民主主義の危機?

この夏は選挙があるので、選挙や政治に関係する書籍が好調です。あたしの勤務先では日本の政治や選挙に直接関連する書籍は刊行していませんが、もう少し広く、俯瞰で政治や選挙を見るような書籍を何点か出しています。

そんな書籍の一つが、本日の朝日新聞読書欄で取り上げられました。『民主主義』です。あまりにも直球なタイトルですが、だからこそ偏りなく、民主主義そのものについて知ることができる一冊になっています。目先の選挙や日本の政治を考えるには迂遠かもしれませんが、だからこそこういう本が読まれるべきなのではないかと思います。

そんな感じで読書欄を眺めていましたら、非常に馴染みのある名前が目に飛び込んできました。温又柔さんの『恋恋往時』が同じく紹介されていたのです。

あたしの勤務先では『台湾生まれ 日本語育ち』がロングセラーで、毎日のように注文が入ります。

今日の配本(25/07/11)

パスポート初級チェコ語辞典

金指久美子、黒田龍之助 編

収録語彙数は約7500語。全見出し語に用例を付し、実際の使い方を明示。用例は固有名詞以外すべて、本書見出し語だけで構成。必要最小限の見出し語でも組み合わせ次第でさまざまな表現ができることを実感できる。文法をひととおり学び終えて、チェコ語で何か読んでみたいと思っている学習者に最適な辞書。祝日や色彩、調味料や成績評価などのテーマ別単語を適宜掲載。巻末には名詞や形容詞、動詞などの変化表完備。発音練習問題も用意。日本語・チェコ語索引は約2000語。

92頁です

『本と歩く人』を読み終わりました。はっきりと書いてはなかったと思いますが、舞台はドイツの町・ケルンですよね。それとも、モデルにした町はあるけれども、あくまで作品としては架空の町を舞台にしているのでしょうか。あたしがヒントになる部分を読み飛ばしてしまっているのですかね?

それはともかく、この『本と歩く人』は本をこよなく愛する人ならきっと好きになること間違いなしです。でも読み終わってみて思ったのは、いい年をしたおじさんとこまっしゃくれた少女の友情物語だったのではないか、ということです。

一人暮らしで、後は老いてゆくのみという、ちょっと寂しげな主人公カールと9歳の女の子が対等なパートナーとして、本を媒介に友情を育んでいく物語だというのが、現在の感想です。そしてカバーの画像も、92頁から96頁のシーンをそのまま映像化したと思われ、カバーを見ていると二人の会話が聞こえてくるような気がします。

そして2024年にはドイツで映画化されているこの作品、なんとか日本でも公開されないものでしょうか。ちょうど『アテネに死す』の映画版「ボイジャー」が現在公開されているタイミングなので、『本と歩く人』も日本で見られるととても嬉しいのですが。そのためには、まずはこの本が大ヒットさせないとなりませんかね。

目指せ、86万部!

早々と二回目の重版が決定した『本と歩く人』ですが、同書はドイツのベストセラー小説で、60万部を超えているヒット作品なのだそうです。

その『本と歩く人』を読み終わって、温かい気持ちになっているのですが、続いて読み始めたのは『雨上がりの君の匂い』です。こちらはフランスの作品で、河出書房新社から刊行されています。

そしてこの『雨上がりの君の匂い』も帯には60万部のベストセラーと書いてあります。いみじくも独仏それぞれで60万部のベストセラーを続けて読むことになったわけです。

ちなみにドイツの人口は8400万人ほど、フランスの人口は6800万人ほどなので、フランスの60万部の方が割合としてはちょっと高いわけですね。日本の人口は1億2000万ほどですので、人口比で考えると『本と歩く人』は60万部以上、恐らく86万部くらい売らないとなりませんね。

