もう何年も、否、十年以上前になりますでしょうか、ある書店の文芸担当の方と「もっとアジアの作品も売りたいね、売れるようになるといいね」と話したことがありました。
とはいえ、その当時の海外文学は欧米が主流で、アジア文学の翻訳は数えるほどでした。昨今のような韓流文学もまだまだ多くはなく、売れる以前に刊行が増えなければ話にならない状態でした。
翻訳されたアジア文学の点数が少ないので、ヒットする作品もなかなか登場しません。だからアジア文学は売れない、という悪循環に陥りかけていた時期でした。
それがあるころからアジア文学の刊行がぐんと増えてきました。フェミニズムを中心とした韓国文学、SFを中心とした中国文学が流れを引っ張ってくれました。そんな中、『82年生まれ、キム・ジヨン』の大ヒット、ハン・ガンのノーベル文学賞受賞と、韓国文学は一気にメジャーになりました。
若干の偏見を含むかもしれませんが、韓国文学はフェミニズムをテーマとした作品ばかりのように感じますが、台湾、大陸を含めた中国文学はSFだけでなく、様々なタイプの作品が翻訳されるようになってきたと思います。かつては革命の苦難や近代化の苦しみを扱ったような作品ばかりの時代もあったのですが、最近は違いますね。
そんな中、あたしの勤務先でもお世話になっている及川茜さんが翻訳を手掛けた書籍の刊行が続いています。つい最近だけでも『何畳人民共和国備忘録』『地下鉄駅』『荒原にて』と立て続けに刊行されました。中国学を専攻していた身としては、さまざまな中国文学が紹介されるのは嬉しい限りです。