ルリユールという言葉をご存じでしょうか。本に興味をお持ちの方であれば知名度は高いと思いますが、一般的な世間の知名度はそれほど高い言葉ではないと思います。どこかのマンションの名前かと思ってしまった人も多いのではないでしょうか。
辞書などで調べれば簡単に答えは見つかりますが、ルリユールとはフランス語で、装丁家とか装丁という意味です。写真などで見たことある人も多いと思いますが、海外の図書館や美術館に所蔵されている本を見ると革張りで豪華な装飾の付いた本があります。ああいう本は所蔵者が調度品として、自分の趣味に合った装丁を施しているのです。
日本では、装丁とはちょっと違いますが、きれいな紙を用意して、能書家に筆写してもらう歌集や物語を所蔵することが貴族の間でも流行っていたと思います。意識としては共通するのではないでしょうか。最近ですと、平凡社から『その本はまだルリユールされていない』という小説が出ていますので、造本、装丁の世界を少し覗いてみることができます。
そんな本を読んだからでしょうか。ちょっときれいな、美しい本を見かけると手に取ってしまいます。もともと本が好きな人というのは内容だけでなく、タイトルや造本にも関心があり、それだけで買ってしまうという衝動は理解してもらえるのではないかと思います。
で、こんな本を見つけました。二子玉川にあるSprout Books and Artで買いました。かけてもらったブックカバーを外すと二枚目の画像のような本です。写真だと見づらいですが、金箔を使った美しい表紙です。手作り感が感じられる装丁です。
上記の『その本はまだ……』を読むとわかりますが、傷んだ本、古くなった本を修理するのに、自分なりの趣味を加えたものにするべく装丁家にお願いするのが多いのでしょう。愛着の本がボロボロになっていたらやはり哀しいものです。
もちろん、もともとの装丁が気に入っている場合もあるでしょうが、そういう機会に思い切って自分なりの装丁にしてしまうのもアリではないでしょうか。ただ個人的には、購入(ダウンロード)した電子書籍を自分なりの紙に出力し、凝りに凝った装丁で製本するようなことも、これからのルリユールとして流行するのではないかなあ、などと考えています。