格好の手引き書、あります!

朝日新聞夕刊の紙面です。

見出しに「アール・ブリュット」という文字が見えますが、「アール・ブリュット」ってご存じですか? 聞いたことはあるけど、どういうものかと問われるときちんとは答えられない、という方も多いのではないでしょうか?

芸術ですから、実際の作品を見て自身で感じるのが一番なのは当たり前ですが、やはり知識とか周辺情報などを仕入れておきたいと思うのもごく自然なことです。というわけでご紹介したいのが文庫クセジュの『アール・ブリュット』です。

近年、アール・ブリュットの作品を展示する場が増えている。アール・ブリュットに特化した展覧会はもちろん、ベネチア・ビエンナーレ国際美術展でも紹介された。フランスでは、日本の作家を紹介する「アール・ブリュット・ジャポネ」が、二度にわたって開催されている。はたしてアール・ブリュットとはどういったものなのか。本書は、「アール・ブリュットを巡る考察集団」の創立メンバーで、臨床心理士・ラカン派の精神分析家である著者が、その起源(第一章)、提唱者ジャン=デュビュッフェ(第二章)、定義(第三章)、概念がどう発展したか(第四章)、作品の素材やかたち(第五章)、愛好家やコレクターの心理(第六章)、近年のブーム(第七章)、作品を扱う美術館やギャラリー(第八章)、現代アートとの対話(第九章)など、さまざまな切り口で概説する。

同書の内容紹介は上掲のとおりです。新書サイズのコンパクトな紙幅で、「アール・ブリュット」について手際よくまとめられている一冊です。展覧会を見てから読むもよし、読んでから見に行くもよし、展覧会を見に行けないから本だけ買って読むもよし、まずは手に取ってみてください。

外国語のカタカナ表記は難しい

香港で民主活動家らが次々に逮捕されている件。

この件について言いたいことはいくらでもありますが、今回はそうではなく、とある言葉の翻訳について気になったので書いてみたいと思います。

それは「蘋果日報」です。香港の有名な新聞で、英文名は「Apple Daily」です。

中国語を勉強している人であれば「蘋果」が「リンゴ」だということは初級者でもわかると思うので、「蘋果日報」を「アップル・デイリー」と言われても違和感なく理解できると思います。

ところが、このニュースを報じていた朝日新聞紙面では「リンゴ日報」と表記されていました。うーん、ちょっと違和感を感じるものの、確かに「蘋果日報」を日本語にしようと思ったら「日報」は日本でも新聞の名称として使うのでそのままでもよいとして、「蘋果」の部分を和訳して「リンゴ日報」になってしまうのか……

あたしはカタカナで英文の「アップル・デイリー」でよいのではないかと思っていましたが、実直に「蘋果日報」から日本語にしようとしたのですね。他の新聞やメディアではどのように報じているのでしょう、ちょっと気になります。

中国語が多少なりともわかるからこその違和感としては、この一年くらいしばしばに本のニュースでも取り上げられている「ファーウェイ」です。アメリカの制裁措置を受けていたり、にもかかわらず5Gでは世界をリードする大企業であり、なかなか影響力の大きな中国企業です。

この「ファーウェイ」、英文ですとテレビの画面にもよく登場していますが「HUAWEI」です。漢字表記「華為」の中国語ローマ字表記が「HUAWEI」ですので、中国語を勉強している人には何ら疑問もないところです。

しかし、「HUAWEI」をカタカタにしたときに「ファーウェイ」と表記するのは、どうしても抵抗があります。「ファー」と表記してしまうと「FA」の発音をイメージしてしまいますが、実際には「HUA」です。「HUA」は、あえてカナ表記するのであれば「ホア」あるいは「フア」といったところです。

確かに「ホア」よりも「ファー」の方が発音しやすいでしょう。特に後ろに「ウェイ」を付けたときには「ファー」の方が発音が断然ラクだというのはわかります。しかし、なまじ中国語を勉強していた身には「FA(ファー)」の音は別にあるので、どうしても「HUA」を「ファー」とは表記したくないという思いが強いです。

目くじらを立てるような問題でないことはわかっていますが、何とも気になってしまうのです。