『ムーア人による報告』を読んだ日本人の報告

先日、朝日新聞の読書欄でも紹介された『ムーア人による報告』を読了しました。16世紀のスペインによる新大陸探検隊(征服隊?)の行程を描いた作品です。

ナルバエスが率いたこの探検隊はほぼ全滅し、8年後に生き延びた四名が現在のメキシコにあったスペインの植民地に辿り着き、探検隊の顛末を報告したものが公式記録として残っているそうです。これは史実です。そして生き残った四名のうち三名なスペイン人なのですが、残る一人がスペイン人に奴隷として仕えていたアフリカ人(ムーア人)だったというのも史実です。

公式記録はスペイン人によるもので、当然のことながら自分たちに都合のよい記述になっています。そこで著者は、たった一人のムーア人、エステバニコも探検記録を残していたという設定で描いたのが本作となります。

ウィキペディアにある「エステバニコ」の項によりますと、彼は8年間のインディオ暮らしの経験を買われ、次の探検隊の案内人になったけれどもインディオによって殺された、ということになっています。しかし著者は想像を逞しくして、彼のその後を希望に満ちたものに仕上げています。

作品はとても長い物語ですが、中だるみもなく、グイグイ読ませる作品です。当時のアメリカからメキシコにかけての地理があたしの頭に入っていなかったので、地名に少し手こずりましたが、メキシコ湾をめぐる北中米をウロウロしていたのだな、くらいの想像力で一気に読み通せました。

むしろ問題なのは、あくまで個人的な問題なのですが、ちょうど同時並行で読んでいた『アテネに死す』も中米が舞台となっている箇所があり、話と地理がゴッチャになってしまったことです。でも、どちらの作品も本当に読みやすく、引き込まれる作品でした。

ところで探検ものなので、過酷なシーンや描写もあります。食人のところなどは読むのがつらくなる人もいるのではないでしょうか。そういう点では同じ《エクス・リブリス》にある『緩慢の発見』と通じるものがあります。こちらも史実をベースとしたフィクションという共通点もあります。是非読み比べてみてください。

七七事変

七七事変というタイトルにしましたが、つまりは盧溝橋事件のことです。7月7日に起きた事件なので、こういう風にも呼ばれます。

盧溝橋は言うまでもなく、中国の首都北京郊外にある橋の名で、あたしは過去に二度訪れたことがあります。最初に訪れた時の写真がこちら、二度目の訪問の時の写真がこちらになります。この二回の訪問には約10年ほどのインターバルがありますが、行った印象はそれほど変わっていないなあ、という感じです。二回目の方が抗日博物館などもきれいになっていたかな、というくらいです。

でも、あれからさらに二十年近い年月が経っていますので、全然変わってしまっているでしょうね。そもそも盧溝橋なんて、周りには何もない辺鄙なところという印象でしたが、たぶん現在は巨大化した北京市に取り込まれて、周囲には近代的なビルや建物が建ち並んでいるのではないでしょうか。

七夕もいいですが、こういうことを思い出してみるのも必要なことではないでしょうか。

2025年7月7日 | カテゴリー : 罔殆庵博客 | 投稿者 : 染井吉野 ナンシー

昔話のおじいさんは山へ柴刈りに行きましたが、うちの母親は庭で芝刈りを試みました

本日の朝日新聞のGLOBEにはフランスのベストセラーランキングが掲載されていました。その第三位はジュリアーノ・ダ・エンポリの『L’Heure des prédateurs』でした。

ジュリアーノ・ダ・エンポリと言えば、あたしの勤務先から刊行した『ポピュリズムの仕掛人』が好調ですが、本作はその次の作品のようです。

そして今月下旬には、その邦訳『リベラリズムの捕食者』が刊行になります。原題をそのままGoogle翻訳してもらいますと「捕食者の時間」となるようです。今回の邦題は少し意訳しているのですね。

フランスのベストセラーランキングにも入っている作品なので刊行を楽しみにしている方も多いと思います。邦訳の刊行まで、いましばらくお待ちくださいませ。本体1900円の予定です。

