文庫化されました

西加奈子さんも『』の中で引用していた『テヘランでロリータを読む』が「河出文庫」の一冊となって刊行されました。

自社の単行本が他社の文庫に生まれ変わるというのは、その作品が愛されているという証拠でもありますが、どうして自社で文庫化できなかったのかと忸怩たるものがあります。

それにしても、この河出文庫の装丁は如何でしょう? あたしは最初、どうしてマトリョーシカ人形なのだろう思ってしまいました。見えませんか?

もちろん単行本の装丁への敬意が感じられる装丁ですが、かなり印象が異なりますね。より身近な作品に感じられるのではないでしょうか?

そしてもうひと作品。

このところ新刊の刊行も相継いでいる台湾の作家、呉明益の『歩道橋の魔術師』が、同じく「河出文庫」となって刊行されました。

こちらも、あたしの勤務先のベスト&ロングセラー商品ですので、文庫になり更に売り上げを伸ばすことは間違いないでしょう。

装丁は、どちらも小説の舞台となった、かつて台北駅前にあった中華商場です。単行本では当時の写真を使っていますが、文庫の方はイラストに代わっています。このイラストは著者、呉明益さんの手になるものです。

このように他社から文庫が出るのは、なんとも言えない気分です。娘を嫁に出す父親の気持ちに近いのでしょうか? あたし結婚していませんし娘もいませんから、全く想像の域を出ませんが……

10月のご案内

10月に書店へファクスで送った注文書をまとめてご紹介します。

   

まずは受賞作品。日本翻訳家協会の翻訳特別賞を受賞した『行く、行った、行ってしまった』です。そして他社からも新刊翻訳が続々と出版されている台湾の人気作家、呉明益『眠りの航路』です。更にこちらも売れ行き好調の『ブックセラーズ・ダイアリー』、そして毎月恒例「今月のおすすめ本」です。

   

続きまして、近づく総選挙を前にしてより売り上げが伸びた『それでも選挙に行く理由』、秋の検定シーズンを前に語学検定試験対策本の一覧、そして遂に5刷目に突入した『ブックセラーズ・ダイアリー』をもう一度ご案内、それから11月8日の「いい歯の日」に引っかけた『俺の歯の話』です。

   

コミック「ゴールデン・カムイ」にも登場する部隊を扱った『第七師団と戦争の時代』は北海道以外でも全国的によく売れています。そして、著者のラジオ出演が決まった『日本語とにらめっこ』、ハロウィンが終わったら次はこちら、『クリスマスの文化史』です。さらには、今年創刊70周年を迎えた《文庫クセジュ》の記念復刊のご案内です。

最後は岩波新書『ヒトラー』の影響で注文が急に伸びた『ヒトラー(上)1889-1936 傲慢』『ヒトラー(下)1936-1945 天罰』です。

本の日だったのよね

昨日、11月1日は本の日。

皆さん、知っていましたでしょうか? 一応、ウェブサイトもあります。

本が並んでいる形と11月1日の数字の並びを引っかけたものです。

だったら11月11日の方がいいんじゃない?

という意見ももっともだと思いますが、根っからの本好きならいざ知らず、ふだんあまり本を読まない方にとって本の冊数が多いのは負担に感じられるかも知れません。かといって、1月1日では少なすぎるし寂しすぎるということで、11月1日なのでしょう。

もちろん、だったら1月11日でも構わないでしょう?

でも11月1日にしたのは、読書の秋にも引っかけているのだと思います。

今日の配本(21/10/28)

ローベルト・ヴァルザーとの散策

カール・ゼーリヒ 著/ルカス・グローア、レト・ゾルク、ペーター・ウッツ 編/新本史斉 訳

カフカやゼーバルトなど、現在に至るまで数多の書き手を惹きつけてやまないドイツ語圏スイスの作家、ローベルト・ヴァルザー(1878-1956)が散歩中に心臓発作で亡くなった翌年に刊行された本書は、ヴァルザーについての基礎的な伝記資料として幾度も版を重ね、複数の言語に翻訳されてきた。
ヴァルザーは精神を病んで文学的に沈黙して以降、スイス東部ヘリザウの病院に暮らしていたが、彼のもとを定期的に訪れていた数少ない人物のひとりが、本書の著者、カール・ゼーリヒ(1894-1962)である。さまざまな作家の支援者として知られたゼーリヒは伝記作家でもあり、彼がヘリザウを起点に、ヴァルザーと連れ立って出かけていった散策の足跡を書きとめたのが、本書なのである。

