Rockfield's Diary

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何語で喋っているのか?

昨日は下北沢にある本屋B&Bで行なわれた、台湾の作家、甘耀明さんのイベントに行って来ました。対談相手は作家の温又柔さん。甘耀明さんのイベントは、コロナ前に甘耀明さんが来日されたときにも参加しましたが、それ以来になります。

対談相手の温又柔さんの指摘で、あたしも改めて感じたのですが、今回の新刊『真の人間になる』は、もちろん日本語に翻訳されているわけですし、原書は中国語で書かれているのですが、この作品世界の中では数か国語が飛び交っているのですよね。戦中だと日本語が支配言語として君臨していますし、台湾の原住民はそれぞれの民族の言葉で話しているわけですよね。そして彼らは共通語としての台湾語もマスターしなければならなかったようですし、当時の複雑な政治状況と言語事情を考えながら読むのも、本作の楽しみ方の一つなんだと思います。

そして下北沢からの帰路は井の頭線です。

渋谷発の電車だと先頭車両の一番吉祥寺寄り、運転席のすぐ後ろの吊り輪は、ご覧のようにピンクのハート型です。すべての車両にこの吊り輪があるわけではなく、レインボーからの車体の編成にのみ付いているという、ちょっとだけレアな吊り輪です。

数年前にテレビのニュースでも取り上げられていたので、ご存じの方も多いでしょう。この吊り輪をカップルで握って写真を撮る、なんていうのも当時は流行っていました。いまは誰も見向きもしないというと語弊がありますが、ふだん井の頭線を利用している人は取り立てて騒ぐこともなく、気にも留めていないようでした。

正史を確認

つい数日前に読了した『親王殿下のパティシエール』の主人公はフランス人と清国人のハーフ、菓子職人のマリーですが、そのマリーを庇護する、もう一人の主人公が清朝・乾隆帝の皇子、永璘です。彼は実在する人物ですので、清朝の記録である『清史稿』を繙いてみました。

中国は王朝が代わると、次の王朝が自身の正統性を示すために先代王朝の歴史をまとめるのが伝統です。そのために歴代王朝は自身の歴史をしっかりと記録して残しておき、それを利用して次の王朝が正史にまとめるのです。

清朝が滅びた後も中華民国がその事業を継承し、あたしが学生のころに『清史稿』が完成、刊行されました。手元にあるのは中華書局の点校本で全48冊になります。いずれこれをベースとして『清史』が刊行されるのでしょうが、そんなニュースは聞こえてきませんね。そもそも作業は続いているのでしょうか。

それはさておき、その永璘の伝記は「列伝八」に載っています。該当部分が二枚目の写真です。たったこれだけです。第十七皇子というのはそのとおりで、乾隆54年、つまり1789年、フランス革命の年に貝勒に封じられたとあります。その後、嘉慶帝が即位、乾隆帝が崩御して親政が始まった嘉慶4年に郡王に報じられたというのも『親王殿下のパティシエール』最終巻に載っていました。

そして和珅の誅殺を受けて、その屋敷を賜ったことも書かれています。そして嘉慶25年に急な病となり、皇帝が見舞い、郡王から親王へ位が上がったのですが、その甲斐もなく亡くなってしまいました。1820年のことで、兄の嘉慶帝も同じ年に亡くなっています。

『清史稿』には生年が書かれていませんし、マリーと出会うことになる洋行についても何も書かれていません。乾隆帝の本紀も見てみましたが、王子をフランスへ派遣したという記事を見つけることはできませんでした。あたしの探し方は粗かったのかも知れませんので、これは引き続き調査してみたいと思います。

2023年8月11日 | カテゴリー : 罔殆庵博客 | 投稿者 : 染井吉野 ナンシー

今日はハトの日

昨日は8月9日(水)でハクスイの日でしたが、本日はハトの日です。ハトと言えば平和のシンボルですか。あるいはフン公害に悩まされている方も多いのではないでしょうか。

そして、関東以外の方の感覚はわかりませんが、関東在住、特に南関東在住であれば、ハトと言えば鎌倉の鶴岡八幡宮を思い出すのではないでしょうか。社殿の額に書かれている「八幡宮」の「八」が、ハトの向かい合わせになっている図案であることは有名な話です。

そんな縁だからでしょう、鳩サブレーも鎌倉の名物で、神奈川県内を中心にあちこちに豊島屋が出店しています。しかし、ハトの日の本日は本店で特別な催しがありますので、書店営業のついでに寄ってきました。

それは写真の左、特製のトートバッグの発売です。ネットショップでも買えるそうですが、その場で購入できるのは鎌倉の本店のみのようです。今日ばかりは入店にも制限がかかっていて、炎天下の店頭で少しだけ並ばないとなりませんでした。

トートバッグと鳩サブレーを買いましたが、本日の来店記念として豊島屋のご朱印(?)もいただきました。これは来店者全員に配布しているようですが、購入金額によるのでしょうか。

完結しましたね

ハルキ文庫から『親王殿下のパティシエール』という作品が刊行されています。単行本が先に刊行されたり、どこかの雑誌に連作されていたものをまとめたり、といった作品ではなく、文庫オリジナルのようです。

カバー装画を見ると、少女向けの作品なのかなという気もしますが、清朝の康熙帝時代を舞台にフランス人と中国人のハーフである主人公マリーを中心に描かれる宮廷絵巻。否、正確には康熙帝の息子の屋敷が舞台ですから「宮廷」ではありませんが、上流階級の生活という点で括ってしまえば、皇族も多数登場するので宮廷絵巻と呼んでも構わないでしょう。

そしてそんな清朝の宮廷や歴史的背景、そして首都北京の空気感。これらは多少なりとも中国史をかじっていないと理解しづらいところがあるのかもしれません。そういう意味では、あたしには非常に興味深く、そして面白く読めた作品でした。

その『親王殿下のパティシエール』ですが、このたび刊行された第八巻で完結しました。康熙帝が没して嘉慶帝の世となり、主人公とその主人である皇弟にどんな運命が待ち受けているのか、史実とにらめっこしながら楽しく読んでいました。ちなみに主人公はフランス革命を逃れてフランスの首都パリからはるばる清国へ渡ってきたわけで、当時のヨーロッパ情勢、そして清国における宣教師の生活など、清朝史に感心を持っている人であれば、より楽しめた作品ではないでしょうか。まあ、専門家の目から見ると粗があるのか否か、あたしにはわかりませんが、とにかくエンタメ作品です、楽しめればよしとしましょう。

それにしても、中国史のようにゆったりと進んでいた最初の巻に対し、この最終巻は時間が一気に流れました。こんなに早く終わらせる必要があったのか、もう少しマリーの奮闘、そして周囲の人の物語など描いて欲しかったという憾みが残ります。とはいえ、最後はあたしも目頭を熱くしてしまいました。