ところでそんな日曜日ですが連日の猛暑でわが家の庭の芝生もグングン伸びています。今日午後の様子が二枚目の画像です。

ちょっとわかりにくいかも知れませんが、かなり伸びています。あたしはゴルフ場に行ったことはないのですが、ラフってこんな感じなのではないでしょうか。

6月14日に投稿したダイアリーで、芝生シートを庭に敷き詰めたと書きましたが、あれからまだ一か月経っていませんが、この季節だとこんなにも伸びるのですね。しかし先月末、6月29日のダイアリーでは少し伸びてきている状態をご報告しましたが、そこからの生長はまさに怒濤の勢いです。

ここまで伸びると、少しカットしないとダメなようです。そうしないとよい芝生にならないみたいです。芝刈り機を用意した方がよいのでしょうか。

2025年6月のご案内

2025年6月に送信した注文書をご案内いたします。

   

まずは没後100年になるエリック・サティのご案内。次に毎月恒例の今月のおすすめ本です。続いて、刊行一週間も経たずに重版が決まった「本と歩く人」、そして半ばに今月のおすすめ本の語学書篇です。

   

6月後半はご案内が続きまして、まずは三刷となった「ポピュリズの仕掛人」です。また新シリーズ「思想の地平線」の「幸福論」も刊行早々に重版が決まりました。ちくま新書の新刊「ラテン語の世界史」が好調と聞き、ラテン語学参のご案内です。そして朝日新聞出版の「語るパンダ」の刊行に合わせて「読むパンダ」と「中国パンダ旅」のご案内です。

   

月末もご案内が続きました。刊行即重版が決まった「盲目の梟」、この秋の上演が決まったフォッセの「だれか、来る」です。トクヴィルの生誕220年になりますので、トクヴィル関連本のご案内、最後は原書房から第三弾が刊行されたので、「ブックセラーズ・ダイアリー」を案内しました。

わが青春のYOU&I

季刊のPR誌『白水社の本棚』、その2025年夏号が出来上がりました。その巻末の人気連載、小指さんの『偶偶放浪記』を読んでいたら懐かしい名前を見つけました。

ちなみに今回の放浪先は千葉県の高根木戸です。なんとなく薄ぼんやりと聞き覚えのある地名ですが、どこにあるのかよくわかっていませんし、もちろん行ったこともありません。船橋の近くじゃなかったかなあ、というまるで根拠のない記憶があるだけです。

で、話は戻って懐かしい名前の件。それは「レンタルショップ 友&愛」です。懐かしのスポットとして訪れたものの、跡形もなくなっていたというありがちなオチですが、この「友&愛」はあたしにとっても想い出のお店です。

もちろん高根木戸ではなく、あたしが高校時代に行っていたのは杉並区浜田山駅前にあった「友&愛」です。忘れていましたが、『偶偶放浪記』にもルビが振ってあるように「友&愛」は「ユーアンドアイ」と読みます。ただ、あたしがよく利用していた「友&愛」は「YOU&I」と表記されていたように記憶しています。なおかつ、あたしたちクラスメートの間では「ゆーあい」と略して呼ぶのがスタンダードでした。

『偶偶放浪記』では「借りてきたCDをカセットテープにダビングしてた時代」と書いてありますが、あたしの頃はCDではなくレコードでした。借りるのはもっぱらLPレコードで、だから専用の大きな袋がありました。

日本のアイドルやロックなども借りたと思いますが、記憶に残っているのは洋楽です。なにせ洋楽全盛の80年代ですから、カルチャー・クラブにデュラン・デュラン、マドンナにシンディ・ローパー、ジャーニーやTOTO、さらにはマイケル・ジャクソンにプリンスなど、それこそ綺羅星のごとき時代でした。

いまも大して変わらないあたしの語学力では、これら洋楽アーチストの歌は理解できません。そこでそこの「ゆーあい」ではライナーノートのコピーサービス(と言っても有料だったはず)があって、借りた時には一緒に歌詞のページのコピーを取るのが習慣となっていました。

そんな懐かしい記憶が蘇ってくる今回の『偶偶放浪記』でした。