読書欄ではなくとも……

週末は新聞各紙で本が紹介されます。いわゆる「書評が出た」「書評欄に載った」というやつです。出版不況と言われ、本が売れないと言われるこの時代、新聞の読書欄で紹介されると、やはり売り上げが伸びるので、出版社にとっては関心を持たざるを得ない紙面です。

とはいえ、本が紹介されるのは読書欄、書評欄ばかりとは限りません。今朝の朝日新聞の「あなたに贈る本」という特集紙面で、あたしの勤務先の『カンボジアに村をつくった日本人』が登場していました。紹介してくださったのは法然院貫主・梶田真章さん。不勉強にも、法然院関わっているとは知りませんでした。

ちなみに『カンボジアに……』は2015年、いまから10年前に刊行された本です。今も活動は続いているようで、支援というのは一過性のものでなく、継続が大事なのだと改めて思います。

さて、本日の朝日新聞はこれだけではありません。「日曜に想う」のコーナーが井上哲次郎に関する記事でした。曰く、「明治期にもあった「日本人ファースト」」。幕末に攘夷があって、でも開国に踏み切って明治維新を迎え、殖産興業、富国強兵で外国に門戸を開いた日本ですが、やはりドッと外国のものが入ってくると国粋的な揺り戻しもあったのですね。

井上哲次郎って知らない方も多いと思います。簡単に紹介したような新書も刊行されていないと思います。そこでお薦めしたいのが、あたしの勤務先から刊行した『井上哲次郎と「国体」の光芒』です。当時のアカデミズムの雰囲気が伝わる一冊です。

この記事を読んだら「井上哲次郎ってどんな人なんだろう?」と思った方も多いはずです。そんな時にネットで「井上哲次郎」を検索したら、たぶんこの本が真っ先にヒットするのではないでしょうか。この機会に是非手に取ってみてください。

文庫でもなく、新書でもなく、あえて選書

書店営業の途次、こんなフェアが開催されているのを見つけました。冊子が配布されていたので、いただいてきました。

それがこちら、新潮選書と中公選書のコラボフェアです。2025とありますが、昨年や一昨年もやっていたのか、寡聞にして知りません。今年初めて目にしたフェアです。

新潮にしろ中公にしろ、両社とも新書を出している出版社です。それなのに新書のコラボフェアではなく、あえて選書のコラボフェアというところが注目ポイントではないでしょうか。

この小冊子の表紙裏に「「選書」って、なんだかわかりますか?」という挨拶文が載っています。これがなかなか秀逸な出来です。ちなみに、両選書とも創刊は1967年、あたしと同い年です。ただ中公の方は前身の中公叢書からの年数だそうですが。いつか新書大賞の向こうを張って選書大賞を作りたい両社のようです。

さて、話は変わって本日の朝日新聞読書欄。あたしの勤務先の『ファシストたちの肖像』が紹介されています。予告どおりでした。

本書はイタリア、ドイツ、オーストリア、ハンガリー、ルーマニア、スペインを対象としたものですが、今日の書評では日本に引きつけて書かれているので、非常に関心と注目を引いたのではないでしょうか。

それにしても、あたしの勤務先ってヒトラーの大部な評伝とか、ファシズムやナチズムに関わる本が多いですね。

モニュメンツメン

土曜、日曜は新聞各紙で本の紹介、いわゆる書評が載る日です。ただ今日の朝日新聞に、あたしの勤務先の刊行物は載っていませんでした。

その代わりと言ってはなんですが、こんな記事が載っていました。ナチスが略奪した美術品が発見されたという、戦後80年に相応しいニュースです。

これで思い出したのが、現在は品切れになってしまいましたが、かつて刊行した『ナチ略奪美術品を救え 特殊部隊「モニュメンツ・メン」の戦争』です。この記事には載っていませんが、モニュメンツメンはいまも活動しているのでしょうか。そんなことが気になりました。

それにしても、まだまだ元の持ち主に戻っていない美術品ってあるのでしょうね。もちろんナチスとは限らず、どさくさに紛れて盗みを働いた連中もいたでしょうが、そうなると見つけ出すのは非常に困難ではないでしょうか。