トクヴィルと明治思想史
〈デモクラシー〉の発見と忘却

柳愛林 著

文明化を追い求めた明治日本は、翻訳書が果たした役割がいまと比較にならないぐらい大きかった。そして数多くの翻訳書が刊行されるなかで、新たな概念もたくさん生まれた。
本書では、アレクシ・ド・トクヴィルと『アメリカのデモクラシー』に焦点を当てて、その営為を明らかにする試みである。

FCバイエルンの軌跡
ナチズムと戦ったサッカーの歴史

ディートリヒ・シュルツェ=マルメリング 著/中村修 訳

ブンデスリーガ九連覇を果たし、最多優勝記録保持者(レコードマイスター)を誇るFCバイエルン・ミュンヘン。いまや強豪クラブチームとして勇名を轟かすが、歴史を築いた選手や指導者たちにユダヤ系の人びとが数多く存在したことはあまり知られていない。ドイツ選手権初制覇はユダヤ人会長とユダヤ人監督のもと成されたのだが、FCバイエルンを王座に導いたユダヤ人たちは〈敬われ、迫害され、忘却されて〉きた。

士官たちと紳士たち
誉れの剣Ⅱ

イーヴリン・ウォー 著/小山太一 訳

ガイ・クラウチバックが戦地アフリカから帰国すると、ロンドンはドイツ軍の空襲下にあった。新たに編成されたコマンド部隊に配属されて訓練地の島へ向かったガイは旧知の面々と再会し、同僚アイヴァ・クレア大尉の紳士らしい超然とした態度に感銘をおぼえる。やがて旅団長に復帰したリッチー=フック准将の下、部隊はイギリスを出発、ケープタウン経由でエジプトに到着するが、現地で合流するはずの旅団長は行方不明で、待機中の部隊の士気は下がるばかり。そしてついにガイの所属する隊にもクレタ島への出動命令が下った……。

夜の声

スティーヴン・ミルハウザー 著/柴田元幸 訳

人魚の死体が打ち寄せられた町の人々の熱狂と奇妙な憧れを描く「マーメイド・フィーバー」。夜中に階下の物音を聞きつけた妻が、隣で眠る夫を起こさずに泥棒を撃退しようとあれこれ煩悶する「妻と泥棒」。幽霊と共に生きる町を、奇異と自覚しつつもどこか誇らしげに語る「私たちの町の幽霊」。勝手知ったるはずの自分の町が開発熱でまるで迷宮のようになってしまう「近日開店」……。

出典は……

今朝の朝日新聞の「折々のことば」です。

アランの『哲学講義』からの引用です。「中村雄二郎訳」とあります。

となると「白水iクラシックス」の中の一冊、『哲学講義』ですよね。さあ、読者の皆さんの興味を惹いて、注文殺到となるでしょうか?

町中華ならぬ町本屋

先日お知らせしたミルハウザーと並んで、こちらも待ち望んでいた方が多かったと思いますが、イーヴリン・ウォーの『誉れの剣』第二巻『士官たちと紳士たち』がまもなく刊行になります。

第一巻『つわものども』が刊行されてから少し時間がたってしまいましたが、これだけの分量の翻訳ですから時間がかかるのはご容赦ください。そのぶん自信を持ってお届けいたします。第一巻の内容、覚えていらっしゃいますか? 読んでからしばらくたってしまったという方は、この機会に第一巻を今一度繙いてもよいのではないでしょうか?

