。

今日の配本(22/07/01)

北欧神話100の伝説

パトリック・ゲルパ 著/村松恭平 訳

ヨーロッパにおいて、ギリシア神話に次いで作品数が多いのは北欧神話である。その寓話や伝説は『ニーベルングの指環』を書き上げたリヒャルト・ワーグナーをはじめ、映画、アニメーション、ゲームなどを創り出す現在のクリエイターたちにもインスピレーションを与え続けている。「オージンの麦酒」「鷲の嘴から出た種」は、どちらも〈詩〉を意味し、「カワウソの償い」「アース神に課された代償」「いさかいの金属」「ライン川の火」は、〈黄金〉を指す。北欧神話を伝える「エッダ」には、これら以外にも、神々や巨人たちの名前が、さまざまな言い換えや隠喩となって盛り込まれている。本書は、こうした特色に触れるとともに、ギリシア神話や聖書との類似を示唆しつつ、神、巨人、小人、怪物、妖精たちがくり広げる100の伝説を取り上げ、魅惑の世界へと誘う。

今日の配本(22/06/30)

米露諜報秘録1945-2020
冷戦からプーチンの謀略まで

ティム・ワイナー 著/村上和久 訳

諜報の分野では帝政時代以来の歴史を持つソ連・ロシアと、第二次大戦後にCIAを設立した諜報の素人の米国。ソ連は冷戦時代、東欧を支配し、その勢力を全世界に広げようとしていた。一方、米国はソ連を封じ込めるために、さまざまな諜報戦(政治戦)をくりひろげた。冷戦に勝利した米国は、その後の戦略をあやまり、NATOをいたずらに拡大させたことで、ロシアは危機感を抱く。それをもっとも切実に感じていたのが、冷戦崩壊を現場で見ていたKGBのプーチンだった。彼は権力を握るや、ただちに反撃に出る。インターネットとソーシャルメディアを駆使した彼の政治戦は、前例のないものだった。米国はいつの間にか世論の分断で民主主義の危機にさらされ、民主主義のプロセスを無視するトランプに率いられることになった。しかも、トランプはロシアの影響下にあるという……。ウクライナ戦争の前史、戦後75年間の諜報活動と外交の深層からサイバー攻撃の脅威まで、『CIA秘録』のピュリツァー賞受賞作家が機密解除文書を徹底検証。

ドナルド・キーンと俳句

毬矢まりえ 著

キーン邸の玄関には、立像と座像の2体の芭蕉像が置かれているという。日本文学の研究と伝播に生涯を捧げたキーンは、昭和28年、31歳で念願の日本留学を果たした2年後、芭蕉の「奥の細道」を追体験、「紅毛奥の細道」を発表した。俳句はキーンが日本を知るうえでの重要な原点の1つだったともいえよう。キーンが日本文学への関心を抱いたのは、ニューヨークの書店で売られていた、アーサー・ウェイリー英訳『源氏物語』を読んだことに始まる。そのウェイリー版からの逆翻訳を試み、ドナルド・キーン賞特別賞を受賞した著者が、キーンの原点を新たな視点で解き明かした渾身の力作が本書である。

鶴屋南北未刊作品集 第三巻
鶴屋南北・直江重兵衛篇

古井戸秀夫 編

過去の全集未収録四作品を軸に、随筆や書翰、俳諧の摺り物などを加え、南北工房ともいうべき文政年間の劇壇を席巻した親子の文業を俯瞰。

310年と260年

本日6月28日は、あたしの勤務先絡みでは二つのアニバーサリーです。

まず一つは、ジャン=ジャック・ルソーの生誕310年になります。刊行物で言いますと、主著の『社会契約論』がUブックスで出ています。また代表的な著作のコレクションが、白水iクラシックスから四冊、『ルソー・コレクション 孤独』『ルソー・コレクション 政治』『ルソー・コレクション 文明』『ルソー・コレクション 起源』として刊行されています。

ルソーは教科書にも載っている有名人ですから、他者からも翻訳や関連書籍がたくさん出ているはずです。この機会に店頭でちょっとしたフェアなどは如何でしょうか?

二つめのアニバーサリーは、ロシア帝国の女帝・エカチェリーナ二世の即位260年です。

ロシアのウクライナ侵攻で、ロシアそしてプーチンは、かつてのソビエト連邦ではなく、さらにその前のロシア帝国の再現、復興を目指しているのではないかと言われています。その復興すべきロシア帝国の象徴なのが、このエカチェリーナ大帝です。

現在も尾を引く、クリミア半島領有など、歴史を遡って考えるのであれば必ずエカチェリーナ女帝に行き着きます。いま現在のクリミアとロシアの戦争を理解するのであれば、この数ヶ月で陸続と刊行された書籍で十分なのかもしれませんが、もう少し歴史の流れを知りたい、どうしてこういう事態になっているかの根源を知りたいというのであれば、本書は外せない一冊、否、二冊になるでしょう。

今日の配本(22/06/27)

フランス革命史
自由か死か

ピーター・マクフィー 著/永見瑞木、安藤裕介 訳

1789年以降、フランスの革命家たちは人民主権、国民統合、そして市民的平等の諸原理に基づいて自分たちの世界を再建しようと努めた。それは、絶対王政と身分特権、地方特権に彩られた王国において、途轍もない挑戦だった。本書は、なぜ革命が起きたのか? また革命は誰にとってのものだったのか? そして革命が残した遺産はなにか? 世界的権威が描き切った「全史」である。

帰りたい

カミーラ・シャムジー 著/金原瑞人、安納令奈 訳

イスマ、アニーカ、パーヴェイズは、ロンドンで暮らすムスリム(イスラム教徒)の三人きょうだい。イスマは長女、下の二人は双子の姉弟。パキスタン系英国人の父親はイスマが幼い頃に家族を捨て、ジハードのためにボスニアに旅立ち、グアンタナモ収容所への搬送途中で病死した。3人に父親の記憶はほとんどない。母親も7年前に死んだ。長女のイスマは妹と弟を育てるために学業を中断して働いた。妹のアニーカは高校卒業後、奨学金を得て大学に。弟のパーヴェイズは音響関係のキャリアを目指す。イスマは渡米し、研究助手として大学院で勉強を続ける。そんなある日イスマは、カフェでエイモンという青年に出会う。エイモンもロンドン育ちだが、パキスタン系の父親は英国の国会議員で裕福な家庭だった。ロンドンに戻ったエイモンは、イスマの妹アニーカに会い、強く惹かれる。一方、ロンドンに残ったパーヴェイズはパキスタンの親戚に会いにいくと嘘をつき、旅に出た。行き先は、シリアのラッカ。ジハード戦士だった父に憧れ、イスラム国に参加していたのだ。