ドイツとロシアと東ドイツ

画像は昨日の朝日新聞夕刊です。

朝日新聞は先日から土曜の夕刊は廃止となりました。日曜祝日は以前から夕刊がありませんでしたので、夕刊は平日のみとなります。そして、こういう盆休みに入ると「休みの日じゃないの?」という気持ちになってしまうので、夕刊が配達されるとちょっとした違和感を覚えてしまうのも事実です。

そして話は戻って昨日の夕刊です。「にじいろの橋」というコーナーで伊豆田俊輔さんが寄稿されています。同氏の訳書として挙がっている『ドイツ=ロシアの世紀』はあたしの勤務先から刊行されています。

ちなみに正式には『ドイツ=ロシアの世紀1900-2022』というタイトルで、年代が後に付きます。それに上下本なのです。それぞれが400頁弱、なかなかのボリュームです。また伊豆田さんには他にも『東ドイツ史1945-1990』という訳書もあります。ドイツ、特に東ドイツ史の専門家としての真骨頂です。

戦後の歩みについて日本とドイツの比較はしばしば行なわれるものですが、こうして改めて語られると気づかされることが多いですね。

なんと2点も

本日の朝日新聞読書欄、予告どおり『ナチ時代のドイツ国民も「犠牲者」だったのか』が載っていました。

考えてみますと、あたしの勤務先ってドイツ史の本が比較的多いですね。今月後半には『ホロコーストを知るための101の質問』という新刊も刊行になりますし、そもそも上下巻の巨冊『ヒトラー』なんていうのも刊行しているくらいですから。

ところで本日の読書欄は上記だけでなく、新書の紹介コーナーで文庫クセジュの新刊『環境地政学』も取り上げていただきました。地政学と名の付く書籍はこの数年非常に多くなっていますが、環境と地政学というのはこれまでなかったのではないでしょうか。環境問題も現代社会では非常に大きく重要な問題ですから関連書籍の多いジャンルです。この両者が合わさった本書は、やはり気になる一冊なのではないでしょうか。

新聞記事から少々

二つほど、朝日新聞記事からご紹介します。まずは昨日の夕刊に載っていたものです。少し前にこのダイアリーでも取り上げた、10代がえらぶ海外文学大賞の記事です。

海外文学はなかなか売れないと言われるジャンルですが、だからこそ、こうやって頑張っている取り組みが紹介され、一般の方にも広まってくれると嬉しいなあと思います。

あとは、あたしの勤務先の翻訳作品も選ばれるようにすることですね。もちろん10代ばかりを狙って刊行するわけにはいかないですが、将来の読者として若い人たちにもっと海外文学を読んでもらえるようになればと思います。

続いては今日の朝刊です。鈴木忠志さんの記事です。このところ関係書籍が各社から出版されていまして、この後もまだ刊行予定があるようです。

そんな中、あたしの勤務先からも自伝『初心生涯』が少し前に刊行されたところです。これは日本経済新聞連載の「私の履歴書」を書籍化したものです。お陰様で、よい感じで売れています。この調子で伸びてくれればと思っています。

ちなみに、不勉強にして、あたしは鈴木忠志さんってこの企画が出るまで存じませんでした。一般の方には著名で、あたしだけが無知すぎたのか、そのあたりのところはよくわかりませんが、こういう記事で知ったという方もそれなりにいるのではないでしょうか。

民主主義の危機?

この夏は選挙があるので、選挙や政治に関係する書籍が好調です。あたしの勤務先では日本の政治や選挙に直接関連する書籍は刊行していませんが、もう少し広く、俯瞰で政治や選挙を見るような書籍を何点か出しています。

そんな書籍の一つが、本日の朝日新聞読書欄で取り上げられました。『民主主義』です。あまりにも直球なタイトルですが、だからこそ偏りなく、民主主義そのものについて知ることができる一冊になっています。目先の選挙や日本の政治を考えるには迂遠かもしれませんが、だからこそこういう本が読まれるべきなのではないかと思います。

そんな感じで読書欄を眺めていましたら、非常に馴染みのある名前が目に飛び込んできました。温又柔さんの『恋恋往時』が同じく紹介されていたのです。

あたしの勤務先では『台湾生まれ 日本語育ち』がロングセラーで、毎日のように注文が入ります。

呉明益と高座海軍工廠

台湾の人気作家・呉明益の作品を何作か読んだことがありますが、第二次大戦の影が色濃いのが特徴的だと思います。もちろん作家自身が実際に戦闘に参加したような年齢ではないので、親の体験、親から聞いたことを作品に昇華しているわけですが……