さて、信販会社UCクレジットの会員誌『てんとう虫』の11月号が届きました。

今号の特集は「町本屋へ出かけよう」です。表紙は「リーディン ライティン ブックストア」です。本文の筆者は、目黒孝二、永江朗、和氣正幸の三氏。取り上げられている書店は、Title(東京都杉並区)、ブックスキューブリックけやき通り店(福岡県福岡市)、定有堂書店(鳥取県鳥取市)、往来堂書店(東京都文京区)、Readin’ Writin’ BOOK STORE(東京都台東区)、誠光社(京都府京都市)が写真入りで取り上げられています。

また「行ってみたい独立系書店」として、フリッツ・アートセンター(群馬県前橋市)、双子のライオン堂(東京都港区)、マルジナリア書店(東京都府中市)、今野書店(東京都杉並区)、隆祥館書店(大阪府大阪市)も出て来ます。

「大型書店の新しい試み」では、函館蔦屋書店World Antiquarian Book Plaza文喫HIBIYA CENTRAL MARKETが紹介されています。さらに「本屋のいろいろな形」として取り上げられているのは、八戸ブックセンターBOOK TRUCKBOOKSHOP TRAVELLERです。最後には山陽堂書店三月書房に関するエッセイも載っています。

ところで、この数年、「町中華」という言葉が知られてきました。チェーン店や流行りのラーメン屋ではなく、昔からあって家族で食べに行ったり、サラリーマンが一人で立ち寄ったりする、中華屋さんのことです。今回の「町本屋」も、そんな町中華という言葉からの連想で生まれた言葉でしょうか?

今日の配本(21/10/21)

こころの熟成
老いの精神分析

ブノワ・ヴェルドン 著/堀川聡司、小倉拓也、阿部又一郎 訳

1970年代以降、欧米において、老いに関する精神分析的な議論や発表がみられるようになったが、ほかの世代のそれに比べるとごくわずかであった。本書は、精神分析の見地から、老いのこころに生じるさまざまな視点や問題(年を経るにつれて変化する身体や性、それに伴うこころの問題、社会での役割、臨床と治療の実践、近親者や介護者のケアの問題など)を扱い、「異なる専門性をもち、異なる教育を受けてきた同輩たちだけでなく、一般の人が、年齢を重ねた人たちの心的生活に関心を抱けること」(「序文」)を試みる。また、症例とともに、フロイトが自身の老いを綴った書簡をはじめ、ユルスナール、イヨネスコ、モーパッサン、モーリヤック、ジッド、クローデル、レヴィ=ストロースなど、文学作品や手記、講演内容などを随所に盛り込み、思想家や著述家が向き合った老いを病跡学的に参照する。

よく使うイタリア語の慣用句1100

竹下ルッジェリ・アンナ、秋山美野 著

イタリア語は慣用句がとても豊かな言語です。avere grilli per la testa, in quattro e quattr’otto, a ogni morte di papa, fare una fritattaなど、語彙は簡単ながら、直訳からは想像できない表現がたくさんあります。本書は、使われている単語によって「動物」「食べ物・飲み物」「人の身体」「衣類」「宗教・神話」「文字・数・色など」の6つの章に分け、慣用句の由来と実践的な例文を紹介しています。一歩進んだイタリア語、よりネイティヴに近い表現を身につけたい方に最適です。

ATOKのAI変換で「みる」と入力すると「ミルク」とか「ミルフィーユ」が候補に出るけれど「ミルハウザー」はすぐに出て来ない問題について

今月末に刊行になる、スティーヴン・ミルハウザーの『夜の声』はこんな装丁です。

訳者あとがきで柴田元幸さんが書いていらっしゃいますが、原書は邦訳既刊の『ホーム・ラン』と合わせて一冊の短篇集でした。しかし、そのままのボリュームで日本語版を刊行するのは難しいということで半分に分け、『ホーム・ラン』『夜の声』として刊行することになったわけです。

『ホーム・ラン』を読まれた方は、この『夜の声』をまだかまだかと一日千秋の思いでお待ちいただいていたことでしょう。ですが、もうすぐです。来週末には書店店頭に並ぶはずです。