そんな呉明益作品を読んで知ったのが、高座海軍工廠です。高座とは神奈川県にある地名で、あたしも薄ぼんやりと、そこに軍需工場があるのは知っていましたが、それ以上のことは何も知らず、『眠りの航路』でより詳しく知った次第です。もちろん小説ですから脚色はあるでしょうし、あくまで呉明益の取材に基づく描写ですから、細部においては事実と異なるところもあるでしょう。でも雰囲気はよく伝わってきました。

そして、今朝の朝日新聞にこんな記事が載っていました。記事の石川さんは、当時の「宿舎の舎監の息子」とありますから、呉明益の父親と面識があるのかもしれません。ハッキリとした記憶はないかも知れませんが、恐らくたぶん実際に顔を合わせたことはあるのでしょう。そんなことを考えるととても不思議な気がします。

なお『眠りの航路』は小説ですが、もっと気軽に読めるエッセイとしては『我的日本』所収の「金魚に命を乞う戦争」があります。こちらには『眠りの航路』執筆に至る取材のことなどが描かれています。

「まち」or「ちょう」

今朝の朝日新聞にこんな記事が載っていました。東京のいろいろな土地を紹介する記事で、今日登場していたのは「神田小川町」でした。

神田小川町と言えば、あたしの勤務先の所在地です。さすがに記事中に勤務先のことは出て来ませんが、やはり親しみが湧きますね。

ところで「神田小川町」ですが、「かんだおがわまち」と読みます。都内には「神田○○町」という地名がたくさんありますが、そのほぼすべてが「かんだ○○ちょう」と読むのですが、「神田小川町」は「かんだおがわまち」と読みます。

かつて、何かの本だったか記事だったかで「神田○○町」の「町」を「まち」と読むのは「神田小川町」とあと一つあると読んだのですが、そのもう一つが思い出せません。たぶんネットを検索すればすぐに出て来ると思うので、興味がある方は是非検索してみてください。

ケプラーとガリレイ、そしてピタゴラス

今朝の朝日新聞に雑誌『ニュートン』とのコラボ記事が載っていました。あたしは子供のころから本や歴史が好きな文系人間だったので、『ニュートン』はもちろん知ってはいましたけど、ページを開くことはほとんどありませんでした。

ですからそっち方面には非常に疎いのですが、本日の記事は非常に興味深く読みました。なぜなら取り上げられているのがケプラーとガリレイだったからです。上にも書いたように、根っからの文系人間ですので、ケプラーもガリレイも名前くらいを知っていても、どんな業績を上げた人なのか正確なところはよくわかっていません。まあ、ガリレイなら地動説だったっけ、くらいの知識はありますが。

それなのにどうして興味を持ったかと言いますと、あたしの勤務先からその名も『ケプラーとガリレイ』という本を出しているからです。同書は

科学史上に輝く巨星の対照的な生涯と大発見、時代背景を活写した評伝。二人を結んだ「絆」として、交わした書簡が重要な役割を果たす。独の科学ジャーナリストによる「最良の科学書」

という内容のもので、朝日新聞の記事を読んだ方なら興味を持たないはずがない一冊ではないでしょうか。ケプラーとガレイが同時代ということは知っていても、どれくらい親交があったのか詳しくない方も多いはず。本書はそんな方にお薦めです。

そして今回の朝日新聞の記事にはもう一人、外せない名前が載っていました。それがピタゴラスです。記事中には「天球の音楽」という言葉も出て来ていますが、なんとあたしの勤務先では『ピュタゴラスの音楽』という本も出していたのです(現在、品切れ)。この本は

「ピュタゴラスの定理」で知られる紀元前6世紀のギリシアの賢人。その数奇に満ちた生涯を辿り、人類の思考を導いてきた自然の原理と現在に至るまでの思想の継承史を明らかにする

という内容の本ですが、「思想の継承史」の中にはケプラーも入っているのです。品切れなので古本屋をあたっていただくしかないですが、本書も朝日新聞の記事に興味を持たれた方には食指が動く本ではないでしょうか。